海沿いの高級住宅地。浩司と咲がビジネスの話をする時には、必ず碧浜にある家で行う。ここの使用人は全て浩司が咲のために選んだ人間ばかりだ。柴尾家は、現時点では咲が主人となっているが、執事や使用人たちは母親である加奈子が雇ってきた者たちばかりで、加奈子と長い付き合いだから彼らは彼女のほうに肩入れしている。咲は柴尾家で働く全ての人員を一掃して変えてしまおうとも考えたが、自分はまだ目が治っていないので、彼ら全てを変えて新しい人を雇うと、初めて会う人たちでよくわからないから、安全面で不安になる。今雇われている者たちは表向きは咲に対して礼儀正しくしている。しかし、実際は弟の流星のほうに気持ちを傾けているのだ。特に執事は、加奈子夫妻に代わってこの柴尾家を守っているような感覚でいるので、流星に無事に柴尾家を継がせようというある種の使命感を持っているのだった。書斎で、咲は管理職たちとオンライン会議をしており、浩司が傍らに座り手助けをしていた。咲は目が見えないが、記憶力は非常に良い。秘書と浩司が彼女に伝えた話はそれが重要な事でも、些細な事だったとしても、全て覚えている。秘書は浩司が咲のために雇った人で、元社長である伯父についていたあの秘書ではない。咲はすでに伯父の秘書はクビにしてしまった。その女秘書は彼に少し気を持っていたらしく、浩司が言うには彼女が一方的に片思いしているだけで、柴尾社長のほうは全く浮気などする気がなかったということだ。彼は加奈子に一途だった。会議が終わって、浩司は咲のコップが空になっているのに気づくと、コップをとって立ち上がり、彼女のためにお茶を入れに行った。「疲れた?」浩司は心配そうに言った。「流星君はもう子供じゃないから、彼を呼んできて柴尾グループのビジネスについて教えていけばいいと思うぞ。咲の負担を軽減できるだろう」咲は流星からまだ距離を置かれたままだ。みんな咲が柴尾家のビジネスを独占しようとしていると思い込んでいる。浩司は咲がそんなひどい人間ではないことは知っている。彼女は全てを取り戻すと言っていたが、実際に弟の取り分はもちろん彼に渡すつもりでいる。柴尾社長夫妻は柴尾家の財産と、個人的な恋愛感情のために咲の父親を殺害した。咲はこの夫婦二人に復讐を誓い、彼らには法の裁きを受けてもらったのだ。それだけでなく
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