All Chapters of 離婚は無効だ！もう一度、君を手に入れたい: Chapter 741 - Chapter 750

水谷苑は彼を見つめた。しばらく沈黙した後、彼女は乾いた声で言った。「時也、あなたは本当に残酷ね！目的のためなら、津帆さえも犠牲にするなんて！まあ、あなたは津帆の事なんて何とも思ってないんでしょ。ただの、数秒の欲情が生んだ副産物に過ぎないんだから。子猫や子犬を飼うのとどんな違いがあるの？」九条時也は遠く離れた九条津帆に視線を向けた。九条津帆はゴムボールで遊んでいた。額には汗がにじんでいる。九条時也はしばらくそれを見ていた。彼は視線を戻し、水谷苑に言った。「息子はもともとああやって育てるつもりだった。お前が津帆を側に置いておきたがるから、お前に育てさせて、こんな子供時代を過ごさせてやったんだ」「感謝しろって言うの？だけど、津帆を育てる時間なんてあるの？女遊びに時間を使うのが精一杯じゃない！」......今の水谷苑の言葉は、本当に人をイライラさせる。九条時也は彼女と口論しなかった。彼は彼女を見つめ、軽く微笑んだ。「もう他の女とは関係を持たない」水谷苑はその言葉を信じなかったし、気に留めなかった。しかし、抵抗むなしく、3日後、彼女は九条時也に無理やりB市に連れ戻された......彼女は償いとして、家政婦に200万円を渡した。帰国する前の晩、水谷苑は二人の子供を寝かしつけた後、一人でウォークインクローゼットで荷造りをしていた。彼女のものに加えて、二人の子供たちのものもあり、細々としたものがスーツケース数個に詰め込まれていた。九条時也は外でタバコを一本吸っていた。入ってきた彼は、いくつかの大きなスーツケースを見て眉をひそめた。「なんでこんなに荷物が多いんだ？国内で買えないものなんてないだろう？」水谷苑はまだ小さな服を整理していた。彼女は軽く答えた。「子供の下着は、慣れたものを着させたほうがいい......それに、そんなにたくさん買い換えたらお金がかかるし、あなたにお金を要求したくない」それを聞いて、九条時也は笑った。水谷苑は口ではお金はいらないと言っているが、散財する時は豪快だった。高価なものを買ってはまたそれを売りに出し、現金を手に入れて逃げるのだ。彼は彼女がまたお金を工面しようとしていることを知っていた。それでも、彼は彼女を甘やかしたかった。彼は財布から以前の銀行カードを取り出し

この騒動は、午前2時まで続いた。九条時也は別荘に戻った。彼はしばらく車内に留まった。辺りはひっそりと静まり返り、家中の明かりは全て消えていた。庭の地面に埋め込まれた数個の照明だけが、寒空の下で寂しげに点滅している......しばらくして、彼は後部座席のドアを開け、玄関へと入った。薄暗い廊下を、電気をつけずに、そのまま暗闇の中を二階まで進んだ。寝室には、柔らかな月光が差し込んでいる。水谷苑は二人の子供に寄り添い、ぐっすりと眠っている。2メートル幅のベッドには、いつものように彼の場所はなかった......九条時也はベッドの前に立ち、冷たい月光の中でネクタイを緩め、次にスーツのジャケットと白いシャツを脱いだ。水谷苑は酒の匂いを嗅ぎつけ、目を開けた。「起きたか？」九条時也は黒い瞳で彼女を見つめ、冷徹な声で、彼女が返事をする間もなく覆いかぶさった......水谷苑は抵抗しようとしたが、細い手足は彼に掴まれ、身動き一つできなかった。「時也！狂ってるの？」「ああ、狂ってる！」......彼は腹を立て、わざと乱暴に彼女を扱った。いつものような優しさはなく、ただひたすらに激しく迫ってくる彼に、水谷苑はもう逃れられないと悟った。彼女は珍しく彼の首に腕を回し、「客間でお願い！あと......ちゃんと避妊して」と囁いた。九条時也は動きを止めた。彼は上から彼女を見下ろした。月の光だけでも、彼女の目尻がうっすらと赤くなっているのがわかる。今にも泣き出しそうだ。彼は情けをかけることなく、彼女の耳元で尋ねた。「なぜ俺を突き放した？」水谷苑に返事をする機会はなかった。九条時也の体は、まるで鉄の棒のように熱く、触れれば火傷しそうなほどだった。彼は彼女を隣の部屋へ運んだ。客間ではなく、彼の書斎だ。濃い色の無垢材の机は、全く心地よくない。冷たくて硬い。九条時也は容赦しなかった。彼は今までこんなに粗暴で下劣だったことはない。いかがわしい女に使うような手口を、水谷苑に次々と試したのは、彼女が自分を他の女に突き放した罰なのだ......引き出しの中には、XXLサイズのコンドームの箱があった。だが、彼は使わなかった。彼女の生理周期を知っている彼は、今が安全日で妊娠しにくいことを知っていた。彼女が自分を嫌

水谷燕は起き上がろうともがいたが、無駄だった。「お兄さん！」水谷苑は急いで駆け寄り、水谷燕を苦労して支え起こした。彼がきちんと立った後、思わず「お兄さん！」ともう一度呼びかけた。そして、彼女は涙を流した。あの時、兄の忠告を聞かずに九条時也と密かに付き合い、泥沼にはまってしまった。こんなに長い時間が経って、ようやく兄妹で再会できた。この再会がどれほど困難で、どれほど辛いものだったか......それは本人たちにしかわからない。水谷燕の顔は、痣だらけで腫れ上がっていた。彼は以前と同じように、優しく妹の頭を撫でた。彼女を責める言葉は一言もなかった。「今すぐ君を連れ出す」水谷苑は静かに首を振った。九条時也が握っている証拠のためだけではない。九条津帆と河野美緒のためにも、自分は逃げるわけにはいかない。九条時也とは何年もの夫婦生活を送ってきた。彼の気性は誰よりもよくわかっている。水谷燕はさらに何か言おうとした。水谷苑は彼を支えながら、使用人に「応接間に救急箱を持ってきて」と言った。使用人は恭しく「かしこまりました、奥様」と答えた。......二人は応接間に入った。水谷燕は妹を見つめ、深い視線で「なぜ行かないんだ？」と尋ねた。水谷苑はすぐには答えず、ハサミを取り出して彼の破れた服を切り始めた。使用人が救急箱を持ってきた後、彼女は丁寧に彼の傷を消毒し、薬を塗った。ようやく一段落ついたところで、彼女は口を開いた。「お兄さん、私は人に養われることに慣れてしまったの。一人で二人の子供を育てるのは、本当に大変なのよ！時也は津帆の実の父親だから、彼を粗末に扱うことはない。もし彼と別れて離婚したら、また別の火の車に飛び込むようなものよ！時也ほどお金持ちではないかもしれないし、私にも優しくしてくれないかもしれない......お兄さん、今の生活は十分幸せなの。私は満足しているよ！それに、彼は自分の肝臓の半分を私にくれたのよ」彼女は本心ではないことを言っていた。水谷燕はその理由を察することができたが、賛同はしなかった。「苑、もし私のためなら、君の自由のために喜んで刑務所に入る！10年でも20年でも構わない。それに、時也ほど裕福ではないが、私の口座には少なくとも数千億円の負債がある。これは君と二人の子供を養うには十分だ...

九条時也は彼女のご機嫌を取りたくて、少し考えてからこう言った。「近いうちに、名士が集まるパーティーがあるから、一緒に行こう。お前に役立つ人を紹介するよ」水谷苑には、あの手の暇を持て余した奥様たちとの付き合いをさせたくなかった。そんなことよりも、家にいて、自分や子供たちと一緒に過ごしてほしかったのだ......水谷苑はただ軽く微笑んだ。......それから数日後の夜。帝国ホテルで盛大なパーティーが開かれ、名士たちが集まっていた。九条グループの九条社長は、初めて妻を伴ってパーティーに出席した。水谷苑に有力者たちを紹介し、簡単な挨拶を済ませると、彼はもっと重要な話があると、水谷苑に軽食を取ってくるように言った。水谷苑がその場を离れると、何人かのビジネス界の大物が、ワイングラスを手に持ち、お世辞を言い合っていた。「九条社長は結婚して何年も経つのに、奥様は相変わらずお若くて、本当に羨ましい限りです！」「水谷先生の妹さんだと聞きました！」「香市美術学院のご出身でしたね！才色兼備で、うちの鬼嫁とは大違いです......」......九条時也は上品で控え目にこう言った。「妻は若くて、考えが浅かったですね。家で子供たちの面倒を見てくれればと思っていたんですが、彼女がどうしてもって言うものですから......まあ、妻は娶ったら大事にするものですね」「大川社長、ご謙遜を！奥様は芸術家として活躍されていて、多くの有名な画家と知り合いだと聞いています。妻のギャラリーの立ち上げには、ぜひとも奥様のお力添えをいただきたく思います」......大川社長は名前を呼ばれ、有頂天になった。近頃、九条グループの目玉プロジェクトは誰もが喉から手が出るほど欲しい、まさに金の卵だ。今、九条社長からの依頼は、まさに棚から牡丹餅。大川社長はすかさず「では、妻に奥様と連絡を取らせましょう。歳は少々離れておりますが、妻は若くて美しい方のお世話を焼くのが大好きでして」と申し出た。彼は実に立ち回りが上手い。その言葉に、九条時也でさえも思わず微笑んでしまった。大川社長は内心ほくそ笑んだ。この大きな利益は間違いなく手に入る。......その夜、名士だけでなく、主催者は何人かの芸能人も招待していた。水谷苑はそこで一人に出会った。そ

水谷苑は静かに礼を言った。九条時也は軽く鼻で笑った。「俺たちは夫婦だ。こんな些細なことで礼を言う必要はないだろう？ところで、さっき小林さんと楽しそうに話してたけど、芸能界の人間とはあまり関わるな」車は小さく揺れた。水谷苑の表情はさらに冷淡になった。「たまたま会っただけよ。これ以上関わるつもりはない」九条時也は彼女をさらに数回見てから、視線を前方に移した。彼は不機嫌だった。小林渉が水谷苑の手の甲にキスをするのを見たのだ。その時、水谷苑は少し不快そうだったが、怒りをあらわにすることはなかった......その光景は、彼にとって過去の忌まわしい出来事や、不愉快な人物を思い出させるものだった。小林渉、香市の人間か。まったく都合がいい。彼の心には不快感が渦巻いていた。別荘に戻って着替えようとした時、水谷苑に小林渉から電話がかかってきた。水谷苑が口を開くよりも早く、九条時也は携帯を奪い取り、向かいのテーブルに放り投げた。そして、水谷苑はソファに押し倒された。彼は激しい欲求に駆られていた。前戯をする間もなくベルトを外し、手探りで服を剥ぎ取ると、水谷苑と深く結ばれた......彼の荒々しい動きに合わせて、ソファは耐えきれずに軋む音を立てた。男の隠そうともしない吐息と、女の耐えきれないかすかな叫び声が、その音を伴奏にして響き渡る。九条時也は酒を飲んでいて、加減が分からなくなっていた。彼は彼女の顎を掴み、自分の舌を彼女の口の中に押し込み、深く絡み合うキスを交わした。それから男のテクニックを使い、彼女に卑猥な言葉を吐かせようとした。彼女が口を割らないと、彼は彼女を弄び、焦らし、満足させなかった。水谷苑は生きた心地がしなかった。彼は恋人みたいに彼女の耳元で囁いた。「今後、彼と連絡を取るな。いいな？」水谷苑は少し落ち着きを取り戻した......彼女がまだ呆然としていると、九条時也はもう一度彼女の耳元で囁いた。彼はソファをぐちゃぐちゃにして、彼女に声を上げさせようと躍起になっていた。水谷苑は顔を背けた。テーブルの上の携帯が目に入った。まだ通話が切れておらず、通話時間は31分13秒を示していた。彼女の心臓は激しく締め付けられた。彼女は彼の考えていることを察した。小林渉が彼女の手の甲にキスをするのを見て、彼は小林