現状維持だ。もし変わったことがあると言えば、彼女が今はもう親密な関係を拒んでいないということだ。だが、今すぐに婚姻届を出しに行くというのも現実的ではなかった。商治もそれを分かっているのだろう。だからその話題を一度も口にしたことがない。しかし時々、水子は、商治が希望もないまま自分を待ち続けているのを見ると、なんだか申し訳なく思うことがあった。そしてそんな時こそ、心理カウンセラーに相談したいという気持ちが、何度も何度も強く湧き上がってくるのだった。グループの数人がこの返信を見ると、どういう状況かを察し、もう詮索はせずに、あちこちの話題で盛り上がり始めた。中でも一番話題になったのは、恋人ができた栄子にご馳走してもらおうという話だ。栄子は気分がよく、母親の直美から受けた鬱々とした気分もすっかり吹き飛び、明日みんなに食事を奢ると嬉しそうに約束した。グループ内はたちまち歓声で溢れた。しかし、喜ぶ者がいれば、落ち込む者もいる。その頃、賀茂家の本邸にいる哲郎の気分はすでにどん底で、向かいに座った冬樹も、今日は哲郎と話をするのに向かない日だとすぐに感じ取った。だが、ここまで追い詰められた以上、冬樹はもう迷うことなく、口を開いた。「哲郎さん、本気で南雲グループを潰したいなら、我々二家が協力するしかありません」哲郎の声はひどく不機嫌だった。「お前の言いたいのは、賀茂家一族の力だけでは南雲家を抑えられず、お前の助けが必要だと?」冬樹は笑って言った。「そういう意味ではありません。ただ、華恋の背後には確実に強力な後ろ盾がいます。それも、我々四大名家を合わせても敵わないほどの強大な存在かもしれません」哲郎の表情はさらに険しくなり、すぐに彼は叔父のことを思い出した。一年ほど前、叔父は耶馬台に渡り、海外市場を開拓した。その時、彼は華恋と出会い、電撃結婚をしたのだ。「哲郎さん、聞いていますか?」哲郎が思考に沈んでいることに気づき、冬樹は慌てて彼の意識を現実に引き戻した。哲郎は目を細め、苛立たしげに言った。「続けろ」冬樹は仕方なく話を続けた。「華恋の背後にある強力な勢力を考慮して、私は両家が協力すべきだと提案しているのです……」冬樹は眉をひそめ、少し間を置いてから言った。「これから言うことは大げさ
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