美乃里が前方の車にぶつかったのではなく、隼翔のほうがトラックの後ろに追突してしまったのだ。隼翔の車の後ろに続いていた車は急ブレーキを踏んだが、それでも間に合わず玉突き事故を起こしてしまった。美乃里はブレーキが間に合ったので、その後ろからぶつかることはなかった。美乃里は車を止めた後、すぐにシートベルトを外してドアを開けて降りてきた。健一郎はさっきからずっと妻に息子を追いかけるのはやめるように説得していて、事故が起こった今何が起きたのかわからず呆然としていた。「美乃里」「隼翔が前の車に追突したみたい」美乃里はそう夫に伝えると、前方に駆けだしていった。彼女は隼翔の車にぶつかった前方のセダンを通り過ぎた。車の前方部分は破損しており、運転手はまだ中にいた。恐らく急な事故に驚いてまだ呆然としているのだろう。隼翔の車のほうはかなりひどい有り様になっていた。車のボンネットの半分はほぼトラックの下敷きになっていて、後ろ半分だけが見えていた。隼翔は怪我をして気を失っている。「は、隼翔……」かなりひどい事故で、美乃里は天地がひっくり返ってしまったかのように、しっかりと立っていられなくなっていた。真っ青な顔をした健一郎は急いで美乃里の体を支えた。彼は男だから、妻よりも気をしっかりと保ち、すぐに救急車を呼んで、また警察に電話をかけた。「隼翔、隼翔」美乃里は夫の手を振りほどき、息子を助けに行こうとした。健一郎もその後に続いて行ったが、二人にできることは何もなかった。そして警察と救急車がすぐに現場に駆けつけてきた。「助けて、息子を助けてください……」美乃里は救急隊員を見ると、すぐに泣いて助けを求めた。救急隊員は彼女を落ち着かせるように言った。「すぐに負傷者を運んで治療します」健一郎は妻を引っ張って、息子の救助の邪魔にならないようにした。美乃里は夫の胸に泣き崩れてしまった。今彼女は後悔してやまなかった。もし、息子に何かあれば……どうして息子が好きな女性のところに行くのを阻止しようとしてしまったのか。息子のやりたいようにさせておけばよかったのに。彼はもう三十六歳で、自分が何を求めているのかよくわかっている。美乃里の年齢なら息子のことなど構わずに、家でおとなしく孫の世話でもしていればよかったのだ。隼翔の事は昔から母
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