冬城が手にしていた車の鍵を見るなり、真奈は何も言わずにそれを取り上げ、大垣さんに向かって言った。「大垣さん、旦那様をしっかり支えて。私が車を出す」「かしこまりました」大垣さんは慎重に冬城を支え、冬城おばあさんはその様子を見て、すぐに真奈の腕をつかんだ。「真奈!止まりなさい!どこへ行くつもりなの?」「あなたの孫を病院に連れて行きます!」真奈は冬城おばあさんの手を振り払ったが、彼女はまたしがみついてきて、必死に止めた。「あなたに司を救えるっていうの?あんた、司を殺す気なんでしょう!司はどこにも行かせない、ここで医者を待つの!」冬城おばあさんは、さきほど真奈が小林にサインを求めたことをまだ根に持っていた。「離して!」真奈は勢いよく冬城おばあさんの手を振りほどいた。彼女は数歩後ろに下がり、怒鳴った。「真奈!ここは冬城家なのよ!」「大奥様、お忘れなく。私は今でも冬城家の女主人です。ここは私の家です。孫の手を本当に守りたいのなら、私を止めないことね。さもないと、後悔することになりますよ!」「……あんた!」「大垣さん!もう支えなくていいわ!大奥様を部屋に連れて帰って休ませて!」真奈の気迫に、冬城おばあさんは一瞬たじろいだ。冬城おばあさんは覚えていた。昔の真奈は、何を言われても「はい」と従うだけの大人しい娘だった。それがいつの間にか、歯切れが良くて人を圧倒するほど強くなっていた。冬城おばあさんが大垣さんに連れられて下がっていくのを見届けてから、真奈は冬城を一瞥した。「車を出すわ。自分で乗って」冬城は低く応えた。「わかった」真奈はガレージへ向かい、車を出した。戻ってくると、冬城の腕に巻かれていた包帯はすでに血で真っ赤に染まっていた。真奈は車を降り、助手席側のドアを開けたが、冬城はすぐに乗り込もうとはしなかった。真奈は言った。「後ろに座って。シートベルト、つけにくいでしょ」「……ああ」冬城は淡々と頷いた。このとき彼の心を締めつけていたのは、傷の痛みではなく、胸の奥の痛みだった。真奈は前の席で車を運転し始めた。冬城には、彼女の運転がいつもより明らかにスピードを上げているのがわかった。彼の位置からは、真奈の横顔がかすかに見えた。髪は下ろされていて、反射するミラーには運転に集中する彼女の真剣な表情が映っていた。前に車
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