唯花姉妹と陽のお年玉だけでなく、詩乃は理仁にも一つ用意していた。結城理仁は自分の娘婿にはならなかったが、姪の夫であるのだから、気前よく彼にも渡すことにしたのだ。「お母さん」その時、姫華がスーツケースを持って上からおりてきた。詩乃は執事に追い出すように急かして出かけさせた。彼女は立ち上がり、娘のほうを向いて笑って言った。「荷物をまとめるのにこんなにかかるなんて」「だって必要なものを持っていかないといけないもの。兄さん達は?」「まだおりてきていないわよ」姫華はスーツケースを抱えて階段をおりてきて、詩乃が彼女に近寄り手伝おうとしたら、姫華はそれを断った。「お母さん、さっき執事に何しに行かせたの?」「唯月さん達姉妹にお正月のお祝いを用意したから、彼に持って行ってもらったのよ」姫華は一言「そっか」と言って続けた。「唯月さんが断らなければ、陽ちゃんも一緒に旅行に行ってよかったのにね。ああ、また暫く陽ちゃんに会えないわ。私たちが帰ってきた時にはもう三歳になってるわよ」「あと二日したら、あなたも二十七歳になるわね」詩乃は娘にそう念を押した。もちろん誰もが一年に一歳年を取って行くわけだが、若い頃は一歳増えれば大人になったと言われ、一定の年齢に達すると、一歳老けたと言われるのだ。「二十七歳だって、まだまだ若いうちじゃないの。お母さん、結婚の催促なんてしないでよ。私、まだ好きな男性を見つけてないんだからね。焦らず、三十歳になったら結婚するわ。三十になっても好きな人が見つからなければ結婚しないで、お父さんとお母さんに一生付き合うわ」姫華はとても人を見る目は肥えていて、普通の優秀と呼ばれる青年では彼女のお目に敵わない。詩乃は彼女に言った。「あなたね、あまり相手にいろいろ求めては駄目よ。性格が良くてあなたの全てを受け入れてくれる人ならいいの。家柄はうちよりも少し下でも別に構わないわ」「それは駄目よ。もし、相応の家柄の相手と結婚しなかったら、男側の家がうちのお金を吸い取って、ATM扱いしてきたらどうするの?ヒモ男なんてまっぴらだわ」詩乃「……」星城において、神崎家と対等の立場にある家は少なくはない。しかし、ちょうど結婚適齢期の息子がおらず、ほとんどは既婚者か、年の差が開いている人しかいないのだ。姫華は年下男との恋
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