Semua Bab (改訂版)夜勤族の妄想物語: Bab 401 - Bab 410

482 Bab

5. 「あの日の僕ら」79

-79 赤信号が発進させた恋心- 隆彦は男子学生達を力仕事に、そして女子学生を家財道具の梱包作業に割り振る事にした。ただ、中型免許を持つ桃と美麗の2人には運転も任さなければならないので可能な範囲で荷物の積み下ろし作業に参加する様にと指示していた。隆彦「2人はアパートに残って2人は引越し先のコンビニで待機してくれ、桃ちゃんと美麗ちゃんが運転するトラックが交互に行き交う形を取ろう。」 普段からコンビニを経営しているだけあって、隆彦の指示は的確だった。 前日から予め香奈子と好美が梱包していた荷物から美麗が運転するトラックに積んでいった。 男子4人でジャンケンをして負けたので最初の移動で正と安正がコンビニに移動する事になった、コンビニに来た荷物を2人で降ろして運び込むので正直大変かもしれないなと予想されたが、隆彦が出たある電話でその不安も解消された。隆彦「すまんな、助かるよ。やっぱり人手は多い方が良いからな。今夜何か奢らせてくれ。」 美麗の運転で最初の荷物と男子2人がコンビニまで運ばれた、前日から梱包していた多めの荷物が降ろされる予定の駐車場に女性刑事2人が立っていた。美麗「手伝ってくれるのは助かるけど、ちゃんと確認してもらった方がいいよね。」安正「免許は取ったんだろ、だったら大丈夫だよ。」 どんな時でも美麗の不安をすぐに解決してくれる安正、美麗は安正にどれだけ感謝してもしきれない気持ちでいた。正「免許証出して見せたら大丈夫じゃないの?論より証拠って言うじゃん。」美麗「そうだね、そうする。」 コンビニに到着した瞬間、荷下ろしに来た文香と美恵に美麗が免許証を出した。氏名の欄に「松戸メイリー」と書かれている。美麗「何となく名前の記載がおかしいんですけど、運転しても大丈夫ですよね。」文香「大丈夫、気にし過ぎよ。名前は後で修正出来るか聞いてみるわ、それにしても女の子がこんなトラックを運転するなんて格好いいじゃん。」美恵「好美にも免許取らせないとね。」正「いや・・・、好美ちゃんは色々と忙しい子だから難しいんじゃないですかね。」美恵「そうね、あの子は何かと一生懸命だからね、良い事なんだけど私としては正直無理して欲しくないな・・・。」 そんな会話を交わしながら5人は少し多めの荷物をトラックから降ろしてコンビニの2階、居住スペースの端にある空き部屋に
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-20
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5. 「あの日の僕ら」80

-80 唐突な再会と告白- 実は密かに両想いだった2人が狭いトラックの空間で楽しんでいた2人きりの時間を後ろで信号待ちをしていた車の男性ドライバーの声が消し去ってしまった、相手の車の助手席には綺麗な女性が座っていた。男性「おい、早く行けよ!!お前免許持ってんのか、青信号になってんだろうが!!このクズ野郎が!!」美麗「くっそぉ・・・、やっさん、助手席の女の人を頼んでも良い??」 男性の声で我に戻りイラッとした美麗が運転席から降りて後ろの車の運転席のドアを勢いよく開けた。美麗「何よ、ハザードを点滅させてたんだから良いじゃないのよ。」男性「何だ、女かよ。テメェ文句あんのかコラ?!」美麗「女だからって舐めないでよね!!」 確かに非は美麗の方にあるが流石に「クズ野郎」は言い過ぎでは無いだろうか、しかしそんな不安など一瞬にして消え去ってしまった。 イラついた相手の男性が殴りかかってきたので美麗はそれを交わして背負い投げした。男性「くそっ・・・、どうなってやがる!!」美麗「高校で柔道を中心に格闘技を習ってたのよ、役に立って良かったわ!!」 しかし男性は懲りていないのか、苦し紛れに立ち上がった。安正は美麗を敵に回したり怒らせたらマズいと確信した。男性「そうと分かれば加減は必要ねぇ、やってやるぜ!!」 すると、美麗に掴み掛ろうとした男性を安正が制止した。安正「俺の女に手ぇ出すな・・・!!」 安正が自分を救い出してくれた事もそうだが、「俺の女」と言ってくれた事が何よりも嬉しかった美麗はもう一度相手の男性を背負い投げして抑えつけた。 その間に相手の車の助手席に座っていた女性を安正が優しく車外へと誘い、美麗たちから少し離れた所に誘導した。美麗「どう、これでもまだ私・・・、いや私達に抵抗する?」男性「ま・・・、参った!!だから放してくれ!!」美麗「私達に非がある事は分かっているけど、流石にやり過ぎだと思わなかったの?」 美麗は抑えつける手を強めた。男性「すみません、本当にすみませんでした!!」 ただ、美麗は男性の顔に見覚えがあった。美麗「あんた、最近指名手配されてる結婚詐欺師でしょ。手配書の顔と一緒よ、次はあの人を騙そうとした訳?!」男性「待て、何の話か分からないんだが!!」美麗「これを見てもまだ白を切るつもり?!」 美麗は以前に文香や
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-20
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5. 「あの日の僕ら」81

-81 冷静さとは裏腹に- 先程美麗とキスを交わしたが故に福来子の言葉に若干の気まずさを覚えた安正はゆっくりと美麗の方を見た、安正の考えとは裏腹に美麗は至って冷静だった。安正に犯人を抑えて貰うように頼んでトラックに積んであった紐を取ると、動けない様に犯人の手足を縛って吐き捨てた。美麗「二度と・・・、私の友達に手を出すな・・・!!」 紐をより一層きつく縛った後、文香に今いる場所などを連絡して運転席へと向かった。文香(電話)「そんな事があったのね、父さんがなかなか来ないって心配してたのよ。分かった、父さんには私から連絡して現場に向かうからそこにいるお友達に動かない様に指示しておいてくれる?」 美麗は福来子に文香からの伝言を伝えると運転席へと向かった。美麗「福来子、今言った通り仕事中だからこの事は後で話そう。(中国語・小声で)私、もう何も失いたくないの。」 友人達に見せていた物とは真逆で何処か陰のある表情を見せた美麗はいつもより強くドアを閉めてギアを「D」に入れた、きっと王麗がこの場にいたら激怒する位に(余談ですが、桃と美麗は中型免許を取得した際にAT限定解除をしています。え、全然関係無いって?)。 香奈子のアパートに向かう車内で安正はどうする事も出来なかった、前提として言うとだが安正はどちらとも付き合っている訳では無い。しかし無理矢理だったとは言え、美麗と唇を重ねたのは紛れもない事実だ。 安正が焦りの表情を浮かべ続けている中、表情に未だ陰を残しながら冷静に運転していた美麗が重い口を開いた。美麗(日本語)「ねぇ・・・、福来子の事どう思ってんの?」安正「良い奴だよ、部内でも強い方だし。」美麗「違う!!女としてよ!!」安正「分かんねぇよ・・・、こんなの初めてだし。」美麗「何、じゃあさっきのキスは同情だっての?!秀斗を亡くした私が可哀想だったから?!」 安正への強い想いが故に本気で泣きながら怒る美麗の表情を初めて見た助手席の柔道部員は思わずしどろもどろしてしまった、隣のハーフはずっと辛そうに涙を流していた。 安正は秀斗が亡くなる前の事を思い出して語った。安正「最初は楽しそうに帰る秀斗や美麗ちゃん達を見ているだけで良かったんだ、正直俺にとって美麗ちゃんは高嶺の花だった。俺はあの輪には決して加わる事が出来ない、遠くから見るだけで良い、そう思ってい
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-26
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5. 「あの日の僕ら」82

-82 まさかの理由での再会- 美麗のトラックが戻ってから作業は順調に進んでいた、想定よりも早く終わったが別に時給制にしていた訳ではなかったので隆彦は予定通りのバイト代を渡した。隆彦「さぁ、松龍で呑もうか。」美麗「あ、ごめんなさい。今の時間、店閉まってます。」 ランチタイムからずっと鍋を振っている両親を気遣った美麗の案で、最近はランチタイム終了後から3時間程中休みを挟む事にしていた。美麗「17時から営業を再開しますので、それではだめですか?」隆彦「じゃあその時間に「吉馬」で予約をお願いします。」 美麗は人数を確認するとそこに1人足して店に予約の電話をした、何故か中国語で。美麗(中国語)「もしもしママ?17時で予約って出来る?」王麗(電話・中国語)「日本語で話さんかい、父ちゃんが出たらどうすんだい。」美麗(日本語)「ごめんごめん、それで予約は大丈夫?」王麗(電話・日本語)「大丈夫だけど、あんたトラックはどうしたい?いつ返してくれんの?」美麗「もうすぐ返すから安心してよ、ママ。」王麗(電話)「あんたまさか、ママの68でビール取りに行けとか言うつもりかい?昔あんたにも貸した漫画の豆腐屋じゃあるまいし、あれじゃ全部積めないから早くして頂戴。」 今日は卸業者に注文したビールを取りに行く予定だった、隆彦からバイト代を受け取った美麗は急ぎで店に戻って駐車した、まさかのドリフトで。 店からその様子を見て驚いた王麗が飛び出して来た。王麗「あんたは馬鹿か、真希子じゃないんだからやめとくれ!!店が壊れるだろ!!」 するとトラックでのドリフトを目撃して王麗の言葉を聞いたあの女性が口を挟んだ。女性「何言ってんだい、私でもトラックでドリフトなんて出来る気がしないさ。してたのは渚だよ、後でテクニックを教わらなきゃね。」王麗「あら真希子じゃないか、こんな時間にどうした?」真希子「何言ってんの、テイクアウトの炒飯を予約してたじゃないか。」王麗「それは17時の予約だろ、それに今は中休みでガスボンベの入れ替えをしているから作れないよ。」真希子「そうなのかい、それじゃその時間帯にまた取りに来るわ。」 すると店の裏から店主の龍太郎が歩いて来た。龍太郎「16時で良かったらいいぞ、もうすぐ入れ替え終わるらしいし炒飯だったらすぐ作れるからな。」真希子「中休みなん
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-26
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5. 「あの日の僕ら」83

-83 実に良かった再会と嫌な予感がする再開- 佳代子に声を掛けられ、無菌室に入った美恵は眼前に広がる光景を未だに信じる事が出来ないでいた。まさか本当に自分の姉が自分と同じ地域の病院の、しかも無菌室に入院しているだなんて。美恵「姉ちゃん、家を出て行ってからずっとどうしてたのよ。」佳代子「こっちにあった小さな工場で働いて、結婚前に子供が出来たって報告したらドヤされて、嫌になって相手が経営するコンビニに住み着いて・・・、ずっと好き勝手していたから多分魔が差したのよ。」 いくら目の前の姉が言った通りだとしてもあんまりではないかと悲しくなった美恵、しかしこんな形であれ再会できたのは喜ばしい事だった。美恵「プリン・・・、覚えてくれてたんだ。」佳代子「あれは完全に私が悪かったからね、ずっと引きずっていたんだよ。あんなので良かったら許しておくれ。」美恵「許すも何も、数十年越しのプリン、堪能させてもらったよ。」佳代子「そうかい、そう言って貰えると助かるよ。」 佳代子は久々に会った姪っ子に改めて目線を向けた。佳代子「好美ちゃんも来てくれてありがとうね、もう大学生なのかい。あたしらも歳を取った訳だ。」美恵「姉ちゃん、好美は香奈子ちゃんと同い年で同じ大学だよ。ただ最近親戚同士だって知ったらしいけどね。」佳代子「そうかい、あんな事があったから仕方ない事さ。」美恵「あんな事?」 佳代子は香奈子との過去を自分からの目線で話した、事情がどうあれ離れ離れになってしまった親子の話に妹と姪っ子はずっと涙を流していた。美恵「姉ちゃんも大変だったんだね、また会えるなんて思わなかったはずだからよっぽどじゃなかったのかい?」佳代子「そりゃそうさ、ずっと待ってた瞬間がやっと訪れたんだ。自分がこんな姿でなけりゃもっと良かったのに。」香奈子「ごめん、お母さん。もうそろそろ行かなきゃ、今から引っ越しの打ち上げだから。」佳代子「あら羨ましいじゃないか、楽しんでおいで。」 予約の17時、「吉馬」の名前を聞いた王麗は人数を改めて確認した。王麗「あれ、おかしいね・・・。ちょっと待ってくれる?」 王麗は2階の部屋で着替えを終えた美麗に話しかけた。王麗「美麗、あんた予約が1人多いんだけどどういう事なんだい?」美麗「後で分かるよ・・・。」 1人少ない状態で隆彦たちは席に案内されて乾
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5. 「あの日の僕ら」84

-84 分かってた- 妙な位の優しさを見せる美麗に少しだけだが気味悪さを感じた福来子、一先ずビールから呑むつもりだったが美麗に勧められたので店で1番高い紹興酒を何杯も煽っていた。美麗「ごめんね福来子、急に呼んじゃって。用事とか大丈夫だった?」福来子「あっても呑んじゃったからもう行けないよ、誘ってくれてありがとうね。」 福来子は美麗の左手首を見て驚いた、ぐるぐるに包帯が巻かれていたのだ。福来子「そんな事より、左手どうしたの?」美麗「犯人を投げた時にちょっと捻っちゃって、あいつ思ったより重くてね。」福来子「怪我してまで私を助けてくれるなんて、あんた本当に良い奴だよ。」美麗「友達だもん、当然の事じゃない。」 福来子は丁度目の前にいた王麗に瓶ビールとグラスを2つずつ注文して美麗に手渡すと、ゆっくりと注いでいった。福来子「奢らせてよ、今日のお礼がしたかったの。」美麗「本当、大した事してないのに何か悪いね。」 顔を赤くした美麗は頭を掻きながら注がれたビールを吞み干した、酒が入ったからか、それとも照れからだろうか。福来子「ねぇ、何か聞きたかったんじゃないの?」美麗「何でよ、ただ呑みたかっただけよ。」福来子「じゃあ何で皆と離れた所で?ちょっと不自然じゃない?」 いつも座っている定番の座敷での呑み会を楽しむ好美達の中に安正の姿を発見して質問した。美麗「バレたか、実は安正・・・、君の事なんだ。」福来子「やっぱり?そんな気がしてた。」美麗「ねぇ、福来子は安正君の事どう思ってんの?」福来子「「憧れている人の1人」って言えば良いのかな、柔道着着て汗を流す姿とか特にそう思っちゃうの。」美麗「福来子さっきさ、「大好き」って言ってたよね。それって仲間として?それとも男として?」福来子「・・・。」 福来子は空いたグラスを握りしめて沈黙した、美麗の核心を突いたこの質問への答えを誤れば美麗との仲はどうなるのだろうか、想像すると怖かった。福来子「あんた付き合う事になったんでしょ、安正君と。」美麗「うん・・・、トラックの中で「彼女が欲しい」って言ってたから思わずキスしちゃった、私の気持ちを知って欲しくて。」福来子「美麗らしいね、1度あんたになってみたいわ。」 福来子は美麗に笑いかけるとグラスにビールを注いで一気に煽った、さっきまでの沈黙がまるで嘘の様だ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-26
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5. 「あの日の僕ら」85

-85 最悪の1日- 楽しそうに初めての紹興酒をずっと楽しむ福来子の横で、王麗の一言により顔を蒼白させる美麗。実は美麗の小遣いは松龍でのお手伝いによる時給制となっているのだが、隣の友人が呑んでいる酒は1杯の金額が2時間分の時給をはるかに超えている物だったのだ。美麗「ねぇ・・・、ビールにしない?福来子、ビールの方が好きでしょ?」福来子「そんな事無いよ、これ美味しいね。もっと貰おうかな。」 美麗は今日1日かけて折角引越しの手伝いをしていたのに、全てが水の泡と消えてしまう気がしてならなかった。 そんな中、好美は1つ疑問に思っている事を香奈子にぶつけた。好美「ねぇ香奈子、確かあんたこのマンションでも部屋借りてるよね。そこはどうするの?」香奈子「ああ、あそこね。あそこは別の目的で借りてるの、このマンション防音だからバイオリンの練習をするのに丁度良くてね。一応寝泊まりできるようにベッドとか冷蔵庫を置いてる訳。」隆彦「そうなのか、実はうちの部屋も防音にしているんだよ。俺も趣味程度だがギターやドラムをするからな。良かったらどうだ、ここの部屋も解約してそこの家具や家電もうちに持って来ないか?」香奈子「実はそうしようと思ってたの、勿論好美にもちゃんと言おうと思ってたんだけど忘れてて。好美、ごめんね。」好美「良いのよ、気にしないで。」 そんな中、離れた所で呑んでいた2人が座敷にやってきた。福来子が高級な紹興酒を片手に顔を赤らめている。美麗「ねぇ、何か良さげな話が聞こえて来たんだけど。」好美「香奈子がここの部屋も解約するんだって、それでまた引越ししないといけないかもだってさ。」美麗「いつ?」隆彦「そうだな・・・、来週の土曜日はどうだ?解約の手続きとかもあるだろうから。」香奈子「助かるよ、じゃあそうする。」美麗「ちょっと待ってね。(中国語)ママ、来週の土曜日またトラック貸して?」王麗(中国語)「あんたまたドリフトしようとして無いかい、そうだったら勘弁してほしいんだけど。」美麗(中国語)「違うって、香奈子の家具をここの部屋から運ぶのよ。紹興酒代稼がなきゃ。」王麗(中国語)「よく分かっているじゃないか、だったら行ってきな。(日本語)吉馬さん、うちの美麗をお願いしますね。何でもすると思うのでこき使ってやってください。」美麗(日本語)「ちょっとママ・・・。
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-26
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5. 「あの日の僕ら」86

-86 背中を押した店主と恋人のバイオリン- 裕孝は龍太郎から受け取った瓶ビールと香奈子からのプレゼントをずっと握りしめて震えていた、煙草を燻らせながら龍太郎は裕孝の肩に手を優しく置いた。龍太郎「中身何だろうな、取り敢えず開けてみろよ。」 開けてみると白いピクチャーレーベル仕様のCD-Rが1枚入っていた、表面には何も書かれていない。龍太郎「中見てみろよ、そこにパソコンがあるから。」 すぐそばにあったラップトップにCDを入れると、画面には「音楽CD」と表示されていた。再生してみるとギターをつま弾く音が流れた。裕孝「これって・・・。」 裕孝がいつも聞いている大好きな曲、聞くと前向きな気持ちになれる曲。 某有名男性アイドル2人組のヒットソングで、元々はシンセサイザーで演奏された民族楽器風の音色での前奏が印象的なあの曲だ(世の中には大人の事情という物があるのでこれ以上は詳しく書かない事にしておきます)。 驚くべきことはもう1つあった、聞き進めていくと主旋律がバイオリン。そう、香奈子だったのだ。裕孝「あいつ・・・、俺の為にこんな・・・。」龍太郎「良い子じゃねぇか、俺はこれ好きだぜ。ちゃんと礼を言わなきゃだな。」 バイオリン優しい音色につい涙を流す裕孝、そんな中調理場から王麗が龍太郎を呼び出した。王麗「父ちゃん!!サボってないで早く麻婆豆腐を10人前作っておくれ、1人じゃどうにもならないじゃないか。」龍太郎「チィッ・・・、仕方ねぇな・・・。」 龍太郎はまだ十分残っている煙草を灰皿に擦り付けて調理場へと入って行った。 今までに無い位沢山泣いて涙を流しまくった裕孝は龍太郎から貰った瓶ビールを呑み干して店内に入り、座敷へと向かった。龍太郎「ほら、行ってこい。」 香奈子にどういった言葉をかけるべきか迷う裕孝の背中を、丁度近くにいた龍太郎が押した。裕孝「ありがとう。」 流しきったはずの涙が再び零れ落ちた。 香奈子は恋人がCDを片手に泣いている事に気付いた。香奈子「あれ泣ける曲だっけ?」裕孝「嬉しすぎてつい・・・、な・・・。前奏のオカリナの音が好きになりそうだ。」香奈子「本当?苦労した甲斐があったよ。オ・・・、オカリナの練習大変だったんだもん。」裕孝「バイオリンじゃなくてオカリナもだって?!」 裕孝は驚愕した、香奈子が大学の音楽科でバイ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-27
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5. 「あの日の僕ら」87

-87 未だ複雑な関係の3人- 数名が香奈子から裕孝へのプレゼントの件で盛り上がって行く中で美麗と福来子、そして安正の間でははっきりしておきたい事があった。安正の心中でははっきりしている事なのだが、安正の優柔不断さを知っている女子2人からすれば不安に1つの悩みとして抱え込んでしまう問題だったのだ。美麗「ねぇ安正、これから私達とどう付き合っていくつもり?」福来子「美麗の言う通りだよ、ずっと複雑な気持ちを抱える必要があるの?」安正「そりゃあ、2人とは仲良くしていきたいよ。でも・・・。」 素直に美麗を自らの恋人として受け入れるべきか未だに考えていた安正は目の前の現実をどう受け入れるべきか悩んでいた、正直言うと2人の女性に両腕を引っ張られている様で最高の気分なのだが今はそれ所では無い。美麗「安正!!はっきりしてよ!!私はあんたの彼女で良いんだよね?!」安正「う・・・、うん・・・。」福来子「じゃあ私の気持ちはどうなるの?!「大好き」って言ったの、結構勇気がいったんだよ?!」安正「そう・・・、だよな・・・。」 きっかけがどうであれ、福来子が安正に対する気持ちを露わにしたのは真実だ。そして安正からすれば目の前の女子大生達が自分達との関係をはっきりさせたいのも真実だ、これは簡単に解決できる問題ではない。 安正は少し俯いて考え込み自分なりの答えを導きだそうとした。安正「美麗は俺にとって高嶺の花だった、さっき美麗に言った通り遠くで笑顔を見ることが出来ればいいと思っていた。その美麗が俺の事を好きだって言ってくれた事が本当に嬉しかった、キスを受け入れたのもこれ以上に幸せになる方法は無いと思ったからだ、でもその直後に久留米から「大好き」って言われて美麗には申し訳ないけど少し心が揺らいだ。 でも自分の気持ちの名前を教えて貰って分かった、今の俺にとっては恋人と言えるのは美麗だけだ、美麗、大好きだ!!」 安正は酒の勢いからか、それとも大きくなり過ぎた美麗への気持ちからか、勢いよく美麗を押し倒して唇を重ねた。それを見た福来子は涙を流して店の裏庭に走って行った、やはり安正への想いが強く残っているからだろうか。 勢いよく走って行く福来子を見ていた王麗が追加注文された春巻きをテーブルに置いて重い一言を吐き捨てた。王麗「桐生、あんた調子に乗っていないかい?今のはあんまりだよ
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-27
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5. 「あの日の僕ら」88

-88 優しい風と強く誓った恋人- 龍太郎がここまで本気で美麗の事を叱った事は初めてと言っても良いのではなかったのだろうか、きっと命を賭して美麗を守った事に対する感謝の表れなのだろう。美麗「そう・・・、だよね・・・。」 美麗は安正を押しのけて体を持ち上げ、テーブルの上の紹興酒を1口呑んだ。龍太郎「きっと秀斗は今の美麗みたいに遊び人になってほしいと願っていたとは到底思えないがな、ただお前自身がそう思うならそうすればいい。」 きっと違う、秀斗は心から頼りより添える人に出会って欲しいと生前からずっと願っていたはずだ、きっと大空の向こうでも変わらないでいるだろう。 秀斗自身を、そして秀斗の願いを美麗に思い出させるかの様に柔らかな風が窓から吹き込んできた。龍太郎「そうだ・・・、安正。少し手伝ってくれないか?番号はこれだな・・・。」 松龍にはカラオケの機器があった、隆彦たちの打ち上げのグループ以外の客が帰って行ったので少し余裕が出来た龍太郎は番号をメモ書きしてとある曲を入れた。美麗「これ・・・。」 数十年前、今では本人の毒舌で有名となった芸人がデビューしたての頃にある番組の企画で世界を旅した際に歌った曲だ。美麗「これ、秀斗が好きだったやつ・・・。」 優しさに満ち溢れた芸人達の歌声に癒される人は少なからずいただろう、美麗も秀斗に借りた8cmのシングルCDで聞いた時にその1人になっていた。 ただ龍太郎と安正の歌声では中々そこまで行き付かなかったが、テレビ画面に表示される歌詞が美麗の心を癒していった。美麗「パパ、ごめんなさい。そうだよね、秀斗は私に本当に心から愛せる人を見つけて欲しい、そして自分を愛した様に本気で愛して欲しいって言ってたんだよね・・・。」 曲が間奏に入った時に一言。龍太郎「分かってんじゃねぇか・・・。」 龍太郎はそう返すとまた歌唱に戻った、やはり本人みたいな優しい声は出ていないが美麗は再び涙を流していた。 美麗が気を紛らわす為、やけ気味に炒飯を喰らいながら聞き入っていると曲が鳴り終わった。龍太郎「安正、これは風の噂で聞いた話だがお前はかなり優柔不断な人間だと聞く。今のままで美麗(みれい)を守り、幸せに出来るとでも思っているのか?」 龍太郎の言葉を聞いて安正はウォッカの入ったグラスを隆彦から奪い取って一気に煽ると態度を180度変
last updateTerakhir Diperbarui : 2025-10-27
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