All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 2291 - Chapter 2300

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第2291話

すぐに、蒼真が善に尋ねた。「それは一体どういうことだ?」神崎姫華は弟の彼女だ。彼らカップルはよく一緒にいる。それなのに、九条弦の親が贈り物を持って神崎家に結婚の挨拶に来たというのか?「善、おじい様とおばあ様、それから父さんと母さんに言って、俺たち一家も大量の贈り物を準備して神崎家に結婚の申し込みに行こうか?」蒼真は、桐生家も九条家には劣らないと思っている。それに弟の善だって、九条家の跡取りと張り合えるはずだ。善は姫華との件で家族に助けを求めたことは一度もない。両親、兄、その嫁もみんな善の恋愛には関心を寄せている。善は今好きな女性がいて、必ずその人と両想いになり、結婚して大切にすると言って家族を安心させていた。善がそう言うものだから、家族は余計な干渉をせず、ただ黙って彼の報告を待っているのだ。母親の愛美の性格からいうと、彼女は今すぐにでも星城まで羽根を伸ばして、息子に代わって神崎家に結婚の申し込みをしたくてたまらない。しかし、息子はまだその時じゃないと言って、余計なことはしないように注意するのだ。親としていくら焦っても、ただ待つしかなかった。彼自身の結婚なのだから、もちろん善の意向が一番大事だ。「今はその危険はなくなったんだけど、神崎家に結婚を申し込むのを早めてもいいのかなって思ってるんだ。結城社長と奥さんの結婚式には、兄さんも遥さんも出席するんだよね?」善はそう尋ねた。蒼真は「ああ」と返事し、続けて言った。「それはもちろんだよ。俺と遥の結婚式には結城社長も出席してくれたんだ。今度はこちらが出席する番だ。俺も遥も一緒に行くよ」今、遥と唯花は友人関係だ。蒼真と遥の結婚式の日は、理仁はちょうど唯花とトラブルを抱えている時期だった。それに、唯花に対して自分の正体を明かす前で、そのことで理仁は蒼真に助言を求めたこともあった。「結城社長の結婚式が終わってから、神崎家に申し込みに行くか?」善は言った。「うん」「後で母さんと遥にも伝えておこう。二人に贈り物を考えてもらって、それを持って神崎家に行くぞ。善、もう行って問題ないんだよな?」「それははっきりとは言えないんだけど、でももうこれ以上先延ばしにはできないよ」蒼真は少し黙ってから言った。「兄さんから見ると、お前と神崎さんの関係は安定しているし、二人は本
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第2292話

蒼真の遥争奪戦は本当に壮絶なものだったらしい。「まずは婚約までいければ、それでもいいんだ」善は急に結婚の話をするのはどうも唐突すぎるかと思った。辰巳と咲のように、まずは婚約し、婚約パーティーを開いて、星城の大物たちに参加してもらうのが良い。そうすれば、みんなに善が姫華の婚約者だと知らせることができる。それでも善の恋敵になろうと思うような奴がいるものか。「ああ、それはもちろんだよ。安心しな」兄に、家族に出てきてもらう約束を取り付けたことで、善の不安だった心はふっと軽くなった。善の出身家庭は誰もが認めるほど評判が良い。両親に加え、兄とその嫁も出てきてくれれば、きっと詩乃は彼と姫華の結婚を許してくれるはずだ。それでも駄目なら、祖父母にも出陣を要請しよう。トントントン。この時、ドアをノックする音が響いた。善は兄に言った。「兄さん、誰か来たみたいだから、ここまでにするよ。遥さんに言って、母さんと一緒に結婚申し込みの贈り物を準備してもらってね」「ああ、仕事を続けて。兄さんがやるんだから、安心していいよ。母さんも遥も、とっくの昔にこの手伝いをすると決めていたんだからね」遥は、義弟たちの結婚の手助けを快く引き受けようと思っていた。遥は長男である蒼真の妻だから、彼女の態度がとても重要なのだ。桐生家と親戚になれる一族は、必ず遥の態度を気にする。彼女が桐生家の跡取りである蒼真の妻で、のちの女主人になるからだ。善は兄との通話を終わらせると、低い声で応えた。「どうぞ」オフィスのドアが開いた。すると、そこには花束と袋をいくつも提げて立っている姫華の姿があった。その袋には新しい服に、ネクタイ、それぞれ二つ。さらにプレゼントボックスもあり、その中にはロレックスの時計が入っている。これは彼女が善に買ってきた贈り物だ。善はこの日の昼、相当驚き、焦りを隠しきれていなかった。それで姫華はこうやって贈り物をすることで、彼の心を落ち着かせようと考えたのだ。実のところ、彼女自身もかなり驚いてしまったのだが。しかし、あの件は見事スッキリ解決してしまった。「姫華さん」入ってきたのが姫華であるとわかると、善は携帯を置き、椅子から立ち上がって満面の笑みで彼女を出迎えた。「どうしてここに来たんですか?」「あら、私に
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第2293話

善は姫華にからかわれても、変わらず微笑んでいた。「僕はまだ草をプレゼントされたことがないので、どんな気分かわかりません。姫華さんが草で喜ばせてくれるのが楽しみです」「それなら簡単よ。今度、公園に行って、袋いっぱいに詰めて持って来てあげる」「それなら、牛でも飼ったほうがいいかなぁ」姫華はキラキラとした笑顔で言った。「私からもらった草を、牛に食べさせる気?」「あ、いや、そういうつもりじゃ……」すると姫華は袋を開けて、その中から新しい服を取り出して善に渡した。「ねえ、こういうの好きかな?善君が着てるのって全部このブランドのでしょ?だから同じブランドのシャツと、スーツセットにしたの」下着も彼のために買っているのだが、ここで出すのは気恥ずかしく、服が入った袋の奥に押し込んでいる。彼が帰って服を取り出した時に気づくだろう。善は花束を置いてその服を受け取り、裏表両方見ながらにっこりと嬉しそうに笑った。「姫華さんからもらった服なら、もちろん大好きです。サイズも僕にちょうど合いますね」「バカね、あなたにあげる服はもちろんあなたのサイズに決まってるでしょ。あと、ネクタイ二本あるのよ」すると姫華はまた袋からネクタイを取り出した。そして最後にあの腕時計を取り出した。彼女はプレゼントボックスを開けて、そこに入っているロレックスの時計を取り出すと、善に腕を前に伸ばすように合図して、手首につけてあげた。善は言った。「毎日つけている時計も姫華さんからもらったものですよ」善は姫華に今まで多くのプレゼントをしているが、もちろん彼女のほうも彼にお返ししているのだ。姫華曰く、自分の彼氏には周りと比べて何か足りないものがあってはいけない、だそうだ。そして、彼が持っている物はみんなが持っているとは限らない。「日によって付け替えてね。この時計、今までのよりずっと素敵だと思ったの」善は姫華につけてもらって、それを絶賛した。「さすが姫華さんですね。お目が高い!僕にくれるものは、みんな素晴らしいものばかりで実用的なんです。とても気に入りました」「それは当然よ。私の目は肥えてるもの。物であろうと人であろうと、私が選ぶのは全て一級よ!」姫華はとても自信家だ。もちろん彼女の身分もその実力の一つである。実力があれば、自ずと自信が生まれる。
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第2294話

桐生家の御曹司で三番目の新がまだ未婚だ。しかし、新にはすでに結婚したいと思っている相手がいる。善は今姫華と恋人同士だから、六番目以下の結婚適齢期になっている男たちはみんな遥から目をつけられやしないかヒヤヒヤしているのだ。六番目と七番目は今、遥に会うといつも緊張してしまう。しかし、芽衣に会いたいがために彼らはそれでもよく遥の前に姿を現すのだった。姫華は遥が以前小説を書いていたことを知っている。それに、遥の小説を実際に読んでみたこともある。彼女は尋ねた。「遥さんはもう小説を書くつもりはないの?彼女が書いた小説、すっごく面白かったわ。たぶん、私があまり小説を読まないからだろうけど。初めて読んだのが彼女が書いたものだったから、遥さんの想像力はすごいなって思ったの」「彼女は今とても忙しいから、きっと書く時間はないでしょうね。でも、たまに書いてはいるみたいですよ。ネットに公開などしてないだけですね。今、僕たち兄弟を題材にして書いてるみたいです」姫華は楽しそうに笑った。「だったら、善君が主人公の小説にして、たくさんの美人さんから追いかけられる物語にすればいいわ」「僕が小説の中の男主人公になるのでしたら、ヒロインは絶対に姫華さんです」姫華はさらに嬉しそうに笑っていた。この時、彼女は突然善の首元に抱きついて、自分からキスをした。愛する人のほうから積極的にキスをしてきたので、善も遠慮なく彼女を抱きしめて深いキスをした。キスをした後、姫華は善の顔に手を当てて、優しく触った。善を見つめる瞳には愛情が溢れていたが、少し申し訳なさそうな様子もあった。「お昼は、驚かせちゃってごめんね。プレゼントで機嫌を直してね」そういうことだったのか。善はまた彼女の唇に口づけして言った。「本当にびっくりしたんですよ。あの知らせをもらって、すっごく慌てたんですからね。体から血の気がサーっと引いて冷たくなりましたよ。あの瞬間、僕の愛する人を絶対に他の男に渡すものか、とだけ考えていました。九条家に歯向かって敵とみなされたって、絶対に引き下がらないって!」姫華は彼の胸元に寄りかかり、甘えた声で謝った。「善君、ごめんね」善は彼女をきつく抱きしめた。「そんな事言わないでください。姫華さんのせいじゃないんですから。それにお母様のこともですよ。おば様が僕自身のこと
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第2295話

キスの後、姫華はそっと善の顔を撫でで、優しい声で尋ねた。「まだ怒ってる?」すると善はまた彼女の顔に何度もキスの雨を降らせた。「九条さんが運命の女性を見つけたと聞いて、安心しました。だけど、今日は本当に焦ったんですよ。もっと慰めてもらわないと」姫華は笑った。「プレゼントをあげて、キスもしたけど、まだ足りない?」その言葉を聞くと、善は彼女の顔を自分の胸元に寄りかからせて、小さな声で笑って言った。「冗談ですよ、十分です。今後はきっと今日みたいな事は起きないでしょうね。また何度もこんな目に遭ったら、心臓がいくつあっても足りません。早めに婚約して、星城でビッグニュースになるくらい盛大な婚約パーティーを開きましょう。辰巳さんと柴尾さんの婚約パーティーより盛り上がるくらいに」姫華はそれに穏やかに応えた。「じゃ、善君が星城全体に轟くほどすっごい前代未聞の婚約パーティーを開いてくれるのを、心待ちにしているわよ」そう言うと、彼女は彼の懐から離れて尋ねた。「忙しいよね?仕事に戻ってね。私も会社に行かなくっちゃ」善は再び彼女を抱きしめた。「せっかく来てくれたんですから、もうちょっと僕と一緒にいてくれませんか?今はなんだか仕事をする気分じゃなくて」愛する女性を失ってしまうかと大慌てした彼が、今すぐ仕事に戻れるわけないのだ。「夜、ご飯を一緒に食べて、映画でも見よっか?」姫華も善がとても慌てていたことを知っていて、プレゼントを贈っただけではまだ足りないと感じていた。そして、夜、彼と一緒に映画を見に行こうと決めた。「ええ、姫華さんが決めてください」そして姫華がくれたプレゼントを見つめて、彼は小さな声で言った。「スーツにシャツにネクタイ。全部買ってくれたんですよね。あと、中に着るものは買ってくれなかったんですか?」「まだ袋の中を全部見てないでしょ」その言葉を聞いて善は彼女を離し、袋を持って中を探してみた。その一番下のほうに、彼女が新しく買ってくれた下着があるのが見えた。結構派手な……善は言った。「……全部こんなに派手な柄で?」彼は今まで一度も全体的に柄があるようなパンツをはいたことはない。昔、彼がまだ小さい頃であれば、母親が可愛らしい恐竜や車などの柄がついたものを買ってくれたことはある。確かに小さい頃なら柄物のをはいてい
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第2296話

愛する女性の目の前でも、下着に赤は嫌だと彼ははっきり伝えた。やはりパンツが赤だとどうしてもかなり目立つと思うのだ。「赤」という色に対する、二人の価値観は違っている。姫華は鮮やかで目立つ赤が大好きなのに対し、善はそれが嫌だ。「じゃ、赤い下着は他の色に変えてもらいに行きましょ」善は彼女を見て、すぐに彼女の耳元で何かを囁いた。それを聞いた姫華は顔を赤くさせたが、同時に期待の眼差しで笑って言った。「わかったわ。交換しないで持ってて。次は赤は買わないように気をつけるから。もし、あなたが女性の格好をして私に見せてくれたらもっと良いのに。あなたってすっごく綺麗な顔をしているから、女装したって似合うはずよ」善はすぐに険しい表情に変えて、真面目な様子で彼女に注意した。「姫華、僕は男です。正真正銘のれっきとした男ですよ。どうして女装なんてしないといけないんです?僕はあなたと夫婦になりたいだけで、姉妹になりたいわけじゃないですよ」姫華はケラケラと笑った。「どうやら、あなた達は全員女性の格好をするのは嫌みたいね」「結城社長や九条さんが奥さんたちから、そう要求されたことでもあるんですか?」「結城社長と九条さんが女性の格好をするわけないじゃないの」姫華は彼の質問には答えなかった。実際、唯花と明凛は夫にそんなことを言ったことはないのだ。姫華はただその場で思いついて、わざと善をからかってみただけだ。この時、善は自分が他の男たちと比べられたのかと思い、少し迷って言った。「実は、僕も女の子の格好をしたことがあるんです。小さい頃ですけど、母が娘を期待していたらしく、結果僕が生まれてしまったので、僕を女の子として育てようと思ったとか。そして立って歩けるようになったばかりの頃、母は僕が嫌がらないのを見て、夏になると毎日スカートをはかせていたんですよ。髪だって長く伸ばしていて、娘として育てていたんです」姫華はその話を聞いて興味を持ち、笑って言った。「前はそんな話聞いたことなかったわね」「それは僕の黒歴史ですからね。どうして姫華さんに聞かせられます?」「それで、スカートは一体何歳まではいていたの?ご家族の誰も反対しなかった?」善は言った。「その頃はまだ小さかったので、全然覚えていません。でも、母が大事に取っているアルバムの中には僕が小さい頃プリンセ
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第2297話

「もう二度と、自分が使い物にならないなんて言わないでね。私聞きたくない」「はい、自分を卑下するような言葉はもう言いません。桐生善は優秀で、良い人間です」姫華は自信たっぷりに言った。「それは当然よ。この私が愛する男よ。優秀で良い人に決まってるでしょ」二人はそれからオフィスで暫くいちゃついてから、姫華は会社に戻っていった。彼女は商談の約束があった。善は名残惜しそうに彼女が去っていくのを見ていた。まるで彼が今生の別れとでも言わんばかりの顔をしているのを見て、姫華は立ち止まり、くるりと振り返って彼の顔にキスをした。「私は本当に顧客との約束があるのよ。ドタキャンなんてできないわ。商談が終わったら、休み時間になる頃に迎えに来てあげるからね。ほら、笑って。私はあなたが笑っているのを見るのが好きなのよ。あなたのその笑顔が、恋に傷ついた私の心を癒してくれたんだから」善は微笑んだ。「姫華さんは待っていてください。僕が迎えに行きます」「わかったわ。じゃあね。あなたも仕事頑張ってね」善はエレベーターの前で、彼女が中に入っていくのを見送った。エレベーターのドアが閉まり、愛する人の姿が見えなくなってから、またオフィスに戻った。さて、一方、柏浜のほうでは……白山グループ。奏汰の車が白山グループの前にとまっていた。奏汰は車の中からクラクションを鳴らし、警備員にゲートを開けるよう促した。警備員は奏汰の車を確認すると、中から出てきてゲートを開けようとした。しかし、その時、車の中にロングヘアのワンピース姿の女性がいることに気づいた。その瞬間、警備員は驚いた。この車なら嫌でもよく知っている。あの図々しく、彼ら白山グループの社長をしつこく追い回している、結城家三番目のお坊ちゃんの車だ。毎日、この会社に何度も出入りしている。彼も同僚も、この車のことならよく知っている。だから、絶対に間違えるはずがない。しかし、車には女性が乗っている。結城奏汰ではないぞ。その瞬間、警備員は戸惑った。車に乗っている女性は結城奏汰とどんな関係があるのか。どうして彼の車を運転して来たのか。ゲートを開けるべきだろうか?奏汰は警備員がゲートを開けないで、あほのようにその場にポカンとつっ立っているのを見ると、車の窓は開けずに、ひたすらクラクション
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第2298話

エレベーターに入ると、奏汰は急いでヒールの靴を脱いだ。ヒールを履いて歩くのはこんなに大変なのかと彼は思った。どうりで玲が好きでもないし、履きたがらないはずだ。彼女は女性の格好に戻るのは嫌で、男装をするほうが好きだ。奏汰がプレゼントしたスカートやヒールの靴は全て拒否されてしまった。彼は玲の女性の姿を見たいと言ったが、玲が逆に奏汰の女装を見たいと言ったのだ。今日、彼は一度玲に自分の女装姿を見せに来た。ロングのウィッグをつけ、ワンピースを着ることなどなんということはない。それにメイクをしてみると、男らしいイケメン顔が柔らかい印象になった感じだ。ここまでは問題なくクリアできるのだが、ただ一つ、ヒールの靴をはいて歩くのはうまくいかない。彼はよたよたとまっすぐに歩くことができなかった。まあいい、ここは柏浜だ。彼もみんなに自分が結城奏汰だと教えていない。もし知られていれば、芸能記者がこれを知り、彼の女装は絶対にゴシップニュースのトップに躍り出るだろう。奏汰はわざわざバッグを提げてきた。その中には彼の普段着が入っているから、玲のオフィスに到着したら部屋で着替えさせてもらおう。ただ靴を忘れた。車の中なのだ。きっと玲が靴を持っているだろう。その時は彼女からちょっと拝借すればいい。エレベーターは奏汰を最上階へと連れていった。そして彼はまたヒールの靴を履き直し、エレベーターを降りて、まっすぐに玲の社長オフィスへ向かった。玲の秘書がちょうどオフィスから出てきて、奏汰を見た瞬間、本能的に挨拶をしようとしたのだが、そこには女性の姿があったので「結城社長」という言葉を飲み込んでしまった。秘書は他の社員たちとは違い、少し驚いた後すぐに反応し、奏汰がオフィスに入らないように邪魔をした。秘書は心の中で、どうして一階でこの女が上にあがるのを止めなかったのか、もっと社長の追っかけを増やすつもりか、と悪態をついた。それにしても、この女性はどうも結城社長に似ている。顔は本当に彼そのものではないか。「俺ですよ」奏汰は秘書の前でまったく隠すつもりはないようだ。その短い言葉に、秘書は完全に驚いてしまった。そして、奏汰がオフィスのドアを開けて中に入ろうとしているのを見ていた。「結城……社長ですか?」秘書がやっとの思い
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第2299話

「ですが、玲さんなら違いますよ。あなたは元々女性らしい柔らかさと美しさを兼ね備えていますから、男装をしても、なんというかこう強い男らしさには少し欠けているんですよね。でも、女性の格好をすれば、絶対に傾城の美女間違いない。そもそもあなたは本当は女性なんですからね。さ、俺と服を交換しましょう。あなたのためにこんな格好をして、街中を闊歩してきたんですよ。玲さんは女性の服を着て外を歩き回る必要はありません。ただ、あそこの部屋で着替えて女性の姿のあなたを見せてもらうだけでいいんです」玲「……」なんと、結城奏汰が女装をしてきた。しかもその格好のまま、会社まで来たぞ。玲はじろじろと頭から足の先まで奏汰を見つめて、暫く経ってから、我慢できずに笑いだした。「結城社長、女装するととても綺麗じゃないですか。ただちょっといかついくらいで」「だってそれは俺が男だから、女装をしたってどうしても男っぽさは隠せませんよ。でもあなたは女性でしょう。男装を二十年以上続けていたとしても、やっぱり女性です。玲さん、別に俺みたいに女性の格好をして外を歩けと言っているわけじゃないんです。ただ、この部屋で着替えて見せてほしいだけですよ。それでも駄目ですか?本気で、あなたが女性の格好をしたらどれだけ綺麗なのか見てみたいだけなんです」奏汰はそう言いながら、期待の眼差しで玲の顔をじいっと見つめていた。玲はおかしくて言った。「結城社長、私は女性の格好なんてできませんよ。慣れていないんです。そうやって女装してみてどうです?気分はいいですか?解放された感じがします?絶対にどうも落ち着かず、ぎこちなく感じているでしょう。ヒールの靴を履いて歩くとき、さっさと脱いで手に持って裸足で歩きたくなりませんでした?」奏汰は彼女にそう尋ねられると、黙ってしまった。彼は確かに落ち着かず、どうも慣れずにぎこちなく思っていた。それに特にヒールなど捨ててしまいたい。しかし、彼は男だ。「もちろん、自分が女だということは認めます。どれだけ男装を続けても結局は女性であることは変わらない。事実には逆らえませんよ。否定もできません。ただ、小さい頃からこうやって二十年以上も男の格好をしてきたんで、こういう生活にも、格好にも慣れてしまってるんです。それを女性の服を着ろとか、ヒールの靴を履いてロングのウ
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第2300話

玲が笑う時は、本気で心から楽しくて笑っている。ある点においては、彼女も肯定的だった。最初、奏汰が玲に近づいたのは、彼の祖母の指示があったからだが、本気で玲のことを好きになった時、彼の感情に明らかな変化があった。少しの間座っていて、玲は立ち上がり、デスクから離れて奏汰が着替えている部屋のほうへ行った。この時奏汰はすでに普段着のカジュアルスタイルに変わっていた。ただ、靴がない。革靴は車の中だ。あのヒールの靴を見ると、腰をかがめてつまみ上げ、そのままゴミ箱につっこみたい気分だった。「捨ててどうするんですか。とっておきましょうよ。それは結城社長が初体験したヒールの靴ですからね」玲のからかうような声が聞こえてきた。奏汰はその声のほうへ顔を向けた。玲はドアのところに寄りかかり、両手をポケットに突っ込んで、なんともいえない表情をしていた。「そのワンピースも捨てないで大切に取っておきましょう。ああ、残念ですね。さっきの姿を写真に撮るのを忘れていました」玲はとても残念そうにしていた。彼女はその部屋に入り、奏汰の目の前までやって来ると、両手をポケットから出して、奏汰のシャツを整えてあげた。「社長はやっぱり男の姿のほうがいいですよ」「カッコいいでしょ」「そう、カッコいいですよ。スタイルもいいし、まるでモデルみたいです。どんな服を着たってお似合いです」奏汰は玲がシャツを整えてくれている両手を掴み、情熱に燃える黒い瞳で彼女をじっと見つめて言った。「写真が撮りたいですか?なら、もう一度女装しましょう。いくらでも好きなだけ撮ってください」「やっぱりいいです。確かにかなりのイケメンですが、女性の格好をすると、全然女性には見えませんよ……」玲は手を引っ込めて、奏汰の平たい胸を軽く叩き、からかった。「特にここがね」奏汰「……」実は彼も、もっと完璧に近づくように細部までこだわろうかと思ったが、結局やめてしまった。彼は確かに誰にも勝る厚かましい男だが、しかし、そこまでやるとさすがに恥ずかしい。玲は腰を曲げて、ソファに彼が置いたウィッグをつかみ、少しの間見つめてから、頭にかぶってみた。そしてあのロングワンピースを拾い上げた。奏汰が驚いた顔をしている中、彼女は何事もなかったかのように洗面所に向かった。そしてすぐ、彼女は
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