話を終えると、華恋は車を発進させ、闇の中へと消えていった。それを追ってきた暗影者たちは、その光景に一様に呆然とした。とくに坊主頭は、思わず口を開いた。「ちっ......あの女、何をするつもりだ!?」敬吾さんもまた華恋の行動に驚き、しばらく声を失っていたが、やっと絞り出す。「一体何を考えている?ボディガードを置き去りにして......死に行く気か」坊主頭は得意げに鼻を鳴らした。「だから言っただろ、あの女は化け狐みたいなものだ。ボスは惑わされただけさ」その時、前方でボディガードに話を聞きに行っていた仲間が戻ってきた。険しい表情を浮かべ、皆の視線を受けながら低い声で告げる。「......ボスがどうやら危ないらしい」「なに!?」車内は一瞬で騒然となった。坊主頭は思わず立ち上がった。「ボスが危ない?そんなはずがない!」「今は問いただしてる場合じゃない」戻ってきた者は車に飛び乗り、短く言い放った。「急いで南雲様を追うぞ」坊主頭は呆然としたが、数十秒の後にようやく気づいた。「つまり......彼女が出ていったのは、ボスの危機を知っていたから?」男は答えなかった。だが、その沈黙がすでに答えになっていた。車内に静けさが落ちる。やがて敬吾さんが口を開いた。「......だからボディガードを降ろしたのか。無関係の人間を巻き込みたくなかったのだろう」刃の上を歩んできた者たちからすれば、それはあまりにも甘い判断だった。だが今回ばかりは、誰一人としてそう感じる者はいなかった。むしろ、華恋の行動に微かな敬意を抱き始めていた。沈黙のまま、車列は前へ進んでいる。一方その頃、後ろの事情など露知らずの華恋は、ただひたすら目的地へと迫っていた。彼女の運転は荒く、心臓は飛び出しそうだったが、瞳の奥には揺るがぬ決意が宿っていた。そして制限時間ぎりぎり、ついに倉庫の前に辿り着く。漆黒の夜、二本のヘッドライトだけが周囲を照らす。車を降りた華恋は、数歩進んだ途端に完全な闇に飲み込まれた。それでも、彼女は一切怯まなかった。倉庫の扉に手をかけ、一気に押し開けた。中は静まり返り、何も見えない。息を吸い、華恋は携帯のライトを点けた。するとすぐに、隅に横たわる人影を見つける。男はボロ
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