誠健は悔しそうに奥歯をギリッと噛みしめた。知里が自分を選ばないことは分かっていた。だから、わざと差出人を「KK」とだけ書いたのだ。それを光輝だと知里に誤解させて、彼女が自分を選ぶように仕向けた。なのに――まさか、ここまで読みを外すとは思ってもみなかった。光輝は知里の前に歩み寄り、にこやかに言った。「選んでくれてありがとう、知里姉。今日から俺はもう弟じゃないよ。カップルとして組むパートナーだからね」光輝は二十代前半で、背が高くスタイルも良く、歌もダンスも上手い。誠健が一番嫉妬しているのは、彼の人懐っこい性格だった。誰とでもすぐに打ち解けるし、撮影現場のみんなに好かれている。――あのとき知里が言ってた「甘えん坊ワンコ」って、こいつのことじゃないか?知里は笑いながら光輝の肩をポンと叩いた。「姉弟CP、私の一番好きな組み合わせよ。うまくやっていこうね」まだ始まったばかりなのに、すでに息がぴったりな二人を見て、誠健の額には青筋が浮かび上がった。配信のコメント欄は大盛り上がりだった。【うわー、石井さん読み外した!知里を逃したね。でも追いかける姿、絶対見たいんだけど】【あれ、完全に嫉妬してるよね?手を握りしめて顔真っ赤、首まで怒ってる。まったく、監督ってば、ほんと犬っぽいよね。欲しいと思えば思うほど、余計に手に入らなくなるんだから】【恋愛バラエティ見に来たはずが、石井さんの修羅場ドラマになってるの何で!?でも最高!】配信の視聴数は再びトップに跳ね上がり、監督は内心でガッツポーズを決めていた。この二人は、まさに金のなる木だった。目を細めて笑いながら、監督はみんなに向かって言った。「カップルチーム、無事に成立した。これからは、番組から1組につき2000円を支給する。このお金で、ミッションカードに書かれた観光地を巡って、女の子にプレゼントを買って、さらに写真も撮ってきてください。最もいい写真を撮って、いいね数を稼いだチームには豪華ディナーをプレゼント!」その言葉を聞いた誠健は、思わず鼻で笑った。「監督、それって本当に2000円?2万円の間違いじゃなくて?観光して、プレゼント買って、写真まで撮るなんて、そんなのできるわけないでだろ」彼が疑いの声を上げたそのとき、光輝が手を挙げた。「監督、この場所か
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