弦は生まれて初めて、女性に対して心を動かされるという経験をした。それで自分のこの高ぶる気持ちを抑えることができずにいる。「父さん、母さん、本当は二人にこんなに早く教えるつもりじゃなかったんだからね。二人が知って小夏さんのところに急に現れでもしたら、彼女を驚かせちゃうだろう。それにしても、神崎さんのことを好きだと勘違いされて、私にひとことも言わず勝手に結婚の申し込みしにここに来るなんて思わなかったよ。だから、小夏さんの事を今すぐ教えて、とりあえず二人を安心させないといけないと思ったんだ。私は必ず結婚するから。だけど、その相手は神崎さんじゃないよ。今後は二度とこんな真似をしないでくれ」弦は両親にそう言うと、今度は丁寧に姫華に謝罪した。「神崎さん、ここ暫くずっとご迷惑をかけて、イライラさせてしまって申し訳なかった。これは白鳥君に負けて、どうしても彼のお願いを聞くしかなかったんです。全て私のせいですよ。それに、白鳥君のことも悪く思わないでください。これも、彼が神崎夫人に付きまとわれた結果ですからね」姫華は弦の恋愛物語を直接耳にすることができ、その好奇心が満たされたおかげで、今まったく怒っていなかった。それに、姫華は唯花からも事の真相を正直に伝えてもらった。たとえ怒っていたとしても、その怒りはとっくに期限切れだ。姫華はおおらかに言った。「今回のそもそもの原因は私の母ですから。帰ってくる前に唯花が教えてくれたんですよ。白鳥さんが母を諦めさせるために、従兄の結城社長に苦境を訴えに行ったって。結城社長が彼にアドバイスするのも、理解できます。だって従弟から助けを求められたら、何かしら言うでしょう?」善「……」なるほど、彼のアイデアだったわけか。善はあれだけ理仁のことを信頼しているし、両家の繋がりもあり、ビジネス上も深い付き合いがある。それなのに理仁は善のことを考慮しなかったというのか。弦は笑って言った。「以前、世間の神崎さんに対する評判は真実からかけ離れたものでしたね。今後、誰も神崎さんが偉そうで理不尽な人だなんて言えないですよ。もし、私がそんな話を耳にしたときは、そいつをしっかりとおしおきしてあげますからね」姫華は度量も大きく、常識があり、筋が通っている女性だ。世間はきっと彼女が名家出身で、自分の思いのままに生きていること
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