唯月と隼翔……この二人が一緒になる可能性はゼロに近いだろう。唯月も名家に嫁入りするのは嫌がるはずだ。姉妹二人はそのような野心など持っていないのだから。おばあさんもこの考えを頭から消してしまった。唯月の店を出た隼翔は東グループの社長オフィスへと戻った。そしてソファに座り、携帯を取り出して理仁にメッセージを送った。この時は昼休憩中だったので、会社の中はとても静かだった。彼は理仁に尋ねた。「今、時間あるか?」理仁は妻を会社に引き留め、一緒に昼休憩をしてもらっている最中だった。うとうとしてきたのでオフィスのソファでぐっすりと寝てしまって、隼翔から届いたメッセージの通知音で目が覚めてしまった。もし隼翔が彼の親友でなければ、彼は電波に乗って隼翔に一発お見舞いしているところだ。向かい側のソファで同じように横になっていた唯花はまだ寝ていた。理仁は彼女の唇をつんつんと突っついた後、携帯を手に取り、そっと部屋を出て別の部屋へと移り、隼翔同様ソファに横になった。「何か用か?」隼翔は親友からの返事が来ると、すぐに何を言えばいいのかわからず、ただ「なんでもない」とだけ返した。それに理仁はキレた。すると彼は隼翔に直接電話をかけた。電話が繋がると、彼は開口一番、隼翔に怒鳴りつけた。隼翔「……お前、本当に理仁か?そんな口汚い言葉を吐ける奴だったっけ?理仁であるはずがあるまい」「お前が東隼翔じゃなけりゃ、今頃、俺の拳はもうお前の顔に一発お見舞いしてやっていたところだぞ。ふざけんなよ。俺はな、自分の健康を代価に唯花さんの同情を買ったんだぞ。やっと彼女が俺と一緒に住んでくれて、胃にやさしい愛妻弁当まで届けてくれてるんだ。それなのに、お前ときたら、何の用事もないのに俺の幸せな眠りを妨げやがって、それでも怒鳴るなと言うのか?」隼翔はへへへと笑った。「仲直りしたんだ?それなら時間作って一緒に食事でもしようぜ。最近お前の機嫌が悪そうだったから、ずっと食事に誘えなかったんだ。お前がまた酒を飲むかもしれないからな」隼翔を罵って、理仁の怒りは消えていた。「何か用があるなら、さっさと言え。何もないんだったら、昼の休憩時間に邪魔をしてくるなよ」彼が毎日昼にはゆっくりと休んでいることは知っているのだ。「いや、本当に特に何もないんだ。さっき会社に
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