豊は何も言わなかった。つまり黙認したということだ。響はわざと驚いた様子を見せて、低い声で言った。「夕菜は一体何を考えているんですか?どうして結城社長を好きになれます?彼はかなり前に結婚していますよ。それに、最近になってやっと既婚者であることを公表したのではなく、報告してからずいぶんと時間が経っています。それなのに彼女は……確かに結城社長は優秀な方ですが、でも既婚者ですよ。夕菜が彼を好きになったって、他人の家庭を壊す浮気相手になれるわけないでしょう。それに、結城社長の結婚生活をそう簡単に壊せると思っているんですかね?」響は心の中で、伯父が突然電話をかけてきたのは、絶対に理仁から連絡があったからだとわかっていた。そして夕菜の全ての行動を伯父に伝えた。夕菜の傍にいる男はただの代役だ。顔は理仁とは似ても似つかない。ただ理仁と背格好が似ているだけだ。理仁がこの事実を知っても、それで夕菜にどうこうできるわけではない。しかし、理仁が豊に訴えてしまえば、話は別だ。豊は心の中でよくわかっている。それに、夕菜が見つけてきたその代役の男は、ただのデリバリー配達員だ。ちなみにもっと的確に表現するなら、彼は配達員ではなく、ただの無職のニートだ。あの日、夕菜にデリバリーしたのも、響の手配だ。「響、私は今すぐそちらに戻るチケットを買う。この件はまだ夕菜には伝えないでくれ。私が帰ってから様子を見る」豊はやはり、自分の目で娘の傍には背格好が理仁に似ている男がいるのか確かめたかった。「おじさん、すぐに戻られますか?夕菜の件は、だったらおじさんの奥さんに頼んだらどうでしょう?夕菜にはもうあの男と一緒にいるなと注意すればいいです。あの男、見ればすぐただ金のために、辻家の財産のために、夕菜に近づいているとわかりますよ」相手が夕菜に近づいたのも、そもそも金が目的だった。今回の件は響の策略だから、手元にはあの男に関する全ての資料がある。あの男が夕菜から大金をもらったことも、響は全部知っている。「今回のような事は妻では対処できない。私の妻が彼女を甘やかしすぎたせいだからな。こちらの仕事ももう最終段階に入っている。そろそろそっちに戻る予定でいたんだ。このような事が起きた今、私はここでじっとしていられん。結城社長は我が社との提携関係を考慮して、まずはこちらで
Read more