相手は本当に気前がよく、最大の港を南雲グループに貸し出したのだ。無邪気に輝くような笑顔を浮かべている栄子を見て、華恋はかすかに微笑んだ。しかし、事はそう簡単に片づかないだろうと彼女は思った。哲郎のほうが、まだ何か次の手を用意している気がしてならなかった。とはいえ、ひとまずそれは口に出さないことにした。彼女は笑みを浮かべながら栄子を見た。「私がいない間に、橋本がどうしてわざとあなたに意地悪していたのか、調べられた?」栄子は首を横に振った。「それははっきりしなかったんですけど、変なことを二つ見つけました」「変なこと?」「橋本と高坂冬樹が、もうすぐ結婚します」「それのどこが変なの?」「知らないですか?橋本と高坂は何年も付き合っているのに、高坂家はずっと、後継者の結婚相手が女優だなんてって受け入れなくて、結婚に反対してきました。なのに今になって急に許したの、すごく変じゃないですか?」華恋は少し考え込んだ。なぜそんな方針転換があったのか、すぐには理解できなかった。そこで尋ねた。「じゃあ、二番目のことは?」「最近、誰かにこっそりつけられてます」華恋の顔色が変わった。「誰か分かってる?」栄子はうつむいて地面を見つめながら答えた。「分かってます」「誰?」「高坂夫婦です」華恋は驚いた。「どうして高坂夫婦があなたを追ってるの?」「私も変だと思いました。最初は見間違いだと思いましたけど、あとで調べたら、本当に追ってた車は高坂夫婦のものでした。しかも最近、私がよく行く場所にも、実際に現れてます」華恋は目を細めた。もしかして……高坂家は、自分と栄子が仲がいいことを知って、栄子から手を打とうとしているのだろうか。「分かったわ。私が調べるから。あなたは最近、気をつけてね」そう言ってから、華恋は笑った。「で、林さんとはどう?」「順調です」林さんのことになると、栄子の頬はいつも無意識に赤くなった。もう付き合っているのに、それでもつい赤くなってしまうのだ。「それならよかった。中に入ろう」華恋が振り返ろうとしたそのとき、派手な服装の女が突然会社の入口に現れた。来た人物の顔を確認した華恋は、顔色を変え、慌てて栄子の手を引いて会社の中へ向かった。まだ
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