夜も遅くなり、綿は輝明を見送った後、家に戻った。冷たい外気にさらされ、彼女の手は冷え切っていた。盛晴が温かいお茶を入れて手渡しながら言った。「これで温まって」綿は母親の膝に寄り添い、テレビで夜間放送の恋愛ドラマを眺めていた。盛晴はフルーツを食べながら、時折ドラマの展開に文句を言い、盛り上がる。綿の体はすぐに温まり、リラックスした雰囲気に包まれていた。母娘の間には、輝明について何の話題も出なかった。盛晴も彼女に何も聞かなかったし、綿も話すことはなかった。ただ、天河がそっとクリスマスプレゼントを持ってきた。それは美しいハイヒールだった。「高価なものじゃないけどな。俺の娘はいつまでもお姫様でいてほしいんだ」彼はそう言って綿に手渡した。その時、スマホが鳴った。綿が確認すると、輝明からのメッセージだった。輝明「家に着いたよ。おやすみ」翌日綿は疲れた体を起こし、ベッドサイドのスマホを手に取ると、また彼からメッセージが届いていた。輝明「おはよう」彼女は眉をひそめた。まるで若い恋人みたいに、朝と夜にメッセージを送ってくるとは。軽く身支度を整え、朝食を済ませた綿は、病院へ向かった。美香のお見舞いを兼ねて、優輝の様子も見に行くためだ。車の中で、輝明にメッセージを送った。「病院に行くけど、一緒に来る?」彼女からの誘いに、彼が断るはずもない。優輝の父親の病室の前で、二人は出会った。「もう着いたの?」と輝明が尋ねた。綿は彼を見上げ、軽く首を傾げた。もう少し前から来てる。さっきまでおばあさまに針治療してた。その時、病室の中から元気な声が響いた。「綿お姉ちゃん!」病室のドアが開き、優輝が顔を出した。綿はしゃがみ込んで小さな体を抱き上げた。「おはよう。朝早いのね」「そうだよ!」優輝は大きく頷き、病室の中を指差した。「パパも起きたよ!」「お姉ちゃんとばかり話して、俺を無視するの?」輝明が不満そうに言うと、優輝は彼に向かってにっこり笑った。「かっこいいおじさん、おはようございます!」彼はその一言で機嫌を直し、優輝の頭を軽く叩いた。輝明はコートを腕にかけ、綿と一緒に病室に入った。そこで目にしたのは、ベッドの上で座る若い男性の姿だった。昨日は怪我のせいで疲れ果てた
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