All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1001 - Chapter 1010

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第1001話

唯花はじっと柴尾鈴(しばお すず)を見つめていた。彼女があの薬の入ったお酒を誰にも渡さず、自分も飲まずにいたので、唯花は彼女がなぜそのようなことをするのか気になっていたのだ。そして、すぐにその理由がわかった。あの酒は飲ませる相手が決まっていたのだ。その相手はこの時やって来たばかりだった。一台のバイクが桜井家の邸宅にやって来た。邸宅の敷地内に駐車してある高級車たちと比べると、そのバイクは異常なまでに目立っている。そのバイクでやって来たのは二十歳過ぎの女性だった。それは重要なことではなく、重要なのは、そのバイクの後ろに座っている女性で、彼女は花束を抱えており、バイクを降りると片手で白杖をついて、それを使って道を探るようにゆっくりと前方に歩いてきたのだった。彼女は目の見えない人だった。唯花はお酒のグラスを置き、姿勢を正して花束を抱えた目の不自由な女性が白杖をついてゆっくりと芝生の上を歩いて来るのを見ていた。すると脳裏に一枚の写真が浮かんできた。それはおばあさんが辰巳に渡していた写真だ。つまりおばあさんが辰巳のために選んだ花嫁候補の女性である。辰巳には一年以内に彼女に猛アタックをし、結婚できなければどうなるかは自己責任だと脅してきていたアレだ。そうだ、その女性の名前は柴尾だ。柴尾咲、柴尾グループの現社長の義理の娘であり、また彼の姪っ子でもある。唯花はまさか桜井家のパーティーで柴尾咲本人に出会うとは思ってもいなかった。咲は目が不自由なので、ゆっくりと歩いていた。バイクを止めた場所は鈴からはそう遠くなかった。目が見える人であれば二分ほどで彼女のところまで歩いて来られるだろう。しかし、咲は十数分歩いてようやく鈴の元までやって来た。「花束持って来てって言ってから、こんなに時間がかかるなんてね。こんな配達の速度じゃ、店が閉まらないだけラッキーよね。これはもう奇跡としか言いようがないわ」鈴は咲よりも六歳年下で、今年ちょうど二十歳になる。咲の母親が伯父と再婚してから、初めて生まれた子供がこの鈴だ。夫婦二人から一身に愛を受けて育ち、また、柴尾家は財産が億単位の隠れ富豪でもある。だから鈴は両親から溺愛されてわがままな性格になってしまったのだった。彼女にとって、一番、目の上のたんこぶとなっているのは咲だった。鈴はいつも柴尾家の令嬢
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第1002話

咲と鈴の母親である柴尾加奈子(しばお かなこ)はこの姉妹からそう遠くない所で、数人の他の夫人たちとおしゃべりをしていた。二人の娘が何をしているのかわかっているのだが、彼女は特に止めに行くことはなく、依然として何事もなかったかのようにおしゃべりを続けている。咲は暫くの間黙ってから、やっと妹から差し出された酒のグラスを受け取って尋ねた。「これを飲んだら、料金を払ってくれるのね?」「こんなに多くの人が証人としているのよ。それを飲んだら、一万円札二枚あんたにあげるわ」「わかった」咲はそのグラスを唇に近づけ、飲もうとした。しかし、その時突然、誰かの手が伸びてきて、そのグラスを奪ってしまった。「これ、飲まないほうがいいですよ」それは知らない人の声だった。咲はその声がしたほうからその相手の位置を確認し、そちらへ顔を向けて、訝しげにしていた。咲のグラスを取ったのは、唯花だった。他の人たちはみんなただこの二人の様子を見ているだけだったが、唯花はこれ以上黙っていることはできなかった。鈴が咲に渡したその酒には、何かよくわからない薬が入れられているからだ。咲がそれを飲んで、もし何かあったらどうするのだ?この人はおばあさんが辰巳に花嫁候補として選んできた女性だから、唯花がそれを知らなければまだ良かったのだが、知っているのだから、黙って見過ごすわけにはいかないのだ。「ちょっと、これはあなたには関係ないことですよ」鈴は不機嫌そうに唯花を見つめてそう言った。彼女は唯花のことを結城家の若奥様と呼びたくはなかった。「若奥様」などと呼んでしまうと、こんな田舎娘よりも自分が劣っていると感じてしまうからだった。「さっき、あなたがこのお酒に何か入れるのを見たんだけど」このセリフを吐いたのは唯花ではなく姫華だ。姫華は唯花がどうして他人のことに首を突っ込むのか理解できなかったが、唯花はもうそうした後だから、姫華も黙っていることはできず、口を挟むことにしたのだ。柴尾家の令嬢なんて、普段姫華の眼中にはない存在だ。彼女は直接、鈴の陰謀を阻止しようとした。「神崎お嬢様、そんなでたらめなことを好き勝手言ってはいけませんよ。私がいつこの中に薬を入れたって言うんですか?」姫華は顔を上げて鈴を上から見下ろし、偉そうな態度でこう告げた。「私のこの目ではっき
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第1003話

鈴は姫華と唯花二人に対して挑発的な態度を見せている。姫華と唯花が咲を助けようというのなら、いつまでそれができるだろうか?鈴がその気になれば、いつでも咲の花屋など完全に潰してしまうことができるのだ。それに、咲は彼女に文句を言う勇気すらもない。咲も馬鹿ではない。姫華がさっき酒の中に薬が盛られているという事実を話してくれた後、彼女もその酒を飲むつもりなどなかった。そして、彼女は淡々とした口調でこう言った。「この花束は、あなたにプレゼントすることにするから、代金は結構よ」そう言い終わると、彼女は姫華と唯花に向かって、礼を述べた。その時、感情のこもっていなかったその声に、少し感謝の気持ちが混ざっていた。「咲、これで終わりだと思わないことね!」鈴はどうにも腹の虫が収まらないらしい。これで終わりにして去ろうとする咲の手を鈴がさっと捕まえた。そして素早く咲の前までやって来ると、片手で彼女の顎を力いっぱい掴み、本気で無理やりあの酒を流し込もうとした。その時、唯花と姫華はほぼ同時に動いた。唯花は空手ができるので、簡単に形勢逆転させることができた。あっという間に咲を鈴から救い出しただけでなく、鈴の顎を掴んだ。姫華のほうはあのグラスを奪い取り、素早くそれを鈴の口に流し込んだ。鈴は懸命に逃れようともがいていたが、やはりその酒を数口飲んでしまった。鈴にそれを飲ませることに成功した後、唯花はやっと彼女を解放してやった。そして姫華は力を込めてそのグラスを地面に叩きつけた。そこは芝生であったが、勢いがあったので、グラスは粉々に割れてしまった。その時大きな音がしたので、その瞬間、自分の娘たちのことは放置していた加奈子も驚いてしまった。可愛い娘がひどい目に遭ったのに気づき、加奈子は急いで駆けつけてきた。「お母さん、お母さん、もう帰ろうよ。今すぐ帰りたい」鈴は自分がさっき飲んでしまった酒の中にどんな薬が入っているのかよくわかっているので、飲むとどうなってしまうのかは、もちろん誰よりもはっきりしていた。彼女はこんな大勢の前で服を脱いで醜態を晒すような真似は絶対にしたくないのだ。これは咲に用意したものだった。しかし、姫華と唯花が干渉してきたことにより、結局それを鈴が飲む羽目になったのだ。鈴は一秒でも早くこの場を離れたくて仕方がなかった。この薬
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第1004話

この時、詩乃と桜井夫人がこの騒ぎに気づき、急いで家の中から出てきた。加奈子は詩乃を前にしては虚勢を張る勇気はなかった。それに可愛い可愛い彼女の娘は自業自得だ。彼女はただ桜井夫人に軽く謝罪をし、鈴を連れてそそくさと桜井家を去っていった。騒ぎが落ち着いてから、咲は唯花と姫華に礼を述べた。彼女は実際、唯花と姫華がどうして自分を助けてくれたのかよくわかっていなかった。さっき母親が吠えていたセリフの中から、咲は助けてくれたうちの一人が結城家の若奥様であるということがわかった。結城家の若奥様と言えば、ここ最近星城で一番注目を集めている人物だ。そんな結城家の若奥様が任侠者のように、こんなに正義感に溢れていて彼女を助けてくれるような女性だとは思ってもいなかった。実際、ここで誰も助けてくれなかったとしても、咲には自分でどうにかできる方法があったのだが……。まるで心の歪んだ意地悪な継母のような実の母親と、継父と生活しながら、こっそり彼女は少しずつ様々な証拠を集めていた……咲がもし何も彼らに対する手だてがなければ、今現在ここまで生き残ることなどできなかったのだ。唯花は心配そうに尋ねた。「家に帰ってから、もしあの人たちがあなたにまた何か嫌がらせをしてきたら……」唯花もさっき自分が言った言葉で、加奈子を脅かすことができるかはわからなかった。咲は淡々と言った。「あの人たちも、今まで本当の意味で私から何かを取ったことなど一度もありませんので」唯花はその瞳をキラリと輝かせた。そして最後に「じゃあ、十分気をつけてくださいね」と言った。「どうもありがとう!」咲はもう一度唯花と姫華にお礼の言葉を述べた。そして、彼女は静かに目の不自由な人が使う白杖をついて、前方を確認しながらゆっくりと歩いて去っていった。彼女の店の店員が、この時やっと咲の元に駆けつけて彼女の体を支えた。そしてすぐに、咲はあのバイクに乗って桜井家を後にしたのだった。柴尾家の二人のお嬢さんが騒ぎを起こし、夜もだんだんと深くなっていったので、多くの来客は次々と帰っていった。詩乃も姫華と唯花を連れて、桜井家に挨拶を済ませ、帰路についた。詩乃はまず唯花をトキワ・フラワーガーデンへと送っていった。唯花と姫華の二人が咲を助けた件に関しては、詩乃はひとことも何も言わなかった。
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第1005話

「私がどうしてその人を怒らせたのか、聞かないの?」理仁は顔を傾けて彼女を見つめて言った。「聞く必要はないよ。君が誰を怒らせようとも、俺は永遠に唯花さんの味方なんだから」彼の中では妻こそが正義だ。唯花「……理仁さん、そんなふうに私を信じて甘やかしすぎたら、私が悪役令嬢に育ってしまうかもしれないわよ」「唯花さんが悪役令嬢になるなら、そんな君を寛容に許してあげられるのは、この世でただ俺しかいないじゃないか。君は永遠に俺のものだ。誰も俺の手から奪っていくことなどできっこないさ」唯花は失笑した。「私が結城理仁の妻だって知っていれば、私に手を出そうなんて思う勇者が本当にいるかしら?」金城琉生は長年彼女に片思いをしていた。唯花がすでに結婚していると知っても、その気持ちを殺すことはできず、彼女と理仁が離婚した後、彼女と一緒になれるとまで妄想をしていたのだ。それが母親から唯花のスピード結婚相手が結城理仁、結城家の御曹司であると教えられてから、ようやく彼女に対する気持ちに区切りをつけることに諦めがついたのだった。前回琉生は週末の二日の休みを利用して、いそいそと星城に帰ってきた。琉生の母親である伊織は明凛たち牧野家も招待して琉生と一緒に食事をしたのだった。その時、明凛は琉生がとても大人になったと言っていた。しかし、彼はかなり口数が少なくなっていた。家族たちと挨拶の言葉を交わした後は、何もしゃべらなかったのだ。明凛は琉生はまだ絶対に唯花のことを好きなのだと言っていた。しかし、彼は結城理仁には敵わないことがわかっていて、彼と争う度胸などなかった。琉生が唯花に付き纏っていた頃、理仁が金城グループに手を出したことがある。琉生がその気持ちを抑えきれなかったとしても、実家の事業を賭けにしてまで、愛に突き進む勇気など持っていないのだ。賭けもできず、勝つことも絶対にできない。ただただ、自分の気持ちを断ち切るほかなかった。彼は星城を離れ、またH市へ仕事をしに戻る前に明凛に言った言葉がある。きっと今後十年間は恋愛して結婚することはないだろうということだ。それを聞いた明凛は従弟のために心を痛めた。しかし、彼には唯花を諦めろとただ説得することしかできない。彼女のこの性格だから、従弟が唯花にアタックする手伝いなどできはしないし、唯花の幸せな結婚生活をぶち壊すこと
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第1006話

「作法やマナーに厳しい伯母様がその言葉を聞いたら、きっとあなたを睨むわよ」理仁は笑った。「神崎夫人は昔からとても厳しい方だったんだ。今はもう一線から退いてしまったから、だいぶ柔らかくなったんだよ。君があの夫人にお願いして礼節を学ぶのなら、とっても苦労するはずだ。だけど、彼女は君の伯母だから、心から君のことを思ってやってくれていることだろうけどね。君が苦労を厭わず、彼女の元から多くのことを学べば、一生それは君の助けになると思うよ」唯花はソファまでやって来て腰をかけた。理仁はその後に続いて、彼女の足を持ち上げて、マッサージをしてくれた。唯花はそれを止めようと思い、彼に言った。「あなたは結城家の御曹司であり、結城グループの社長なのよ」「唯花さんの前では、俺はただ君に尽くすだけの男だよ。君の夫なんだから、自分の妻が俺のために慣れない高いヒールを履いて一晩中無理して足をこんなに痛めてしまったんだから、そんな妻をいたわったって、別に構わないだろう?」彼のその自信溢れる甘い言葉を聞いて、唯花は大人しく彼からマッサージしてもらうことにした。「さっき、パーティーで柴尾咲さんに会ったの」理仁が唯花に誰を怒らせたのか尋ねなかったので、唯花のほうから彼に教えた。「柴尾咲って誰?」理仁はこの時、顔も上げずに集中して唯花にマッサージをしていた。その柴尾咲とやらが一体誰なのか、彼は全く興味がなかった。「あなた、彼女の写真を見たでしょ?とても綺麗な人よ。顔がとっても小さいから、サングラスをかけると、顔の面積が小さくなってさらに小顔に見えるのよ。彼女って話をするときはいつも無感情で淡々としているの。なんだか空に飄々と浮かんで吹かれる雲みたいな人だったわ」理仁はこの時、手の動きを止め、愛妻のほうへ顔を向けて弁解した。「俺がいつそんな人の写真を見た?俺は君以外の女なんて興味ないね。写真ですら見る必要もないし」唯花はそれを聞いておかしくて言った。「私も別にヤキモチ焼いてるわけじゃないんだから、そんな言い訳するような言い方してどうするのよ。柴尾咲さんはおばあちゃんが辰巳君に見つけてきた花嫁候補さんよ。おばあちゃんが彼女の写真を辰巳君に持って来たでしょ。あなたが彼とそれを持って来て私に見せてくれたじゃないの。あなただって見たはずよ」理仁「……ちらっと一目
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第1007話

理仁は少し黙ってから、その答えを彼女に伝えた。「ああ、君のこともいろいろ調べたんだ。だけど、俺はそれよりも自分の目を、感覚を信じたかった。だから、当初自分の正体は君に隠して君の人柄を見たいと思ったんだ」「あなたの性格からして、私のことを調べ尽くしていなければ、きっと私とスピード結婚することは受け入れなかったでしょうしね。じゃ、結婚してから、ずっと私が欲深くて、あなたのお金を狙ってる女だと思ってた?」「調査結果に間違いがあるかもしれないと思って」唯花は呆れてしまった。「結婚は人生で一番重要なイベントだろう。女性は結婚相手を間違えたらいけないと慎重になるだろうけど、俺ら男だって結婚して妻になる女性には慎重になるものだよ。自分自身で相手と直に交流してみて、ようやくその人の本当の姿がわかるものだろう。調査の結果なんて、ただ紙の上にまとめられた字の羅列でしかないよ」「私たち、結婚っていう人生の大切なイベントなのに、あっさりと決めちゃったわよね」唯花はため息をつき、また嬉しそうにこう言った。「だけど、私たちお互いに相思相愛になれたんだから、良かったわね」確かに二人が今そうなれたから良かったものの、過去に戻ることができたら、彼女は今とは別の道を選ぶかもしれない。「唯花さん、さっきの続きを話して。それはあるストーリーとして聞くことにするよ」理仁は唯花との結婚を周りにまだ公開していなかった頃のことはあまり語りたくなかった。あの頃は彼女のことを騙していた時期だからだ。もし彼が胃の調子を悪くしていなかったら、彼女は彼に同情して許すことなく、夫婦二人の関係は未だに硬直状況だっただろう。だから、彼は自分が正体を隠して彼女のことを騙していたあの話題には触れたくなかったのだ。それで、話題を柴尾咲に移して、古傷をえぐられないようにそれを避ける作戦に出た。「柴尾咲さんには何歳か年下の妹さんがいるみたいで、とても綺麗な子だったわ。だけど、人としてどうかと思うようなことをするのよ。その子が咲さんのお酒のグラスに薬を入れたの。その後、咲さんに花束を注文して、パーティー会場まで来させて、その薬の入ったお酒を飲まないと、お花代を支払わないって言ってきたんだからね。私と姫華がそれを一から見ていたの。今までここまでひどいことをするような子に会ったことないわ。それ
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第1008話

「名家の家庭事情というものは複雑で、それぞれが自分の利益のためにどんなことだってできてしまうんだよ。ただその中に入ってみないとわからないことが多いんだ。だけどね、唯花さん、心配しないで。結城家は当主の座を巡って汚い争い事を繰り広げるようなことは絶対にないから。俺のこの当主の座というものは、いくら大金を積まれたってうちの他の奴らはこの重荷を背負おうとはしないんだよ」唯花はその理仁の話を信じていた。彼女は理仁の家族とは何度も交流したことがある。唯花と同世代の者でも、年配者たちであっても、とても態度は良かった。ただ、一人義母だけが、彼女に対して偏見を持っていて、彼女に不満を抱えているのだった。しかし、その義母も今までずっと唯花を傷つけるような真似などしたことはない。彼女が理仁に腹を立てていた時も、義母はおばあさんと一緒にやって来て、唯花に謝罪していて、これ幸いと理仁と唯花を離婚に追いやるということはなかったのだ。恐らく義母にとって、息子の嫁の家柄は重要ではあるが、息子の気持ちと幸せのほうが大切だと考えているのだろう。「私が首を突っ込んだ時、柴尾夫人はまるで敵でも見るかのような目つきで私を見ていたわ。夫人が家に帰って、一体どんな風に旦那さんに私の悪口を尾ひれ付けて言うんでしょうね。理仁さん、柴尾家ってすごい家柄なの?私が余計なことに首を突っ込んで、柴尾夫人と鈴さんを怒らせたものだから、あなたに何か迷惑をかけてしまうかしら?」理仁は彼女の足をマッサージしてあげた後、彼女の隣に座り、唯花の肩に手を回して抱きしめてから、自信げに言った。「別に俺の自惚れじゃないけど、星城において、結城家と同等に張り合えるのは、君の伯母さんの神崎家を除いて、他にはないんだよ。それに、最後まで張り合っても、神崎家は結城家のライバルにもなれないのさ。結城家は味方が多いし、みんな心を一つにして団結し、親戚になった家も結構な実力のある家柄だから、うちを敵に回すということは、いくつもの財閥家を敵にするのと同じことになるんだ。柴尾家がなんだって言うんだ?柴尾家は星城でビジネスを展開していないし、彼らは星城でただ居を構えているだけだよ。別に彼らを軽視したことはない。彼らの内部事情を調べたこともあって、柴尾家の財産を計算してみると、だいたい二百億というところだ。柴尾家は昔から控えめな
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第1009話

「部屋に戻ってドレスを着替えておいで」理仁はそう言いながら、唯花を抱っこしようと思っていたが、それは彼女に阻止されてしまった。「私は自分でちゃんと歩けるんだからね」さっき理仁に足をマッサージしてもらっていたので、唯花は立ち上がってみると、両足がとても楽になっていた。「唯花さん、君のために何かさせてくれたっていいじゃないか。俺も腕の筋肉を鍛えたいんだ。君を抱きかかえて歩けば、ちょうど良い鍛錬になるんだけどな」唯花は軽く彼の顔をつねった。「あなた、毎日体を鍛えるのに、私を抱きかかえて腕を鍛える必要なんてないでしょう。行きましょ、寝るわよ」「お風呂にお湯をためるよ」理仁は彼女を抱きかかえて部屋に連れて行くのは諦め、先に部屋に戻ると、浴槽いっぱいにお湯をためた。そして彼女のナイトウェアを取って来て、彼女をお風呂に入れさせてあげた。これで気持ちよく夢の世界へと連れていってあげるのだ。お風呂を済ませると、唯花はベッドに上がり、理仁の隣に横になった。そして、何かを思い出したらしく、頭を上げて理仁の顔にキスを何度かした。「あなた、おやすみなさい」理仁はキスを彼女に返した。「おやすみ、良い夢を見てね」「私、あんまり悪夢は見ないのよ」唯花は横になると、いつも通り彼の懐に入っていった。理仁はとても満足そうに愛妻を胸に抱きしめて眠りについた。翌日、夫婦二人はそれぞれ、会社へ、本屋へと出勤していった。遠く、琴ヶ丘邸の麗華は朝起きてから、何度も一緒にお茶をしたことのある友人から電話がかかってきた。「麗華さん」相手は電話の向こうから麗華にこう伝えた。「ご長男の奥さん、他人のことにいろいろ構いすぎじゃないのかしらね。他人の家のことにまで口を挟むなんて、そんなことしたら、嫌われちゃうわよ」麗華はそれを聞いてどういうことなのか訳がわからず、相手に尋ねた。「うちの唯花さんが他人のことに構いすぎているってどういうこと?あの子がどこのお家のことに首を突っ込んだのかしら?あなたのとこ?あなたを怒らせるようなことをしちゃったの?」「彼女ね、昨日の夜、桜井家のパーティーに参加したこと、あなた知らなかったの?神崎夫人と一緒に行ったみたいよ。義理の母親であるあなたをおいといて、神崎夫人と一緒に行くだなんて、あなたたち嫁姑の関係は悪いの?私だっ
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第1010話

「柴尾社長は身内に甘く、二人の娘のことをとても可愛がっているわ。唯花さんがあちらの可愛い可愛いその娘さんにみんなの前で恥をかかせたのだから、柴尾夫妻はとっても恨んでいるはずよ。これって結城家にとても迷惑をかける行為ではなくて?麗華さん、しっかりと唯花さんに教え込まないとだめよ。彼女は今結城家の顔でもあるんだからね。あの子は一般家庭の出だし、ご両親も亡くなってらっしゃるんでしょ。親がきちんと教育できなかったから、性格も野放しで、がさつになっているのよ。きちんと教育されなかったら、麗華さんたち結城家の若奥様という責任をしっかりと果たせるかしら?」電話の相手はつらつらとずっと唯花の文句ばかり一気に話し続けていた。麗華はそれを聞きながら、顔色を曇らせていた。栄達は妻の顔色が激変したのに気づき、心配になって尋ねた。「誰からの電話だね?何を言われたんだ?」麗華はすぐには夫の質問に答えず、冷ややかな声で相手に反論した。「原田夫人、この件はあなたとは関係がございませんよね?ひたすらうちの嫁が余計なことに首を突っ込んでいるというふうにおっしゃっていますけど、それはあなたも同じなのではなくて?うちの息子の嫁がどうなのか、あなた方に関係がありますの?唯花さんは余計なことに首を突っ込んだのではなく、彼女の正義を貫いただけですわ。彼女なりの正義感をもって、柴尾咲さんが恥をかかないよう助けてあげたのです。私は、唯花さんのその正義感はとても素晴らしいと思っていますけれど。唯花さんが今後誰と付き合っていくのか、彼女の交友関係は全て彼女の自由ですので、私は一切口を挟むつもりはございませんよ。私は、息子の嫁の人柄を信じています。彼女が咲さんを高く評価し、交流を持ちたいと思ったのであれば、咲さんはきっと良い方なんです。それから、うちの嫁をどう教育するかは、あなた達が心配することではございません。唯花さんが何をしようとも、我が結城家は全面的にサポートしますので。柴尾社長が身内に甘いとおっしゃいました?申し訳ないけれど、我が結城家も相当に身内に甘いんですのよ。もし柴尾社長が昨夜の件で、うちの唯花さんに何かしようとする度胸があるなら、やってごらんなさい。結城家は怖いものなんてないのです。唯花さんが誰かを怒らせたとして、何を怖がる必要があるのでしょう。あなた達が唯花さんを怒ら
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