深夜。佐藤潤は書斎で難しい顔をしていた。そして、隣の遠藤秘書に尋ねた。「まだ白状しないのか?」遠藤秘書はお茶を継ぎ足した。それを聞いて、遠藤秘書は薄く笑った。「こんな大事件、九条社長が簡単に認めるでしょうか?聞けば、ボロボロになるまで殴られたのに、一言も白状しなかったそうですよ」佐藤潤は鼻で笑った。「なかなか根性があるな」そう言うと、佐藤潤は茶碗を受け取り、お茶を一口すすった。「こういうガンコな奴には、特別な手段も辞さない。あの人たち、普段は優秀なんだろう?とっておきの技を使って、時也の口から自白を引き出せ」遠藤秘書は笑った。「それはまずいんじゃないでしょうか?」佐藤潤は茶碗を置いた。「彼のことが気になるのか?」遠藤秘書は慌てて手を振って否定した。「そんなことありません。ただ、そんなことをしたら、あなたと苑様との仲が......彼女は今、九条社長と本当にうまくいっているんですから」佐藤潤は少しの間、ぼんやりとしていた。しばらくして、佐藤潤は冷たく笑い出した。「前回の件の後で、苑が俺に何か情が残っていると思うか?正直に言うと、佐藤家の子供たちのうち、剛や玲司も含めて......苑が一番俺に似ている。特に、冷酷になるときは本当に容赦ない」遠藤秘書はすかさず言った。「苑様は、芯の強い女性です」「言われなくても分かっている」その時、机の上の電話が鳴った。佐藤潤は電話を取り、軽く咳払いをしてから口を開いた。「もしもし、佐藤です」電話の向こうでは、病院の院長が震える声で佐藤潤に告げた。「玲司さんが......自殺を図りました」佐藤潤の手から、電話が滑り落ちた............明け方、救急室では、医師や看護師が出入りしていた。佐藤潤はやつれた顔をしていた。佐藤剛夫婦は涙を浮かべていた。相沢静子は慌てて駆けつけ、しきりに尋ねた。「どうして玲司が自殺なんか?小林のせいじゃないの?」一枚の小切手が、相沢静子の前に投げ出された。佐藤潤は静かに言った。「苑は6000万円払って玲司に会った......彼女は、玲司の生きる気力を、精神的にへし折ったんだ!」この一件は、佐藤潤にとって大きなショックだった。自分が大切に育てた佐藤玲司が、数年間、名利の世界に浸っていたにもかかわらず、水谷苑の残酷
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