遥のその一言に、瑠璃は驚きと困惑を隠せなかった。——彼女は、私と隼人にとてもひどいことをしたと言った?思い当たる節はなかったが、それでも瑠璃は隼人を連れて彼女に会いに行くことを約束した。隼人は多くを問わず、ただ静かに彼女の後について行った。待ち合わせの場所は、街外れの静かなカフェだった。店内には店員以外にほとんど客の姿はなかった。ふたりが入店すると、若い女スタッフが声をかけてきた。「宮沢遥さんのお友達でしょうか?彼女は二階でお待ちです」「ありがとうございます」礼を言って、瑠璃は隼人と共に階段を上った。二階に上がった途端、瑠璃の目に飛び込んできたのは、窓辺の席でぼんやりと座り込んでいる遥の姿だった。彼女の顔色は極端に悪く、唇には血の気がなく、目元は腫れ、涙をためた瞳がうるんでいた。瑠璃は心配になり、早足で近づいた。「遥、大丈夫?顔色がひどいわ」その声に気づき、ようやく遥がふたりに気づいたようだった。彼女は、あの日病院で瞬に言われた言葉を思い返していた。その痛みは心を引き裂くようで、来客に気づく余裕もなかったのだ。それでもなんとか気持ちを整え、彼女は穏やかな笑みを浮かべた。「千璃さん、来てくれてありがとう」「遥、やっぱり様子が変よ。何があったの?」瑠璃はさらに身を乗り出して訊いた。遥は首を振って微笑んだ。「大丈夫ですよ。ただちょっと風邪をひいてしまって……それだけです」もっともらしい言い訳をして話題をそらすと、彼女はすぐに本題へと入った。「千璃さん、ごめんなさい。私、以前とてもひどいことをして、あなたと隼人の間に溝を作ってしまったの」「まさか、隼人が私に冷たかったのは……あなたが何かしたせい?」瑠璃が核心に触れると、隣にいた隼人の表情も冷たく鋭くなった。遥は小さく頷いた。「……はい。私が、彼に催眠をかけたんです」「催眠?」瑠璃は目を見開いた。それは、まったく予想していなかった。でも、ようやく理解できた。隼人が「頭の中で誰かが明日香を愛していると囁いてくる」と言っていたのは、つまり——その声は、催眠で植え付けられた偽りの感情だったのだ。「俺に催眠をかけて、愛する人を忘れさせた?お前……一体なんのために?」隼人の声は低く冷たく、怒りがにじんでいた。瑠璃もすぐに
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