All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1431 - Chapter 1440

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第1431 話

「手助けなどしないぞ。自分の力で義姉さんを追いかけてみせろよ。彼女もお前のことを好きになったら俺と唯花さんも応援するけど、そうじゃなかったらいつまでも彼女に付き纏うのはやめるんだぞ。どのみち、お前の母さんは賛成してないんだからな」理仁は止めることもなければ、隼翔を手助けするつもりもなかった。「隼翔、俺とお前は親友だし、俺だって隼翔が一生を任せられる男だってことは知っているよ。だけど、お前の母さんは義姉さんのことを気に入らないようだし、お前と一緒になることも反対しているんだ。義姉さんは一度結婚でひどい目に遭っているだろう、だから彼女が再婚するなら、夫になる側の家族から嫌がらせや、いじめに遭うようなことだけはあってほしくないんだよ」それを聞いて隼翔は焦って言った。「理仁、俺がどんな野郎なのか、お前はよくわかってるだろう?俺が人生で母さんの指示に従ったことなんてあったか?いつだって俺自身で決めて行動してきた。俺だって母さんが唯月さんに偏見を持っていることは知っている。それは母さんが彼女のことをまだよく理解していないからだ。付き合う時間が長くなれば、母さんだって受け入れてくれるはずだ。たとえ唯月さんのことを受け入れてくれなかったとしても、俺たちの関係に影響することはないんだ。俺は両親とは一緒に住まないから、唯月さんが俺の両親からあれこれ言われることもないだろう」理仁は隼翔のほうに首を傾げて言った。「隼翔、お前はまだ独身だからいろいろと軽く考えてるんだろうけど、義姉さんを追いかけ始めたら、避けられない問題もあるって気づくと思う。それは絶対に目を背けられない問題なんだよ。義姉さんがお前と恋人関係になってから、一生お前の両親と顔を合わせないなんてことは有り得ないだろう?二人はお前の実の父親と母親だぞ。やっぱりもう少し待ってからにしたらどうだ?義姉さんの事業が成功したら、お前の母さんが認めてくれるかもしれんな。それに、義姉さんには今再婚する気持ちは一切ないんだ。今は一心に自分の店に集中している。お前に対しても一切の感情を持ち合わせていないだろう。そんなお前が今彼女に告白したところで、躊躇なく断られるに決まっている。彼女だって自分の立場を考えると、お前の傍に立てるような十分な自信はないはずだ。彼女の気持ちに変化が起きるまで少し待っていたらどうだ。今彼女
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第1432話

唯月は未だ弱っていて、すぐにまた眠ってしまった。陽でさえも唯花の懐の中で眠った。唯花は甥を病室にある簡易ベッドに寝かせ、薄いブランケットをかけてやった。そして姉の点滴剤がもうすぐなくなるのを見て、ベッドにあるナースコールを押し、看護師に換えに来てもらった。点滴剤を新しいものに換えてもらった後、唯花はまた数分間見つめていてから、振り返ってそっと音を立てないように離れていった。この時、理仁が部屋に入ってきた。するとソファの上で唯花がぼうっとしていた。彼は彼女に近づいてきて、唯花の隣に座り、肩に手を回して優しく尋ねた。「どうしたの?義姉さんは寝てしまった?」「お姉ちゃんも陽ちゃんも寝ちゃったわ」唯花は理仁の肩にもたれかかった。「ねぇ、理仁」「うん」唯花は彼の名前を呼んで、それだけで何も話そうとしなかった。「唯花、何か言いたいことがあるんじゃないの?」理仁は落ち着いた声で尋ねた。唯花は両手で彼を抱きしめて言った。「別に何もないの。ただちょっとあなたのことを呼びたくなっただけ」理仁は愛おしそうに言った。「それなら何回だって俺の名前を呼んでくれていいよ、いやになることはないんだ。うるさいとも思わないし」「私、あのネットニュースのこと知ってるよ」理仁「……唯花、あんなふざけた奴らが言うデタラメな話なんか気にしないでくれよ」「私はそのふざけた奴らが何か言ってたのは知らないわよ。ただ、結城グループからある公式な記事が出されたのを見ただけで」一つ目のネット記事は削除されてしまい、唯花はそれを見たわけではなかった。ただ理仁が公式に発表したあの記事を見て、彼女はどういうことなのか、なんとなく気づいていたのだった。「理仁、私のことをああやって守ってくれてありがとう。他人が信じるかどうかはどうでもいいわ、少なくともあなたが私を守ってくれてるってのがわかってるから」理仁はしっかりと唯花を抱きしめた。「君は俺の奥さんなんだ。俺たちは一生を共にする夫婦だぞ、君を守らないでどうする?それにあれは俺の本心なんよ。そんなに早く子供は欲しくないな。結婚式を挙げて二人きりの世界を十分満喫してから、また子供のことは考えようよ。唯花、本当に自分にプレッシャーをかけることはないよ。うちの父さんも母さんも言ってたけど、自然の流れに
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第1433話

理仁はわざと不機嫌そうな様子で言った。「確かにこれは身から出た錆だ。みんなから電話がかかってきてさ、最初のその電話から電池が切れるまでひっきりなしだったぞ。しかも、善さんまで俺に名医を紹介して治療の手助けをしようかと言ってくる始末だ」理仁がみんなからそのような心配をされている光景を想像すると、唯花は思わず笑ってしまった。唯花は笑った後、尋ねた。「桐生さんが名医の知り合いがいて、あなたに紹介しようと言ってくれたのなら、それにどう返事したの?咲さんの目をそのお医者さんにちょっと治療できないか診てもらったらいいんじゃない?」「その件はすっかり頭から抜けていたよ」理仁は笑って言った。「あの時はあんなに多くの人から『心配』されたもんだから、怒りで気が狂いそうだったんだ。だから辰巳のことなんてすっかり忘れていたなぁ。だけど、以前辰巳に言ったことがある。柴尾さんのおばさんがA市まで名医を探しに行ったが、見つからなかったってね。善さんのお兄さんである弘毅さんと、名医の唯一の教え子が九十九パーセント結婚するだろう。酒見先生が桐生家の弘毅さんの奥さんになったら、辰巳が酒見先生を探しに行くのが近道だろうね」「九十九パーセントなの?」理仁は頷いた。「酒見先生は弘毅さんを救い、その後妊娠したんだ。だけど、彼女は彼と結婚するのはあまり乗り気じゃないみたいだな。桐生家の男たちは結城家と同じく、一途だ。弘毅さんは酒見先生が妊娠したと聞いて、名医と一緒に行ってしまった。善さんがきっとあの二人は結婚するだろうって言っていたよ。酒見先生は子供を産む前に弘毅さんと一緒に桐生家に戻るはず。だけど、彼女は今大きなお腹で誰かの診療するのは難しいよ。柴尾さんはあと数カ月は待たないといけないだろうね。酒見先生が無事出産を終えて、一カ月ほど体を休めてから、目の治療を頼んでみたらいいと思う」唯花はその話を恍惚としながら聞いていた。桐生家の人は誰でも小説の中の物語に出てくる人のように感じたのだ。唯花夫婦は本来、A市に旅行に行って、桐生家に挨拶に行こうと思っていた。今唯月が怪我をして入院しているので、唯花は星城を離れるわけにはいかなかった。だから旅行に行く件は、今はまだおあずけだ。「唯花、眠たい?陽君と一緒に休んできたらいいよ。俺が耐えられなくなったら、君を起こすから」「
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第1434話

玲凰の妻である理紗が妊娠してつわりに苦しんでいる様子を見て、理仁は唯花もそうなってしまうのではないかと心配でたまらなかった。「私はもう吹っ切れたの、自分にプレッシャーをかけたりしないわ。以前と同じ自分に戻って、普通に暮らしていくだけよ。誰かに何か言われたって気にしないわ」結局、彼女はやはり結城理仁という人間の身分や地位に大きなプレッシャーを感じていただけなのだ。二人の差はかなり大きいから。そして唯花は自分のあの事業である程度稼げることを期待していた。理仁と肩を並べるところまではいけなくとも、今までの彼女とはまた一段階上にいけるだろう。「じゃ、休んでくるわね」「わかった」理仁は彼女と一緒に陽が寝ているベッドまで行き、彼女が陽の隣で横になるのを見届けてから、唯月のところへ行き、点滴を確認した。あと一時間くらいは打ち終わるまでにかかるだろうと思い、彼はまたソファに戻って座った。まだ時間的に早いので、会社のグループチャットで指示を出した。唯月が入院して怪我の回復を待つ間、唯花はほぼ毎日姉の傍から離れなかった。理仁は昼間は会社で仕事をこなし、夜になると愛する妻に付き添って義姉の様子を見ているのだった。しかし、このような状況を続けていれば、理仁は疲れてしまうと唯花はとても心配していた。そして夫に家に帰って休息を取るように強く説得したのだが、彼は聞こうとしなかった。そして唯月がベッドから降りて歩けるくらいに回復すると、彼は清水ともう一人のヘルパーを頼んで、唯花に代わって唯月の様子を見てもらった。陽は数日ほど稽古を休んだあと、再び南雲の道場へ授業を受けに行った。依然として七瀬が送り迎えの責任を負った。唯月は日に日に回復していった。星城の上流社会では、ある驚くような噂話が出回っていた。柴尾家の令嬢が自分の母親と継父を告訴した。彼らが二十数年前に家の財産を狙い、そして堂々と一緒にいられるようにするために、柴尾家の次男を、つまり咲の父親を殺害したのだと。咲はあのボイスレコーダーを警察に渡した。また辰巳の手助けもあり、九条家が柴尾社長とその妻加奈子が若かりし頃に、逢引きしていた証拠を探し出し、それも一緒に警察に渡したのだ。九条家にはもともと柴尾社長夫妻の人には言えないようなことをした証拠があった。ほとんどの証拠は加奈子につ
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第1435話

唯月はベッドの上で座っていられるようになり、すでに毎日一日中点滴を打つ必要はなくなった。毎日午前に二回点滴を打ち、昼になる頃には二つとも終わっていて、午後には自由に動き回ることができた。怪我をした手のほうは今も力が入らないので、息子を抱っこすることはできない。彼女は少し、今後の商売に影響がでるのではないかと心配していた。医者から十分に休養を取りさえすれば、元通りに生活できると聞いて彼女はようやく胸をなでおろした。「私と明凛はもう長い間親友なんだから、彼女の婚約パーティーなら必ず出席するわよ」唯花はりんごの皮を剥き終わると、それを四つに切って、一つ姉に渡し、一つは陽に食べさせた。残り二つは清水とヘルパーにあげた。「若奥様がお召し上がりになってください」清水はそれを断った。唯花は笑って言った。「清水さん、食べてください。私、あんまりりんごは好きじゃなくて」唯月も口を揃えた。「清水さん、唯花は本当にりんごが好きじゃないんです。あなた達が食べないと、捨てるしかなくなりますよ」姉妹にそう言われて、清水たちもようやく唯花からりんごを受け取った。「お姉ちゃん、先生に何か他に食べてもいいか聞いてみようか?」唯花は果物ナイフを置き、姉に尋ねた。「それか食べたいものがあるなら、先生に聞くから、オッケーもらったら買ってくるよ」「今は入院食をもらっているし、そこまでたくさん食べられるまで回復していないのよ。あなた達が食べたいものを食べてくれればいいわ。結城さんが栄養士さんに食事のバランスを考えて作ってくれてるんでしょ、あなたが好きなものがあるならその方にお願いしたら」姉に付き添い続けて唯花も疲れているので、理仁が栄養士に頼んで体に良い食べ物を作ってくれているのだ。唯花はケラケラと笑った。「お姉ちゃんが食べたい物で、お医者さんからオッケーもらえれば、食べたい物をたくさん作ってあげるわよ」「そんなことしてもらわなくていいわ。病院で提供される食事も十分お腹いっぱいになるんだから。それ以外にもいろいろ食べていたら、退院する頃にはあなた達のおかげで十キロくらい太っちゃうかもよ」唯月はやっと痩せてきたというのに、一度の入院で妹からあれやこれやと食べさせられてはたまったものではない。それに妹夫妻だけでなく、伯母たちもお見舞いに来たら
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第1436話

隼翔は前回、理仁とあのような話をしてから、毎日唯月のお見舞いに来ることは避けていた。一週間に二回来てはいたが、一回目は理仁に自分の気持ちを話したあの夜だ。そしてこの日が二回目だった。「東社長、樋口さん」唯月は二人が入ってきたのを見て、体を起こした。隼翔はまずフルーツの籠を下ろし、花束を唯月に渡すと優しい眼差しで彼女を見つめて言った。「内海さん、この花をどうぞ」「ありがとうございます。わざわざ気を使っていただいて」唯月は花束を受け取ってお礼を言った。彼女の病室には毎日多くのフルーツ籠と花束で満たされていた。彼女は一般人だが、結城理仁の妻の姉であり、神崎夫人の姪である。そのため、毎日彼女にお見舞いに来る人間が多いのだ。隼翔はただ微笑み、暫くの間唯月に視線を落としていて、心配そうに尋ねた。「医者はいつ退院できるか言っていた?」「あと一週間したら退院していいそうです」隼翔は頷いた。琴音も心配そうに唯月にいくつか声をかけた。「コンコン」この時またドアをノックする音が聞こえてきた。ボディガードがドアを開けて入り、恭しく唯花に言った。「若奥様、佐々木家のやつらが来ました」唯月が目を覚ましてから、いい顔は見せてくれないとわかっていながらも、佐々木家は毎日のように病院に来ていた。唯花は姉のほうへチラリと目線を向けてから、指示を出した。「彼らには帰ってもらって」唯花は莉奈が利用されたことがわかっていた。それは柴尾加奈子が成瀬家の命を握り、無理やりに莉奈を駒として陽の誘拐を指示していたのだ。莉奈は警察に連行された後、佐々木家であろうと成瀬家であろうと彼女に会うことはできなかった。ただ弁護士だけが許可されている。刑罰が決定してから、家族は刑務所に会いに来ることが許されている。莉奈は弁護士を通して唯月に謝罪をしてきた。それに自分自身のことを弁明する言葉も伝えていた。唯月には確かに嫉妬はしていたが、一度も陽を傷つけようと思ったことはないと訴えた。彼女は脅迫されて仕方なく柴尾夫人の手助けをしたのだと。しかし、莉奈がどのような理由でやったのかに関わらず、彼女が罪を犯した事実は変わらないから、法に裁かれるのを待つのみなのだ。そして彼女と俊介の結婚式は最終的に取り消された。佐々木家の面々は俊介に彼女と離婚し
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第1437話

俊介は病院に来ても、病室にも入れてもらえなかった。東隼翔が来ていて、病室の中からは絶えず笑い声が伝わってきた。病室の中と外の大きな温度差が俊介の心を暗く沈めていった。「俊介」佐々木母は非常に不満そうに呼んだ。「俊介、あの東社長が、この中にいるってんだよ!」英子は弟を睨みつけて忠告するように言った。「それは人の勝手だろ、俺たちとなんの関係があるってんだよ?もう帰ろう」俊介はそう言い終わると、両親と姉をそこに置き去りにして、背を向け大股で去っていった。彼が買って来た花束すら結城家のボディガードにお願いすることもなく、近くにあったゴミ箱に放り投げてしまった。「俊介、俊介ってば」佐々木母は彼を追いかけていった。そしてゴミ箱を通り過ぎる時にあの花束をちらちらと見た。まったく、数千円もする花束を道楽息子が捨ててしまった。佐々木父のほうは長いため息をついて、後を追った。そして英子だけが病室の前に残り、ボディガードに言った。「唯月さんにお客様がいらっしゃっているなら、私たちは邪魔にならないようにおとなしくしてますよ。お客様が帰られたら彼女に会って帰りますんで、ここで暫く待たせてもらいますね」彼女はそう言いながら、本当に近くの椅子に腰掛けてしまった。ボディガードは彼女のその様子を見ていたが、無理に病室に入ろうとしないので、彼らもクズ人間を相手にするのは面倒でこう思った。以前、あそこまで若奥様のお姉様をひどい目に遭わせておいて、今さら良い人面する気か?そして三十分後、隼翔と琴音が病室から出てきた。そして三十分待ち続けていた英子は立ち上がり、隼翔と琴音が一緒に出てきたのを見て、また椅子に座った。そして下を向き携帯を見て、隼翔に気づいていないふりをした。琴音はそんなことには気づいておらず、隼翔に尋ねた。「隼翔さん、どうしてもう少し長くいなかったんですか?」隼翔は琴音のほうへ顔を傾けた。「隼翔さん、そんなふうに見ないでください。私はそう思ったから言っただけで、別に皮肉とかそいうのじゃないんです」と笑って言った。「樋口さん、ちょっとどこかでコーヒーでも飲みながら話しましょうか」琴音は快く彼の誘いに乗った。そして十分後。二人はあるカフェに入った。隼翔はブラックコーヒーを注文した。琴音はラテだ。
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第1438話

琴音はコーヒーを持ち上げ、優雅な動作で一口飲んでから、隼翔のほうを向いて微笑んだ。「隼翔さんは本当に正直な人ですよね。そんなことを言われたら、確かに私のプライドは傷つきます。隼翔さん、あなたがどうして内海さんのほうを好きになったのか教えてもらえますか?彼女は離婚して三歳になるお子さんがいますよね。あなたとは家柄も釣り合っていないし、この私のどこが劣っているんでしょうか。教えてもらったら、私に足りない部分を改め……」「正直、俺もどうしてなのかわからない。俺自身も内海さんに対してこんな気持ちがあるとは知らなかったんだ。ただ、彼女が怪我をしたと知った瞬間すごく焦って怖くなった。胸が苦しくなったんだよ。それでようやくいつの間にか彼女のことを好きになっていたと気づいた。俺は別に彼女が離婚経験者であることなんてどうでもいいし、彼女が子供を連れているのだって気にならない。俺は陽君のことがとても好きだ。家柄どうのこうのについては……そんなこと俺にとってはどうだっていいんだよ。でも、内海さんにそのせいでプレッシャーをかけることになるかもしれない、だから今は告白するつもりはない。彼女の事業が成功するまで喜んで数年くらい待つさ、そしてその時が来たら彼女に告白するんだ」唯月が起業に成功してから告白したほうが、成功する確率は高くなる。なぜなら、その時には唯月は成功したことで自信に満ち溢れる強い女性になっているだろうから。琴音は驚きと残念そうな様子で隼翔を見ていた。彼女は自分がもっと努力すれば自分にもチャンスがあると思っていたのだ。しかし、隼翔の話を聞いた後、彼女はそろそろ身を引く頃だと思った。もうこれ以上彼を手に入れるために奮闘する必要はない。それは、隼翔が完全に唯月のことをしか頭にないとわかったからだ。男がある女性のために、深く愛していなければ、そこまで考えることなどできないだろう。隼翔は現在三十六歳だ。多くの人が彼のこの年齢であれば、もう子供は二人くらいいてもおかしくないと言う。ある程度年のいった独身男なのに、彼は唯月のためならあと数年待ってもいいと言っている。しかもそれは数年後唯月と結婚するという話ではなく、ただ告白するのにそこまで待てるというのだ。唯月が成功し、名をあげてから彼が告白しても、彼の気持ちを必ずしも受け入れるとは限らない。そして最終的に
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第1439話

隼翔は黙って琴音を見つめ、暫くしてから淡々とこう言った。「樋口さん、それは君が決めることだ。君がどうするかは君の勝手だからな。だが、俺は君の気持ちに応えることはない。母さんの前で演技しておくと言ったことに感謝して君の気持ちを受け入れることもないからな」琴音が彼にはまだ愛が芽生える一歩前の段階だから、さっきあのように彼に返事をされても、気が狂うこともなく理性を保っていられるのだ。そして淡々と唯月に負けたと認めることすらできるわけだ。たとえ琴音が今そうであっても、やはり先に彼女が聞きたくない話をしておいたほうがいい。この先、琴音が何をしようとも、彼は彼女を受け入れるつもりは全くないのだ。彼の心は大きくないから、一人の女性のことしか考えることはできない。そして一番最初にその心の中に入ってきた女性を、彼は一生想い続ける。そしてその想い人と結婚できれば、彼はきっと幸せだろうと思った。結婚できなかった場合も、忘れることなどできない。その想い人への愛は永遠にその心の奥底に居座り続けるのだろう。琴音は笑って言った。「隼翔さん安心してください。これを利用してあなたに何か要求するようなことはありません。私はちゃんと自分の気持ちに区切りをつけます。私たち大人ですよ、自分が決めたことにはちゃんとその結果に責任を持って、向かい合わないといけないんですから。プライベートな誘いなら、隼翔さんも断ってもらって構いません。だけど、ビジネス上のことだったら、提携するチャンスをもらいたいと思っています。我々樋口グループはここ星城では新参者ですが、私の地元では有名企業の中の一つなんです」隼翔は彼女と視線を合わせた。彼女は非常に落ち着いた様子だった。彼は少し黙ってから言った。「ビジネスの事に関しては、互いの利益になるように話し合いができる。俺だって樋口グループとの協力関係を拒否したりはしないさ」琴音は笑みを作った。「隼翔さんからその言葉を聞けて、心強いです」彼女はコーヒーを飲み終わると隼翔に向かって言った。「隼翔さん、私は用事があるから、先に行きますね。また夜に」夜は、隼翔たちはみんな九条家まで悟と明凛の婚約パーティーに行く。悟は九条一族の御曹司であり、当主の弦とは非常に仲が良く重宝されている。それに結城グループの社長付きの特別補佐であり、理仁と隼翔と
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第1440話

こんなに冷たく、驚くほどプライドの高い男を、唯花は一体どうやって手懐けたのだろうか。英子はもし自分がこのような男と付き合う必要があれば、きっと耐えきれないと心の中で悪態をついていた。その冷ややかな態度に震えあがってしまう!英子はもう理仁に目線を向けていられず、無理やり笑顔を作って唯花に向かって言った。「唯花さん、ちょっと二人きりで少しお話できない?」唯花は尋ねた。「何か言いたいことがあるなら、ここで言えないの?」英子はサッと理仁をちらりと見て、また唯花を見た。やはり唯花はとても綺麗な顔をしている。以前、英子が弟をそそのかして、唯月と喧嘩をさせ、唯花を追い出すというひどいことをしたのは、第一に、自分の子供たちが暮らすための部屋を空けさせるためだった。あの頃の彼女は子供たちを市内の中学校に通わせたいと思っていたのだ。それだけでなく、英子は若くて美しい唯花に嫉妬していたからだ。唯月も結婚する前はとても綺麗な女性だった。しかし、彼女は結婚後、自分のことは二の次にしてしまって、まるまると太ってしまった。それで結婚前のあの美貌を完全に失ってしまったのだ。しかし、唯花は違う。彼女は毎日運動するようにしていて、スタイルもモデル並みの体型を保ち続けていた。男を魅了するが、女からは嫌われるタイプ。それで英子は唯花に嫉妬心を燃やしていたということだ。それが今や、彼女は唯花に対して感謝の気持ちしか持たず、以前とはすっかり心を入れ替えていた。唯花の整った顔を見ても嫉妬心は抱かなくなり、ただただ綺麗な人だと思うだけだった。唯花は見た目も綺麗で、心も美しいと思った。このような女性は神様から気に入られて、結城理仁という優秀な男性と結婚し煌びやかで裕福な生活ができて当然だと感じた。「唯花さん、やっぱり二人きりでお話したいんだけど」唯花も隣にいる夫を一目見て、英子が理仁を怖がっているとわかり彼に言った。「理仁、車でちょっと待ってて」理仁は落ち着いた声で言った。「俺はここで待っているから、二人であそこでちょっと話してきたらいい。ここからなら君の姿を確認できる。でも、話している内容は聞こえないから」彼は廊下の突き当りを指さして、唯花と英子にはそこで話すように勧めた。彼が病室の前にいれば二人の様子を確認できるが、話している内容までは聞こえてこない。唯花
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