遼一は黒地に金箔をあしらった名刺を一枚、ライラに手渡した。ライラは大げさに口元を押さえ、何度も「ありがとう」と繰り返しながら興奮で言葉を噛み、しどろもどろになっていた。明日香の視線は自然とその名刺に落ちる。「セイグランツ社」という文字がひときわ目に焼き付き、胸の奥がどくりと締め付けられた。顔を上げた瞬間、遼一の眼差しと真正面からぶつかり、心臓が再びきゅっと縮み上がる。セイグランツ社……まさか、本当にここまで勢力を広げていたなんて。結局、明日香は遼一に強引にストレッチ・ブガッティへと押し込まれ、ライラは駆けつけた家族に伴われて帰っていった。車内に座り込んでから、ようやくその車が数千万円もの価値を持つことに気づき、明日香は亀のように首をすくめ、硬直したまま微動だにできなかった。「大したもんだな。警察を呼ぶ知恵まで身につけたか」遼一の声音には、嘲りが薄く混じっていた。「どこへ行こうと、兄さんに心配ばかりかけるつもりか?ん?」彼の手が伸びて触れようとするや、明日香は驚いた兎のように身をひるがえし、意識的に距離を取った。全身をこわばらせたまま、怯えと警戒を抱え、探るように問いかける。「遼一……もしかして、ずっと前から私を監視してたの?」その張り詰めた様子を眺め、遼一は目を細めて謎めいた笑みを浮かべる。答えの代わりに赤ワインを開け、グラスに注いで口に含んだ。それからポケットから取り出したのは、明日香が引きちぎったはずのペンダントだった。いつの間にか修復されている。「こっちに来い。つけてやる」「いらない!」即座に拒絶が返る。「俺が行ってつけてやるのと、お前が自分から来るのと、どっちがいい?」その声音には、有無を言わせぬ圧があった。明日香は嫌悪に満ちた目で睨みつけた。「追い詰めないで!いらないって言ってるでしょ!」さらに言葉を重ねる。「どこへ連れて行くつもり?私は自分のマンションに帰りたい」「百平米そこらの古びた箱に、帰る価値があると思うか?」遼一はそう吐き捨てると、直接手を伸ばし彼女を膝の上に引き寄せ、片腕で腰を抱き、もう一方の手で首筋の髪をかき分けた。「今後、二度とこれを外すな」明日香は必死に身をよじる。「今つけられたって、また外すわ!遼一、わからない。私を見つけて一体何がし
Baca selengkapnya