レストランを出ると、佐々木母が娘の前に手を差し出した。「お母さん、なによ?」英子はすっとぼけたふりをしている。母親は言った。「唯月さんが返してくれた十万、返しなさい」「お母さん、うちの店の商売も最近あまり良くなくって、ほとんどお金稼げてないのよ。うちは一家五人でしょ、食費ももうやばい状態なの。だから、この十万はうちに恵んでよ、ね。それに、俊介がトラブった時は、ちょうど私がいてあの子を庇ってあげたから、命だけは助かったのよ。私だって怪我して入院したんだからね。成瀬の奴が捕まったから、私の医療費の補償はまだないんだよ。だから治療費からなにまで自分で出したんだからね。俊介とあのクソ女はまだ離婚してないんだし、お母さんたちの嫁のままよ。その嫁が私を怪我させたんだから、この十万はその分としてもらっておくわ」母親は娘の額をコツンと叩いた。「母親の目の前でそんなこざかしい事をするんじゃないよ。私もお父さんも、ずっとあなたの家を支えてきてあげたでしょ。それでもまだ満足してないわけ?今うちはどんな状況か考えてごらんなさい。俊介が入院してうちの蓄えももう底をついたわ。この十万はね、私とお父さんがどうにかして集めたものなんだからね。お母さんがあなた達夫婦がいくらくらい貯金しているか、知らないとは思わないことね。億はないでしょうけど、一千万以上はあるでしょ。あなた達の店も商売はうまくいってる。お母さんは病院に毎日ずっといるけど、ぼけたわけじゃないのよ。俊介はまだ退院できない。あとどれくらい入院費用がかかるかわからないの。うちからお金をかっさらっていこうと思っていたのだとしても、それは今のタイミングじゃないでしょ。思い出しなさい。俊介が以前あなた達の家庭にどれだけ貢献してくれてた?前、あなたが何か食べたいものがあったら、いつも弟の家に来て食べさせてもらっていたでしょ。唯月さんがあんた達一家五人に奉仕してくれていたも同然。自分は他人から甘い汁をすするのに慣れてしまって、今実家や弟がどんな状況なのかも考えなくなったのね」すると英子はしぶしぶあのお金を出して、母親に返した。しかし、ぶつくさと文句をもらした。「唯月さんは今超金持ちになったじゃん。俊介と離婚はしたけどさ、俊介は陽ちゃんの父親なんだよ。もし医療費が足りなくなったら、陽ちゃんの父親なんだから
Read more