「もうやめてよ。もう、私はあなたを愛してない」私はそっと、慎一が私の腰に回していた手を外して、立ち上がる。そして彼の方を振り返った。「あなただって、私のことなんてもう愛してないでしょ?お互い様じゃない。なにが不満なの?」慎一の目には、隠しきれない失望がにじんでいた。「それと、これからはもう私のことを監視しないで。どんなことがあっても、自分でなんとかするから。誰に何を言われようが、私はもう、誰にも潰されたりしない」私は口元に皮肉っぽい笑みを浮かべた。「それに、あなたが私の仕事をぶち壊したあのときの方が、今の状況よりずっときつかったよ」「あの番組、お前が映ってたのは十一分だけだ。もし望むなら、別枠で番組作ってやることも……」「それ、あなたの真思にやってあげてよ」私はくるりと背を向けた。「私にはいらない」慎一が立ち上がった。「じゃあ、お前は何が欲しいんだ!」私が本当に欲しかったものなんて、彼には一生与えられない。ただ、私だけを大切にしてくれる心。それだけだ。昔もなかったし、これからもいらない。彼に関するものなんて、私は何ひとつ欲しくない。「あなたに関わるものなんて、何一ついらない!」「俺が真思と結婚しても、何も感じないのか?」慎一の表情は暗くなり、真剣な眼差しで私を見据えてくる。返事を待っているのが分かる。結婚、か……慎一が結婚する時、またあの時みたいに白いタキシードを着るんだろうか。綺麗に結ばれた蝶ネクタイを締めて、ピアノの前に座って真思のために曲を弾くのか。真思は寄り添ってくれる人を求めていたし、慎一は家族という形を欲しがっていた。私は彼を見て、さらりと笑った。「二人、とてもお似合いだと思うよ。おめでとう」私の淡々とした態度に、慎一の怒りは限界を超えたらしい。彼は私を呼び止め、血走った目で睨みつけてきた。「明日の夜、俺の婚約パーティーに来い。俺が他人の男になる瞬間を、ちゃんと自分の目で見ろ。来なきゃ、お前がまだ俺に未練が残ってるってことにするからな!」私はしばらく慎一の目をじっと見つめ、これが本気だとようやく理解した。二人の進展は思ったより早かったらしい。もう結婚話が出るほどに。元夫の婚約パーティーなんて、私が行く理由はない。でも、彼がそこまで言うなら、行ってやってもいいか。どうせ盛大
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