理仁は立ち上がると、二階へ戻ろうとした。辰巳の事など一切構いたくないらしい。「理仁兄さん……」「帰れ!」辰巳「……」理仁の姿が消えてから、辰巳は恨み口調でこう漏らした。「自分は幸せに暮らしてるから、従弟がどうなってもいいってか」この時、執事の吉田が花束を抱えて入ってきた。これは彼が吉田に頼んで、庭で花を切って作ってもらったやつだ。「辰巳坊ちゃん、若旦那様から叱られましたか?こんな朝早くに来られて、鶏もまだ鳴き始めておりませんよ」鶏は朝早くにコケコッコーと鳴き始めるのに、それよりも早くに辰巳はやってきた。「辰巳坊ちゃん、言われたとおりに花束を作ってまいりました」吉田はそれを辰巳に手渡した。辰巳はそれを受け取って、少し不満げに言った。「吉田さん、庭の花は綺麗に咲いていたのに、どうしてこの花はこんなに小さいんだ?綺麗じゃないよ」吉田はそれに返した。「若奥様がお好きな大きくて豪華な花は切ってはなりませんので、この小さめの彼女がお好きでない花でしたら、いくらでも取って行かれてください」辰巳は言葉を失った。彼は、自分の別荘に植えてある花はあまり多くなく、咲いていてもあまり綺麗ではないと思った。それで理仁のところまで来て花束をもらい、ついでに唯花に少し助けてもらおうと計画していたのだ。唯花は今日辰巳の手助けをすると約束してくれていたが、辰巳はかなり焦っていたから、できるだけ早めに対処してほしいと思った。それが……理仁を怒らせてしまう結果に。吉田が切ってくれた花もあまり綺麗ではない。辰巳はその花束が思っていたよりも綺麗じゃないと不満を持っていたが、こんな朝早くではどの花屋もまだ開いていないから、買うことができない。それで仕方なくこの花束を持っていくしかない。そして唯花に関しては、彼女が起きるまで辛抱強く待つしかなかった。唯花の邪魔をする勇気はない。そんなことしてしまえば、理仁の一声で、辰巳はいとも簡単にここから担ぎ出されてしまうことだろう。それではあまりに恥ずかしすぎる。辰巳が去ってから、少しして唯花は目を覚ました。目を開けると夫のイケメン顔が目に映り、唯花は微笑んで両手を彼の首に絡めた。「あなた、おはよう」理仁は彼女のほうへ目線を向けて、赤い唇に軽くキスして、優しい声で返した。「唯
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