とはいえ、立ち去る際に桐島宗助は元妻を振り返って見てしまった。しかし彼女は視線を合わせることもなく......自分は彼女からのパーティーの招待を断り、綺麗な女優を選んだくせに、今さら何を期待しているんだ。清水霞は考えていた。本当の自愛とは、自分を愛することだ、と。彼女の冷淡さに桐島宗助は苛立った。もし彼女が少しでも不機嫌な素振りを見せ、「宗助」を呼び戻そうとしたなら、女優との関係など簡単に解消して、やり直すこともできたのに。しかし、清水霞はそれを望んでいなかった。唯一の女でなければ彼女の望みではない。誠実さがなければ、なおさら意味がない。子供のために籍を残すことと引き換えに、腐った結婚生活に耐えるつもりもない......彼女は悟った。地位のある男性と一緒になれるのが一番だが、そうでなければ自分が芽依の支えになると決めた。最悪、芽依は清水姓を名乗ればいい。清水芽依(しみず めい)だ。清水霞の繊細な目元には、強い決意が浮かんでいた。その決意は、艶やかな彼女の顔に、不思議な魅力を添えていた。桐島宗助は未練がましく彼女を見つめたが、結局藤井圭子とレストランを出て行った。その時、背後で物音がした。誰かが「宗助」と呼んだ気がした。桐島宗助は驚き、思わず振り返った。しかし、何もなかった。清水霞はナイフを持った手でステーキを切りながら、伊藤拓也と楽しそうに話していた。彼女の目に、自分の存在は映っていなかった。桐島宗助は唇を歪ませ、踵を返した。悔しさと焦りで、いてもたってもいられなかった。そして、車に乗り込んだ。桐島宗助は自分が未練たっぷりなわけではないことを証明したくて、藤井圭子を抱きしめ、激しくキスをした。熱が全身を駆け巡る。もしここにベッドがあれば、すぐにでも行為に及んでいたことだろう。ベッドはなくても、藤井圭子は桐島宗助の体にぴったりと寄り添い、腰をくねらせながら男を挑発した。桐島宗助は離婚後、何人かの女性と関係を持った。藤井圭子とも何度かあった。だが、一番良かったのは、元妻との時だった。燃え上がるような情熱は、彼を虜にした。車は小刻みに揺れ、桐島宗助は藤井圭子の体を弄んでいた。これは仕事終わりのいつものお楽しみで、後ろめたさなど感じたことはなかった。ただの遊びだ。桐島宗助は藤井圭子のことが気に入
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