All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1451 - Chapter 1460

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第1451話

理仁は唯花を見つめ、暫くしてから、彼女の耳元で小さくごにょごにょと何か囁いていた。そして唯花は堪らず彼の腕をつねった。理仁も怒ることはなく、逆に笑って言った。「行こう、案内するよ」唯花はとても嬉しそうにしていた。二人は九条家の庭園にいて、白山会長が、妻と二人の「息子」と一緒に九条家と牧野家に案内されて入ってきた。そして大勢の人の中にいた奏汰は、白山会長の後ろに立つ、あのスラリと高く冷たいオーラを放つ「男」に目線がいった時、何か思わしげな表情をしていた。奏汰はここに柏浜の白山家がやって来るとは思っていなかった。姫華は赤ワインを片手に、唯花の傍に近寄ってくると、理仁に話しかけた。「結城さん、ちょっと唯花に内緒話があるから、ちょっとだけ彼女を借りるわね」理仁は暗い顔で姫華を睨んでいた。この女、公然と妻を連れ去る気か。姫華は、理仁が不機嫌そうにしながらも、自分に対して何もできない様子を見て嬉しそうにしていた。「理仁」唯花から甘い声で呼ばれた理仁は、白旗を揚げるしかない。彼が数歩彼女たちから遠ざかってすぐに、姫華が唯花に言うセリフを聞いてしまった。「唯花、見て、あの人すっごくかっこよくない?背が高くてイケメンだわ。冷たいオーラを放っているのもクールよね。まさかお宅の結城さんよりもイケメンがいただなんて初めて知ったわ」そして理仁は唯花を姫華に貸すのはやめることにした。彼はくるりと振り返り、まるでそびえ立つ山のように唯花の隣を陣取った。そして自分の背の高くカッコイイ姿で姫華に圧を与えていた。彼女がいくらどこかのイケメンを見ても、それは構わないが、唯花まで巻き込むのはやめていただこう!唯花は姫華が指さしたほうへ目線を向けると、そこには白山会長の後ろに二人のイケメンがいるのが見えた。それから自分の夫へ顔を向け、笑って言った。「私の目には、うちの結城理仁というお方よりも素敵な人は映らないみたい」この時、姫華も理仁のほうを向き、笑いながらからかった。「結城家の御曹司様、そんなにウサギみたいに耳をそばだてなくてもいいのではないかしら」「唯花が俺を鬱陶しく思わなければそれでいいので」姫華「……」理仁はいつの間にか、唯花を自分の腕の中に包み込むと、冷淡な様子で姫華に言った。「神崎さんの話は終わりましたでしょうか?招待客
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第1452話

姫華は理仁と唯花夫妻が遠くに行ってから、善に近寄り、小声で愚痴を漏らした。「結城社長って、本当に俺様野郎ね。唯花が白山家の双子さんにメロメロになるんじゃないか怖くなって、さっさと連れ去っていったわ」善は微笑みを保ったままだった。姫華の善に対する印象は、ずっと穏やかで気品があり、謙虚な人だ。「結城社長は奥さんのことをとても大切にしていらっしゃいます。白山家のあのお二人も、もちろん優秀な方たちですよね。僕は彼らとはあまり親しくありませんが、ご兄弟二人のことは耳にしたことがあります。お兄さんのほうは、白山グループの現社長で会長から絶大な信頼を受け頼りにされているとか。弟さんのほうは自分で会社を立ち上げ、一族の家業を継ぐ気はないようです。聞くところによると、白山会長はグループを弟さんのほうに継がせたいらしいですがね」姫華は反射的に返事をした。「会長はどうしてそんなに弟さんのほうに肩入れしているの?お兄さんのほうがグループを継ぐのに相応しい能力を持っているのは見てもわかるわ。それなのに、弟のほうに継がせたいの?それじゃ、兄弟が覇権争いで仲違いしちゃうじゃないの。それは一族にとっても将来的に不利になるわよ」姫華にも二人の兄がいる。長男の玲凰は神崎グループを率いる能力がある。そして次男の昴には商売への野心がなく、いくら教育しようと思っても無駄だった。そして最終的に、両親は彼にはビジネスの才がないだろう言っていた。しかし、昴は自分の好きな分野においては、突出していた。姫華は人それぞれ得意分野は全く違うのだと思った。そして親は子供が何に向いているのかを見極めて、後継者を選ぶべきだ。子供たちの間で仇同士となるような争いを起こす必要などない。玲凰は家業を継ぎ、昴は自分の好きな分野でその翼を広げている。そこには如何なる利益争いなどはない。それで兄弟仲に影響は及ばず、姫華の兄たちは関係が良好だ。それから結城家だが。結城家のその家風については、良い評判しか聞かない。名家であろうと、一般的な家庭であろうと、結城家のような家系は非常に珍しい。理仁の従弟たちが引き継ぐ分野もそれぞれ違っている。それは、年長者たちが彼らの好みや得意分野によってどうするのか決めているからだ。その中で、最も能力が高く、さらに一族の重荷を背負う意向のある者が後継者となる。それゆ
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第1453話

善は微笑みながら姫華を見つめて言った。「僕も、白山家の二人は姫華さんには合わないと思います。でも、カッコいいお二人なので、見ているだけで楽しいと思いますけどね」姫華は、善はよく自分のことをわかっていると思い頷いていた。招待客が揃い、婚約パーティーが始まった。明凛の幸せそうな様子を見て、姫華が羨ましそうに声を漏らした。「三人いる友達のうち、二人はもう愛も幸せも手に入れちゃったな。私と希はまだ彼氏もいないし、唯花と明凛のあんな幸せそうな様子を見てたら、本当に羨ましくなっちゃう」彼女たちの夫である理仁も悟も、安心して一生を託すことのできる男だ。どちらも愛に一途である。そんな彼らの心を掴み、妻になれれば、一生愛されて幸せに暮らしていける。誰だって、夫から愛され大切にされたいと思うはずだ。「姫華さんのお友だちは、失恋の悲しみから立ち直ることができましたか?」善がサラリとそう尋ね、また続けた。「あなたもそんなに焦らなくていいと思います。きっと自分に合う男性が姫華さんの前に現れるはずです。その方があなたを幸せにしてくれますよ」「希は口ではもう吹っ切れたって言ってるけど、長年愛してきた人だから、そんな簡単に気持ちが切り替えられるかしら?私だって、結城さんに対する気持ちを諦めるのにかなり辛くて苦労したもの」と姫華は返した。姫華は少し切なそうにその言葉を口にした。理仁が自分の従妹の夫になったのだから、彼女はスッパリとその気持ちを切り捨てるしかなかった。理仁と唯花がとても仲良さげにしている様子を見ると、彼女もズキズキと心を痛めていたのだが、人前ではもう吹っ切れた様子でいた。しかし実際は、彼女はよく夜中に布団の中で、あまりの辛さに寝られず寝返りを打っていたのだ。それから善が隣人となり、よく彼とおしゃべりするようになったおかげか、それに加え事業を起こす忙しさもあり、他のことを考える余裕がなくなったことで、理仁のことを考えることがどんどん少なくなっていったのだ。今は理仁と唯花の仲良い姿を見ても、羨ましいとは思うが、嫉妬をすることはなかった。彼女は本当に理仁への気持ちに終止符を打てたのだ。しかし、全ての人間が姫華のように好きな人をすんなりと諦めきれるわけではない。「希、確か今夜来てるわ。さっき、あの子たちが挨拶しているところを見たの
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第1454話

奏汰は腰を掛けるとすぐに玲に挨拶をした。玲はただ彼に会釈だけして、それを彼への返事とした。ここにいる人たちはみんな身分も地位も高く互いに楽しそうに話していた。唯花はちらちらと玲を見ていた。玲は双子の弟と本当に瓜二つだ。二人ともスーツに革靴姿で、そのうちの一人が女性であることなんて、まったく見分けがつかない。唯花は心の中で、おばあさんの目はなかなか鋭いと思った。玲は星城から遠く離れた柏浜にいたというのに、おばあさんは彼女に目をつけたのだ。玲が二十年以上にもわたって隠し続けている性別をすぐに見抜き、奏汰の結婚相手の候補とした。そんな唯花の視線に気づき、玲は唯花のほうへ目を向けた。気づかれてしまった。唯花もその視線から目をそらすことはなく、堂々と玲のあの深い洞察力のある瞳を見つめた。「白山社長、どうも」唯花のほうから微笑んで挨拶をした。「若奥様、こんばんは」唯花に返事をする玲の声は、わざと低くして出してあり、唯花は疲れないのかなと思っていた。「若奥様はさっきから私のことをちらちらと見ていらっしゃいましたね。もしかして私の格好がどこかおかしかったでしょうか?教えていただければと思います」唯花は笑って言った。「いえ、ただ、お二人がすごく似てらっしゃるなと思って、おもわず見てしまいました。大変失礼してしまい、申し訳ありません」「いえいえ、弟と一緒にいると、皆さん、このように私たちのことを見てきますので慣れていますから」玲の母親である白山弥和(しらやま みわ)が笑って言った。「皆さん、この子たちの見分けが難しいとおっしゃるんですよ。たまに、主人ですらわからなくなってしまいますの」夫がどちらがどちらなのか間違えた時、弥和は彼に娘を息子として育てるせいだと指摘するのだった。弥和は男の子と女の子の双子を産んだというのに、今や世間的には男の子の双子だと思われている。弥和は娘に家に帰る時、もう男装をしないで女の子の姿に戻れと言ったのに、玲はそれに聞く耳を持たないのだ。玲は、物心がついた頃から男装をしているし、外で父親が誰かに紹介する時にはいつも長男だと言うので、それに慣れてしまい、女性の格好をしたくないのだ。彼女はこの年になるまで一度も女性の格好をしたことがなかった。弥和はそれに怒りを覚えるが、でも仕方のな
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第1455話

唯花も笑った。結城おばあさんは、今まで会ってきた人の中で最高のおばあちゃんだと思っていた。内海ばあさんと比べると、まさに天と地ほどの差がある。「あなた達にこんなおばあちゃんがいてよかったわね、大切にしなくっちゃ。こんなおばあちゃんなら、何人いたって構わないわ」理仁はおばあさんとは一番距離が近く仲が良い。「お年寄りはまさに宝物だな」唯花は少し黙ってから言った。「そのお年寄りはどんな人間かによるでしょ。人によっては、トラブルを起こして、よく若者世代と喧嘩になるじゃない。そんなのは宝物とは言えないわね」理仁は彼女の手をぎゅっと握った。「九条さんと明凛が乾杯に来たわよ」唯花はあまり不愉快な話はしたくなかったので、すぐに話題を変えた。悟と明凛は一つ一つテーブルを回って挨拶の乾杯をしていた。そして理仁たちのテーブルにやって来ると、理仁が悟をからかってこう言った。「悟、今夜はえらくご機嫌じゃないか。そんなに真っ赤になって、酒のせいないのか、それとも幸せすぎてか?」悟は、はははと笑って言った。「そのどちらもだな」悟と明凛はまず白山会長夫妻と乾杯した。このテーブルでは白山会長夫妻が一番年上だからだ。それ以外は悟と同じく若者世代だ。弦は、幸せそうに生き生きとしている従弟を見て、とても喜んでいた。そして愛というものに対しても少し考え方が変わった。もしかすると、恋愛、結婚というものは別に恐れるようなものではないのかもしれない。「九条さんと牧野さんは本当にお似合いですね」白山茂は祝福を述べてから、自分の子供たちにちらっと目を向けた。玲は平然とした様子でお酒を飲んでいた。次男の白山碧(しらやま あお)は父親からの意味深な視線には気づいていないふりをしていた。悟とは交流の少ない玲は、ただ二人と乾杯して、一般的な祝福の言葉を述べるだけだった。そしてあまり長居はせずに、悟は明凛をつれて次のテーブルに挨拶をしに行った。二人はずっと挨拶回りに乾杯していたが、そこまで多く飲んでいなかった。悟は明凛が酔ってしまわないか心配し、何度も優しく彼女に注意した。「明凛、形だけでいいから、そんなに飲まなくていいよ。ぼうっとしちゃうぞ」「毎回一口だけしか飲んでないから、酔わないわよ」そして明凛は招待客をぐるりと見渡して小声で言っ
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第1456話

明凛は笑った。「大丈夫よ、私のアルコールが抜けてれば、車で市役所に連れてってあげるから。あなたが半分寝てぼーっとしてる隙に連れ出して、手続きを終わらせるわ。これでもう私のものね。一生逃げられないわよ」「逃げるわけないだろ。喜んで一生君に縛られ続けるよ。君の後ろに大きくそびえ立つ山となり木となって、どんな雨風からも守ってみせるさ。稼いだ金は全部君のために使うし」「九条さん、挨拶回りの最中にそんなイチャつかれても困るんですけどね。俺らのような独身貴族の気持ちも考えてもらわないと」辰巳は二人の仲睦まじい会話を聞きながら、笑ってそうからかった。悟は辰巳としっかりグラスを合わせて乾杯すると、笑って言った。「辰巳君も、もうすぐそれは卒業でしょう」悟は辰巳の隣に静かに座っている咲へ目線を移した。咲は悟が見えないが、彼からの視線を感じ取ると、悟と明凛のほうへ向いた。そして手探りで自分のグラスを手に取り、それを持ち上げた。「九条さん、明凛さん、末永くお幸せに」明凛は微笑んで彼女とグラスを合わせた。「咲さん、ありがとう」咲も微笑んだ。咲は辰巳にうまく言いくるめられて、来たくもないところに来てしまった。会場に到着すると、自分に向けられる突き刺さるような異様な視線だけでなく、たまに聞こえてくるひそひそ話にも気づいていた。咲のことを家族を地獄に突き落とした女だと噂していた人たちは、咲が結城辰巳と一緒に来たのを見ると、裏でさらに冷たく嫌味な言葉を囁いていた。なるほど、あんな大物が後ろ盾になっていたから、家族に無実の罪を着せてあんなひどい真似ができたのだと。咲はそれに対してはあっさりとしていた。別に間違ったことなどしていないと思っていたからだ。実の母親と伯父が父親殺害を企てたのだ。そんな奴らを告訴してはいけないというのか?殺されて当然だとでも?あいつらは父親の命を奪っただけでなく、娘である咲の命まで狙っていたのだ。咲は少しも迷うことはなかった。恐らく二十年以上実の母親と伯父から深く傷つけられてきたせいで、彼らには家族としての情などなかった。だから、父親殺害を告訴する時、一切の躊躇などなかった。賑やかな婚約パーティーは深夜にまで及んだ。遠方から来た客には、悟がスカイロイヤルホテルを手配した。その勘定は彼が受け持つ。
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第1457話

明凛が悟を玄関先まで見送ると、外には運転手が待っていた。「見送りはいいから、早く寝て」と悟は振り返って明凛に言った。「門のところまで見送って、鍵かけなきゃ」明凛が軽く足元に座っている犬を叩くと、嬉しそうに尻尾を振った。そしてすぐに隅の方へ行って伏せた。悟はその犬を見て笑った。「君の飼っている犬は本当に利口だね。吠えたりしないしさ。この間理仁が相当ビビってたみたいだぞ」明凛は頷いた。「そこまで吠えないけど、番犬としては優秀よ。飼いだしてから、泥棒に入ろうとする奴は一切いなくなったもの。昔、塀に取り付けられた監視カメラを壊して盗みに入ってきた奴がいるのよ。彼女の両親は眠りが浅く、物音を聞いて起きてきて、塀をよじ登ってきた泥棒は家のドアを開けるまでにさっさと逃げていった。そして犬を飼い始めてからは、監視カメラを壊されることもなくなった。そして今、明凛が九条家の御曹司である悟と婚約してから、彼女の家に盗みに入ろうとする度胸のある者はいなくなった。九条家は星城では目立たないが、怒らせてはいけない相手だ。誰が婚約者の家に盗みに入ろうとするだろうか。そんなことをすれば秒で素性がばれてしまう。悟はまだ名残惜しそうにしていたが、車に乗った。明凛は庭の門の前に立っていて、彼の乗った車が発進してから門を閉めて家に戻った。夜が静かに過ぎていった。翌日、唯花は相変わらず、姉の様子を見に病院に行った。「唯花、私はもう大丈夫よ。それに清水さんも見ていてくれることだし、あなたが毎日ここに来る必要はないから。あなたがやるべきことをやりなさい」唯月は唯花が来るとそう言った。彼女ですら自分の店のことを心配していた。唯月が怪我をした後、二人の店員が病院にお見舞いに来た。唯月はこの二人を信頼しているので、店の鍵を一人に渡し、普段通りに店を開けてもらうことにした。そして唯花に見に行ってもらうと、店には常連客や一度過去に来たことがあるお客で、まあまあにぎわっていた。しかし、唯月は少し焦っていた。早く元通り回復して引き続き稼ぎたかったのだ。「もう少ししたら、店に行くわ。明凛は今日市役所に手続きしに行くから、時間がないの。本屋も暫くは閉めたままだわ」姉の怪我はかなり回復しているし、清水も様子を見てくれているため、唯花はかなり安心していた
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第1458話

辰巳はまるで金魚のフンのように理仁の後をついて回っていた。すると理仁が耐えられなくなって彼に尋ねた。「何か言いたいことがあるなら、そんな金魚のフンみたいに付き纏ってくるなよ。追いかけ回す相手を間違えてるんじゃないのか」咲ではなく、理仁にくっついて、全く何をしているというのか。辰巳は満面の笑顔で言った。「兄さん、早くオフィスに戻ってくれよ。ちょっと話したいことがあるからさ」「ここじゃ駄目なのか?」辰巳は笑った。理仁はまた辰巳をキッと睨みつけた。何か私的なことなのだろう。十数分後。理仁は自分のオフィスに戻り、デスクの前に座って辰巳に尋ねた。「さあ、なんなんだ?」「お恥ずかしいことに、俺はずっと兄さんよりも恋愛には詳しいつもりだったけど、今ちょっと行き詰ってしまったんだよね、アハハ」それを聞いた理仁は鼻で笑った。「お前ら、俺を反面教師にするとか言い張ってなかったか?まず自分の正体を隠さない、そして自ら地雷を踏みに行かない、と。あ、いや、お前は踏みに行ったよな。彼女が目が見えないのを知っているくせに、わざわざ指名して花を届けさせたんだろ?その途中で何か事故に遭ったりしないかとか、心配じゃなかったのか?彼女が事故に遭って、苦しむのはお前のほうだろ」辰巳は言った。「……別にわざとそんなことをしたんじゃない。彼女は慣れた環境なら自由に行動ができる。だから、俺のところまで来るのに慣れてもらったら、今後自由に会いに来てくれるだろ。一体いつになったら、あの名医とやらを見つけ出して目の治療をさせてあげられるかわからないんだ。目が見えるようになるまでは、俺に関係することには慣れておいてもらわないと。もう彼女にはばあちゃんが選んできた俺の奥さん候補なんだってことは伝えたんだ。昨日の夜は説得して悟さんの婚約パーティーに付き合ってもらった。だけど、今日花屋に行ってみたら、彼女いなくてさ。あの店で暫く暮らすことにしたってのに、電話をかけても、電源が切れてて出ないんだ。なんだか彼女に避けられてる気がするんだよ。仕事に行かないといけないし、時間もそんなにないから、会社まで兄さんに何かアドバイスもらおうと思って来たんだ。兄さん、奥さんと喧嘩した時は、どうやって彼女のご機嫌を取ってるんだ?」理仁はその瞬間、険しい表情になった。「俺と唯花さんは
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第1459話

「兄さん」辰巳はご機嫌を取るかのように言った。「兄さんは俺らの中で、一番頭がいいだろ。昔は愛についてはよくわからなかっただろうけど、今は結婚してからもう半年が経った。二人の仲はずっと良いし、ある程度経験があるじゃないか。もう十分幸せを満喫してるだろうから、俺たちの幸せの手助けをしてよ。ねえねえ、これからどうすればいいか教えてくれ。咲さんは俺に会おうとしないんだよ。避けられた時は、どうすればいいんだ?」理仁は苛立って言った。「もっと図々しくやりたいようにやってみればいいだろ。俺と唯花さんの関係を真似してみたって意味ないんだぞ」理仁と唯花は互いに惹かれ合っていき、お互いを理解し受け入れながら、信頼し合う関係になったのだ。「図々しく?」理仁は言った。「お前が本気で俺のアドバイスを聞きたいなら、正直に教えてやる。好きな人を追いかけるなら、ある程度図々しさが必要だ。女性がいくらお前を拒否しても、引き下がらず追いかけ続けるんだよ。相手が構ってくれないからって、ビビッて萎縮するな。ずっとほったらかしていると、彼女は他の男と結婚してしまうぞ」辰巳は少し考えてから言った。「それでいいのか?」「お前は俺が言ったことを理解してから、行動に移せよ。柴尾さんはまだ目が見えるようになっていないから、少なからず負い目を感じているところがあるだろう。彼女を追いかけるだけじゃなく、目が見えなくたってお前は気にしないっていうのを信じてもらわないとな。それに、常に桐生善さんに名医の教え子の動向を聞いておけよ。早く名医に柴尾さんの目の治療をしてもらったほうがいい。善さんが言うには、酒見先生は今妊娠中だから、その期間は診療に出ることはないそうだ。名医のほうはお願いできるかはわからない。普通、酒見先生が診ているらしいからな。先生は医術にも長けているが、毒物の扱いも優れているとか。そんな彼女に診てもらえれば、柴尾さんの目が治る可能性は高いだろう」辰巳は言った。「咲さんは、薬物によって失明したって言ってた」「だったら、酒見先生が出産を終えるのを待つんだな。薬物によるものか。誰かに毒を盛られたせいなら、酒見先生は詳しいだろう。彼女に頼めば、きっと柴尾さんの目を治してもらえる。出産までの数カ月の間、お前はしっかりと柴尾さんと仲を深めておけ。お前たちの間にある全ての問
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第1460話

咲が自分の店をほったらかしにしておくはずがないので、彼女は必ず花屋に現れる。この時間帯は、咲も辰巳が会社で仕事をしている時間だから、店に姿を見せる暇などないと思っている。その裏をかけば辰巳は彼女を捕まえられるというものだ。辰巳は今まで誰かにこんなふうに避けられたことなどない。実は咲はずっと店の中にいた。辰巳が朝花屋に来た時、二人のスタッフに頼んで辰巳に嘘をついてもらい彼女はトイレの中に隠れていた。携帯は確かに電源をオフにしていた。彼女は新しい携帯に買い替えて、電話番号も変えていた。それで辰巳が彼女にかけても繋がらなかった。昨夜、辰巳に付き合って悟たちの婚約パーティーに参加した後、咲は一晩ずっと考えていた。結城おばあさんがどうして彼女を辰巳の嫁候補に選んだのかわからなかった。目が見えないというのに、それを気にしないのだろうか。それとも、おばあさんは咲が弱いふりをしているのだと早々に見抜いたからなのか?しかし、彼女は早くから柴尾グループにスパイを送り込んでいて、内側からグループのビジネスに手を出していたのだ。それは身内のおばですらも知らない。それなのに、結城おばあさんが知っているわけがない。咲は自分が辰巳には相応しくないと思った。それで、彼のことを好きになってしまう前に、さっさと彼から離れることに決めたのだ。これ以上辰巳とは少しの関わり合いも持ちたくない。それで彼女は携帯と電話番号を変え、新しい番号は来栖浩司(くるす こうじ)にしか教えていない。浩司は今現在、柴尾グループの副社長をしていて、正一の次に偉い人物だ。社長である正一からは厚い信頼を受け、重宝されている。咲が浩司とどうやって知り合ったかは、まだ別の機会に話すこととして、彼は絶対に咲を裏切ることはないと断言できる。この時、ブルームインスプリングには咲と見知らぬ男の二人だけがいた。その見知らぬ男こそ、来栖浩司だ。しかし、浩司は変装していて、正一が目の前に現れても彼だと気づくことはないだろう。「浩司さん自らここに来るべきではないでしょう。誰かに見られたら、ばれてしまうから」咲はティーポットを持って、浩司にお茶を入れた。浩司は真っ黒な瞳で彼女を見つめ、穏やかな口調で言った。「今のような状況だから、自分の目で確かめないと、安心できなくて。今彼らも
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