Todos os capítulos de 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Capítulo 1231 - Capítulo 1240

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第1231話

理仁は手を伸ばして彼女を抱きしめ、愛おしそうに言った。「手元にある仕事を終わらせたら、数日時間を作って君をA市にいる蒼真さん夫妻のところに連れて行くよ。実はずっと桐生って名乗ってるけど、蒼真さんの姓は母方の伊集院と言うんだよ」彼はそれからまた唯花の耳元で優しく囁いた。「唯花、君だって小説の中に出てくるヒロインと同じだよ。みんなから羨望の目を向けられる存在なんだ」唯花は軽く彼を押しのけた。彼は毎回彼女の耳元で小さく囁くその時に、いつもその息の熱が伝わって彼女の心をムズムズさせる。そしてもういっそ彼をその場で押し倒してしまいたいという衝動に駆られるのだった。夫婦二人は卵と鶏肉を唯月に届けた後、トキワ・フラワーガーデンに帰ってきた。清水がこの時家にいた。清水は理仁が以前、唯花に買ってきたペットの犬や猫たちを連れてやって来たのだった。ずっと彼女がペットたちの世話をしていた。それでまた清水もトキワ・フラワーガーデンに戻って一緒に暮らすことになったのだ。玄関のドアを開けた瞬間、シロがしっぽを振って駆け寄り飛びついてきた。唯花はそれに驚き、じっとそれが何なのか確認してから、しゃがんでシロの頭を撫でてあげた。それから理仁に「シロったら、なんでこんなにまるまる太っちゃったの?」と尋ねた。理仁は小動物たちが好きではない。しかし家で数匹ペットを買うのを許したのは、それは彼が唯花のことをとても愛しているからだ。唯花が初め犬と猫を飼いたいと言うと、彼は犬のシロと二匹の猫をプレゼントしたのだった。唯花がシロの頭を撫でてあげて、シロが満足げにしているのを見ていた理仁はそこからかなり距離を取っていた。まるで犬の毛が彼の服につくのを怖がっているようだった。「清水さんの世話が良すぎて、この犬はどんどん太っていったらしい。それに猫二匹もまんまるになってるぞ。この三匹、まるで子豚のようだな」唯花は立ち上がって言った。「シロにはちゃんと『シロ』って名前があるでしょ。『犬』じゃないのよ。シロが悲しむからちゃんと名前で呼んであげて」理仁は口を尖らせた。「わかった、わかった。『シロ』だな『犬』じゃなくて」清水はニコニコしながらこの夫婦に挨拶をした。「清水さん、これを冷蔵庫に入れておいてください」理仁は母親から持って帰るように渡された鶏肉を清水に渡した
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第1232話

「孫をはめる祖母だぞ」唯花はおばあさんを庇うように言った。「おばあちゃんがどうしてあなたをはめるのよ?彼女がやること全て、あなた達にとって良いことばかりでしょ。ね、おばあちゃんがいつあなたをどんなふうにはめたのよ?」彼女が手で理仁を押そうとしたところ、彼がすぐに彼女の腕を掴んだ。「唯花さん、あのデブ犬を触っただろう、まだ手を洗っていない。すぐに洗ってくるんだ。犬の毛だらけの手で俺を触ったり、押したりしないでくれ。この『毛』が本当に嫌いなんだよ」唯花「……」清水は笑って言った。「若奥様、手を洗っていらしてください。夜食を準備しましたので、手を洗ったらすぐに食べられますよ」美味しいものがあると聞き、唯花は夫の「毛」嫌いにはもう構わないことにした。理仁の元から手を引っ込めて、立ち上がって手を洗いに行った。洗いながら清水に「清水さん、私に何を作ってくれたんですか?」と尋ねた。「若奥様がお好きなものです」清水はシロに自分のベッドに戻って寝るように指示を出した。シロはとても利口な犬で、飼い主の男性が自分を好きではないことがわかり、部屋の中を走り回ろうとはせず、大人しく自分の寝床に戻って寝そべっていた。理仁は夜食を食べる習慣がないので、テレビをつけてみたが何も面白くなく、部屋にさっさと戻って風呂を済ませ、ベッドの上で妻を待つことにした。夫婦は帰宅後このようにいつも過ごしているのだった。そうやってまた朝が来た。唯花と唯月の姉妹は、今日一度故郷の田舎に戻って、内海じいさん達と再び契約を結ぶ予定だった。それで、まんぷく亭はこの日は臨時休業だった。母親からしつこく結婚の催促をされて未だ理仁の家に住まわせてもらっている隼翔は、まんぷく亭に行って朝食を取ろうと考えていた。遅くまで寝ていてやっと起き上がると顔を洗って身支度を済ませ、車で出かけていった。そしてまんぷく亭に到着してみると、店は閉まっていた。しかし、店の前には誰かが立っていた。その人物には隼翔は見覚えがあった。それは成瀬莉奈だ。莉奈はここに唯月に用があって来ていた。唯月からあることを聞き出そうとしているのだ。それはあの名前の知らない女から新たに与えられた任務だった。あの女は理仁と玲凰が調査して何かを掴んでいないか知りたいと思っている。ここ数日、莉奈も辛い
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第1233話

隼翔は莉奈を追い立てた後、再び閉じた店のドアを見つめ、携帯を取りだして唯月に電話をかけた。唯月はすぐに彼からの電話に出た。「内海さん、今日は店を開けないのか?」隼翔がそう尋ねる口調は少し不機嫌そうだった。「唯花と一緒に用事で田舎に帰ってるんです。両親の家の件がようやく解決したから。それで今日一日休みにして店は開けていないんですけど、どうかしたんですか?」それを聞いて隼翔はひとこと「そうだったのか」と返し、また尋ねた。「君のご両親の家のごたごたはもう解決したのか?裁判にもっていかなくて大丈夫?」彼は彼女が裁判で訴訟を起こそうと考えているのなら、何か手伝おうと考えていたのだ。「話し合いで解決することになりました。東社長、先に用事を済ませてきます。また日を改めて時間があるときにお話しましょう」「わかった」そして隼翔は通話を終わらせた。唯月の実家の件が解決したのに、彼はその知らせを受けていない。彼女も彼には何も教えてくれなかった。そういえば、彼女がどうして彼に教える必要があるのだ?隼翔も別に彼女とは何か関係があるわけでもない。そんな彼女が逐一彼に話す必要なんてないだろう?そのように考えて理解した後、隼翔は心の中によくわからない不愉快さと、虚しさを感じていた。まんぷく亭は開いていないし、隼翔は会社に行って会議に出席しないといけない。空腹状態で行くしかないのだ。彼が店を去ってから少し経って、琴音が店の前にやって来た。もちろん店は開いていない。琴音も何も見ることはなかったし、まんぷく亭は唯月の開いた店だとも知らない。彼女は隼翔に愛情たっぷりの弁当を持って来たのだった。遠くから隼翔がこの店の前に車を止めたのを見て、彼女も車を止め、彼の一挙一動を観察していたのだ。隼翔が莉奈を追い払ったシーンを琴音も見ていた。彼女はそれを携帯に撮影までしていた。美乃里に見せて隼翔と一緒に話をしていた女が一体誰なのか聞くつもりなのだ。莉奈はあの場を去る時、少し慌てた様子だった。しかし、あの女は隼翔と暫く話をしていたので、つまり彼らは知り合いだということになる。琴音はもともと自信家で、自分が狙った相手なら、隼翔ですらも手にれられると確信を持っていた。美乃里から注意されてからも、彼女はやはり以前の自信たっぷりな様子だった
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第1234話

会社的にも両家の付き合いを考えても、隼翔は琴音を追い出すことはできない。「隼翔さんはまだ朝ごはんは済ませていないでしょう?」琴音はニコニコしながらやって来て、弁当箱二つを隼翔の仕事デスクの上に置いた。「これ、おば様が隼翔さんに持って行ってって。夜遅く寝て朝も起きるのが遅めだから、よく朝ごはんを食べる時間がないんだって言ってたの。私が隼翔さんのところに行くって知って朝食を持って行くように言われたのよ。さっき私隼翔さんの車の後ろを走っていて、あなたがまんぷく亭っていうお弁当屋さんのところにいるのを見かけたわ。普段からあそこで朝食を食べているの?」日を改めてあの店に食べに行ってみよう。もしかしてすごく美味しいのか?もしその店の料理が美味しくなければ、隼翔がその店に行く原因は店主にあるだろう。「樋口さん、俺の今日の予定は詰まっている。あなたとプロジェクト関係の話をする時間はない。もうすぐ会議が始まるしな」「だったら、秘書のところでアポを取るわ。私との話し合いの場を手配してもらう。隼翔さんが時間がある時にプロジェクトの話をしましょ。ところで何時から会議が始まるの?」「九時」琴音が時間を確認すると、あと十分ある。彼女は笑って弁当箱の蓋を開け、一つ一つの段を外して、隼翔の前に並べていった。「十分あれば、食べられるわ。隼翔さん急いで食べて。おば様が隼翔さんのことを心配して持たせてくれたから、お母様を悲しませないでね」朝食は琴音が自ら作ったものだ。しかし、彼女は自分が作ったのだとは言わず、ただ美乃里が彼女に託したのだということを強調しておいた。彼女が美乃里が心配して朝食を持たせたというふうに言ったし、隼翔もお腹が空いていたので、遠慮なく琴音から箸を受け取って、どんどん箸を進め数分しかかけずにそれらを平らげてしまった。「家のシェフが変わったのか?」隼翔は箸を置き、ティッシュを取って口を拭いた。琴音は彼に温かいお茶を入れて来た。隼翔はそれにお礼をして、お茶を受け取って飲んだ。「隼翔さん、違いがわかるの?」琴音はニヤリとしながら尋ねた。「新しいシェフの腕はどう?」「なかなかの腕だな」しかし、彼はやはり唯月が作る朝食が好きだ。ただのおにぎり一つにしても、彼は他とは味が違うと感じる。唯月が作った朝食を食
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第1235話

琴音は隼翔がそのように言うだろうと予想していた。彼女は笑って言った。「隼翔さん、おば様があなたについてきてとおっしゃったのだから、私は代わりになることはできないわ。私の母親がおば様の友達で、私はただその娘なだけで、東家の人間ではないんだから決定権はないし。実際のところ、パーティーは私も好きじゃないの。だけど、私たちのような家柄出身だと時には行かざるを得ないことがあるのよね」隼翔はビジネスでのパーティーには商談のために参加したことは何度もある。特に彼の東グループがまだまだ駆け出しの頃は、その発展のために誰かがパーティーを開くごとに足繁く通っていたのだ。それが今や東グループは星城でも有名な大企業にまで成長した。隼翔のような大企業の社長は、ただ同じく大企業の社長と大きな商談をするだけだ。一般的に細々した商談に関しては部下の管理層たちにやらせている。彼はそれからは様々なパーティーにはだんだん顔を出さなくなっていった。二人の親友が一緒に行く場合を除いてだ。一緒に行く仲間がいれば、彼も顔を出すのだった。多くの場合、理仁はそのような場に出向くことはない。だから、彼らがパーティーに参加することなどごくわずかなのだ。「主催者は誰なんだ?パーティー会場は?」隼翔は簡潔に尋ねた。琴音はそれに返事した。「おば様から大塚家のだって聞いてるわよ。パーティー会場はスカイロイヤルだって」大塚家だと聞いて、隼翔は反対する声が出せなくなった。大塚家の財力は結城家には劣るが、星城でもトップをいく財閥家だ。主に大塚家のおじいさんの人脈が広いことで有名だった。彼ら一族は星城でもとても控えめな態度を取っている。大塚茂(おおつか しげる)が主催したパーティーなら、星城のビジネス界の全ての大物が彼の顔を立てるために、あの理仁ですらも顔を出すのだ。大塚家と結城家の交友関係はかなり深い。去年、大塚茂主催のビジネスパーティーにも理仁は出席した。つまり唯花と結婚したばかりのあの時期である。唯花は当時、明凛とそのおばたち一家と一緒にスカイロイヤルにやって来た。理仁が会場入りした時には周りの注目をかなり集めて騒ぎになっていた。明凛もそれを見ようと駆け寄ったが、あまりの人だかりでその中に割って入ることができなかったのだ。一方唯花は会場の隅の方に隠れ、好き勝手に飲み食い
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第1236話

美乃里は出かけておらず、家で琴音が帰ってくるのを待っていた。琴音が弁当を持っていってそれを隼翔がちゃんと食べたのか知りたかったのだ。車のエンジン音がして、美乃里は部屋から出てきた。「おば様」琴音は車を降りた後、空になった弁当箱を提げて美乃里のほうへとやって来た。美乃里は琴音が笑顔でいるのを見て、息子は彼女が作った朝食をきちんと食べたのだと悟った。二人は楽しくお喋りしながら家の中に戻っていった。琴音はその弁当箱を使用人に預けた後、美乃里の体を支えながらソファに座った。「どうして隼翔のところに長めにいなかったの?」「隼翔さんは会議だと言ったので、彼の時間の邪魔をするのは申し訳なくて。おば様、彼が私が持っていったお弁当を全部食べてくれましたよ。おば様が私に持って行くように言ったんだって伝えたら、彼、食べてくれました。それにシェフを変えたのかとまで聞かれましたよ。私の料理の腕、認められてよかったです」美乃里はそれを聞いてニコニコと満面の笑みを浮かべていた。まるで琴音がすでに息子の嫁になったかのようだった。「今後は隼翔に愛のこもった朝食を届けてやってちょうだい。彼が普段何か足りないものがあったら、それも送ってあげてね。そのうちあの子の鉄のように硬い心がだんだんと溶けて柔らかくなっていくわ。琴音ちゃん、がんばってね。おばさん、良い知らせを待っているわよ」琴音は携帯を取り出し、アルバムを開いて莉奈を指しながら美乃里に尋ねた。「おば様、この人誰かご存じですか?彼女と隼翔さんは知り合いみたいで、私、彼らが一緒にいて話しているのを目撃したんです。それから、まんぷく亭というお店は内海唯月さんが開いたお店らしいです。隼翔さんはその店で朝食を食べる予定だったみたいですが、今日彼女は実家のほうに帰っているらしく、お店は閉まっていました。隼翔さんはお腹が空いたまま会社に出勤したので、私が持って行った朝ごはんを食べてくれたんですよ」もし、そうじゃなければ、隼翔は食べなかったはずだ。琴音はもともとかなりの自信家で、全く唯月など目に入れていなかった。美乃里が彼女に最も警戒すべきは内海唯月であると注意をしていた。彼女は唯月は離婚したバツ一で、デブで、しかも子持ちであるから、隼翔が馬鹿でなければ、唯月のことを好きになるはずがないと思い込んでいたの
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第1237話

琴音は続けて話した。「これはおば様から聞いた話ですよね。唯花さんと唯月さんって実の姉妹同士で、彼女が十歳の時に両親を亡くし、お姉さんが育てたって。彼女の考え方はその親代わりであるお姉さんからきたものだと思います。唯花さんの人柄をよく見れば、お姉さんである唯月さんの人柄も見て取れるはず。唯月さんはそのようにお金に目がくらむような女性ではないと思います。もしかしたら、彼女が私のライバルになるかもしれませんが、それは彼女がわざとそうしようとしたわけじゃないでしょう。ただ隼翔さん自身の問題であるだけですよ」琴音は一日中邸宅の中でちやほやされるような令嬢ではない。彼女は彼ら樋口グループの管理職の一人だ。それで見識はかなり広い。彼女は様々なことを経験しているから、物を見るときの見方も偏ったものではなく広い範囲で考えられる人だった。「ですが、今それを知ったからには、警戒しておくのが一番ですけどね」琴音は、隼翔と唯月の関係が何か進展する前に、先に彼女が隼翔を自分のほうに引きつけてしまえば、後は自分のものだと考えていた。もし……彼女が唯月に負けてしまったら……琴音はそれ以上深くは考えないことにした。彼女は自分が負けてしまうということを想像するだけでも嫌だった。彼女は各方面において、どの条件も唯月よりも何倍も優れている。隼翔もまた目の肥えた人である。そんな彼がこんな優秀な女性を差し置いて、唯月というバツ一のほうが良いというのか?故郷で妹と一緒に内海家の親戚と再び契約を結んだ唯月は、やたらとくしゃみをしていた。「お姉ちゃん、風邪でも引いたの?後で帰る時に石井先生のところに行って診てもらいましょうよ」彼女の言う石井先生とはこの付近の村々では有名な医者である。診療所を開いていて、付近の村人が熱を出したらみんなこの先生のところに行って診てもらうのだ。唯花姉妹二人は小さい時も石井のところで薬の処方をしてもらっていた。「風邪の症状はないから、きっと風邪を引いたんじゃないわよ。唯花、きっと誰かが私の悪口か噂話でもしているんじゃないかしら」唯花は姉を見つめた。そしてこう言った。「たぶん、お姉ちゃん、今日は店を開けてないから、常連のお客さんがたくさん来たのに店が閉まってたものだから、ぶつぶつ言ってるのよ、きっと」本当に誰かが姉の悪口を言っている
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第1238話

内海じいさんとばあさんは姉妹二人と一緒に不動産の権利移行手続きをしに行った。手続きを終えて、不動産権利書に唯月の名前が記載された後、彼女たちは祖父母の相続分をお金に換金して支払った。唯花は自分が相続する分を姉に譲ってしまおうと考えていた。姉に譲ろうと考慮したのは姉が長女であるだけでなく、自分よりももっと苦労してきただろうと考えてのことだった。この件に関して、唯花はまだ姉には話していなかった。今回の手続きが全て完了した後、村長が姉妹二人に話した。「唯月さん、唯花さん、あなた達の家の畑を貸し出すかい?ある社長さんが、村の田畑を借り上げるという話があって、みんなで話し合ったんだが、誰も反対意見はなかったんだよ。貸し出した畑はその分、貸し出し料を受け取ることができるよ。あなた達の土地の広さから計算していくら支払われるって形でね。それはきちんと目に見える形だから、あなた達もそうしたいのであれば、LINEか電話番号でも残していってくれ。契約書にサインして、その土地の借用代をいただいたら、そちらに振り込むように手配するよ」そのみんなの田畑を借りようというのは、まさに目の前にいるこの唯花である。しかし、唯花はそれには触れず、笑って言った。「ありがとうございます、村長さん。私たちの土地も戻ってきて作物を育てたりすることはないし、荒れ地のままにさせておくのももったいないですしね。誰かがあの土地に目をつけたというなら、喜んで貸し出します。じゃ、決めました、どのくらいの間貸し出しするんですか?」「短くて十五年だよ」村長は答えた。唯花は自分が作成した契約には二十年と書いていたはずだ。しかし、まだ村役場での契約はしていないので、村長もまだそこに二十年と書いてあることを知らないのだった。「わかりました。問題ないですよ」唯月もこの件は知っていて、妹が村長にそれを知られたくないのを見て、何も余計な口は挟まなかった。唯花は姉のLINEを村長に教えてあげた。借用した土地の代金が支払われたら、村長が姉に直接連絡して銀行口座に振り込めばいい。「プルプルプル……」この時、唯花の携帯が鳴り出した。理仁からの電話だ。唯花はその場から離れて、夫の電話に出た。「理仁」彼女の声は小さかった。他の人たちに夫婦の会話を聞かれたくないのだ。「
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第1239話

「わかったよ。じゃ、そういうことで決まりだね。実は俺は君が酔った姿を見るのはとても好きだけどね、すごく積極的になるから!」最後のほうの言葉は、理仁は声を低く抑えめにして言った。唯花「……」あの堅物男がこんなに変わってしまった。電話越しにも彼女を口説くようになったのだ。「順調にいった?あいつら、また騒ぎ出すことはなかっただろうね?」理仁は内海ばあさんのあの卑劣で話の通じない様子をしっかりと記憶していた。それで内海ばあさんがまた理不尽な行動をしてくるんじゃないかと心配だったのだ。しかし自分が手配したボディーガードが唯花と一緒にいることだし、弁護士たちも一緒にいることを考えた。それに唯花は空手ができるし理仁も別に心配することはない。「スムーズにいったわ。おじいさんはきっと息子たちは孫から言われた話をおばあさんにしたんでしょ。今回、おばあさんは全然騒がずに、大人しく言う通りにやってくれたわ。私のほうも今井家側の祖父母に来てもらって、彼らはお母さんの相続分はいらないから全部私たちに譲ることで決まったの」「そうか」理仁は今井家のほうとは接したことがない。今井家も当時は少し人としてはどうかと思うような行動を取っていたが、彼らが唯花の母親を育ててくれたことを考え、その恩と恨みが相殺されたのであった。「今井家の祖父母も当時はひどいことをしたって私たちに謝罪してきたわ。私たち姉妹を引き取ろうとせず、かなりの苦労をさせてしまったってね。内海家側からいじめられていた時、彼らも何も言わずほったらかしにしてたって」唯花は言った。「私は彼らとそのことでいろいろもめたくないの。なんて言ってもお母さんのことを育ててくれたことには変わりないから。ねえ、理仁さん、私ってまるで聖母マリアみたいじゃない?」「いいや、君は恩と恨みをきっちりと分けて考える人だ。また俺を『理仁さん』と呼んだだろう」唯花は笑った。「理仁」「用事を済ませたら早く帰っておいで、君に会いたくてたまらないんだ」「朝、私たち一緒に家を出たじゃないの。まだ半日も経ってないわよ」「俺は、君を俺の懐に入れて、ひと時も離したくないんだ」唯花は理仁のその甘い言葉にとろけてしまった。「午後、必要な書類を持って不動産権利の移行手続きを関係機関で終わらせれば帰れるわ」そして
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第1240話

「お姉ちゃん、私会社まで行って理仁さんが仕事終わるのを待つわね」唯花は車を運転しながら姉にそう伝え、少し首をひねって甥のほうへ尋ねた。「陽ちゃん、おばさんと一緒におじさんを迎えに行く?」陽がまだ話す前に唯月が言った。「この子を連れて行ったら、結城さんがきっと陽をお邪魔虫だと思っちゃうわよ」陽はすぐに理仁おじさんが彼はお邪魔虫だと言っていた言葉を思い出して顔を横に振って答えた。「おばたん、僕おじゃま虫じゃなくて、ひなたって言うんだよ」「うんうん、そうだよね。陽ちゃんは陽ちゃんだもん、お邪魔虫なんかじゃないわ。おじさんが言っていた言葉、あまり気にしないでいいからね」唯月は笑って言った。「私と陽をマンションの下で降ろしてくれればいいわ。この子を連れて明日足りない食材を買い足してくるから」「うん、わかった」唯花もそれ以上は粘らなかった。唯花は姉と甥をマンションの下まで送り、二人が上にあがっていったのを見届けてから車を出した。結城グループに着くと、そこで咲に遭遇した。咲は一人で結城グループにやって来ていた。彼女は片手に白杖をつき、もう片方の手には花束を持って警備員に教えられてゆっくりとオフィスビルのほうへと歩いていった。唯花は彼女を見つけた後、車を駐車し、急いで彼女の後を追った。「柴尾さん」唯花の声がして、咲は立ち止まった。声のした唯花のほうへ顔を向けて微笑んでいた。「結城家の若奥様ですね。偶然ですね」「そうです。柴尾さんは誰に花を届けに来たんですか?お店のスタッフさんは?」咲は顧客に花を届けるのは店にいる女性スタッフがやっていて、彼女自身は店を管理することに専念していると言っていたのだ。彼女は目が見えないので、お客に花の配達をするには不便だからだ。「この花束は結城辰巳様から注文を受けたんです。彼が私に届けるようにと言ってきたものですから」咲は正直に話した。辰巳が咲に、もし彼女が自分で花を届けてくれたら、小松家を紹介してくれると言ったのだ。二日後、小松家はスカイロイヤルホテルでパーティーを開催する。その会場のセッティングには花が必要だ。そのパーティーが行われる際には、小松家がホテル側に頼んでブルームインスプリングに注文してくれるという寸法だ。つまりビジネス。咲はこの仕事を受けたくて、一人で来るのが
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