All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 1761 - Chapter 1770

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第1761話

辰巳は少しも考えることなく即答した。「本気だ。咲のことが本当に好きなんだ。神に誓うよ!」初めから、辰巳は咲のことを自分の妻だと思って見ていた。彼ら結城家の男たちは、妻のことをこれでもかと愛し、大切にしている。それは親や祖父母世代、そして理仁夫婦を見ても明らかなことだ。一人として例外なく誰もが妻を溺愛している。両親の仲が良すぎて、たまに子供たちの前でそのラブラブっぷりを見せつけられることもある。父親にとって妻がこの世で最も大切な存在だ。辰巳やその他の兄弟たちはおまけみたいな存在なのである。彼らが父親を怒らせても、少し叱られるくらいだが、もし、母親を怒らせてしまえば、父親が棒でも持って追いかけてくる。どうして怒らせたのか理由も聞いてはくれない。父親が言うには、妻が結城家に嫁いできてから自分でさえも妻を怒らせるような真似はできないというのに、子供たちが妻を怒らせてしまったら、それは当然おしおきするしかない、ということらしい。結城家にお嫁に来た女性たちは皆、夫から大事に守られて、まるで娘のように可愛がられるのだ。この世で妻を最も愛している男性は、妻のことを箱入り娘のように大切にするという。「この間の出張は、本当にお仕事で出張していたの?それとも、A市に名医に会わせてほしいって頼みに行っていたの?」辰巳は一瞬驚き、正直に答えた。「A市に行ってたんだ。桐生家の弘毅さんが酒見先生を連れて帰ってきて、名医も一緒に来てるって聞いたから、急いで君の目の治療を頼みに行ったんだよ。あの名医に頼めなくても、酒見先生にお願いできればいいと思ってさ。でも、彼女は今お腹が大きくてもうすぐ出産する時期だから、彼女が治療を快く引き受けてくれても、弘毅さんのほうが同意しなかった。俺が毎日音濱岳の邸宅に頼みに行ったら、彼は俺に会った瞬間に噛みついてきそうなくらい凶悪な顔つきをしていたよ。酒見先生はもうすぐ子供が生まれるから、彼女に診てもらうのはすぐには無理だろうってわかってたんだ。毎日あそこに訪ねていったのは、やっぱりあの名医に頼めないかと思ってなんだ。彼はあちこち動き回っていて、その行方ははっきりしなかった。俺が数日滞在していても、一度も彼に会うことができなかったよ。それでも、酒見先生からは約束をもらってある。出産してから一カ月十分休養して、それか
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第1762話

咲は辰巳に言われたとおりに車を降りた。彼女が降りると、辰巳が彼女の抱えていた花束を受け取り、座席の上に置いた。すると次の瞬間、咲は体がふわっと宙に浮くのを感じた。辰巳は彼女の腰に手をあてて上に持ち上げると、抱きかかえたままくるくると回りながら大声で叫んだ。「これでやっと恋人同士になれた!結婚しよう咲、君を愛してる!」結城グループにはこの時間に退勤している社員もいて、辰巳がいることに気づくと、反射的に足を止めて辰巳の恋愛物語の結末を見ていた。辰巳の喜びの声を聞き、みんなは笑顔になり、どこからともなく拍手がおこった。咲はその拍手の音がどんどん大きくなるのを聞いていた。大勢から見られているのだろうかと彼女は思った。咲は恥ずかしく感じたが、それよりも喜びのほうが大きかった。辰巳から拒否されなくてよかった。さっき彼は咲の言葉にあまりに喜んでいただけなのだ。まさか彼の告白に応えて受け入れてくれるとは思っておらず、あのように彼女が一瞬困惑してしまうような行動をとってしまっただけだ。この時、辰巳の咲に対する気持ちは全く変化したことがないと彼女は知った。彼は咲の目の前に現れてから、一度も目が不自由なことを煩わしいと思ったことはない。彼にはもっと素敵な女性がいるかもしれないのに、それでも変わらず咲を選んだ。初めから、辰巳は咲のことを自分の妻として見ていたのだと、はっきりと咲は理解した。それは彼の祖母が選んだ女性だからだ。辰巳の咲に対する愛情はゼロから百に満たされた。嬉しさのあまりに咲を抱きかかえたまま何度も回っていた辰巳は、これでは彼女が眩暈をおこしてしまうと気づいてようやく止まった。止まってから咲のくらくらしている頭が元に戻るまで数分待ってから、彼はその長い指を彼女の顎にあてて顔を上に向けさせた。それから、咲の端正なその顔をじっくりと見つめた。咲は生まれつきの美人だ。辰巳とは美男美女のお似合いのカップルだ。「咲、咲……」そう言いながら、辰巳は彼女の唇にキスをした。多くの観客たちに見守られる中、辰巳と咲は抱きしめ合い深いキスをした。これは強引な初めてのキスとは違って、深く愛し合った二人がする本気のキスだ。彼のキスから愛情を感じ取った咲は、同じように彼のキスに応えた。こんな大勢の人の前で、彼からの愛情こも
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第1763話

咲は辰巳の言葉を聞いて耳まで顔を赤くさせた。どうやら結城グループの社員たちは、すでに咲を副社長の妻として見ていたらしい。辰巳は喜びに満ちた様子で咲の体を支えて車に乗せた。そして優しくシートベルトを締めてあげて、あの花束をまた彼女に持ってもらった。彼は車に乗り込むと、咲に意見を求めた。「咲、君を琴ヶ丘邸に連れて行きたいんだけど、いいかな?」辰巳の両親はこっそり何度も咲を見に来たことがある。今まで咲が辰巳の気持ちを受け入れようとしなかったので、両親は彼女の前に現れることは避けていた。咲は辰巳の両親が実の息子よりも咲を大切な人として見ていることなど知らなかった。辰巳の母親である薫子には娘がいないので、咲のような可愛らしい嫁が欲しいとずっと思っていた。彼女は咲を一度見た瞬間気に入ったと言っていた。咲は一度会っただけで、守ってあげたいと思わせるような人なのだそうだ。辰巳が咲を琴ヶ丘邸に連れて行きたいと言ったのには、別の意味がある。つまり初めて彼女を実家に連れていき、自分の親たちに会わせるつもりだ。咲は少し緊張してきた。「だけど、何もご挨拶の贈り物を準備していないし」さっき彼女になると返事をくれたばかりなのに、すぐに家族に会わせようというのは、少し焦りすぎではないだろうか。辰巳の家族は二人の事情をよく理解しているとはいえ、やはり咲は緊張してしまう。彼女が行けば、それは結婚の挨拶を意味している。「何も持っていかなくていいさ。君を連れていくだけで、君からどんなプレゼントをもらうよりも喜んでくれるんだから」「そうだとしてもダメよ。礼儀を欠くようなことはできないわ。私は初めてあなたのご両親に会うんだから、手ぶらで行くなんて絶対できるわけないでしょ。今から何かご挨拶用の手土産を買いに連れていって」辰巳は笑った。「それでもいいよ。じゃ、今から市内で買い物しよう。適当に何かお菓子でも買えばいいさ、うちの家族は何も足りてない物はない、ただ息子の嫁だけが足りてないって母さんが言ってるんだ」咲の顔がまた赤くなった。辰巳は携帯を取り出して、LINEの結城一族全員が入っているグループを開いた。【今から咲を琴ヶ丘に連れて帰って食事するから、時間があるならみんな帰ってきてよ】すると理仁が最初に返事をした。【ちょうどいい、唯花も今夜は琴ヶ丘
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第1764話

辰巳は家族にメッセージを送った後、エンジンをかけて車を出した。LINEグループのほうがかなり賑わっている中、彼はまず咲を連れて買い物に行った。結城一族のLINEグループの賑わいが落ち着いた頃、奏汰の母親である巴(ともえ)が突然自分の長男にメッセージを送った。巴は長男である奏汰に尋ねた。【奏汰、私の将来のお嫁さんとの関係はどこまで進んでいるの?玲さんをいつ食事にうちに連れてきてくれるのかしら?】奏汰はそのメッセージを見なかったことにした。巴は息子から返事が返ってこないので、苛立って夫である学(まなぶ)に言った。「あなた、息子を見てごらんなさいよ。お義母さんはあの子と辰巳君に同時期に女性の写真を送ったでしょ。辰巳君のほうは夜、咲さんを連れて顔合わせに食事に来るのよ。奏汰ったら、一体いつになったらうちのお嫁さんを連れて来てくれるのかしら。義理の娘が欲しくてたまらないのに」学はそれに答えた。「こういうことは、焦ってはいけないよ。奏汰はまだ行動に移したくないんだから、私たちのほうが焦っても仕方ないだろう?私たちがあの子の代わりに柏浜に行って玲さんに近づくわけにはいかないんだからさ」「落ち着いていられるわけないでしょ。辰巳君がパパになる頃、奏汰はまだ何も進んでないかもしれないのよ。あの子と辰巳君はそんなに年が変わらないじゃないの、まだ若いとでも思ってる?もし末の蓮君なら、私はちっとも心配したりしないけど。玲さんみたいな素敵な女性はなかなか落とすのが難しいわよ。奏汰がいつまでもぐだぐだしていたら、他の男に先を越されてしまうかもしれないでしょ。あの子は絶対に後悔する時が来るわ」学は少し黙ってから言った。「たしか、玲さんを慕っている人はみんな柏浜のご令嬢で女性ばかりだ。だから、彼女たちが玲さんと結婚できることはないんだよ。安心しなさい、他の男の人がうちの奏汰の妻を奪うことなんてありえないから」玲は昔から男装をしている。柏浜の人にとって、玲は白山家の御曹司という認識なのだ。彼女のそのイケメンぶりは、柏浜の全ての見た目の良い男性たちが認めるほどのハンサムだ。神様でも嫉妬してしまうほどに、容姿端麗だ。しかし、柏浜のイケメンたちは誰よりもハンサムな玲に嫉妬するだけで、絶対に玲を好きになることはない。それはどうしようもないことだ。彼らが好きな女性たち
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第1765話

巴は夫を一目睨んだが、笑って言った。「あなたも私たち二人の力を合わせても、お義母さんには及ばないってわかっているのね。私たちから言わなくたって、お義母さんが奏汰をけしかけるに決まってるわ」巴は一呼吸おいてから、また話し始めた。「奏汰は私たちの子供だっていうのに、お義母さんに孫の人生の一大イベントの心配をさせるなんて、親不孝にもほどがあるわ。あなた、お義母さんは最近何にはまってるとか、何か欲しいとか言っていなかった?ちょっと何か贈り物しましょうよ」学は言った。「母さんに足りてない物なんてないだろう?財産だって私たちよりもずっと持っているんだから、足りていないものと言えば、やっぱり、孫の奥さんと女のひ孫くらいだろう」子供の話になって、巴は小声で言った。「唯花さんからはまだおめでたの話を聞かないわね」学はすぐに妻を注意するように軽く叩き、やはり小声で返した。「そんなこと口にするもんじゃないぞ、唯花さんが聞いたら悲しい気持ちになるはずだ。彼女のプレッシャーは一番大きいんだからな。子供というのはタイミングや縁というものがあるだろう。その時が来たら自然とできるさ、焦ったって仕方がない問題だ。前、母さんが腕のいい占い師に理仁君夫妻を見てもらっていただろう。あの二人には息子と娘が生まれる未来が見えたそうじゃないか。だったら、絶対に子供ができるはずだ。そうなる運命なら黙っていても自然とそうなる。もしそうじゃないなら、無理やり運命を変えることは人にはできっこないんだよ」「それもそうね」自分には三人の息子だけで、娘がいないことを思い巴はため息をついた。「親は子供に責任を持って大人になるまできちんと育てて大変でしょう。子供のほうは大人になったら親孝行して親に恩を返してくれるか、親に迷惑や心配ばかりかけて困らせるかのどちらかね。うちの三人の息子たちはみんな後者よ」「どうして三人も生んだのに、女の子が一人も生まれなかったんだろうな。母さんだけが女の子のひ孫を期待してるわけじゃない、私だって孫娘が生まれるのを心待ちにしているんだから。もしうちの三人の息子に男の子しか生まれず、母さんのように九人の男の孫ができたらどうしよう。耐えられないぞ」それを聞き、巴は自分にもし男の孫が九人もできたらと考えただけで、頭が痛くなってきた。結城おばあさんはもう年だ。たとえ体が
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第1766話

結城おばあさんは歩きながら陽と談笑している。「陽ちゃん、おばあちゃんは陽ちゃんに会うの本当に久しぶりだね。すごく会いたかったのよ」陽もおばあさんと一緒に過ごすのが大好きだった。このおばあさんは自分の本当の曾祖母ではないが、母親が言うには、彼女はまだ生まれていないいとこの曾祖母であり、つまり自分の曾祖母と同じようなものだと言っていた。「おばあちゃん、かなたもすごく、すごく会いたかったよ」陽は口が達者で、相手を見て言葉を選ぶことができる子だった。好きな人の前では、甘い言葉を出して、大人たちをとても喜ばせる。例えば奏汰のように、馴染みのない人の前なら、ありのままのことを言うだけだった。「おばあちゃんは陽ちゃんが来るのを知って、キッチンのシェフのおじさんにたくさん美味しいものを用意してもらったんだよ。あとで陽ちゃん、たくさん食べるんだよ。そうしたら早く大きくなって、学校に行けるからね」おばあさんは小さな子を抱えて歩いていたが、足が速くて少しも息切れしていなかった。麗華たちはもともとおばあさんの後ろについて歩いていた。おばあさんが陽を抱いて引き返してくると、他の人も一緒に引き返した。三十歳を過ぎた理仁と比べると、やはり陽のほうがずっと可愛いらしく、理仁をちらりと見ることすら面倒なようだった。理仁が車から降りて、家族の年配者たちがみな陽を取り囲んでいるのを見ると、ちょうど降りてきた唯花に言った。「陽君を連れて帰ってくると、二人の時間を邪魔するお邪魔虫にもなるし、こっちの関心を奪われる存在にもなってしまうね。昔は、俺が帰ってくると、みんなは俺を囲んで気遣ってくれたのに、今は、ちらりとも見てくれないぞ」唯花は笑って言った。「もうお邪魔虫なんて言わないでよ。陽ちゃんが怒っちゃうわ。彼は自分の名前は陽で、お邪魔虫じゃないって言ってるんだから」彼女はわざと夫をからかった。「あなたみたいに、いつもこわばった顔をしているより、陽ちゃんの可愛い笑顔のほうがいいでしょ。私だって陽ちゃんのほうがもっと好きよ。陽ちゃんは口も達者でしょ。彼はあなたみたいに、自分の家族にあいさつする時も、棒読みで、全然感情こもってない、なんてことないし。そんなあなたのことを誰が好きになるのよ?」理仁は手を伸ばして彼女の肩を抱きながら部屋へ向かって歩き始めた。歩きながら笑っ
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第1767話

陽は男の子だ。もし女の子だったら、たぶん年配者たちは彼を取り囲んで話しかけるのではなく、順番に抱っこしようと奪い合ったことだろう。何世代にもわたって女の子の生まれなかった結城家にとって、一人の女の子のためなら狂喜乱舞するはずだ。隅っこで年配者たちに無視されている理仁夫妻も、その方が気楽で、親しくベタベタすることができた。しばらくすると、他の人たちも次々に帰ってきた。すると、隅っこに座る人たちはますます増えていった。みんなが互いに顔を見合わせ、表情は同じだった。唯花は結城家の若い世代の男たちの表情を見て、腹を抱えて笑いそうになった。その時、執事が入ってきて、おばあさんのそばに歩み寄り、笑顔で全員に声をかけた。「おばあ様、辰巳様が柴尾お嬢様をお連れになってお戻りです」「咲さんが来たのね。みんな、学の家に行きましょう」結城家では、中央の母屋を中心にしており、母屋に住んでいるのは長男一家とおばあさんだ。しかし、辰巳は結城家の次男の長男である。彼が初めて恋人を連れて帰るのだから、当然面子も立てなければならない。だからおばあさんはみんなを次男である学の家に集めようと言ったのだ。車の中の咲は、とても落ち着いているように見えたが、実際には非常に緊張していた。辰巳が何度も彼の両親は彼女を嫌ったりしない、家のすべての年配者たちはとても開放的な考え方の持ち主で、子供たちの決断を尊重してくれると保証してくれた。彼女は心を開いて彼の愛を受け入れ、将来の舅姑家族に可愛がってもらうのを待っていればいいだけだ、と。咲はそれでも緊張し、怖かった。みんなが彼女自身を見て、目の不自由な彼女が彼らの想像以上に良くないことに気づき、受け入れられず、彼女と辰巳が一緒になることに同意してくれないのではないかと思ってしまう。咲の反応は至って当然だ。多くの人が初めて恋人の家族に会う時、あれこれ考え、様々な心配をするものだ。「辰巳さん」咲は辰巳の手を探り、しっかり握りしめると、小声で言った。「やっぱりまだ少し緊張するし、怖いの。もしあなたのご両親が私を好きじゃなかったら、どうしよう」彼女はやっとの思いでこの一歩を踏み出し、辰巳の感情を受け入れた。辰巳が彼女のことを本気で愛していることも信じていた。もし辰巳の両親が彼女を好きでなく、彼女を疎んだ
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第1768話

辰巳は仕方なく彼女に従うしかなかった。執事が使用人を呼んで手伝ってもらい、プレゼントを車から降ろし終わってから、辰巳はやっと咲の手を取って、ゆっくりと自分の家に向かって歩き始めた。使用人たちは大小さまざまな荷物を手に持って後について歩いた。咲が歩く時は歩数を覚えて頼りにしていることを知っているので、辰巳は非常にゆっくりと歩き、咲が歩数を記憶できるようにした。中心となる母屋の前を通りかかった時、辰巳は彼女に言った。「今、俺たちは中心にある母屋の玄関前に立っているよ。玄関前には何段かの階段がある。ここが琴ヶ丘邸の母屋で、ばあちゃんと栄達おじさん一家がここに住んでいるんだ」咲はうなずいた。彼女は駐車場から母屋までの道のりを記憶した。「ここに入るの?まずおばあさんに会いに行く?」咲は小声で彼に尋ねた。普段の彼の理仁に対する尊敬ぶりから、咲は彼が自分を母屋に連れて行くと思っていた。「後でまた入ろう。今はまず俺たちの家に帰るんだ。ばあちゃんたちも今は母屋にはいなくて、俺たちの家で待っているから」おばあさんの次男、学の息子である辰巳は、まずは自分の家に戻り、それから咲を連れてあちこち訪問するのだ。車から降りる時、彼は年配者たちがみんな自分の家に行ったのを見ていた。咲は少し沈黙した後、小声で言った。「私たち、まだ結婚してないのに」琴ヶ丘邸は彼の家であって、まだ彼女の家ではない。彼が「俺たちの家」とずっと言っているから、咲にとって少し気恥ずかしかった。辰巳は彼女の前に顔を近づけ、低く笑いながら言った。「俺が君の写真を見たその瞬間から、君を俺の世界に迎え入れ、家族の一員にしたんだ。俺の家は君の家、俺たちの家なんだよ」そう言い終えると、彼は彼女の頬に軽くキスをした。咲は顔がほんのり赤くなってしまった。執事たちが後ろについてきているのを思い出し、彼女は慌ててそっと彼を押した。「みんな見てるよ」この男は面の皮が厚く、恥をかくことを恐れないが、彼女にはそこまでの厚かましさはない。自分の顔がどれほど赤くなっているかは見えないが、顔が熱く感じられるので、見なくても自分が顔を赤らめているのがわかった。辰巳はまた低く笑い、背筋を伸ばして、再び彼女の手を取って前へと歩き出した。そして歩きながら言った。「俺たちの家は栄達おじさんの
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第1769話

辰巳は咲の手を引いて自分の家の玄関前まで歩いて行き、そこで立ち止まって、咲に玄関前の階段が何段あるか教えた。それから、彼は咲を支えながら階段を上らせた。早く歩くことはできず、咲が転ぶのではないかと心配だった。咲は家の中がとても賑やかなのを聞き、多くの人がいることを知った。辰巳は彼女に言った。年配者たちはみんな家の中で待っていて、従兄弟たちもいる。彼女は理仁夫妻の声も聞こえた。陽の声も聞こえたようだ。そうだ、唯月は今、隼翔の世話をしているので、陽は多くの時間を唯花と一緒に過ごしているのだった。「咲さん、こんばんは」辰巳が咲の手を引いて入ってくるのを見て、長男である理仁の妻として立ち上がって迎えた。「唯花さん、こんばんは」咲は立ち止まり、唯花に挨拶した。彼女の美しい顔にはまだ紅潮が引いていなかった。自分は恥ずかしがっているわけではないと思うのだが、顔がいつも熱く感じられた。きっと天気のせいだ。咲は自分の顔が赤くなるのをその理由にしておいた。「今着いたばかりなんでしょ?疲れてないですか」唯花は心配そうに尋ねた。咲は微笑んで首を横に振った。「疲れていませんよ。今着いたばかりです。視力が悪くて、早く歩けませんから、皆さんをお待たせしてしまいました」「大丈夫ですよ。私たちも今来たばかりですから」唯花は笑いながら、辰巳が咲の手を握っているのを見た。「唯花さん」辰巳は唯花に声をかけた。唯花が迎えに来たからといって、咲の手を離すことはなかった……唯花はうなずいた。「おばあちゃんたちはみんなそこにいるよ。咲さんを連れて行ってあげて」咲は二人の会話を聞き、心の中でとても感謝した。結城家の年配者たちが皆彼女を待っていて、彼女が家に入ると、唯花が立ち上がって迎えてくれた。彼らの一挙一動は彼女には見えないが、これが彼らが彼女を大切に思っていることの表れだと感じ取ることができた。辰巳は「ええ」と頷き、咲の手を引いて年配者たちの前に歩み寄った。「ばあちゃん」彼はまずおばあさんに声をかけた。おばあさんは嬉しそうに返事した。おばあさんから返事があると、彼はようやく咲に言った。「咲、今俺たちはばあちゃんの前にいるよ」咲は最初、麗華の方を向いていたが、おばあさんの返事を聞いて初めて、おばあさんが目の前にいることを知
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第1770話

皆が咲の目が見えないことを知っていた。彼女は聞くことと記憶に頼って人を見分けているのだ。辰巳が咲をみんなに紹介している間、皆は静かにしていた。自分たちが話すべき時になって初めて声を出し、咲が話している人が誰かを覚えやすいようにした。咲は再び結城家の人々の思いやりに感動した。辰巳は本当に一度も彼女を騙していなかった。彼の家族は皆とても良く、年配者たちも同世代の人たちも、彼女を嫌ったり、彼女が彼にふさわしくないと思ったりすることはない。彼女のほうが卑屈すぎて、ずっと辰巳の感情を受け入れる勇気がなかったのだ。今になってやっと、彼女は最初の一歩を踏み出した。もしおばの朋子がA市の音濱岳の邸宅に行き、辰巳が彼女のために名医に頼みに行ったことを知らなければ、たぶん今でもこの一歩を踏み出す勇気は持てなかっただろう。おばあさんは結城家の大黒柱だが、彼女は一番優しく、少しも結城家を取りまとめる人間としての威張ったところがない。薫子は辰巳の母親だ。彼女は咲の手を取り、気遣いの言葉をかけてくれた。結城家の人々が彼女に本当に親切なのか、それとも演技なのか、咲には感じ取ることができた。皆はとても誠実で、彼女が見えないということは彼らにとっては、全く大したことではなかった。薫子が以前、朱美と樹里の前で言った言葉の通りだった。咲はお金を使っているだけでいい、何かをしなくとも結城家は彼女を嫌ったりしない。咲は辰巳と一緒に琴ヶ丘に行って家族に会った後、二人は晴れて恋人同士になり、仲は日に日に深まっていった。朋子と浩司、それに流星が、咲の実家側の代表として結城家の年配者と会い、二人の結婚式の日程について話し合った。流星に関しては、彼は自分の実の両親が殺人犯であることを受け入れるのが非常に難しく、真実を知って以来、彼は同級生の家に泊まりに行き、姉に会おうとしなかった。実際、彼は咲を恨んでいるわけではなく、姉に顔向けができなかったのだ。彼の両親は姉の実の父親を殺害し、さらに叔父が姉に残した財産を横領し、姉にもひどく当たり、危うく死に追いやろうとした。彼は自分も姉に申し訳ないと思ったのだ。姉と辰巳が恋愛関係になり、家族に会った後、両家の人たちが二人の結婚式について話し合うと聞き、流星は自分は姉より年下だが、姉の唯一の兄弟であり、姉の結婚のこ
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