All Chapters of 交際0日婚のツンデレ御曹司に溺愛されています: Chapter 971 - Chapter 980

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第971話

唯月と隼翔……この二人が一緒になる可能性はゼロに近いだろう。唯月も名家に嫁入りするのは嫌がるはずだ。姉妹二人はそのような野心など持っていないのだから。おばあさんもこの考えを頭から消してしまった。唯月の店を出た隼翔は東グループの社長オフィスへと戻った。そしてソファに座り、携帯を取り出して理仁にメッセージを送った。この時は昼休憩中だったので、会社の中はとても静かだった。彼は理仁に尋ねた。「今、時間あるか?」理仁は妻を会社に引き留め、一緒に昼休憩をしてもらっている最中だった。うとうとしてきたのでオフィスのソファでぐっすりと寝てしまって、隼翔から届いたメッセージの通知音で目が覚めてしまった。もし隼翔が彼の親友でなければ、彼は電波に乗って隼翔に一発お見舞いしているところだ。向かい側のソファで同じように横になっていた唯花はまだ寝ていた。理仁は彼女の唇をつんつんと突っついた後、携帯を手に取り、そっと部屋を出て別の部屋へと移り、隼翔同様ソファに横になった。「何か用か?」隼翔は親友からの返事が来ると、すぐに何を言えばいいのかわからず、ただ「なんでもない」とだけ返した。それに理仁はキレた。すると彼は隼翔に直接電話をかけた。電話が繋がると、彼は開口一番、隼翔に怒鳴りつけた。隼翔「……お前、本当に理仁か?そんな口汚い言葉を吐ける奴だったっけ?理仁であるはずがあるまい」「お前が東隼翔じゃなけりゃ、今頃、俺の拳はもうお前の顔に一発お見舞いしてやっていたところだぞ。ふざけんなよ。俺はな、自分の健康を代価に唯花さんの同情を買ったんだぞ。やっと彼女が俺と一緒に住んでくれて、胃にやさしい愛妻弁当まで届けてくれてるんだ。それなのに、お前ときたら、何の用事もないのに俺の幸せな眠りを妨げやがって、それでも怒鳴るなと言うのか?」隼翔はへへへと笑った。「仲直りしたんだ?それなら時間作って一緒に食事でもしようぜ。最近お前の機嫌が悪そうだったから、ずっと食事に誘えなかったんだ。お前がまた酒を飲むかもしれないからな」隼翔を罵って、理仁の怒りは消えていた。「何か用があるなら、さっさと言え。何もないんだったら、昼の休憩時間に邪魔をしてくるなよ」彼が毎日昼にはゆっくりと休んでいることは知っているのだ。「いや、本当に特に何もないんだ。さっき会社に
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第972話

「神崎玲凰がすでに目をつけて動いているかもな」両家は隣同士だ。玲凰が隣の横山邸を買い取り、塀を壊して二棟の家を一緒にして敷地面積を増やすかもしれない。神崎家もお金に困っているわけではないから玲凰が買おうと思えば、誰も彼からそれを奪うことはできないだろう。「お前が興味があるなら、すぐ探りを入れてやるから、待ってな」隼翔は友人の大切な時間をぶち壊してしまったのを申し訳ないと思い、何か彼の機嫌を取ることをしなければと思ったのだ。それで、この件でチャラにしてもらおうというわけだ。彼は別の携帯を使って誰かに尋ねていた。そしてすぐに返事があり、横山邸はすでに誰かが購入した後だった。それで隼翔は神崎玲凰が購入したと思い、その電話の相手に尋ねたが、彼も購入したのが誰なのかは知らないらしいのだ。しかし、玲凰でないことは確かだった。実は玲凰も横山邸を購入して自分の家の敷地を増やそうと思っていたのだが、一足遅く、誰かに買われた後だったのだ。横山邸は中古物件であることには間違いないが、その敷地面積はかなりの広さだった。みんなが目をつけたのはその面積の広さで、建物自体は隼翔が考えていたのと同じように内装を変えたり、立て壊してまた新築すれば良いという考えだったのだ。横山家は破産してしまった。だから多くの人はこの家の風水はあまり良くないと考えるだろう。まあ、その家が没落するか、ますます繁栄するか、それもそこに住んでいる人によるものであるから風水だけのせいにはできないのだが。商売をする人間は、そういうものにこだわるものなのだ。隼翔は理仁に返事をした。「やっぱり良い物件は人気があるらしい。あの神崎玲凰ですら一足遅く、誰かに取られてしまったようだ」「誰が購入したんだ?」そんなに動きが速いとは。「今はわからんが、後でわかるだろう」理仁も別に気にしていない。別に住む家に困っているわけでもなし、今まで彼が購入した家は、どれも一等地にあって、後代にも恵まれている。気に入らなかったらその一等地に改築して、気分転換することができるので、いつも快適に住めて、仕事に精が出せる。「理仁、引き続き休んでくれ。俺はこれで」隼翔はこれ以上理仁と話すような話題はなくなったので、そそくさと電話を切った。理仁は電話が切れた後、携帯に向かって罵った。「お
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第973話

唯花は理仁の胸元に寄りかかり、あくびをして言った。「そういえば言い忘れてたことがあるの」「なにかな?」妻が言うことであれば、どんな些細なことであろうと、理仁は重視している。「うちのあの最低な親戚たちが、面白いこと思いついたらしいわ。うちの従妹を私と同じ顔に整形させて、私に代わって結城家に侵入するつもりよ」それを聞いた瞬間、理仁の顔が曇った。「その従妹は私と同い年なの。私のお父さんと、彼女の父親が似ていて、私たち二人は同じように父親似だから、私と彼女の顔は似ているって小さい頃に言われたことがあるわ。私の両親が亡くなってから、もう十数年間彼女とは会っていないから、今その子がどんなふうに成長しているかはわからないけど」理仁は冷たい顔をして言った。「本当にあいつらは考えることが普通の人間とは違っているらしいな。唯花さん、君のお父様は本当にあのじじいとばばあの本当の子供なのか?」「それは重要なことではないわ。本当の親子であっても、あんなに他の兄弟を贔屓目で見るような親に産まれちゃ、里親のほうがマシでしょ。内海香苗は本気で整形手術をしに行くでしょうね。だけど、一体どこの病院で手術を受けるかはわからない。だから、誰かを雇ってあの子が私と同じ顔に整形するのを阻止できるよう調べてちょうだい。陸が私の後をつけて盗撮しようとしたところをあなたのボディガード二人が見つけてあいつを捕まえたの。それであいつの口からこの計画を知ったのよ」陸は全てを白状したわけではないのだが、唯花を盗撮してそれを香苗に見せ、唯花の行動を模倣させるのだと言ったのだ。そこから内海家のクズどもが香苗を整形させて唯花と入れ替えるという計画を立てているのだろうと予想したのだ。唯花は内海家とはもう和解できないところまで関係が悪化している。だから、唯花が結城家の夫人となった後、彼らにとってなんの利益にもならず、さらに唯花のせいで大きな損失を被っているのだ。香苗と唯花を入れ替えることで、まず香苗が自分たちの味方だから、彼らにとって利益をもたらしてくれるだろうと思っているのだ。それにそうすることで唯花と理仁に報復ができると思っている。それを知った理仁はすぐに悟にこの件を調べさせるため電話をかけた。電話を切った後、唯花がじいっと自分を見つめていることに気づき、理仁はその黒い
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第974話

だから、彼らが追いつめられて、あちらから法に触れるような真似をしてもらえば、警察に突き出すことができるというわけだ。「あいつら、何か良くない習慣でもある?」「賭け事かしらね。昼ご飯を食べたらよく賭け事をしに行っていたわ。私のおじさん達が賭け事に強いかどうかは知らないけど。みんなやってるものだからはまっちゃったんでしょうね」理仁はそれを聞いて瞳をキラリと輝かせ、何か思いついたらしいが口には出さずに唯花にはただこう言った。「あいつらのことを俺に任せておいて。唯花さんは何も心配することはないよ。俺がいる限り、たとえこの世の終わりが来たとしても、君を守ってみせるさ。君は自分のやりたいことに専念していればいいから。今夜のパーティ、本当に俺が一緒に行かなくていい?唯花さん、俺たち、まだ一度も一緒にパーティーに参加したことないじゃないか」唯花は彼を睨みつけた。「あなたは高い地位に座する結城家の御曹司ですからね。パーティーに参加するって言っても、ボディガードたちに囲まれてるくせに。私みたいな平凡な人間は、多くの人を掻き分けてあなたの目の前まで辿り着けたとしても、顔すらも見ることができないわ」理仁「……それは昔のことだ」唯花が親友の明凛と一緒にパーティーに参加した時、この夫婦は同じ会場にいたというのに、彼は当時自分の身分を隠していて彼のほうは彼女に気づいていたが、彼女のほうは全く知らなかったのだ。「あなたの隣にいても平気なくらい自信がついたら、どんなパーティーにでもあなたに一緒に来てもらうわ。あなたが嫌と言ってもね」唯花は立ち上がると、少し身を屈めて理仁の両側に手をついた。「そこのカッコイイお兄さん、キスしてくれない?そしたら帰るわ」理仁は笑った。「また俺をからかう気か」「私にからかわれるのが好きなくせに」そしてすぐに唯花は彼の唇を軽く噛んだ。「体調には気をつけてね。また食事もせずに胃を壊したら、本当に構ってなんかあげないからね。あなたはまだまだ若いのに、もしまた無理して命にかかわる病気になったら……あなたの財産を譲り受けて、ヒモ男でも養って怒らせてやるわ」「そんなことになったら、たとえ死んだって化けて出てやるからな」理仁は彼女に続いて立ち上がると、彼女を抱きしめて愛情を込めて言った。「唯花さん、君と白髪になるまで一緒にいられる
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第975話

理仁はオフィスに戻ってすぐには仕事を再開せず、まず母親に電話をかけた。彼の方から母親に電話をかけることは少ない。麗華は長男から電話がかかってきたのを見て、すかさずドキッとした。普段かけてこないくせに、珍しく彼からかかってきたものだから、その電話は恐らく何か大きな事なのだろう。だから、彼女は緊張し、一体何事なのかとビクビクしていたのだ。特に理仁と唯花、この夫婦の関係はまだ回復していない。母親として、義母として、何もしてやれないし、するわけにもいかない。「理仁」理仁は自分を呼ぶ母親の声が不安を聞き取ったが、特別彼女を安心させるような言葉はかけず、軽い口調でこう言った。「母さん、神崎社長の奥さんが妊娠したらしい」麗華は彼がこのように言ったので、まずは少し驚き、そしてすぐに明るい口調で言った。「それはおめでたいことね」神崎家はまだ世間に理沙の妊娠を公表していない。彼ら名家はいろいろと考え、まだ安定期に入る前の三ヶ月は公表するつもりはない。三ヶ月経って安定期に入ってからそれを行う予定だ。理紗は初めての妊娠なので、その知らせは理紗の実家である篠崎家と、神崎家の家族の間でしか知られていなかった。唯花は神崎夫人の姪であり、理紗が妊娠したことを知るのは当然のことなのだ。唯花がそれを理仁に伝えたということは、硬直状態だったこの二人の関係がやっと解け、仲が戻ったということだろう。それで麗華は明るい声でさっきそのように返事したのだ。別に理紗の懐妊を喜んでいるわけではない。「何か妊婦さんに栄養のあるもの贈り物を神崎家に届けに行くわ」理仁は母親に感謝した。麗華は言った。「我々結城グループと神崎グループの関係がどうであれ、神崎夫人は唯花さんの伯母様だものね。理紗さんが妊娠したことを知らないなら別にいいけど、知ったのだから、何か贈り物を準備して気持ちを示しておかないと。人間関係はきちんとしておかなければ、これはお母さんがやって当然のことなのよ。いつ唯花さんを連れて食事に来るの?」「唯花さんに時間ができたら、そっちに暫くいるよ」麗華は頷いた。「彼女のお姉さんともしっかり話し合って。あなた達の結婚に必要なものがあれば、何でも用意するわ。彼女を悲しませるようなことをしないでね」「母さん、わかったよ」「唯月さんのお家の住所を教えてちょうだ
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第976話

理仁は唯花に全財産を譲渡したがっているが、どれも彼女に受け取ってもらえず、要らないと言われてしまったのだった。本当に強情なお嬢さんだ!彼は彼女のことを本気で死ぬほど愛しているというのに!「この間、あなたと唯花さんに提案した礼儀作法の件についてだけど……」「母さん、唯花さんは伯母である神崎夫人に頼んだらしいんだ。今夜、彼女は伯母さんと一緒にいろんなパーティーに出席してみるんだって。神崎夫人自ら教えるのだから、作法を学ぶ教室に通うよりもずっと良いはずだ」麗華は「じゃ、私はこの件に関してはもう何も気にしないでおくわよ。あの子が良いなら、私だって一緒にパーティーへ連れて行くこともできるわ」と言った。麗華は自分が唯花の義母になってから一緒に過ごした時間は少ないことを考えていた。それに、心の奥底では唯花の出身を気にしていて、長男には相応しくないと思っている。もし、そんな麗華が唯花を社交界に連れてい行き、上流社会の世界になじませようと思っても、きっと唯花の粗捜しをしてしまうだろう。そうなると嫁と姑の和やかな関係にもひびが入ってしまいかねない。麗華は唯花が伯母である神崎夫人に助けを求めたことには理解を示していた。神崎夫人は昔から強い女性であったので、そんな彼女に唯花を頼んでおけば、きっと彼女が上流社会になじめ、理仁と同じ世界に入っていけるだろうと信じていた。「後で家族の誕生日を書き出しておくわ。それを理由にうちでパーティーを開いてもいいでしょう。そうすれば、唯花さんも結城家の中で立ち居振る舞いを学べるだろうし」理仁は笑って言った。「じゃ、母さんとばあちゃん、それから二人のおばさんたちと相談してくれ。うちの中のことはいつも母さんたちが決めていたからさ」母親は唯花と彼はお似合いではないと思っているようだが、母親も唯花を傷つけるようなことはしたことはなかった。心に思っているそれを口で直接言ってきたこともなかった。母親によっては、手ひどい手段で息子とその妻の中を引き裂こうとする人もいるが、理仁は自分の母親はそんな人たちと比べてかなり開けた考え方の珍しいタイプだと思った。麗華はその時、自分にはやることがあるのだと思った。母と子は通話を終え、理仁はやる気を出し、また忙しい仕事の中に自分を追い込んでいった。もっと多く稼いで、奥さんを星城
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第977話

成瀬潤は妹の話を聞き、怖気づいたらしくこう言った。「莉奈、あいつには後ろ盾がいるんだろ。俺らが不良どもを雇って騒ぎを起こさせても、結局は身元がバレちまう。あの女の親戚は金も権力もある家の奴らだぞ。俺らには敵うはずがないって。さっきあの女の義弟、あの財閥家結城家の御曹司だって言ったよな?それならなおのこと怒らせるとマズいって。結城家がどんな家柄か知ってるか?田舎に住んでる俺らですら知ってるぞ。もういい、俺にくれた金の金額じゃ、こんなことするのは割に合わないぜ」莉奈は顔色を変えて「お兄ちゃん。妹の私が頼んでいるのよ。妹が誰かにいじめられているっていうのに、知らんぷりする気?」と責めた。潤は「あの女にどういじめられたって?俺らを騙そうったってそうはいかないぞ。佐々木俊介とお前が一緒になった時、あいつには妻と息子もいただろう。お前は不倫相手だったんだ。他人の家庭を壊したのはお前なんだよ。こんなことを俺らに隠しておいて、俺らが本気で莉奈がハイスペックな男を見つけてきたと思ってたのに?」と言った。「莉奈、お前がどんな性格だって、兄であるこの俺が知らないとでも思ってるか?お前があのなんたら月とかいう女をいじめたんだろ?どうであれ、お前が他人の家庭の邪魔をして、二人を離婚にまで追いやったんだ。悪いのはお前のほうだろ。それなのによくもまあ彼女に復讐をしようだなんて思い至ったよな。離婚してシングルマザーやってる女が商売しようだなんて難しい話だろ。お前も、よくもまあ、そんな相手の商売をめちゃくちゃにしてやろうだなんて考えを持ったもんだよ。もし、本当に彼女がお前をいじめてるってんなら、兄ちゃんは莉奈に代わって何でもしてやるよ。だけど、本当に今あの女にお前がいじめられてんのか?彼女が佐々木君の金を分与された話は、それはあの夫婦二人の問題だ。佐々木君がうちに一千万以上の結納金を渡したくないのは佐々木家の問題じゃなくて、お前の問題だ。お前がずっと彼側に立っているから、その金を成瀬家に渡して、兄ちゃんたちが家の改装やら車やらに使うのがもったいないって思ってるんだろうが。俺らはずっと莉奈のことを可愛がってきたのに、本当に損した気分だよ。お前が結婚して俺らにどんな得がある?結局最後にもらえた結納金は三百万くらいで、それは父さんたちが老後資金にするっつって、俺と兄貴は何ももら
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第978話

「お父さんたちがあれだけの結納金を要求したのは、兄ちゃん達がそうしてほしいって言ったからでしょ?私たちの周りに、一千万以上の結納金を要求する家なんてある?お兄ちゃんたちの子供がみんな男の子で、将来その子の妻のほうがそんな大金を要求してきたら、お兄ちゃんたちはどう思うかしら?あんなに多くの結納金を私にくれて私がもっと幸せに暮らすための資金にしようっていうのなら、どうにかして俊介に出してもらうわ。まあ、それも形式上のものだけだしね。だけど、お兄ちゃんたちとお父さんたちは何て言った?一千万以上の結納金は全部そっちがもらって、たった十万ちょっとだけ私のために使うって。しかも成瀬家から他に嫁入りの何もくれないくせに。お父さんたちが百万、潤お兄ちゃんに六百万、一弥(いちや)お兄ちゃんにも六百万って、どうしてよ?子供であることには変わりないのに、なんで娘を売ってそれを他の息子たちに分配するの?息子の将来は心配なのに、娘はどうだっていいわけ?」潤は妹にこのように詰問されてしまい、顔を真っ赤にして妹を怒鳴りつけた。「お前、それは佐々木家に味方してるって意味だろう?俺らはお前の兄貴だぞ。佐々木家は金持ってるんだ、結婚する前に金をもっと請求しておかないと、結婚した後にはどうあがいたってもらえないだろうが。それが、お前は何も言わずに黙って結婚しやがった。見てみろ、本来一千万以上あった結納金がたったのこれっぽっちになっちまった。お前は結婚して都会で良い暮らしができるんだぞ、少しくらい兄貴たちにおすそ分けしてくれたっていいだろうが。自分の兄貴を助けない妹なんてどこの家にもいないぞ?」この私が兄であるあなた達に何か借りでも作ったって?私は自分の兄を養ってあげるつもりなんてないわよ。私自身でさえ、良い暮らしを送れていないってのに、どうしてなけなしのお金をあなた達にあてがってやらないといけないわけ?あなた達の家を改装したら、私にまるごとプレゼントしてくれるの?私が結婚して出て行ったら、部屋の一つも私に残しておいてくれないでしょうね。どうして自分を苦しめてまであなた達の生活を保証してやらないといけないのよ?私もお兄ちゃんたちもお父さんとお母さんの子供よ。もし借りがあるってんなら、私は両親に対して借りはあるでしょうね。私だって別に将来お父さんたちに生活費を出さないだなんて言ってな
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第979話

唯月はというと、結婚当初結納金は一切なかったものだから、あんな目に遭ってしまったのだ。結納金なら相場の金額を要求すればいいじゃないか。両親があんな巨額の結納金を要求するのは、将来の夫側家族から金を巻き上げて二人の兄にあてがい、莉奈が結婚した後、苦しい生活を送れということと同じなのだ。だから彼女はどうにも納得いかなかった。特に俊介は今全ての金を彼女の管理に任せている。家の内装にはお金もかかるし、俊介は彼女に全て差し出し、これ以上出せるお金などない。諸々にかかる経費の全てを莉奈が出しているということになる。毎回お金を消費するたび、まるで自分の肉を削られているかのように彼女は苦しかった。この苦しみは当事者でなければ永遠にわからないだろう。家の経理を完全に任されているので、彼女は一円でさえも出費をどうするか計算しなければならない。しかも今は俊介も莉奈も失業中の身である。彼らには確かにある程度の貯金があるとはいえ、ただ今持ってる金を使ってばかりいるわけにはいかないのだ。だから、しっかりと消費計画を立てなければならない。この時、莉奈は自分が働き始めてから、毎月の給料の三分の一は家に、三分の一は自分のために使い、残りは全部銀行に貯金していてよかったと思った。それでへそくりがまだ少しは残っているからだ。まずは自分を大切にすること。彼女は何でも自分を優先して、それから他人を愛することを考えることにしているのだ。莉奈は車から降り、ドアを閉めて鍵をかけた。今彼女が運転している車は俊介の車だ。俊介は自分でまた新車を買ったのだ。もちろん、その新車も二百万以上はする。彼は仕事が見つからなければ、結婚式を挙げてからタクシー運転手にでもなって、稼いで家庭を支えると言っていた。俊介が莉奈と結婚したからには、絶対に彼女に辛い思いなどさせたくないのだ。莉奈は俊介は自分に対して本当に誠実だと感じていた。少なくとも、唯月に対するものよりもはるかに良かった。何度か深呼吸をして、莉奈は再び車の鍵を開け、車から愛用のルイヴィトンのかばんを取り出した。これは彼女と俊介がまだ恋人同士だった時、彼がプレゼントしてくれたものだ。俊介は一度も唯月にこのような高価なものを贈ったことはないと言っていた。高価なものは全て莉奈にあげていたのだ。俊介が彼女には財布のひもを緩めて
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第980話

佐々木母はまず陽のところへ行って彼を抱き上げ、陽の可愛いその顔にキスの雨を降らせた。陽が眉をひそめたので、そこでその雨は止んだ。 「陽ちゃん、おばあちゃん急いで来ちゃったからおもちゃを買ってくるのを忘れちゃったわ。お小遣いをあげるから、ママと一緒に好きな物を買っておいでね」佐々木母はそう言いながら、千円札を何枚か取り出して陽の手に握らせようとした。「おばさん」唯月は急いでそれを阻止し、息子を抱き上げて言った。「おばさん、陽にお金はあげないでください。この子はまだ小さいから、お金をもらうことに慣れてしまっては、今後お金が欲しい欲しいって悪い習慣になってしまうわ」佐々木母は「だったら、あなたが取っておいて。これは陽ちゃんに何か買ってあげるのに使ってちょうだいね」と言った。そう言いながら、彼女はお金を唯月に渡した。しかし唯月はそれを返して言った。「おばさん、今陽は何も物に困っていません。これは必要ないから、お返しします」佐々木母がよく唯月のところに愚痴をこぼしに来ていたおかげで、唯月は今俊介が両親にあげているお金が以前の半分になっていることを知っていた。佐々木母は莉奈がお金の管理をしていて、彼女がとてもケチだから、義父母に小遣いを渡そうとしないらしいのだ。それに俊介に対しても愚痴をこぼしていた。義父母が退職するまで年金を収めていて、今それを受給される年齢になったから、毎月お金がもらえるじゃないかという愚痴だ。多くはないのだが、夫婦合わせて二十万くらいだ。衣食住に関しては、俊介がお金を出していて、義父母は全く金に困ってはいない。だから莉奈は義父母にあまり小遣いをあげていない。その金がまた最低義姉の英子の手に渡ってしまうかもしれないからだ。「私にはお金があるのよ。それに、これは孫のために使うお金なんだから、取っておいて」佐々木母は意地でもそのお金を唯月に渡そうとした。唯月はまだ拒否したかったが、おばあさんが横からこう言った。「唯月さん、これは孫のいるおばあちゃんの気持ちなんだから、受け取ってあげなさい。お孫さんがこんなに大きくなって、まだおばあちゃんから買ってもらった服も着たことないでしょうし、そのお金で陽ちゃんにお洋服を買ってあげなさい」佐々木母の顔色はこの時曇った
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