「彼女が運が良いのではなく、彼女の背後にいる人物が強いの」雪子は手すりを強く握りしめながら言った。「その人物と彼女を引き離せさえすれば、彼女はただの好きなように弄ばれる存在にすぎないわ」「じゃあ、その背後の人物って一体誰なの?」佳恵は不安げに尋ねた。この人は、何度も華恋が死の運命を避けられるようにしてきたのだから、きっと非常に強大な存在に違いない。まさか……稲葉家なの?でも華恋と稲葉家が関わっているのは、商治が水子を追っているからであり、水子がたまたま華恋の友人だからじゃないか?「それはあなたが知る必要はない」雪子の声は硬かった。「最近、華恋が短編小説のコンテストに出ようとしているのを知ってる?そのコンテストの審査員の一人がハイマンなのよ」佳恵は、ハイマンが何をしているかなんて気にしたことがなく、当然その短編小説コンテストのことも知らなかった。「あなたにもそのコンテストに出てもらいたいの」佳恵は聞いた途端、即座に拒絶した。「いやよ、文字を見るだけで嫌になるのに、ましてや執筆なんて。そんなコンテスト、絶対出ない」「心配しないで。出品する作品は私が用意してあげる。あなたの役目は、結果発表の日に内応を務めて、私の人間が会場に入り込めるよう協力することだけ」「つまり、結果発表の日に南雲を殺すつもりなの?」「その通り」雪子は考えていた。華恋の実力なら必ず賞を取るだろう。その時は必ず会場に来るはずだ。あの日は警備も何倍にも強化されるだろうが、人混みが多い分、絶好のチャンスでもある。どうせ、之也の狼組織の連中は皆死兵だ。任務さえ果たせれば、それでいい。佳恵は一気に乗り気になった。「いいわ、私、参加する」華恋を殺せるなら、彼女は何でもやってやる。雪子は満足そうに言った。「よし。作品は後で送るから、ちゃんと投稿しておきなさい」「分かった」佳恵はふと思い出し、雪子を呼び止めた。「ちょっと待って。どうせ私が出場するんだし、作品も代筆してもらうんだから、すごく上手い人に頼んで、私を一等賞にしてくれない?そうすれば、いろんな人の口を塞げるでしょ」以前、みんなこう言っていた。ハイマンはあんなに文才があるんだから、その娘である彼女も優秀で当然だろう。その時は気にしなかった。でも彼女は自分がハイ
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