LOGIN本来、九条津帆と陣内杏奈は自分たちの家に帰る予定だったが、九条羽のことで九条家の本邸へ戻ることになった。九条津帆は車を停め、陣内杏奈の方を向いて優しく言った。「後で羽と話してやってくれ。あいつは今まで他の女性と付き合ったことがないから、きっと傷ついているんだろう」陣内杏奈は小さく、「うん」と返事した。少し考えてから、彼女は小声で言った。「羽はまだ彼女のことが忘れられないみたい」九条津帆はハンドルに両手を置き、指先で軽く叩きながら、微笑んだ。「そうでも、あいつは認めようとしないだろう。まあ、本人たちに解決させよう。もう子供じゃないんだし」そう言うと、二人は車から降りた。先に車から降りていた九条羽に向かって、1歳を過ぎたばかりの陣内莉緒がヨチヨチと歩み寄っていった。九条羽が身をかがめて小さな姪っ子を抱き上げると、陣内莉緒は彼の頬に「チュッ」と可愛らしいキスをし、そのまま首にぎゅっとしがみついて離れようとしない。その微笑ましい姿は、彼女が普段からどれほど周囲に溺愛されているかを物語っていた。九条津帆夫婦が歩み寄ってきた。陣内莉緒はすぐにかっこいいパパに抱っこをせがみ、小さな口でたどたどしくおしゃべりをしては、白い乳歯をのぞかせる。その姿はたまらなく愛くるしい。九条津帆は彼女を抱き上げ、一行はリビングルームに入った。陣内杏奈はケーキを置き、丁寧に切り分ける。まず九条時也夫婦と陣内莉緒に、そして九条津帆に渡した。甘いものが苦手な九条津帆だったが、場の雰囲気に合わせて少し食べ、その後は陣内莉緒に食べさせることに専念した。すっかり良い父親の姿だ。その様子を九条時也は微笑ましく見守りつつ、次男へと視線を移した。九条羽はケーキを食べ終えると、2階へ上がった。九条津帆は陣内杏奈に目配せをし、彼女は少し間を置いて果物を持って後を追った......二人が2階へ上がると、九条時也は視線を戻し、九条津帆に尋ねた。「羽に何かあったのか?」九条津帆は陣内莉緒をあやしながら、ゆっくりと言った。「昔の知り合いに会ったみたいで、まだ吹っ切れていないらしい。綺麗な子だったから、羽が忘れられないのも無理はない」当時のことは九条羽にとってあまりにも残酷な打撃だった。女の子のためにバスケットボールができなくなり、電気工学に転向したらしい。でも、当時
夜も更け、街のネオンが少しずつ薄れていく。高級感のある黒塗りの車が、ゆっくりとレストランの前に停車した。ドアが開き、中から数人が降りてくる。真ん中で周りに囲まれている若い女性は、とても美しい。真っ白なミニドレスを着て、スラリとした脚は白く輝いている。九条羽は、かつてこの細い脚を抱きしめ、夜通し愛し合ったことを思い出した。若さゆえに熱く、朝までずっとそうしていたものだ。杉山晴。九条羽は冷ややかにかつての恋人、いや、金の亡者を見つめた。彼女は夢を叶えて人気女優になった。そして、九条羽は、彼女が2000万円のために自分を利用したせいで、女を信じられなくなった。清楚を装う彼女の姿が、今はただ嫌悪感しか抱かせない。......九条羽の視線はあまりにも露骨で、スタッフたちの気に障った。「すみません、写真撮影はご遠慮ください」ある女性スタッフが九条羽のスマホを取り上げようと歩み寄る。そして、杉山晴もそちらを見て、九条羽に気づいた。青かった頃に別れて以来、彼はすっかり立派で精悍な男になっていた......杉山晴は呆然として、呟いた。「羽」女性スタッフは聞こえなかった。彼女は、杉山晴の人気女優という立場を利用して、一般人のスマホを調べるなど日常茶飯事だった。九条羽は杉山晴を見つめながら、スマホを彼女のスタッフに手渡した。画面にはロックがかかっておらず、壁紙がそのまま目に飛び込んできた。若い女性が下着姿でホテルのベッドに跪いている。濡れた黒髪が、何とも悩ましい。女性スタッフはまだ偉そうに言っている。「どう見てもまともな人じゃないよ!こんな写真......」次の瞬間、彼女は言葉を失った。写真に写っていたのは杉山晴だったからだ。しかも、4年前頃の、18歳ぐらいの杉山晴だった。九条羽はスマホを取り返すと、その女性スタッフを無視して、杉山晴の前に歩み寄り、彼女を見下ろした。その声は氷のように冷たかった。「二度と俺の前に現れるなと言ったはずだ。忘れたのか?それとも、また金に困って、体を売りに来たのか?」杉山晴の顔は真っ青になった。彼女は震える唇で何か言おうとしたが、言葉が出てこない。強気だったスタッフも、今の九条羽の凄みに圧倒され、それ以上何も言えなくなった。その時、九条津帆たちもレストランから出てきた。九条
陣内皐月はすべてを忘れ、藤堂群がもたらす快感の波にただ身を委ねていた。空から、雨が降り始めた。藤堂群は彼女を車に乗せた。曇った窓ガラス越しに、男女の顔がぼんやりと映る。指輪が、陣内皐月の華奢な首元で揺れていた............高級会員制レストランの個室。高田浩は泣きそうな顔で、九条津帆の腕にしがみついた。「津帆さん、お願い、群さんに言って、俺はわざとじゃないんだ!陣内社長に楯突くなんて、そんな度胸は俺にはないよ。俺は群さんのためにやったんだ!」九条津帆は彼を突き放し、冷たく笑った。「今日、ここで始末されなかったことを幸運に思うんだな。会社に戻って、自分のしでかした事の尻拭いでもきっちりやっておけ。言っておくが、群の機嫌を損ねたら、いとこの俺でさえ痛い目を見るんだ。ましてやお前にとってはなおさらだぞ!浩、俺はお前を助けられないし、助けたくない。忘れたのか?皐月さんは俺の義理の姉なんだぞ。群と一緒にお前を潰さなかっただけでも、運がいいと思え。さっさと消えろ」......高田浩が去った後、個室は静まり返っていた。皆、高田浩のこの先がどうなるか分かっていた。この業界では生きていけない。顔見知りの仕事は全てなくなるだろう。これからは外の世界で泥水をすすって生きていくしかない。血を吐くほど酒を飲んで接待したところで、二度と今の華やかな地位には戻れないのだ。周囲の人々はため息をついた。九条家と藤堂家が手を組んだら、誰が逆らえるだろうか?陣内皐月くらいだ。陣内皐月の妹は九条津帆に嫁ぎ、そして陣内皐月は藤堂家の大切な跡取り子を産んだ。B市では知らぬ者はいない存在だ。高田浩はそんな彼女のプライベートをネタにしたのだから、命知らずもいいところだ。皆が噂をしていると、九条羽が先に席を立った。九条羽は九条家の次男だ。彼はまだ九条グループを継いでいないが、九条時也は息子をないがしろにすることはなく、それなりの支援をしている。そのため九条羽は若くしてIT企業を経営し、従業員数は2000人にものぼる。最近は、成田栄治と買収の話を進めている。成田栄治は再婚し、海外で暮らす予定だ。九条羽は藤堂言の従弟にあたる。成田栄治は藤堂言への貸しとみなして、相場の8割で事業を譲渡する意向を示していた。その心遣いを察した九条羽
外に出ると、藤堂群はやはり気が収まらなかった。店の奥まった場所で、彼は陣内皐月を壁に押し付けて激しくキスをした。陣内皐月の唇を何度も奪い、彼女の素直な反応に酔いしれた。長いキスを終えた藤堂群は、陣内皐月の唇から少し離れ、額を寄せた。かすれた声で尋ねた。「どうして抵抗しないんだ?俺のこと、嫌いなんじゃなかったのか?」陣内皐月は彼と数年一緒にいたので、その性格をよく理解していた。藤堂群は気にしているのだ。この前、彼は思わず横山成一と何かあったのかと聞いてきた。あの時は頭に血が上っていて否定しなかったが、今日は違う。今日は皆の前でからかわれたのだ。陣内皐月は藤堂群の腕に掴まり、小さな声で言った。「他に男の人はいないわ」......この一言が、藤堂群の心を大きく揺さぶった。彼は思わず陣内皐月を強く抱きしめ、彼女の美しい顔を見つめた。そして、陣内皐月の腰に手を回し、熱い吐息とともに言った。「あの時、なぜ言わなかった?言ってくれていれば、こんなことにはならなかったのに」彼の瞳は獣のように獲物を狙っていた。陣内皐月は、彼が完全によからぬ勘違いをしていると察した。それでも今は、彼に甘えてもいい気がした。彼のこれまでの我慢を考えると、守ってくれたことに感謝したかったからだ。少しだけ、ご褒美をあげたかった。しかし、藤堂群は納得しなかった。彼は陣内皐月に、夏目圭佑と完全に縁を切るよう迫った。壁に寄りかかった陣内皐月は、顔を上げて静かに言った。「彼とは何も始まっていないわ」藤堂群は彼女を信じなかった。藤堂群は陣内皐月のスマホを取り上げ、夏目圭佑に別れを告げるメッセージを送ると、彼女を連れて店を出た。陣内皐月は、どこへ連れて行かれるのか聞かなかった......夏の夜の衝動に、彼女も身を任せたいと思ったのだ。......車に乗った陣内皐月は、藤堂群がホテルか、彼の家に行くと思っていた。しかし、藤堂群は彼女を山頂に連れて行った。道中は景色が素晴らしく、車から見下ろすと、街の明かりがまるで一筋の「光の帯」のように連なっていた。山頂は風が心地よく、夜は静かだった。藤堂群は陣内皐月を車のボンネットに押し倒してキスをした。陣内皐月は首に腕を回し、ささやいた。「群、あなたって、本当にひどい時もあるけど、優しい時もある。
陣内皐月は我に返った――彼女は手を洗いながら、静かに言った。「別に。あなたが人の年齢を気にするってことは、自分が歳をとったことを気にしているのね。もう若くないから、お金で時間を買おうってわけ?」藤堂群は、なおも気だるげに煙草を吸っている。この女は本当に負けず嫌いだ。一体全体、あの若い男がどうやって彼女のわがままに付き合っているんだ?それとも、他人の前では猫をかぶっているのか?そう考えると、藤堂群は気が気でなかった。彼と陣内皐月の間には子供がいる。男は、女に対して独占欲を持つものだ。たとえ陣内皐月が何度も結婚したとしても、藤堂群にとっては彼女は自分の女であり、自分たちこそが本当の夫婦であるという思いが消えることはなかった。柔らかな照明の下、流れる水の音だけが聞こえていた。藤堂群は陣内皐月の服装に目を奪われた――黒のタイトなロングドレス。フロントスリットに、上から下まで6つの金色のボタンが彼女のスタイルを際立たせていた。今日は明らかに気合を入れておしゃれをしている。九条津帆の誕生日だから、と考えると、藤堂群はいてもたってもいられなくなった。彼が手を伸ばすと、トイレのドアが閉まった。陣内皐月は眉をひそめた。「群、何をするつもり?」藤堂群は表情を変えず、平然と答えた。「ちょっと悪いことでもしようかと思ってな」藤堂群は陣内皐月に近づき、彼女を洗面台に押し付けた。そして、いやらしい視線で陣内皐月を上から下まで舐め回すように見つめ、最後にその白くて滑らかな脚に視線を止めた。陣内皐月は痩せているが、スタイルは抜群だった。陽に当たることのない肌は柔らかく、弾力に満ちている。照明のせいで余計にセクシーに見え、さっきまで個室にいた時の感覚が蘇る。彼は彼女の脚に手を添え、耳元でささやいた。「わざとそんな格好して。さっき個室にいた時、みんながお前の脚を見てたぞ」陣内皐月は藤堂群を見上げた。「あなた以外に、そんな下品な人いるわけないでしょ」藤堂群は言った。「男心ってものを分かってないな」藤堂群の言葉は嘘ではなかった。陣内皐月は自分の美しさに無頓着だった。陣内皐月が無意識に見せるセクシーさが男心を揺さぶるのだが、彼女自身はそれに気づいていない。藤堂群は腹立たしいと同時に、嬉しくもあった。彼は陣内皐月に言った。「今後、こんな服は禁
豪華な個室には、まだ二、三人しか客が来ていなかった。藤堂群もその一人だった。陣内杏奈が忙しそうに立ち働いている。九条津帆は彼女を溺愛しているので、傍で手伝い、少しでも疲れさせないように気を遣っていた。先に来た三人の男たちはトランプに興じていた。そこへ陣内皐月が来ると、誰かが顔を上げて言った。「あと一人足りないぞ。皐月さん、ちょうどいいから入ってくれよ」藤堂群が持っていたトランプをテーブルに置くと、男は慌てて言い直した。「陣内社長」请母语老师确认该称谓是否合适藤堂群はどこか控えめに、軽く鼻を鳴らした。「くだらない」その時、九条津帆がグラスを持ってやって来た。彼は陣内皐月にそれを手渡しながら、クスッと笑った。「冗談はやめてくれよ。皐月さんには彼氏がいるんだ!26歳の可愛い彼氏だぞ」陣内皐月は九条津帆がわざと言っているのを知っていたが、否定しなかった。今さらそんなことでひるんだりしない。陣内皐月はグラスを受け取り、「ありがとう」と言った。藤堂群は九条津帆を見上げ、意味深な視線を向けた。九条津帆は彼の肩を軽く叩き、「じゃあ、楽しんで」と言ってその場を離れた。藤堂群の視線が陣内皐月へと移る。彼は席を譲るように横へずれ、彼女を座るよう促した。陣内皐月も遠慮せず隣に座ってトランプに参加する。商売をやっているだけに腕も良く、彼らと息も合っているようだ。それを見て藤堂群は少し不機嫌になった。陣内皐月の向かいに座っていた男が笑った。「群さん、今夜は酒だけにしておこうぜ。ヤキモチはなしだ。そんなに酔ってたら、陣内社長の可愛い彼氏が迎えに来た時、嫉妬で大暴れしちゃうんじゃないか?」藤堂群の声は妙に落ち着いていた。「あいつがここに来る度胸があればの話だがな」陣内皐月は眉をひそめた。「群、私のことはあなたには関係ないでしょ?」「そうなのか?」藤堂群はカードを出し、陣内皐月を見上げた。彼の目は何を考えているのか分からなかった。陣内皐月はこれ以上この話をしたくなかった。今、彼女はここに来たことを少し後悔していた。藤堂群は本当に頭がおかしい。明らかに、藤堂群は陣内皐月の考えを察したようで、それ以上何も言わなくなった。ただ黙々とトランプに集中していた。しばらくして客が増え、陣内皐月の後ろで観戦する者が出たため、人と人との距
桐島霞がそう言い終えた途端、玄関から軽い咳払いが聞こえた。顔を上げると、なんと桐島宗助本人だった。B市に出張に来ていた桐島宗助は、水谷苑の誕生日だと聞き、贈り物を持ってきていた。だが、元妻が自分の悪口を言っているとは、思いもよらなかった。なんだか妙な空気が流れた。しばらくして、桐島霞は気まずそうに口を開いた。「ろくでないの男が来たのですか」桐島宗助は元妻をじっと見つめた。そして、水谷苑にプレゼントを手渡しながら、誠実な口調で言った。「水谷さん、これはあなたへの誕生日プレゼントです。それから、羽くんにも少しばかりです。さっき子供に会ってきましたが、元気そうでよかったです」
明生総合病院で、佐藤翔の救命処置が行われた。幸いにも、一命を取り留め、後遺症も残らなかった。しかし、体はずいぶんと弱ってしまった......相沢静子は息子を抱きしめ、泣き崩れた。彼女は浮気したことで、佐藤家で立場を失い、もはや佐藤潤に縋るしかなかった。彼女は水谷苑が大勢を顧みないと非難し、それによってが佐藤潤の機嫌を取ろうとした。佐藤潤は後ろめたさを感じていた。「そんなことを言ってる場合か!」佐藤潤は相沢静子を怒鳴りつけた。「子供たちの面倒を見ろ!外で男と遊んでばかりいないで......そうすれば時也に足元をすくわれることもなかったはずだ!」面と向かって叱責され、相
それを聞いて、桐島宗助はどこか奇妙な表情を浮かべた。妻に子供ができないことは知っている。なぜできないのかも、本当は知っている......ただ、口に出さないだけだ。彼は元々、気が進まなかった。桐島霞がそのことを持ち出したので、ますます気が失せてしまった。しばらく我慢したあと、桐島宗助は妻の手を払いのけ、冷淡に言った。「もう遅い。寝よう」桐島霞はベッドに横になり、少し居心地悪そうに黙っていた。彼女は後ろ暗い過去を持ち、夫の前では常に劣等感を感じていた。しかし今夜、彼女は九条美緒のような可愛い女の子がどうしても欲しかった。本当に欲しくてたまらなかった。そして、暗闇の中
佐藤玲司はタバコを取り返した。長く白い指でタバコを挟み、一口吸って煙を吐き出した。青い煙の中で、彼は淡々と言った。「俺は離婚するつもりはない!もしお前がこの家に少しでも未練があるなら、このまま一緒に暮らしていこう......ただし、条件はお前が外の男と完全に縁を切ることだ。それと、お前が夫婦としての関係を求めるなら、俺は応じる」相沢静子は一瞬、呆気に取られた。そして、少し詰まった声で言った。「玲司、あなたも、私と別れたくないのね?いろいろあったけど、私の良さが分かった?これから、私たち、仲良く暮らしていきましょう」彼女は結局彼を愛していたので、急いで忠誠心を示した。「きっぱ