All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 2691 - Chapter 2700

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第2691話

咲は流星の赤く腫れた頬を見て尋ねた。「あの子に叩かれたの?」鈴に叩かれた頬をさすり、流星は言った。「一回叩かれて、また手を出そうとしてきたけど、それは避けたよ。鈴姉さんも父さんたちの面会に行ったらしい。それで親名義の財産が俺に譲られることを知って、怒って文句言いに来たみたいだ。姉さん、鈴姉さんのことは構わなくていいよ。彼女は父さんと母さんから甘やかされたせいで、世間知らずのわがままに育ったんだ。だから、彼女には社会に出て苦労させないと、成長できないよ」咲は痛々しい彼の腫れた頬をそっと触って、心配そうな顔をした。「あの子、本当に頭がどうかしてる。母親から甘やかされたせいで性格も悪いわ。子供を一生守ることもできないくせに、クズみたいな人間に育てるなんて、ただ子供にとって悪いだけじゃない」鈴は両親のせいでねじ曲がったわがままお嬢様に育ってしまった。親の教育が悪ければ、子供にとってまさに百害あって一利なしだろう。鈴があのような性格になったのも、全て正一と加奈子の教育のせいだ。「さあ、中に入って氷で冷やして」「うん」そして姉と弟は一緒に家に入っていった。一方、まだ怒りが収まっていない鈴は、自分が借りている部屋に帰り着いた。ドアを開けると、目を疑った。部屋には知らない人がいたのだ。しかも、それは一人ではなく、十人以上もいた。中年男性がソファに座り、タバコをふかし、他は全身黒ずくめで静かにその男を囲うように周りに立っていた。聞くまでもなく、その中年男のボディーガードたちだ。まさか、部屋を間違えた?「すみません、部屋を間違えたみたいで」鈴は我に返ると、背を向けて出ていこうとした。「柴尾家のお嬢さん、間違っていませんよ。呼ばれてもいないのに、あなたの同意なしに勝手に入ってきて、すみませんね。びっくりさせてしまいましたかな?」鈴「……」相手は鈴のことを知っているようだが、鈴は相手が誰か知らない。刑務所から解放されてからというもの、どうしてこうも知らない人間が会いに来るのか。河野夫人にしろ、今目の前にいる知らない中年男にしろだ。「お嬢さん、怖がらないで大丈夫ですよ。こちらに来て座ってください。ちょっとあなたと取引きしたいと思ってね、あなたは興味があるでしょうか?」鈴はまた体の向きを
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第2692話

中年男は笑って言った。「私は竜野(たつの)と申します。今、あなたとはこうやって知り合いになったではありませんか」鈴が近づいてくると、彼は遠慮なくまじまじと鈴をくまなく見つめていた。そして最後に、鈴の容姿とスタイルにとても満足したような顔をしていた。「柴尾家のお嬢さん、こちらにどうぞ、座って。少し話でもしましょう」「竜野さんと言いましたね。ここは私の部屋なんだから、まるでそっちが住人のような顔をしないでもらえるかしら?あなた達は不法侵入しているのよ、わかってるの?私はいつだって警察に通報できるんだから」竜野は笑っていた。彼は四、五十歳だろう。かなり容姿には気を配っているらしく、顔もブサイクではない。いわゆるイケおじの部類に入る。ただ、彼が鈴を見つめる眼差しは気分の良いものではなかった。彼から体を何度もじろじろと舐めるように見られるのが気に食わない。まるで獲物でも見定めるような目つきだ。「ええ、ええ、確かに、我々のほうが間違っていますからねぇ。謝罪します」そう言うと、竜野は手を叩いて合図した。するとボディーガード一人が前に出て、真新しい鞄を竜野に手渡した。竜野はその鞄を受け取ると、またそれを鈴に差し出してにやにやと笑った。「お嬢さん、これは謝罪の品です。まあ、大したものじゃないので、受け取ってください。じゃないと、勝手に来た私のことが許せないでしょう」「鞄には困ってないわ」鈴は偉そうな態度で言った。世間知らずの馬鹿だとでも思っているのか。適当に鞄を見繕って来れば、簡単にあやすことができるとでも?たとえそれが超高級ブランドの鞄であったとしてもだ。「もちろん、それは重々承知しておりますよ。だけど、あなたは今金に困っているのでは?」彼は立ち上がると、さっきの鞄を鈴の手に押しつけて言った。「お嬢さん、まずは受け取っておいてください。それからあなたには協力してもらいたいことがあるんですよね」「今の私はお金も力も、能力だってないわ。一体あなたは何に私を協力させたいの?あの河野夫人みたいに、協力してほしいと言っておきながら、誠意を示さずにたった数十万だけを置いていなくなるなんてやめてよね」竜野は瞳をキラリと光らせ、ケラケラと笑って尋ねた。「河野夫人とは?」「だから、河野夫人よ。彼女の夫の名字が
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第2693話

鈴はよく理解できずに尋ねた。「どうして顔を変えないといけないの?私はこの顔を気に入っているの。整形なんてしたくないわ」竜野は笑った。「確かに、お綺麗な顔をしていらっしゃいますからね。手術をしたくないのであれば、この変装マスクを使ってください。出かける時につけるだけでいいので。私が用意したこのマスクはかなり精巧に作られていて、誰も怪しむことはありません。まさにスパイ映画で出てくるような代物ですよ。それから、あなたには新たな身分を与えます。我々の計画が成功するまで、あなたは柴尾家の令嬢という身分には戻れません。しかし、お約束します。無事、事を成し遂げられた時には、あなたが欲しがっている柴尾家の全ての財産をお渡ししますから。あなたのあの目が見えないお姉さんに関しては、蟻でも踏みつぶすように踏みにじることが簡単にできるので、恐れるに足りません。しかし、お嬢さんの手助けが必要です。こちらの計画が成し遂げられてから、あなたが欲しいもの全てを奪い返してあげますよ」竜野の言葉はかなり大袈裟だ。まるで彼は神でも味方につけているかのように、あの結城家の御曹司、結城辰巳までも蟻を潰すように、簡単に殺せると言っているようなものだ。「竜野さんにそこまでの力があるの?あのめくらだけど、もう目は見えるようになっているし、あの結城辰巳の妻よ。竜野さんって星城の人じゃないでしょ?結城家がここ星城でどのような地位にある一族かご存じなの?」鈴は続けた。「私の両親が刑務所に入る前も、結城家の御曹司の前では控えめに振舞わないといけなかった。大きな態度をとることはできずに、彼らを怒らせないように言葉には気をつけないといけなかったのよ。結城家は財力を持っているだけじゃなく、人脈も広いの。親戚、友達全てが同じく名家ばかり。それに一族の人数も多くて若者世代もたくさんいるし、星城の多くの有力者たちが彼らと親戚や友人関係になりたいって思うくらいよ。結城家を動かすことができれば、つまり星城の上流社会では敵なしなの」鈴は若く、血気盛んで、両親から甘やかされて世間知らずのわがままお嬢様になっているが、そんな彼女でも、結城家の星城における地位がいかなるものなのか、よくわかっている。わかっているからこそ、彼女は結城家に嫁ぎたいと思っていたのだ。しかし、それは成功しなかった。逆に
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第2694話

竜野の愛人と聞いて、鈴の顔色は一気に暗くなった。「あなたの愛人になれって?」鈴はまだ二十歳過ぎたばかりで、若くて美しい。それに柴尾家の令嬢なのだから、どこかの名家に嫁ぐことだってまったく問題ない。この目の前にいるイケおじは、確かに自分の容姿に気を配っているから若く見えるが、それでも年齢的に自分の父親と大差ないはずだ。それなのに、愛人になれというのか!図々しいにもほどがあるだろう。竜野はケラケラと笑った。「柴尾家のお嬢さん、あなたは特に能力もないし、現実に向き合おうともしない。一カ月十数万程度の仕事はしたくない。それでどうやって生きていくおつもりかな?弟さんからの毎月十万の仕送りで、本当に生きていけると思ってるんですか?」鈴はその言葉に驚かさせた。弟との会話を、どうしてこの男が知っているのだ?まさか、早々に彼には目をつけられていて、何をするのも、誰に会うのも、また何を話したのかまで、彼は全て知っているのか?もしそうであれば、恐ろしいことこの上ない。あの結城理仁でさえ、さすがにここまではできないだろう。「お嬢さんは少しばかり綺麗で、若く、スタイルが良い点を除いて、他に何かありますかな?」竜野はまた鈴をまじまじと品定めするかのように見つめた。鈴はこの時ようやく理解した。彼がこのように見つめるのは、最初から愛人として弄ぶつもりでいたからなのだ。だから、報酬として、一軒家に新車、それから毎月六百万という小遣いを提示してきたのか。それはこの体と引き換えだったわけだ。さっきの話を聞いていて、彼がパトロンになろうとしているように感じたが、まさにその通りだった。この時竜野は立ち上がり、鈴の隣に座り直すと、片手を鈴の太ももの上に置いた。「お嬢さん、私と手を組めば後ろ盾ができる。そうすることで、以前と同じような贅沢な暮らしができるんですよ。将来、柴尾家の全てを取り戻すことができる。お姉さんを蹴落としたくはないのかな?彼女の男を手玉に取りたくはないか?確かに私とは愛人関係だが、もし、あの結城家の御曹司を見事誘惑できれば、彼と結婚できるように私はその願いを叶えてあげましょう。それに私もここへしょっちゅう来るわけじゃない。だから毎日私に付き添う必要だってないんだ。多くて一カ月に数回程度。でもお嬢さんのほうは一カ
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第2695話

竜野は、はははと笑うと、鈴を見て言った。「お嬢さん、これはあなたが決められることじゃない。引き受けたほうが身のためですよ。嫌でも引き受けざるを得ないでしょう。この私が訪ねてきたことを、あなたに口外されては困りますから、口封じするしかないですからねぇ。それにあなたには苦しんでもらうしかありませんよ。ほら、ここには十人以上も手下がいるんですからね」その言葉に鈴は顔を真っ青にさせた。「それで、私と手を組むのか、それとも死を選ぶのか。数分だけ考える時間をあげましょう」鈴は目の前にいる十数人の黒服の男たちを見た。それからまた竜野へ視線を向けた。この男は一体何者だ?殺せと言って人殺しが簡単にできるのか?まさか狂気的殺人犯?鈴は全身から力が抜けて、床に崩れ落ちた。「竜野さん、お願いです。許してください。私はまだ二十歳なんですよ、死にたくないんです」人生はまだこれからだというのに。竜野は立ち上がって彼女の前まで来ると、手を引いて立ち上がらせ、横向きに抱いた。鈴はどういうことなのか悟り、さらに顔を青ざめさせたが抵抗しなかった。どのくらい時間が経ったのかわからないが、二人はようやく部屋から出てきた。鈴は涙で顔を濡らし、憎しみに燃える目をしていた。竜野は彼女を抱きしめたままソファに戻って座らせると、彼女に言った。「お嬢さん、私のことは恨まないでくださいね。恨むべき相手を間違えないように。彼女たちのせいで、私はあなたにたどり着き、ぴったりなパートナーだと思ったんですからね」悪事をはたらいたのはこの男だが、鈴には唯花と咲たちを恨めと言った。竜野はティッシュをとって、鈴の涙を拭いてなだめた。「ほらほら、もう泣かないで」そう言いながら、彼は財布を取り出して、中から銀行カードを抜き取り、鈴の手に握らせた。「この中には、四千万入っています。好きに使ってください。鞄の中の現金もあなたのものですので」鈴は銀行カードを握りしめて、涙を拭いた後、彼に尋ねた。「私に何をしろと?」「新しい身分で結城理仁の妻に近づいてください。あなたが憎む、あの唯花という女性です。でも、彼女を傷つけてはいけませんよ、そんなことをすれば相手に警戒されてしまいますから。どうにかして彼女とは友達になって信用させるんです。あの牧野という女
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第2696話

鈴はどうにも理解できずに尋ねた。「あなたはそのA市の桐生家が養子として迎えたその子を狙っているのでしょ。それならどうしてA市の人間を探さないの?星城はA市から遠いわ。あの女とその遥って人が仲が良くたって、そう頻繁には会わないでしょ」竜野はため息をついた。「それは仕方のないことですから」A市では瀧に関する情報は調べることはできない。瀧が蒼真夫妻の養子となっていることはわかっているものの、どのような顔をしているのか、外の人間にはわからない。それに、瀧自身あまりA市にはいない。普段、一体どこに隠れているのかすらもわかっていない。桐生家は、藤堂家によって守られているし、望鷹市の篠崎家とは親戚関係にある。それに、桐生家の四番目の御曹司、弘毅の妻である依茉は神と崇められるほどの名医の弟子だ。竜野はそんな相手を怒らせるような真似はできない。以前、うっかり行動に移し、誰かが瀧の身の上を調査していることを蒼真に気づかれてしまったのだ。それから、竜野たちは瀧に関する情報を手に入れられなくなった。そして今、ようやく瀧が唯花の甥である陽と遊ぶ仲だという情報だけつかむことができた。二人は同世代だから、仲の良い遊び友達になるはずだ。それで竜野はここまで遠回りして、唯花を通じてどうにか瀧を誘拐できないかと考えているのだ。そして、あの子供が彼らがずっと探し続けている人物なのか、確認する!それから、一族のトーテムはどこにあるのか……「桐生遥の実家は望鷹の篠崎家です。あなたはきっと彼ら一族について知らないでしょうね。篠崎家は怒らせてはいけない一族。だから私は彼女の養子に手を出すことができないのですよ」実は、彼が最も恐れているのは依茉の後ろに立つあの名医、神のような存在である偉人なのだとは、教えなかった。ただ、瀧を誘拐できればいい。正面からぶつかる必要がないのであれば、ぜひともそれを避けたい。鈴は言った。「あの女には後ろ盾がないとでも思ってるの?それに、唯花って女は友人をすごく選ぶわ。家柄は気にしない。相手の性格や縁を重視してる。私はあの女のことが憎い、だからあの顔を見ただけで、絞め殺してやりたくなるかも。それが友人になれと言うの?」しかも唯花から完全に信頼を得ろというのか。そんな人間は彼女の家族を除いて、牧野明凛だけだろう。
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第2697話

竜野はわざとこう言った。「他の男のもんになった女には興味ないですから。でも、お嬢さんが憂さ晴らしをしたいと言うのであれば、人を手配してあげましょう。私のところできちんとこなすのなら、損させたりはしませんよ。それから、お嬢さんをいじめた奴らなら、必ず復讐してやりますからね」あのトーテムさえ手に入れば、彼は一族の真なる後継者となれる。その時には非凡な力が得られる。その日が来れば、彼は結城家ですら恐れる相手ではなくなる。九条家ならその価値を少し買ってもいいのだが。「あなたは一体何者?」「今は言えませんね。いつか知ることになるでしょう。どのみち、私の側につけば、損はしないとお約束しておきます」そう言うと、彼は鈴に近寄ってその頬にキスをした。「よし、これ以上はお邪魔しません。二人、あなたの身辺警護につけておきます。何かあった時は彼らに連絡すればいいですから。私は仕事が忙しいですので、この辺で失礼しますよ」竜野は鈴の太ももをまた触ると、立ち上がって、ボディーガード二人にここに残るよう伝えた。それ以外は彼と一緒に鈴が借りている家から出ていった。竜野が去ってから、ボディーガードの一人だ鈴に言った。「お嬢様、大家に言ってこの部屋は退去するように伝えてください。竜野様はすでに家と車を購入済みですので、今日からそちらに引っ越して住むことができますので」「とりあえず退去はせずに、この部屋は残しておくわ」鈴はこの時、自分の任務を思い返していた。変装マスクで顔を変え、唯花に近づいて、彼女と陽の信頼を得る。そして唯花と遥が顔を合わせる時に、子供たちもついてくるだろう。その時に、遥の養子を連れ出して、竜野に引き渡すのだ。もし、自分が突然姿を消してしまったら、結城理仁たちのことだ、必ず行方を調査するはずだ。それなら、この部屋はこのまま借りておいて、唯花に近づく時以外は、いつもの柴尾鈴の身分でいたほうがいいだろう。そのほうが、周りに自分はちゃんと星城にいると思わせられる。そして、顔を変えて唯花の前に現れたとしても、誰も柴尾鈴が変装して近づいているとは疑わないはずだ。ただ、竜野という男が、新しく自分に与える身分と名前が何か、今は知らない。ボディーガード二人も馬鹿ではない。鈴の言葉を聞いて、すぐにどういうことか理解した。「それでは
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第2698話

双子は生まれてから数カ月経ち、寝返りを打てるようになっていた。大人たちに向かって、ばぶばぶ言う姿はとても可愛く面白い。瀧は言った。「僕は妹によく会ってるから、すっかり慣れちゃってるんだ。それで僕を見たら笑うんだよ。陽君はあまり会わないから、妹は知らない人だと思ってあまり笑わないかもね。陽君は悠と遊んであげて、妹は僕が見てればいいよ」悠はベビーカーに置いている陽の手をぽんぽんと足で蹴り続けている。この子はちっとも落ち着いていられないらしい。寝ている時は静かだが、それ以外はずっと動いて、抱っこしてくれと泣き喚く。おもちゃで遊ばせても、数分と経たずにそれを投げだして、大泣きしてしまう。一方の芽衣は相変わらず泣くことは少ない。兄と妹が一緒に横になっていると、悠がひたすら泣き続けて、芽衣はその小さな足で兄の体を蹴る。まるで兄が泣き虫でうるさいと言っているかのようだ。陽はベビーカーを見下ろして、芽衣のほっぺにキスをしようとしたが、瀧にとめられてしまった。「妹にキスしちゃダメだよ、蒼真おじさんが言ったんだ。僕たちみんな妹にはキスしちゃダメだけど、しっかり守らないといけないんだよ。キスしたいなら、お兄ちゃんの悠にしていいよ。悠になら、いくらでもしていいって蒼真おじさんが言ってたから」「どうして?」陽はよくわからない様子だった。瀧は大人びて偉そうにこう言った。「どうして?も、なにもないよ」この小さな二人の会話を聞きながら、唯花はちらりと理仁と一緒に座っている蒼真へ目を向けた。あの二人は仕事の話をしている。遥は二人の会話を聞いて、少し呆れたように言った。「芽衣はまだ数カ月だっていうのに、パパはもう周りを警戒し始めているのよ。よその男にとられてたまるかって感じね」唯花は笑って言った。「それは早すぎるんじゃない?芽衣ちゃんは今一体いくつだと思ってるのかしらね」そして一瞬言葉を止めて、また口を開いた。「まあ、うちの理仁も同じようになるでしょうけど。普段はいつもあなたが双子ちゃんを見ているの?まだ仕事には復帰してない?」遥が答えた。「まだ完全には仕事復帰してないのよ。たまにちょっとするくらいかな。蒼真が、子供たちが六か月になってから、仕事に戻ればいいって。二人は日々成長してるの。少し大きくなると、甘えん坊に
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第2699話

「陽ちゃん、こっちにおいで」遥が陽に手招きをした。すると陽は遥の前まで行った。彼女は陽を引き寄せて抱き上げると、自分の膝の上に座らせて優しく言った。「瀧と喧嘩でもしたの?」「してないよ」陽は否定して、幼い可愛い声で続けた。「だけど、りょう君のお話はそのとおりだね。めいちゃんはりょう君の妹なんだ。おばちゃんのこと『お母さん』って言ってるから、彼の妹にまちがいないもん。遥おばちゃん、ぼく、めいちゃんのこと大好きなんだ。ぼくも妹がほしいよ。めいちゃんをぼくの妹にしてくれない?」遥はその言葉が面白くて笑った。「それは無理だなぁ」芽衣は音濱岳ではまるで人気アイドルだ。まだこんなに小さいのに、周りからの愛を一身に受けている。よその人が来て芽衣を暫く抱っこしていると、桐生家は全員、芽衣が連れ去られるのではないかと、そわそわして落ち着かない。「なんで無理なの?だったら、ぼく買うよ、いい?遥おばちゃん、ぼくね、お金あるから、それをおばちゃんにあげる。これでいい?」遥は笑って言った。「それもダメよ。芽衣は物じゃないんだから。売るなんてできるわけないでしょう?陽ちゃん、あなただって芽衣にとっては立派なお兄ちゃんなのよ。瀧が言ったでたらめなんて聞いちゃダメ。あの子はね、蒼真おじさんと同じように独占欲が強いの」蒼真と瀧は実の親子ではないが、芽衣に対する独占欲と愛は完全に一致している。「うそだ、ぼくはめいちゃんより大きいから、お兄ちゃんだけど、りょう君とは違う『お兄ちゃん』だもん」陽は真剣な顔で言った。「おばちゃん、ぼくは来年四さいになるんだよ。三さいのこどもじゃないんだから、だまされないよ」陽は大人がよく使う「三歳のガキじゃない」をうまく利用している。「ええ、そうね。陽ちゃんはもう立派な大人よ。三歳の小さな子供じゃないから、おばちゃんはお手上げだわ。だけど、芽衣は本当にあげられないのよ。そんなに好きなら、時間がある時に、唯花おばさんと一緒にうちに遊びにいらっしゃい。そうすればしょっちゅう芽衣に会えるでしょ?」陽は首を傾げて少し考えてから言った。「だけど、ぼく、毎日ようちえんに行かなきゃ。お休みも二日しかないし、おかあさんにも会いたい。隼翔おじちゃんのおせわもあるし、時間が足りないよ」遥も真面目に尋ねた
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第2700話

陽は悟の首に抱きついて、両頬にキスをした。そして悟は満足そうに笑って言った。「よくできました。ほら、おじちゃんが飛行機のラジコンを買ってきてあげたよ」「おじちゃん、ありがとう」陽は嬉しそうにあの大きな箱を受け取った。悟はタイミングを見て陽を下におろした。「りょう君、一緒にひこうきで遊ぼう」陽は友達を誘った。悟はこの場にいるメンツを見てから言った。「瀧君もいるって知らなかったから、おじちゃん、君には買ってきてないんだ。次に会ったときは必ず、ね」「りょう君、この新しいひこうき、りょう君にあげる。ぼく、他のを持ってくるから、お外で一緒に遊ぼうよ」陽は太っ腹にも、悟がくれた新しいラジコン飛行機を瀧に渡した。陽は他にもラジコンの飛行機を持っている。それは全部理仁や悟、姫華たちからもらったものだ。ラジコンカーもたくさん持っている。それに風車もだ。仕方ない。隼翔がよく風車を持って来たのだ。今では陽も風車で遊ぶことはなくなり、隼翔は他のおもちゃに変更している。しかし、隼翔がおもちゃをプレゼントすると、同じものになる。陽が気に入ったのを見ると、毎日同じようなものばかり買ってくる。他の大人たちが選ぶように新しいものや、前と違うものではない。瀧も断わることはなく、陽からそれを受け取った。陽が他のラジコン飛行機を取りに行って戻ってきてから、二人は芽衣と悠をあやすのをやめて、庭に遊びに行ってしまった。蒼真夫妻は粉ミルクをいれに行った。ミルクができあがると、双子に飲ませ始めた。それぞれ子供一人ずつ抱っこしてソファに座った。「この時間はこの子たちは昼寝の時間なんです。抱っこしたまま寝て、起こさないように慎重にベッドに寝かせないと」蒼真は芽衣を抱いて、慈愛に満ちた顔をしていた。悟は芽衣の小さな顔をそっとつねった。「ぷにぷにしてて、触り心地がいいですね」すると蒼真がパシンと彼の手を叩いた。「ちょ、悟さん、娘の顔をつねらないでいただけますか、痛いでしょう」「でも、泣いてませんよ」蒼真は言った。「もし娘が泣きだしたら、私はあなたと殴り合いをしないといけませんね。うちの娘は一番聞き分けの良い子で、あまり泣きません。それなのにつねって泣かせでもしたら、痛いということです。娘が痛くて泣いたりした
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