唯花は理仁に握られた手をサッと戻した。それには理仁は不満そうだった。彼女は小声で彼に注意した。「今は、奏汰さんと陽ちゃんがいるでしょ」理仁はその二人のほうへ視線を向けた。奏汰は陽におかずを取ってあげていて、陽のほうは箸で皿の上のおかずをつかもうと必死になっていたので、理仁と唯花には全く意識が向いていなかった。「陽君、つかめる?おじさんが食べさせてあげようか?」奏汰は全く向かい側にいる理仁と唯花のほうは見ず、平然とした様子で、隣にいる陽に尋ねていた。自分がお邪魔虫であることがわかっているのだ。理仁のほうは彼に邪魔だと文句を言うが、奏汰のほうは理仁に目の前で惚気られて羨ましくなるので、不満を持っていた。「ぼく、自分でやるよ」陽は奏汰に食べさせてもらうのは断わった。唯花は陽にスープをついであげて、彼の目の前に置いた。「陽ちゃん、スープも飲んでね」「ありがとう、おばたん」唯花は笑って言った。「食べたいものがあるなら、隣にいるおじさんに取ってもらいなさい」そして、彼女は隣にいる夫に尋ねた。「あなた、まだお腹いっぱいにはなってないでしょ」彼女が来た時、テーブルの上にある料理はあまり減っていなかった。三人はきっと商談ばかりで、箸を動かしてはいなかったのだろう。「うん、さっきはスープを少し飲んだくらいだよ」と理仁は言い、唯花におかずを取ってあげていた。唯花はそんなことだろうと思った。四人は食事を楽しみ、満腹になると、理仁はホテルで休息を取ることはなく、そのまま会社に戻っていった。陽はすでに熱が下がっていたので、唯花も彼を連れて理仁と一緒に行った。一方、夕菜の父親である辻豊(つじ ゆたか)は自分の家に戻ると、すぐに使用人に尋ねた。「娘はどこにいる?」使用人は答えた。「お嬢様でしたら、プールで泳いでいらっしゃいます」豊はあの花束と服が入った袋をソファの上に置くと、室内プールのほうへ向かった。夕菜はまるで魚のようにスイスイとプールで泳いでいて、父親が来たのに気づくとプールの端のほうへ泳いできた。「お父さん、こんなに早く帰ってきたの?」夕菜は笑いながら尋ねた。「商談はどうだった?」両家の会社が提携すれば、彼女には正当な理由ができて、堂々と結城グループに出入りできるようになる。会う回数
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