All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 831 - Chapter 840

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第831話

「礼なんて必要ないさ。俺はただ理仁たちあの夫婦のことを気にかけているだけだから」隼翔が率直にそう言ったのは、まるで唯月に他意はないから誤解するなと言っているようにも聞こえた。「あいつら、どうだった?」隼翔はとても気になってそう尋ねた。唯月はため息をついて言った。「東社長が結城さんと知り合ってからもう長い時間が経っているのでしょう。ただビジネス上での付き合いがあっただけじゃなくて、実際はとても仲の良いご友人同士だったんですよね。東社長、あなたまで結城さんの嘘に付き合って、私たちを騙していたんですね。結城さんがどのような方か、あなたのほうがよくわかっていらっしゃいますよね。彼は今、唯花を自分の傍に置いておけば問題ないと思っています。唯花はあの家から出て行きたいと思っているのに、彼のほうがそれを許さないんです。彼ももう疲労困憊した様子で、妹のほうも悪い意味で諦めてきてしまっているようでした」隼翔は口を開けて、親友のためにも何か彼を擁護する言葉を言おうと思ったが、あと何を言えばいいのか言葉が見つからなかった。彼の良いところはすでに何万回と唯月には話した。喉が乾くまで必死になって理仁のことを擁護し、唯月のところで何杯もお茶をおかわりしたくらいだ。「今は結城さんが気持ちに区切りをつけない限り、私たちには二人の関係を改善させる方法なんてありません」理仁のあのねじ曲がった性格を思い、隼翔は思わずため息をついた。「理仁に数日時間をあげよう。無理やり妹さんを閉じ込めておいても、関係がどんどん悪化していくだけだと、きっと気づくはずだ」隼翔は愛というものはよくわからないが、それでもそれくらいはわかる。理仁が気づかないわけはないだろう。隼翔は時間を確認してから唯月に言った。「内海さん、俺はこれで失礼するよ。今後何か困ったことがあれば、いつでも俺に連絡してくれていいから」「下まで送ります」隼翔は唯月が見送ってくれるというのを断らなかった。唯月は息子を抱っこしたまま、隼翔を下まで見送りに行った。「陽ちゃん、東おじさんが帰るわよ」隼翔は軽く陽の可愛い小さな顔をつねった。陽が彼の手を叩く前に、隼翔はサッと手を引っ込め、陽に怒りの目つきで睨まれながら、ハハハハと豪快に笑って車に乗り込み、すぐに運転して帰っていった。隼翔の車が見えなくなって
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第832話

しかし、俊介夫妻が結婚祝いをする暇もなく、また社長から催促の電話がかかってきて、会社に戻り引き続き仕事をする羽目になってしまったのだ。そして、彼は結城社長が妻を溺愛しているというインタビュー記事を見たのだった。唯花の夫である結城理仁は本当にあの結城社長だったのだ。彼は当時そうかもしれないと疑ったことはあったが、それは彼に否定されたのだ。それが結局、結城理仁は本当にあの結城家の御曹司だったのだ!莉奈はこのことを知ると、嫉妬で狂ってしまった。唯花はこんなに運が良く、一気に高い地位に就けたと妬んだ。以前、神崎夫人が唯月姉妹の実の伯母であるということを知った時も、莉奈は羨望と嫉妬の目を向けていた。莉奈がこの日の午後ずっと嫉妬し続けているものだから、俊介は面白くなかった。唯花が結城家の御曹司と結婚したのは、唯花自身のことだというのに、莉奈がこのように嫉妬するとは、俊介のことが嫌になったのか?「唯月!」俊介は唯月に話しかけるというか、彼女を詰問するようにこう尋ねた。「さっきのあの男は東社長だろう?彼はお前の家から出てきたぞ、一体あいつと何やってたんだ?あの男はもしかして、お前のことを好きなのか?」唯月は最近かなり痩せている。あの昔のスタイルからはまだまだかけ離れているが、離婚前と比べて、彼女はスリムになっていた。「それでお前、最近こんなに痩せたのか。お前、自分が痩せて俺と結婚する前の容姿に戻れば、妹と同じように一気に上流階級に上がれると考えてんじゃないのか?唯月、俺らは前夫婦だったんだ、その情があるから良いことを教えてやるよ。自分の身の丈に合わないことなんかやるんじゃねえ、東社長はお前なんかと釣り合うような人間じゃないんだぞ。お前が再婚したいと思ったら、年寄りにでも好かれるのがせいぜいってとこだろ。まさか俺が離婚してから若くて綺麗な女の子と結婚したように、自分もそうなれるとでも思ってんのか?」唯月は冷たい顔になった。「佐々木さん、私と東社長がどんな関係かなんてあんたには関係ないでしょ。あんた、私のなんだと思ってるの?一体何様のつもりよ、自分が偉いとでも?あんたに私のことが言える資格なんてないのよ。確かにすごいわよ、あんた、離婚してから若くて綺麗な女の子をお嫁さんにもらえたのでしょう。だったら、今すぐ帰ってその若くて綺麗な新
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第833話

唯月は冷ややかに元夫を睨んで言った。「唯花だって、あんたなんかに構ってるような時間はないわよ。あんたの仕事がうまくいかないのは、自分の能力の問題よ。いつもいつも何かあれば誰かに責任を押し付けるような真似をしないで、自分に原因を探しなさいよね」妹は今、自分がいつの間にか結城家の若奥様という立場になっていたことを知ったのだ。それなのにどうやって自分のその身分を利用して俊介を懲らしめるような時間がある?「唯花じゃないってんなら、結城の野郎の仕業だ。絶対、唯花が結城を利用して俺に何か仕掛けてきやがったんだ。俺も莉奈も仕事がうまくいかなくなるようにな」この時の俊介の瞳は、恨みで溢れていた。彼も馬鹿ではない。唯月と離婚してすぐに仕事がうまくいかなくなり、毎日毎日社長からは怒鳴られている。今月のボーナスも全部消えてしまった。ただ基本給だけしかもらえず、彼はもうスカイ電機には長くはいられない。今、会社の全員が、彼がいつになったら辞めるのか待っている状態だ。もし、裏で誰かが小細工していなければ、彼は以前と同じように順風満帆に仕事を進めていて、こんな急激に舞台から降ろされるようなことはなかったはずだ。もしかしたら、本当に唯花の仕業ではないのかもしれない。彼女は今になってはじめて結城理仁が結城家の御曹司だという事実を知ったのだからだ。しかし、結城理仁が黙っているとは俊介は思えなかった。理仁が俊介に復讐をするのは、唯月の憂さを晴らすためだろう。唯月はあの頃理仁の正体について少し予感していたのではないか?それとも、彼女はある程度事実を知った上で、彼女自身は彼に仕返しなどしないと約束したのではないか?俊介も離婚する時に、何か裏があるのではないかと疑わなかった自分を恨んだ。「もし、結城さんがあんたに何かしたんじゃないかと思うんだったら、直接彼に尋ねてみればいいでしょう?佐々木さん、あんた本気で自分がすごい人間だとか思ってる?結城さんは一体どのような身分の人よ?彼のような人が、あんたみたいなクズで最低な小物に構ってるような時間があるとでも思ってんの?あんたに復讐しようと考える時間だけでももったいないわ。明らかに自分の仕事能力が足りないだけじゃないの。毎日成瀬さんと仲良いことを見せつけるのに忙しくしてるもんだから、仕事でミスが出たんでしょ。はははは、そ
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第834話

莉奈は彼が接待で結構な量の酒を飲むことを知っていたはずだ。電話をかけてきた時に、彼女は車の運転には気をつけるように言ってきたが、飲酒運転はしてはいけないとまでは言わなかった……この二人を比べて、俊介はあまり良い気持ちがしなかった。だからただ自分に言い聞かせるしかなかった。莉奈はまだ若いから、人のことをどこまで気遣ってあげればいいのかわからないだけだ。これから少しずつ学んでいくだろう。それから俊介はまた唯月が住むマンションをじっと暫くの間見つめてから、その場を離れた。そして花屋へ行って花束を買って家に帰った。彼が今借りている大きな部屋に到着し、玄関を開けるとすぐ目に飛び込んできたのは、ソファの上に不機嫌そうに座っている母親だった。父親と莉奈の姿はリビングにはなかった。姉一家は、だいぶ前に子供たちの学校が始まるので実家のほうに帰っていた。しかし、姉夫婦はどちらも失業中で、彼に仕事を紹介してほしいと頼んできた。俊介は自分自身でさえも危ない状況だというのに、姉夫婦のために仕事を探してあげることなどできるわけがないだろう。そして、姉は彼に不満をもらした。彼が成瀬莉奈と一緒になってから、ずっと不幸続きで、莉奈は疫病神だと罵った。莉奈に関わった者はみんな運が尽きてしまうと。そして、唯月がいかに素晴らしかったか、唯月は確かに太っていて、見た目は悪かったが、夫をしっかりと支えていたと言い始めたのだ。彼女が俊介と結婚してから、彼は仕事も成功し順風満帆にいき、今これだけの財を成すことができたのだと主張した。姉が彼に文句を言う時のその声はとても大きく、莉奈に聞こえても構わない様子だったので、莉奈が怒るのも当然だった。莉奈は英子と口喧嘩になり、姉家族を家から追い出そうとしまったのだ。もし、英子一家が出ていかないと言うのであれば、ここの家賃を半分負担してもらい、食費も出してもらうと莉奈は言った。生活にかかる費用は折半してもらうと言われ、英子は怒り狂ってしまった。俊介は嫁小姑の争いが勃発したその夜、彼にできる限りの対応をした。姉に結構なお金をあげて、夫と子供たちを連れて実家に戻るようになだめたのだ。子供たちも新学期で学校に行く必要もあるしだ。俊介はさらに莉奈もなだめる必要があった。成瀬家への結納金問題についても駆け引きしなければならない。成瀬家
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第835話

「俊介、あんた新しい奥さんができたとたんにお母さんのこと忘れてしまったのかい。昔のあんたはこうじゃなかった、あの女狐に惑わされて母親すらも捨てる気か。ああ、私はなんて不幸なんだろうね、こんな息子を産んじまってさ、どうしてあんな女狐が嫁になんか来たんだろう。唯月さんや、お義母さんは後悔してるよ。私が間違ってた、やっぱりあなたのほうが良かった。食事の用意も家事もちゃんとするし、私にだって良くしてくれていたよ。夫を支えてくれて、あなたがいた頃は俊介の仕事もうまくいってたし、金運だって良かった。私たち一家はとても幸せに過ごしていたというのに。そんなあなたがいなくなってから、俊介の仕事はうまくいかなくなって、収入も激減しちまった。英子たち夫婦だって仕事をなくしちゃってさ、年寄りの私も毎日いじめられて……後悔しかない、もう未練しか残ってないよぉ!」佐々木母は大声で泣くように叫びながら、息子は親不孝者だと責めていた。唯月がいた頃、彼ら一家は平穏な暮らしを送っていたというのに。しかし、彼女は涙を流してはいなかった。ただ辛そうに叫ぶだけだ。無念だ。この時の佐々木母は本気で唯月がいなくなったことを後悔していたのだ。これは佐々木母に限った話ではなく、あの最低な英子でさえも後悔していた。成瀬莉奈と比べなければ、彼らは一生唯月がどこほど良い嫁だったか知る由もなかっただろう。以前、唯月は全く使いものにならないと思い、俊介と唯月が別れることを期待していた。それが、今度は俊介が莉奈と一緒になると、莉奈は彼女たちの手に負えるような女ではない。英子がいくら口喧嘩しようとも、莉奈には全く敵わず返り討ちに合うだけだったのだ。佐々木母が英子のほうに味方につこうとすると、莉奈はその勢いをさらに増し、佐々木母は将来娘と一緒に暮らして娘に老後の世話をしてもらえと大声をあげた。彼女が完全に娘のほうについて、息子の嫁を苦しめようとするからだ。自分がまだ動ける間は娘の手伝いをして、息子とその妻には全く構おうとしないうえに、息子の家庭からは金をせしめてそれを娘に与えようとする。そして、自分が動けなくなったら、息子夫婦に老後の面倒を見てもらおうというのだから、夢でも見ていればいい!莉奈も、もし義父母がこのように娘のほうに偏ったやり方でサポートしていくつもりなら、老後の世話も亡くな
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第836話

「母さんもさ、もうこれ以上唯月のところに現状を訴えに行くのはやめてくれよ。家庭内の醜態を他人に晒してどうすんだ、こんなに長く生きてきたのに、そんなこともわかんねぇの?そうやってあいつのとこに情を訴えに行ってれば、あいつが母さんに同情してくれるとでも思ってんのか?あいつはただそれを聞いてほくそ笑んでるだけだぜ」俊介は心の中に溜まっていた鬱憤を、ここで一気に吐き出した。それを聞いていた佐々木母の顔は怒りで真っ赤になっていたが、ひとことも発することができなかった。「母さん、よく考えてみろよな」俊介は全て言い終わると母親にくるりと背を向けてドアのほうへと向かった。「どこに行く気だい?」佐々木母は息子がまた出かけようとするので急いで尋ねた。「母さんが莉奈に買ってきた花束だめにしちゃっただろう、もう一回買いに行ってくるんだよ」佐々木母「……」俊介は母親に顔を向けることなくそう言うと、また莉奈のために花束を買いに出かけていった。そして再び家に帰ってきた時、母親はソファでむせび泣いていた。それを見た俊介はイライラして、これ以上母親に構う気もなく、新しく買ってきた花束を抱えて自分の部屋に戻った。莉奈はこの時ベッドに横になって携帯で動画を見て、ケラケラと笑い声をあげていた。そして彼が花束を持って入ってきたのを見ると、莉奈は携帯を置き、ベッドからぴょんと飛び降り、裸足のまま俊介のほうへ駆け寄った。「あなた、お帰りなさい」さっき俊介がリビングで義母を責め続けているのを、実は莉奈も部屋の中からこっそり聞いていたのだった。夫が自分のほうに味方をしてくれたことに、莉奈は心から喜んでいた。「莉奈、これ君にあげるよ。今日は俺たち新婚の一日目だからね」そして彼は綺麗なボックスを取り出して、それを開け中から指輪を取り出した。「それから、これも」莉奈は花束を受け取り、また手を彼のほうへさし出して、俊介にその指輪をはめてもらい、甘えた声で言った。「家の内装もしないといけないから、お金は節約しなくちゃね。私の親には……披露宴のお金は出して、結納金は、まあ、気持ち程度でいいわ」俊介が言っていたように、彼女の両親に一千万以上の結納金をあげたとしても、彼女の手元には来ないのだ。それは彼女の二人の兄のために使われるというのだから、なぜそんな大
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第837話

莉奈の言葉を聞いて俊介は彼女を抱きしめ、彼女の頬にキスをした。「莉奈、ありがとうな」「私たちもう夫婦なのよ。あなたが唯月と一緒にいた頃よりも素敵な生活を送りたいの」唯月の名前を聞いた瞬間、俊介は明らかに体をこわばらせたが、彼は何も言わずに莉奈をベッドの上に抱き上げた。そしてこの日、二人は甘くとろけるような夜を過ごした。一方、唯花はというと。瑞雲山邸にいる唯花は屋敷の周りを何週も歩き、疲れるとまた家の中へと戻っていった。理仁は彼女の後ろを黙ってついていた。彼が彼女に話しかけようとすると、彼女はきまって「嘘つきの結城さん、私からもっと離れてくれない?今あなたと何も話したくないの」と言った。理仁には話しかける理由もなく意気消沈して、ただ黙って彼女について行くしかなかった。部屋に戻ってくると、唯花の携帯は充電が終わっていた。彼女は充電器を外し、携帯を手に取り見てみると、たくさん未着信通知とLINEメッセージが届いていた。それにショートメッセージも多く来ていた。「そこの大嘘つきさん、充電器はここに置いとくから自分で持ってって」唯花はそう冷たいひとことと充電器をテーブルの上に残して、携帯を手に持ち上へあがっていった。「ゆいかさぁん……」理仁は低く小さい声で彼女の名前を呼んだ。発音する時には切なそうに伸ばした声を出していた。唯花は聞こえないふりをしてまっすぐ上へとあがっていった。理仁はそれに続いた。唯花はもちろん彼ら夫婦用の部屋には戻らず、客間のほうへ入るとすぐに内鍵をかけて、理仁が予備の鍵を持っていても開けられないようにしてしまった。理仁は部屋の外に締め出され、ドアをノックしながら優しい口調で言った。「唯花さん、まだ怒ってる?どうしたら怒りを鎮めて俺と話す気になってくれるんだ?」彼は彼女から冷たく疎遠にされ、口を開けば嘘つきだの詐欺師だの言われるのに耐えられなかった。彼女に激しく反抗されるのも、我慢できなかった。この時の理仁は本気で自分はどうしたらいいのか完全にわからなかったのだ。悟に助けを求めても、まずは冷静にさせてくれ、何か思いついたら彼に伝えると言われてしまった。悟がなぜ冷静になる必要があるのだ?唯花は全く彼の相手をしなかった。彼女は部屋にあるソファに腰かけると、携帯を
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第838話

彼女はただ理仁にだけ怒りを向けているわけではない。一緒に彼女を騙し続けてきた結城家一家全員に対しても腹を立てているのだ。唯花はまず姉にメッセージを送ってから、明凛に電話をかけた。「唯花」明凛はすぐに彼女の電話に出た。「唯花、今どうなってる?昼間ずっとあなたの携帯は繋がらないし、何百回かけたってずーっと電源が入ってなかったわ。夜になってやっと繋がったと思ったのに、全然出てくれないし」唯花は親友の前では無理やり平気なふりをして言った。「携帯の充電が切れて勝手に電源切れちゃってたのよ。だからずっと繋がらなかったの。後からあの嘘つき野郎に充電器借りてやっと電源が入ったんだから」嘘つき野郎……明凛は唯花の物言いがトゲトゲしていて、まだ怒りは収まっていないのが聞き取れた。そりゃあ、なかなか怒りは鎮められないだろう。一番近くにいた夫に騙されていたのだから。「電源が切れてたのね。だけど、本当にどうしたのかって焦っちゃったわよ。あなた、大丈夫?」唯花は暫く黙っていて、苦笑しながら言った。「大丈夫って言ったら、それは嘘になるわね。大丈夫じゃない、最悪よ。明凛、私は今自由を奪われてるの。あのバカ野郎私をこの家から一歩も出させないわ。お姉ちゃんが私を迎えに来ても、あいつは首を縦に振らないの」明凛「……か、彼のやり方はちょっと行き過ぎてるものね。九条さんに電話をかけてきて言ってたけど、あなたを気絶させたらしいわね」その話を聞いて、唯花はまた怒りが込み上げ、辛そうに言った。「私が怒って当然のことをあいつはやったのよ。怒っちゃダメ?私はただ冷静に考えたかっただけなのに、首の後ろに手刀入れてきたのよあいつ、首が折れそうだったわ。私ったらどうしてこんな男なんかと結婚しちゃったのかしら。これも全部おばあちゃんのせいだわ。彼女がはじめから私を騙していたのよ。最初に結城家のおばあさんだってことを教えてくれていれば、お金使って誰か私と結婚したと演技してくれる人を雇ってお姉ちゃんの所から出て行ったわ。あんなクソ男なんかとスピード結婚しなかったわよ。一族全員詐欺師よ、ここまで私のことを騙し続けるだなんて。私は絶対にあいつを許さないわ。すぐに許してもらえると思わないことね!彼との結婚は……差が大きすぎる。だから、離婚したいの、離婚協議書だってもう書いたわ、彼
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第839話

「うさぎとか爬虫類は鳴きもしなくてうるさくないし、とりあえずいらないわ。声が大きい鳥たくさん買ってきてくれない?オカメインコのオスとかメスがいたら大きな声で歌うじゃない?絶対あいつ煩くて発狂するわよ」明凛はそれに応えた。「わかったわ、それは私に任せてちょうだい。かならず任務を遂行してみせるんだから」ただ、唯花が邸宅を動物園に仕立て上げたとしても理仁が折れるかどうかはわからない。「だけどさ、唯花、結城さんさ、違う、あの嘘つきのバカ野郎がこんなことくらいで折れるかしら?彼は他にもたくさん家を持ってるでしょう、あなたを他の家に連れていったりしないかしら?」唯花は少し黙って、また口を開いた。「私だって、あいつがどんな反応するかはわかんないわ。どうであれ、あいつが私にこんなことするんだから、私だって平穏な暮らしをあいつに送らせるわけにはいかないわね」「なんだか、今のあなた達って仇同士になった感じね」唯花は苦渋に満ちた表情になり、返事をしなかった。「九条さんに、結城さんを説得してって言ったのよ。そしたら彼が私にあなたから結城さんを説得してみてって。結城さんがあなたを騙すことになったのにはやむを得ない理由があるからって。あの人って星城一の富豪結城家のお坊ちゃんでしょ、周りからお金目的で近づかれることがあるから、あなたに身分を隠してどんな女性なのか知りたかったらしいわ」明凛は続けて言った。「私は九条さんの提案を断ったわ。彼って結城さんのお仲間なんだから、当然結城さんのほうについて、彼を擁護するでしょう。そして私はあなたの親友だから、もちろんあなた側につくわ。唯花、あなたがどんな決断をしても私は応援しているわよ、ずっとあなたの味方なんだからね」唯花は少し黙ってから言った。「彼が最初に正体を隠していたことは、私も理解できる。だけど、それから暫く経ってお互いを好きになって、本当の夫婦になったでしょ、それなのにそれでもずっと私を騙し続けていたから、私は腹が立ってるの。今は彼の私に対する気持ちすら信じられないわ。今でも私を騙しているとも限らないでしょ?あいつが言う話には全く誠実さが感じられないわ。口をついて出てくる言葉は全部無責任でデタラメなことばかり。それに、あいつと姫華のことも、姫華が私とあいつが夫婦だって知ったら、一体私のことをどう思う?」「
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第840話

「唯花」ドアを開けるとまず目に映ったのは、理仁があのイケメン顔をササッとご機嫌取りをする微笑みに変える光景だった。しかし、彼はいつも顔をこわばらせ、難しい表情をしていて、あまり笑うことがないので、この時に作りだした笑顔を唯花は嘘っぽく感じた。「唯花、着替えを持ってきたよ」理仁は両手で彼女の着替えを二着大事そうに持っていた。一着はパジャマで、もう一着は唯花が明日着る用の服だった。「部屋の中に置きに行ってもいいかな?」唯花は彼を部屋の中まで通さず、自分でその服を掴み取り、すぐに二歩下がってバタンッと大きな音を立て、ドアを閉めてしまった。そしてもう一度内鍵をかけなおした。理仁「……」彼はその場から離れず、守り神のように唯花がいる部屋の前にへばりついていた。それと同時に心の中で時間を数えていた。唯花はきっとまた彼に用があって、ドアを開けるはずだからだ。予想的中、二分も経たずに彼は中から鍵が開く音を聞いた。そしてすぐに姿勢をまっすぐに正して、あの端正な顔に笑顔をプラスした。唯花がドアを開ける瞬間、彼は微笑みながら優しい声で言った。「唯花、何か用がある?なんでも言ってくれ、今夜は君のためになんだってするから」「服があと二着足りないの。それから生活用品も欲しいから、今すぐ持って来て」理仁は急いでそれに応じた。「わかったよ、ちょっと待ってて、今すぐ持って来るからね」そして、彼は体の向きを変えてへこへこと小走りで離れていった。少ししてから、彼は再び唯花のところまで戻って来て、生活用品を詰めた袋を唯花に渡した。「唯花、他に何か必要なものがあったらいつでも声をかけて、すぐに持って来るから」唯花は中身をざっと確認し、必要なものは全て揃っていると思い、また後ろへ下がってドアを閉めようとした。「唯花」理仁は片足をドアの隙間に差し込み、体をねじ込んで唯花がドアを閉めるのを阻止し、両手をさすりながら図々しくもこう言った。「唯花、年は明けて春に近づいてはきたけど、ここ数日寒冷前線が南下し、気温が下がってすごく寒くなっただろう。この客間には暖房がないから、一人で寝るのはちょっと寒いんじゃないかなと思って。俺には、とある特典がついてるんだよ。湯たんぽになれるんだ。もちろん絶対に君に手を出したりしないよ、ただ温めてあげようかなって」
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