彼は冷たい息を吸い込み、微笑みながらスマホを取り出して言った。「もちろんないよ。調べたければ、自由に調べていい」南雲華恋は賀茂時也をじっと見つめ、彼が本当に嘘を言っていないようだと感じてから、ようやく彼のスマホを手に取った。彼女が顔を下げた瞬間、目の前の手がわずかに震えるのに気づかなかった。南雲華恋は賀茂時也のスマホの電源を入れ、パスワードを尋ねようとしたが、彼のスマホの待ち受け画像が彼女の写真だということに気づいた。彼女は驚いてしばらく固まった。この写真に全く覚えがなかった。「いつ撮ったの?」南雲華恋はスマホを持ちながら賀茂時也に尋ねた。賀茂時也は笑って言った。「僕たちの初めて......」「やめて」南雲華恋は賀茂時也を睨みつけ、彼が何を言おうとしているのかを理解した。車内には他の人もいる。賀茂時也は微笑みながら、何も言わずに見守っていた。南雲華恋は顔を赤らめ、スマホを賀茂時也に返した。「もういい、見ない」賀茂時也はスマホを持ちながら言った。「本当に見ないの?」彼が冷静にしているのを見ると、南雲華恋はそのスマホにもっと彼女の写真が入っていることを察し、一枚ずつ説明を聞くのは嫌だと思った。「本当に見ない」「それじゃ、しまっておくよ」南雲華恋は外の窓を見ながらうなずいた。だが、顔は静かに赤くなった。彼女は心が無いわけではない。賀茂時也が自分を愛していることを彼女は感じている。そして、彼の愛は非常に熱烈だということも分かっている。しかし、長い間隠されていた事実を簡単に許すわけにはいかない。彼女はその顔を持ちきれなかった。一旦置いておこう。とりあえず、ドリに会ってから考えるべきだと思った。そう思っているうちに、南雲華恋の視線は車窓に映る自分たちの影に引き寄せられた。賀茂時也の顔は以前よりもさらに痩せていて、顎のラインがはっきりとしていた。おそらく痩せたせいで、鼻もより高く見える。全体的に、彼はかっこよくもあり、どこか朽ち果てたようにも見えた。だからこそ、先程中村文乃が彼をエンタメ業界に引き込もうとしたのも理解できた。賀茂時也の容姿がもしエンタメ業界に入ったら、間違いなく大きな人気を誇るだろう。彼女は......彼がエンタメ業界に入るのは望んでいなかった。
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