All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 811 - Chapter 820

二人は瑞雲山邸に戻った。理仁は唯花を抱えて車を降りようとした。「自分で降りるから、私に触らないで！」しかし、唯花はそれを拒絶した。もう彼に触れられるのが嫌になったのだ。彼を押しのけて、彼女は自分で車を降りた。この時、渡辺（わたなべ）が家から出てきた。唯花を見て、彼はあまりに突然のことに思わず挨拶した。「若奥様、はじめまして」唯花は冷たく言った。「若奥様なんて呼ばないでください。私は結城家の若奥様ではないわ。私なんかこの家に釣り合わないでしょう」その言葉には棘があり、非常に皮肉だった。彼女は相当苛立っていたのだ。彼女は振り向いて理仁に言った。「一人で住んでるって言わなかった？結城理仁、あなたは嘘をつくのが当たり前になってるんじゃない？顔色一つも変えないのね」彼は本当にかなりの演劇派だった。彼女は普段自分が演技してやり過ごすようなことはしないから、彼の演技は少しも見抜けなかった。それに自分も愚かだったのだろう。彼女は彼が一般的な車に乗って、豪邸ではなく、普通のマンションに住んでいるのを見て、彼は本当に一般的なサラリーマンだと思い込んでいたのだ。以前、彼が自分のことを富豪だと言ったら、彼女に信じるかどうか聞いてきたことがある。彼女はもちろん信じなかった。だって、星城一の富豪である御曹司が、どうしてごく普通の、傾国の美人でもない自分と結婚するのだ？スピード結婚したばかりで、親友の明凛にからかわれた時に、彼女は富豪なんてあちこちどこにでもいるわけではないし、スピード結婚で金持ちの御曹司と出会えるわけがないと言っていた。親友は小説を読み過ぎて、夢を見ているだけだと笑ったこともある。結局、彼女の方が馬鹿だったのか。理仁はただ唇をきつくすぼめ、黙って彼女を見つめた。彼女を騙したのは事実だ。反論の余地もない。唯花は暫く冷たい目つきで彼を睨んでいたが、渡辺を無視して、自ら屋敷に入っていった。「若旦那様、これは、若奥様が真実を知って怒られたんですか？」渡辺は心配そうに言った。「おばあ様をお呼びしましょうか」若奥様はおばあ様と仲が良かった。理仁は少し考えてから口を開いた。「今ばあちゃんを呼んでも、火に油を注ぐだけだ。ばあちゃんが唯花さんを俺と結婚させたんだ。最初に自分の身分を隠して唯

「あなたが星城一の富豪の財閥家の坊ちゃんだってことなんか全く知らなかったのに、目的があったって？前に喧嘩した時も言ったでしょう？そうね、確かに目的があったのよ。あなたにはちゃんとした住処があって、家賃も要求してこないし、性格が比較的におとなしくて、仕事も安定しているから、お姉ちゃんも満足できて、安心させられるからよ」理仁は苦しそうに言った。「唯花さん、俺と結婚したのはお義姉さんを安心させるため、お金目当てや俺の身分を狙ったわけじゃないってちゃんとわかっている。俺が間違っていた、本当にすまないと思ってる。唯花さん、全部俺が悪かったんだ。殴っても罵ってもいい。俺が悪いことをしたから、罰を受けるのは当然だ。どんな罰でも受け入れるつもりだ」彼は決して自分を庇うような言い訳をしないと保証できる。唯花は彼を睨みつけた。「最初は、ただ身分を隠して、君の人柄をちゃんと見ておきたいと思ったんだ。ばあちゃんが無理やり君と結婚させようとして、君が一生を添い遂げるに値する女性かちゃんと確認したいから、身分を隠すことにしたんだ。一般人として、君と付き合ってみたいって。一緒に生活して、君がとてもいい女性だとわかってきて、少しずつ君を愛するようになった」理仁は唯花の手を取ろうとしたが、パシッと叩かれてしまった。「唯花さん、本当にすまない」唯花はじっと彼を見つめていた。長い沈黙の後、彼女はまた尋ねた。「最初は私の人柄を観察するためね？じゃその後は？四か月以上も騙し続けて、今になってやっと私の人柄がいいとわかったわけじゃないよね？」「その後も真実を言えなかったのは君が知ったら俺から離れてしまうんじゃないかと恐れていたからだ。君を失いたくなかったんだ」理仁は再び彼女の手を取ろうとして、また彼女に叩かれたが、今度は少し強引にその手を握り、口元に寄せて、優しくキスをした。その黒い瞳に深い愛情と後悔を滲ませ、優しく彼女を見つめた。「唯花さん、本当に怖かったんだ。俺は今まで、こんな怖い思いをしたことがないんだ。君を愛してから、君が離れていくのと、君を失うのがずっと怖いんだ」唯花は力強く自分の手を引っ込めて、冷たく言った。「怖い？全く見えなかったわ。ただひたすら騙され続けたから、あんな悪夢を見たんでしょうね。神様が私に注意してくれたのね。私はバカみ

「理仁、慌てないで、おばあちゃんすぐ行くから、今どこにいるの？」おばあさんは理仁を落ち着かせようとした。夫婦二人がこのような状況に陥ったのは、彼女にも責任があるのだ。理仁は怒鳴った後、少し落ち着いたようで、口調を和らげた。「ばあちゃんが来ても駄目だ。俺たち全員彼女を騙していたんだ。俺たちの誰を見ても、何か月も騙されていたことを思い出すだろう」おばあさんはため息をついた。「だから前から言ってたのに……じゃ自分で何かいい方法を考えてね。ちゃんと唯花ちゃんをなだめるのよ。もしできなかったら、数日冷静になる時間を与えなさい。あまり追い詰めてはいけない……」「彼女は一歩も俺の傍から離れさせないからな！」理仁は今彼のわがままを最大限に発揮していた。おばあさんは言葉を失い、最後には何も言わずに電話を切った。心の中で孫に幸運を祈ることしかできないのだ。この捻くれた性格を何とかしないと、唯花と元通りになるのは難しいだろう。おばあさんに電話を切られて、理仁は七瀬たちに電話をかけて命令した。「唯花さんのために用意したバレンタインプレゼントを全部俺の部屋に持ってこい。それからバラの花をたくさん買ってきて、庭をきれいに飾ってくれ」若旦那様が受けたインタビューがネットで急に公開されて以来、ボディーガード達は若奥様が知ったら激怒するのではないかと毎日心配していた。実際、怒り狂った若奥様が若旦那様に容赦なく殴るのを目撃してしまった。このラブラブだった夫婦が一体どうなるのか全員が心配していた。突然理仁からそのような命令を受けて、七瀬は若旦那様が若奥様の怒りを鎮めたと思って、緊張を解いて明るい口調で快く答えた。「かしまりました。今すぐ若旦那様が用意したプレゼントをお届けします」理仁は低い声で言った。「早くしろ」唯花はすぐ目が覚めるかもしれない。ボディーガード達がフルスピードで理仁が準備しておいたプレゼントを部屋に運び、二階の理仁の部屋をノックした。それと、ベッドで横になって気を失った若奥様を見て、七瀬はびっくりして、思わず尋ねた。「若旦那様、若奥様は一体？」理仁は顔をこわばらせて、薄い唇もきつくすぼめ、じっと唯花を見つめてひとことも言わなかった。ボディーガード達はようやく自分たちが楽観しすぎたと悟った。若奥様は若旦那様を許して

「これこそがあなたの本性なのね。なんでも自分を中心に考えて、すべてを支配するのが当たり前だと思ってるあなたは横暴でわがままで、自己中心的な人間ね。それどころか、偏執的なところすらもある」唯花の言葉は非常に皮肉だった。理仁の性格はまさにそうだった。スピード結婚したばかりの頃、彼が一般人のふりをしていたとしても、彼の性格のせいで、いつも捻くれていて、変えようがなかった。夫婦二人は二度も喧嘩して、冷戦状態にまでなってから、だんだん仲が深まり、ようやく少しその性格を改善することができたのだ。しかし今、その本性がまた現れてきた。こんな理仁と付き合うのは非常に大変だった。特に唯花のようなちゃんと自立した女性なら、理仁のような人間と喧嘩すると、些細なことを段々こじらせ、大きなトラブルになるかもしれない。彼は唯花の怒りを鎮めたいと思いながらも、また何かしら失敗して火に油を注いでしまい、その怒りをさらに爆発させてしまった。そして、どうしてもその怒りを鎮めることができなかった。「唯花さん……」理仁は苦しそうな顔をして、彼女を放した。代わりに彼女の頬を優しく撫でながら辛そうに言った。「金城琉生のところへ行かないでくれ。ようやくあいつを星城から追い出して、君と会えないようにしたんだから」「金城君を星城から追い出したの？牧野のおばさんに何か言ったわけ？」唯花はそう尋ねた後、すぐに自嘲気味に言い続けた。「はあ、驚くことじゃないわね。あなたが私が知らないところでどれだけのことをしてきたのか、私は何も知らないわ。はは、結城理仁、あなたって、私をちゃんと家族として見てる？家族として見てないよね？女って、嫁に行けば夫の実家では血のつなりのない他所の存在として扱われて、実家では客人扱いよ。あなたが私を家族だと思うなんて本当に馬鹿だね……こんなにたくさんのことを隠して、長い間私を騙してきたんだもの、完全に私をよそ者扱いしてるじゃないの……」唯花はそう言いながら、悔しさで目を赤くしたが、なんとしても涙を見せなかった。理仁の前で泣きたくなかったのだ。この嘘つきの慰めなど受けたくなかった。「唯花さん、君は俺の家族で、一生を共にする妻なんだ。確かに俺は君に悪いことをして、傷つけて、その信頼を裏切ってしまった。誓うよ、今後……」唯花は冷たい目で

怒りと悔しさで頭がいっぱいになった唯花はどうしても出て行けず、結局部屋の中に戻り、客間に閉じこもった。姉と親友に助けを求めようと携帯を取り出したが、すでに電池切れだった。唯花「……もうまったく！」唯花が部屋に閉じこもってる間、理仁は彼女の邪魔をしに来なかった。彼も助っ人を探していたのだ。そしていつものように悟に連絡した。悟はちょうど明凛を店まで送ったところだった。明凛は充電器を持ってきて、電動バイクを充電していった。「九条さん、結城さんが唯花に何かをしたりしてないか聞いてくれます？」明凛は無理やりに連れて行かれた唯花のことが気になって仕方なかった。悟は頷いた。「今電話して二人の様子を聞いてみます」そう言いながら、悟の胸には嫌な予感が過った。彼は理仁のことをよく知っている。この件に関しては、理仁は恐らくうまく対処できないだろうと思っていた。ああ、妻を騙すなら、遅かれ早かれその報いは訪れるのだ。もちろん、それは理仁の自業自得に過ぎない。最初は正体を隠して、唯花の人柄を確かめるというのは理解できないわけでもないが、その後打ち明ける機会ならたくさんあったのに、これもそれも心配でうじうじしていて今になってようやく打ち明ける勇気を出したのだ。唯花が怒らない方がおかしい。悟が電話をかけようとした時、携帯が先に鳴った。着信を確認しながら、明凛に言った。「理仁からだ」「早く出てください」明凛はそう言いながら、今すぐにでも携帯を奪い取りたいほど焦っていた。悟が電話に出ると、明凛は彼の傍に寄り、耳を澄ませた。「悟、助けてくれ」電話の向こうの理仁は疲れ切った声で言った。「唯花さんはすごく怒ってる。どうなだめていいか全然わからないんだ。俺、どうしたらいい？悟、教えてくれよ。彼女はきっと俺から離れてしまう。俺は彼女の性格をよく知っている。間違いなく俺のことを蹴り飛ばして、一生許してくれないだろう。それに、もし最初から俺が結城家の御曹司だと知っていたら、金城琉生に頼んで一緒に義姉さんを騙す方がマシだって言い出したんだぞ。俺を捨てて、金城琉生のところへ行くんじゃないか？そんなことは絶対に許さない！もし本当にあいつに会いに行こうとしたら、屋敷に閉じ込めて、一歩も外に出さないからな！」悟「……」明凛「…