玲は正直に言った。「大人になってから、旅行に行く時間はなかったんです。毎日猫の手も借りたいほど忙しかったので、遊びに行くような時間なんてありません。でも、出張が多かったおかげで、いろんな所には行きましたよ」「じゃ、新婚旅行はどこに行きたいですか?」奏汰は彼女に尋ねた。玲は少し考えてから答えた。「景色が綺麗で、比較的静かに過ごせる場所が好きです」「じゃ、そういう場所をたくさん調べておきましょう。そこに一カ月泊って、二人っきりの世界を満喫するんです」玲は景色の良い所が好きなのか。ちょうど実家のある琴ヶ丘は景色が良く、普段とても静かじゃないか。「琴ヶ丘はどうでしょう?」「好きですよ。でも、琴ヶ丘で新婚旅行を過ごすんですか?」奏汰は笑って言った。「いえ、あそこは結婚したら玲さんもよく行く家になるんですよ。あなたにとっても実家みたいなものです。新婚旅行ならどこかへ出かけないと」「でも、私もまだあなたと結婚するって決めてはいないんですよ。それなのにもう新婚旅行先の話ですか?」玲は自嘲するように笑って言った。「あなたと一緒にいると、簡単に流されてしまいます。ああ、いくら賢くても、人に流されにくい人でも、結城さんと一緒にいると全く無意味ですね」「玲さん、まだ検討中なのは、俺の一体どこが足りてないからですか?」奏汰はすでに長い時間彼女を口説き続け、できることはなんでもやってきた。それでもまだ彼女が結婚をためらっているということは、まだ自分に足りないところがあるのだろうと彼は思った。それで、一体自分のどこがいけないのか知りたかった。「いえ、足りないところなんてありません。まだデートも数回しかしたことないし、普段仕事が忙しすぎるせいで、私たちはまだ結婚するまで仲が深まってないように思うんです。恋をすると一日会わないだけでとても長い時間会っていないような気持ちになるってみんなよく言うでしょう。私はまだそこまで感じるほど気持ちが深くなってないみたいで。それが感じられないのなら、つまりあなたへの愛はまだ足りていないって証拠です。どのみち、まだ結婚ができるほど気持ちが高まっていないんでしょうね。だから、もう暫く結城さんと付き合ってみて、ゆっくり考えたいんです。新年を迎える時にあなたが家に帰れないなんてことにはならないです
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