All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 2271 - Chapter 2280

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第2271話

レストランを出ると、佐々木母が娘の前に手を差し出した。「お母さん、なによ?」英子はすっとぼけたふりをしている。母親は言った。「唯月さんが返してくれた十万、返しなさい」「お母さん、うちの店の商売も最近あまり良くなくって、ほとんどお金稼げてないのよ。うちは一家五人でしょ、食費ももうやばい状態なの。だから、この十万はうちに恵んでよ、ね。それに、俊介がトラブった時は、ちょうど私がいてあの子を庇ってあげたから、命だけは助かったのよ。私だって怪我して入院したんだからね。成瀬の奴が捕まったから、私の医療費の補償はまだないんだよ。だから治療費からなにまで自分で出したんだからね。俊介とあのクソ女はまだ離婚してないんだし、お母さんたちの嫁のままよ。その嫁が私を怪我させたんだから、この十万はその分としてもらっておくわ」母親は娘の額をコツンと叩いた。「母親の目の前でそんなこざかしい事をするんじゃないよ。私もお父さんも、ずっとあなたの家を支えてきてあげたでしょ。それでもまだ満足してないわけ?今うちはどんな状況か考えてごらんなさい。俊介が入院してうちの蓄えももう底をついたわ。この十万はね、私とお父さんがどうにかして集めたものなんだからね。お母さんがあなた達夫婦がいくらくらい貯金しているか、知らないとは思わないことね。億はないでしょうけど、一千万以上はあるでしょ。あなた達の店も商売はうまくいってる。お母さんは病院に毎日ずっといるけど、ぼけたわけじゃないのよ。俊介はまだ退院できない。あとどれくらい入院費用がかかるかわからないの。うちからお金をかっさらっていこうと思っていたのだとしても、それは今のタイミングじゃないでしょ。思い出しなさい。俊介が以前あなた達の家庭にどれだけ貢献してくれてた?前、あなたが何か食べたいものがあったら、いつも弟の家に来て食べさせてもらっていたでしょ。唯月さんがあんた達一家五人に奉仕してくれていたも同然。自分は他人から甘い汁をすするのに慣れてしまって、今実家や弟がどんな状況なのかも考えなくなったのね」すると英子はしぶしぶあのお金を出して、母親に返した。しかし、ぶつくさと文句をもらした。「唯月さんは今超金持ちになったじゃん。俊介と離婚はしたけどさ、俊介は陽ちゃんの父親なんだよ。もし医療費が足りなくなったら、陽ちゃんの父親なんだから
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第2272話

小夏に「救出」された時、弦は数千万もする高級車を運転していたし、彼女に自分は大企業の社長であることを話しているので、別に今更一般人を装う必要はない。今日七人掛けの車を運転して来たのは、子供たちに初めて会うプレゼントを準備したからだ。子供たちがみんな喜ぶようなおもちゃをたくさん買ったので、この車で来たのだった。それに普通の車で来たほうが、誰からの注目も集めずに済む。九条家の跡取りである弦は星城では有名な人物だが、神出鬼没で謎に包まれた彼に会ったことのある人はほとんどいない。彼が数百万の一般的な車でスカイロイヤルに現れても、確かに誰の目も引くことはない。スカイロイヤルに到着すると、弦もすぐに車を降りることはなく、まずは小夏に電話をかけた。小夏はすぐにその電話に出た。「もしもし、九条さん」「花京院さん、こんにちは」「こんにちは、九条さん、あのう、どうされましたか?」この時、小夏は道場の生徒たちを連れて試合に行っていたので、ホテルにはいなかった。彼女は電話に出て話している時も、視線はずっと試合中の教え子に向いていた。試合に出る子供たちはみんな小夏が選び抜いた教え子たちで、とても良い成績をおさめている。もし、この大会で花京院家の道場が優勝を勝ち取ることができれば、また道場の宣伝にもなるし、多くの親たちが子供をその道場に通わせようと思うだろう。「花京院さんは今お忙しいですか?」「ええ、子供たちが今試合中なんです」弦は笑った。「そうだったんですね。じゃ、今ホテルにはいないんですよね?今日は昼食を子供たちも誘って一緒に食べようと約束していたでしょう?」「まだ昼食まで時間があるんじゃないですか?試合が終わったら、ご飯を食べにホテルに戻りますよ」小夏は率直にそう言った。弦は笑った。「私はもうホテルに到着しました。じゃ、ホテルでみなさんをお待ちしています。生徒さんたちの応援を続けてください」弦は子供たちへの贈り物はしっかり準備し、小夏にあげる物も相応しいものを選んできた。小夏は笑って言った。「九条さんったら、こんなに早く来ちゃったんですか?十一時半になったらご連絡しようと思っていたんですよ」「それは、こちらが食事に誘ったんですし、しかも命の恩人にご馳走するんですから、もちろん早めにホテルに来ますよ。花京院
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第2273話

「では、九条さん、お昼にお会いしましょう」弦は笑っていた。「ええ、ではまた後で。あ、そうだ。迎えは必要でしょうか?私が迎えに行くこともできますが」小夏はお礼を言った。「お気遣い、どうもありがとうございます。でも、大丈夫です。もう送迎のバスを手配してるので、試合が終わったら、バスでホテルまで送ってくれるんですよ」「わかりました。次回、試合に来た時はバスの手配は必要ありません。私に連絡してくれれば、こちらで手配しましょう」小夏は笑った。「はい、じゃ、次試合がある時は、九条さんにお願いします」試合自体はしょっちゅう行われているが、星城であるのは少ない。小夏は弦がここまで親切にしてくれるので、一応それに応えておいたのだ。どのみち、星城で試合があることはもうないだろうから、彼に迷惑をかけることもない。電話を終えると、弦はもちろん車の中で昼まで待機する気などなかった。今はとても暑い。車はクーラーをつけてはいるが、長時間この場にじっとしているのはさすがに耐えられない。彼は車から降りてホテルに入ると、ロビーにあるソファに座り、ホテル客が出入りするのを眺めていた。スカイロイヤルホテルはずっと繁盛している。毎日のようにスカイロイヤルに食事に来たり、商談に来たり、ホテルに泊まったりする人たちの往来は多くて賑やかだ。このホテルの総責任者は結城家の奏汰だ。しかし、奏汰はこの時星城にはいない。弦は奏汰が今柏浜に滞在し、奥さん候補の女性を口説くのに忙しいことを知っている。結城家は柏浜のほうにもいくつか大きなホテルを持っている。だから、奏汰は玲を口説くと同時に、あちらのホテル運営の管理もできるという寸法だ。非常に都合が良い。結城おばあさんが孫たちに結婚相手候補の女性を選抜していることは弦も知っている。しかし、おばあさんが孫たちにどこのお嬢さんを選んでいるのかは、彼は知らない。他人の恋愛に関しては、彼も興味はなかった。「プルプルプル……」弦の携帯が鳴り出した。彼が携帯を取り出して着信を見ると、そこには知らない番号が表示されていた。しかし、弦に電話をかけてこられる人物ならば、絶対に彼の知り合いか、その近親者だけだ。それで、弦はその電話に出た。「もしもし、九条さん、私です。神崎姫華です」なるほど神崎姫華がかけてき
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第2274話

「神崎さん、こ、これは一体どういうことですか?私はしっかり秘密にしていたんですよ。どうしてうちの親にばれてしまったというのですか?」姫華は怒って言った。「あなたにも知らないことを、私が知っているわけがないでしょう?あなたはあの九条弦でしょ、あなたでも知らないことを聞かれたって、誰に聞けというのです?九条さん、今回は私を巻き添えにして、あなたが招いたことです。今どこで何をしているのか知りませんけどね、今すぐに、即刻、こちらに来ていただきますよ!」弦は自分のせいであることはよくわかっており、申し訳なさそうに言った。「神崎さん、ひとまず落ち着いてください。これは完全に私のせいです。あなたまで巻き込んでしまいました。すぐに行って両親にきっちり説明しますから。今後何か私にお手伝いできることがあれば、遠慮なく何でもおっしゃってください。私が解決できることでしたら、無条件でお助けします」自分が悪いことを知っている弦は、彼女から呪われないようにするため、急いで姫華にそう誓った。「その言葉、しっかり覚えておきますからね。今後、使いどころがある場合はきっちり、遠慮なく、無慈悲なまでにあなたを使わせてもらいますからね!」姫華はそうまくしたてると、電話をプツッと切ってしまった。姫華が弦に電話をかけて、携帯を放り投げるのを見ていた唯花は立ち上がって彼女の傍に近寄り、携帯を拾って姫華の目の前に戻した。「そんなに怒っちゃって。携帯も壊れるところだったわよ」「壊れたら九条弦に弁償させてやるだけよ。一体何を考えているのか、私まで巻き込んでくれたわ」姫華は母親から電話で急いで帰ってくるように急かさせると、どういうことなのか尋ねた。それで弦の父親が最近息子は姫華に熱をあげているということを知ったらしいことを知ったのだ。寛哉は息子が一生独身で過ごすのではないかと心配していた。結城おばあさんから紹介された占い師の話を信じ、あちこち結婚適齢期の女性を探しまわった。写真を撮ったり、お見合いの場をつくったりと、暫くの間努力してみたが、結果は出なかった。それで、星城の上流社会では、みんな寛哉が息子の結婚相手を探すのに発狂していることを知っている。弦が少しでも話した女性なら、寛哉はすぐにお見合いを手配していた。しかし、みんな今では弦がパーソナリティ障害を抱えているこ
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第2275話

姫華は頷いた。「お母さんが白鳥さんと私をくっつけようとしていた時は本当に鬱陶しいと思ってたわ。白鳥さんだって、最初はそんなことなんて全く知らないで、気づいてからは私とうちを怖がっていたわ。聞くところによると、彼は家を売り払ってこの住宅地からいなくなったとか」この話題になり、姫華はもう呆れかえっていた。一颯に対して申し訳なく思う。何の罪のない無関係な彼を巻き込んでしまった。「白鳥さんは理仁の従弟よ。彼は伯母様の企みに嫌気がさして、理仁に訴えに行ったの。そして理仁にどうすればいいか相談したのよ」唯花が全て説明する前に、姫華はピンときた。彼女は唯花に尋ねた。「唯花、つまり私につきまとうよう、九条さんに言ったのは結城さんだってこと?」「理仁にあの弦さんを動かせるような力があると思う?理仁は従弟に弦さんに相談してみればいいんじゃないかって言ったのよ。弦さんはパーソナリティ障害を持っているでしょ。彼の運命の女性でなければ、結婚したって中身のない夫婦生活よ。もし、弦さんが出てきて、伯母様の白鳥さんに対する注意力が弱まれば、彼は晴れて自由の身になるわ。それから、弦さんの出現で、伯母様も彼と桐生さんのどちらかを選ぶことになる。伯母様はあなたを遠くに行かせたくはないけど、それでも中身のない結婚生活を娘にさせるくらいなら、喜んでA市に嫁がせるはずよ。それに、あなたと桐生さんは相思相愛だもの。姫華、今回の件は理仁が従弟の白鳥さんに余計な事を言ってしまったせいだけど、白鳥さんが一体どんな手を使って、あの九条弦さんを動かせたのか私たちはさっぱりわからないわ。理仁に代わって謝るわ。ここ暫くの間、弦さんのことであなたに迷惑をかけてしまったわね」姫華は言った。「……そういうことだったのね」ずっと不可解だった事は、なるほど母親が元凶だったのか。姫華は弦から「アプローチ」されて頭を悩ませ怒りも湧いていたが、真相を知ると、ふっと怒りが消えてしまった。怒ることができないからだ。そもそも、この災厄の根源は自分の母親だ。唯花が罪悪感を抱き、申し訳なさそうにしているのを見て、姫華は急いで唯花をなだめた。「唯花、謝らないで。私は怒らないし、おたくの旦那さんを責めたりもしないよ。だって、そもそもお母さんのせいじゃない。確かに九条さんの出現で、すっ
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第2276話

唯花は姫華についてオフィスの入り口まで行き、彼女が急いで家に帰っていくのを見送った。姫華が乗る車が会社を出てから、唯花はオフィスの中に戻り夫に電話をして、弦がどうして姫華につきまとっていたのかの真相を教えたと伝えた。理仁は唯花の従姉である姫華には少しトラウマがあるので、妻からのその話を聞くと焦った様子で尋ねた。「神崎さんは俺に対してすごく怒っていたか?」彼にそう尋ねられると、 唯花はわざとこう返した。「ええ、とっても怒ってたわ。もう火までふきそうなくらいだった。私に、あなたとは一緒の部屋で寝るなって」「それは受け入れられない。俺たちを離れさせることなんて誰にも権利はないからな。彼女はそのまま怒らせておけばいい、俺はただ一颯のやつにちょっとアドバイスしてやっただけだろ。まさかあいつが本当に弦さんの手を借りられるとは思ってもなかったんだ。そもそも一颯が鬱陶しく思った発端は、神崎さんと桐生さんの仲を夫人が認めなかったことなんだし。うちの従弟はただそれに巻き込まれただけだ。従兄として、彼にアドバイスしてやるのは間違いじゃないはずだ。神崎さんは君の従姉で、一颯は俺の従弟。俺たち二人とも親戚のために動いただけなんだし」理仁は自分は間違ったことをしていないと、一気にまくし立てると、今度は口調を一変させて慎重に尋ねた。「唯花、彼女は本当にそこまで怒っているのか?」「冗談よ。姫華は本当のことを知って怒ってないわ。彼女は心が広い人間だもん、私達が勝手に怒るんじゃないかって彼女を疑うのがよくないことだったのよ。ただ、弦さんが姫華を好きなふりをしていたことがどういうわけかばれて、弦さんのお父様が知ってしまったみたい。それでご夫婦が贈り物を持って伯母様の家に押しかけてきてて、姫華と弦さんの結婚について話しに行っているみたいよ」理仁「……」「姫華はもうさっさと家に帰ったわ。それに弦さんには急いで家に来るようにって電話もしてた」理仁は言った。「それは心配しなくていいよ。結婚するか決めるのは弦さんなんだから、親がいくら結婚しろって言ってもできるものじゃないし。弦さんも、ご両親にしっかり説明することだろう」唯花もそれはわかっていたが、ただ善が余計な誤解をして嫉妬しないか心配だった。「桐生さんのほうに関しても心配はいらないさ。彼は誤解することはないだ
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第2277話

詩乃の夫である航も続いて口を開いた。「九条さん、これは本当に誤解なんです。息子さんも本気でうちの娘を口説いてきたわけじゃありません。きっと何か事情があったからです。姫華には彼氏がいて、彼とは本当に愛し合っているんですよ」しかし、寛哉はニコニコして言った。「神崎さん、私もしっかり調べたんです。ここ最近、うちの息子が私たちに隠れて、こっそりお宅の娘さんに贈り物をしていたとか。それに何度もこちらには伺っていたようではないですか。姫華さんが出張から帰ってきた時には、空港までお迎えに行ったり。息子は本当に秘密主義者なもので、私たちでも知らなかったんです。もし、もっと早くに気づいていれば、さっさとこちらにお伺いしていたというのに。私たち両家も昔からの知り合いで、数十年になるではないですか。お互いの家のことなら熟知しているはずです。ご安心ください、姫華さんと息子が結婚したら、私たちも彼女を実の娘のように可愛がりますので」妻の静江も言った。「そうですよ、昔からよく知っている家が一番です。うちには娘はいませんから、息子のお嫁さんのことは本当の娘として可愛がりますよ。弦が姫華さんに辛い思いをさせるんじゃないかって心配する必要はありません。私たち夫婦が絶対に姫華さんの味方につきますから」息子が結婚して普通の男性と同じように家庭を持ってくれるのであれば、何があっても目を瞑るつもりでいるのだ。「でも……姫華にはもう彼氏がいるんです。それにあの二人はすごく仲が良いんですってば」詩乃はどう説明すればいいのかわからなくなった。弦は本気で姫華のことを好きなわけではないが、実際彼は姫華を口説くような行動をしていた。姫華が出張から帰れば、すぐに空港まで迎えに来たり、だ。それに姫華にはたくさんの贈り物をしていた。「でも、お宅は桐生善さんのことは受け入れられないのでしょう?聞いたところによると、娘さんを遠くにお嫁に出したくないから、お二人の結婚には反対していたはずでは?それは当然のことですよ。お二人には娘さんが一人しかいないのに、A市みたいにちょっと遠いところにお嫁に行ってしまえば、なかなか会えなくなりますからね。娘さんが実家に帰るのも、みなさまが娘さんに会いに行かれるのも、どちらにしたって難しいでしょう。それに、娘を遠くに行かせてしまって、旦那さん側の家族たちとうまくい
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第2278話

弦がパーソナリティ障害を抱えていなければ、彼と姫華の性格はきっと相性が良いだろう。しかし、彼はあの運命の相手以外には、女性に対して関心を寄せることはない。つまり、姫華と弦には運命の相手としての縁など存在していない。無理やり結婚させたところで、誰が幸せになるというのか。詩乃は姫華を遠くにやりたくはないが、娘の幸せが第一だ。表面的な肩書きだけの夫婦になんて、娘になってほしくない。「旦那様、奥様、九条弦様がいらっしゃいました」使用人がやって来て、詩乃と航に伝えた。詩乃は今まで、この瞬間ほど弦の登場を待ちわびたことはなかった。彼女は何度も「早く、彼をお通ししなさい、早く」と言った。するとすぐに、弦が颯爽と中に入ってきた。彼が到着した時、ちょうど姫華も家に帰ったところで、善も一緒に来ていた。「父さん、母さん、これは一体どういうことだ?」弦は中に入って、テーブルの上に山積みとなった贈り物を目の当たりにして、顔を怒りで赤くさせた。「このバカ息子め、好きな女性がいたんなら、どうしてさっさと私たちに教えなかったんだ。そのせいで私も母さんも食欲はないし、夜もよく眠れなかったんだぞ。一日中どうしたらお前が女性に興味を持てるのか悩みに悩んでいた。それなのに、神崎さんを好きになったことをずっと私たちに内緒にして」寛哉は息子が入ってくるとすぐにそうやって文句の言葉をぶつけてきた。弦はかなり不機嫌そうな顔をして言った。「私がいつ神崎嬢を好きになったと言った?私は彼女のことは好きじゃない。今まで一度たりとも好意を寄せたことはない!」すると寛哉と静江は互いに目を合わせ、静江が理解できないといった様子で尋ねた。「あなた、本当に姫華さんのことを好きなんじゃないの?じゃ、どうして彼女に花やプレゼントを贈ったり、出張から帰ってきた時には空港まで迎えに行ったりしていたのよ?こんなこと今まで一度だってなかったじゃないの。あなたのしていた行為は全て男性が女性を口説く時にするようなことでしょ?」「それは私が白鳥一颯との賭けに負けて、彼の言うことを無条件に聞く羽目になってしまったからだ。彼は、神崎夫人がどうしても神崎嬢と自分を恋人にさせようとしつこいから、それを私にどうにかしてくれと頼んできたんだよ」その場の全員が声を失った。「私と神崎嬢
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第2279話

弦の告白を聞き、その場の全員が彼を凝視した。さっき帰ってきたばかりの姫華まで、興味津々で弦を見ていた。さっきまで怒りに燃えていた善も、この瞬間一気に冷静になった。「それは本当か?その女性はどこにいる?嘘をついているんじゃないだろうな?もし、父さんを騙しているのなら、どうなるかわかっているだろうな。お前の結婚の事で私もお母さんもずっと頭を悩ませているんだぞ」寛哉はその言葉を聞いて驚いてから、すぐに息子にそれは本当なのかどうか確認した。すると弦はいつも肌身離さず持っているあのキーケースを取り出した。小夏と出会ってからも、そのキーケースを返していなかった。これは彼が自分の愛を確認できる唯一の記念の品だ。ただそれはまだ愛する女性からもらったのではなく、神様から先に授かったものだ。弦はそのキーケースにある写真を両親に渡して言った。「二人とも、ほら、これが彼女の写真だ。彼女を見つけ出すことができたのも、神崎嬢のおかげなんだ」すると姫華が言った。「え?私?私は彼女を紹介したりしてないですけど」弦が運命の相手を見つけ出すことができたと聞き、姫華はとても喜んでいた。これでもう、この男からつきまとわれることはなくなった。弦が自分のことなど何とも思っていないことはわかっていても、しつこくつきまとわれて、かなりイライラがたまっていたのだ。もちろん、メリットはあった。それは、母親の善に対する態度がかなり改善されたことだ。それに、彼女は善との愛がさらに深まった。しかし、姫華は善に女性を紹介したことはない。弦はさっき彼女のおかげだと言っていたが、彼女にはさっぱりわけがわからなかった。弦が答えた。「神崎さんが私に紹介してくれたわけじゃありませんが、でもあなたのおかげで、運命の女性に会えたんです。出張から帰ってきたあの日、私が空港まで迎えに行ったでしょう?あの時、空港でこのキーケースを拾ったんです。そして、一緒についていた写真の女性を見た瞬間、すごくドキドキしてきました。きっと、これが心を動かされるというものなんでしょうね。一人っきりの時にはもう我慢できずに、写真にキスを何回もしてしまいましたよ」その言葉に全員また違う意味で言葉を失った。弦は今年三十四歳で、隼翔よりも少し年下だ。二人は星城で最も有名な未婚の社長だ。弦に会った
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第2280話

静江は惜しむことなく、そのキーケースを詩乃に手渡して、にっこりと笑って言った。「ようやく安心しました。うちの弦も、一生独身でいることはこれでなくなったわ。神崎夫人、ちょっとこのお嬢さんがいかがか見ていただけるかしら。うちの息子とよく似合っていると思うのだけれど」さっきまで、まるで親戚になったかのような口ぶりだったのに、今や未来の嫁が別の家のお嬢さんだとわかり、静江は態度を改めた。詩乃は小夏の写真を見て、夫にも見せると笑顔で言った。「このお嬢さんの印象はとっても良いわね。弦さんと並ぶと美男美女でとてもお似合いだわ」もし、その写真に写る女性があまり良くなかったとしても、詩乃は同じように褒めただろう。しかも小夏の第一印象は確かに良く、相手に安心感を与えてくれる。詩乃をそのように思わせるような人は、小夏を除いて唯花姉妹だけだ。以前、まだ唯花たちが自分の姪だと知らなかった時も、詩乃は唯花を見てとても気に入り、仲良くなりたいとまで思ったくらいだ。そして小夏が詩乃に与えた印象も唯花と同じだった。神崎家全員がその写真を見た。善は姫華の傍に近寄って、小夏の写真を見てみた。するとすぐに、弦がそのキーケースを手元に戻し、急いでなおしてしまった。彼のキーケースを大事そうに扱う動きを見て、みんな彼の話が本当だと信じた。弦は本気で彼女のことが好きらしい。この女性こそ、あの占い師が言っていた弦の独身を卒業させてくれる運命の相手に間違いない。「弦、彼女のお名前は?」「花京院小夏さんだ。蔵峯市の花京院道場の館長の娘さんで、幼い頃からずっと武術の稽古に励んでいるらしいよ。子供の時から大人になるまで数えきれないほどの武術大会に参加して、非常に強い女性だ。今はご実家の道場で先生をしていると言っていたよ」寛哉は笑顔で言った。「よし、いいぞ。彼女のような女性こそお前に相応しい。九条家にもぴったりだな」九条家は昔から善良な行いをし、なるべく仇のような敵を作らないようにやってきた。しかし、彼ら一族は他人の情報調査を生業としているため、何かの真相を知ってしまうと、誰かを敵に回してしまうことも少なくない。九条家を滅ぼしてしまいたいほどに恨む輩も存在する。そして弦は将来、九条家を束ねる当主となる身だ。彼の妻はもちろん九条家の女主人となる。もし、その妻が
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