「どうぞお入りください」スタッフの背後には両側が半分に開いたカーテンがあり、そこから冷たい風が吹き込んできて、一角がめくれると暗い通路が見える。時折叫び声が遠くから聞こえてきて、すみれは唾を飲み込み、凛の手をぎゅっと握りしめて、ためらいがちに中へと進んだ。凛はほとんど彼女を引きずるようにして前進し、彼女の怯えた様子を見て少しおかしく感じた。「やっぱり行くのやめる?」「ダメ!来たからには!」「……」来たからにはっていう考え方は本当に厄介ね。すみれは明らかに怖くてたまらないのに、認めようとせず、勇敢なふりをして凛を引っ張って前に進んだ。突然、恐ろしい人形が飛び出してきた。「あああ——凛ちゃん、助けて!」海斗は急に振り返った。さっき誰かが「凛ちゃん」と呼んでいるのを聞いたような気がした。しかし、あたりを探しても、あの見慣れた顔は見当たらなかった。彼は思わず眉をひそめた。晴香はその様子に気づかず、怯えた顔で彼の腕にしがみつきながら「海斗さん、怖いよ……一緒にいてくれる?」と甘えるように言った。海斗は我に返り、ぼんやりと「うん」とだけ答えた。目の前は真っ暗で、時折ちらつく赤い光だけが見える。晴香は男の腕をしっかりと掴み、怖がって彼の側に隠れて、全く前に進む勇気がなかった。偶然に女の幽霊のメイクをした、顔の皮が半分剥がれて血がついているリアルなNPCが現れ、彼女は驚いて大声で叫び、さらに海斗から一歩も離れられなくなった。「うう……怖い、海斗さん、もういなくなった?」晴香は海斗の胸に顔を埋め、震えていた。海斗は彼女の背中を軽く叩いて、「もう大丈夫だ」と慰めたが、彼にはその粗末な特殊メイクや汚れた衣装がなぜここまで怖がられるのか理解できなかった。凛ならこんなものに怖がったりしないだろう……ふと海斗の頭にあの名前が浮かんだ。その瞬間、彼は身体が僅かに緊張した。なぜ彼女のことを思い出すのだろう。あんなに別れを望んでいたはずなのに……「……海斗さん?」晴香は顔を上げ、海斗の目に一瞬だけ現れた深い感情を見て、少し戸惑った。海斗は感情を押し隠し、「続けるんだろう?行こう」と促した。怖がって叫んでいるのは彼女一人だけではない。一方、すみれはお化け屋敷の前で勇気を出したつもりだったが、棺桶の中
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