All Chapters of (改訂版)夜勤族の妄想物語: Chapter 521 - Chapter 530

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7. 「異世界ほのぼの日記3」⑲

-⑲ 吸血鬼の秘策- ネフェテルサ王国で随一の売り上げを誇る洋食レストランの味のベースを自分でも簡単に作れる事が分かった真希子は早速「ブイヨン」、いや「鰹出汁」を作る為に材料の調達へと向かった。中心街へと『瞬間移動』するとジューヌが露店を閉めかけていたので、真希子はやや滑り込み気味で声をかけた。真希子「ジューヌさん、ごめんよ。まだ鰹節はあるかい?」 折角、一から出汁を取るんだから、元日本人として素材には拘りたい。ジューヌ「あるけど、削って無いやつしか無いよ。」 この露店ではいつも、客のニーズに合わせる為に「花かつお」を中心とした削ってある物と削って無い物を用意していたが、この日は何故か後者ばかりが飛ぶ様に売れていた。真希子「助かるよ、一度自分で削ってみたいと思っていたんだ。」 真希子には幼少の頃からかんなで鰹節を削りたいという少し変わった夢があった。ジューヌ「今からでも良いならこっちで削るよ?」真希子「いや、自分でやるよ。出汁を取る直前に削った方が風味が良いって言うからね。」 その後、急ぎ店に戻った真希子はかんなを『作成』して調理場へと向かい、鰹節を削り始めた。ただその様子をオーナーシェフは決して見逃さなかった。ナルリス「真希子さん、何をしているんです?どうして鰹節なんかお持ちなんですか?」 真希子は一瞬「まずい」と思ったが、この光景を見られてしまったので正直に話す事にした。真希子「店長、ごめんなさいね。実は私、ブイヨンの作り方なんて知らなかったんだよ。元々は守が作った鰹出汁を『複製』して使っていたんだ。でもこの前酔った勢いで全部飲んじゃってね、新しく作り事にしたって訳。ただ作るなら拘りたくなってね、それで今に至るのさ。本当に申し訳ない。」 真希子は怒られると思ったが、ナルリスの反応は意外な物だった。ナルリス「そうでしたか、あの優しい風味と香りは鰹出汁でしたか。だからお客さんにも人気だったんですね。」 「日本」という国名も知られていないこの異世界でどうして和風だしの味がウケているのか不思議で仕方が無かったが、真希子はお気楽な人間だった為にあまり気にせずにいた。ただ、問題はそこでは無い気がするが。 しかし、今はそれどころでは無かった。好美がずっと「試作品」を待っていたのだ。待ちきれそうにない好美を何とか宥める為、ナルリスは客席へと向
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7. 「異世界ほのぼの日記3」⑳

-⑳ 秘策の詳細- 吸血鬼が経営するレストランのテーブル席で「試作品」を待ちながら1人ワインを楽しむ好美の様子を見て、副料理長兼ソムリエのケンタウロスは嫌な予感がしていた。ロリュー「ナル、あのままだと試食どころじゃなくなるんじゃないのか?控えめにしておいてさっさと料理を出さないと。」ナルリス「いや、これはこれで良いんだ。と言うよりこっちの方が都合が良い。」 ロリューはオーナーの発言の意味が分からなかった、よく考えてみれば先程から何の作業を行っていない。敢えて言うなら調理場では真希子がひたすらに鰹節を削っているだけであった。ロリュー「お前、まさか・・・。」ナルリス「その「まさか」だよ・・・。」 そう、ナルリスの秘策とはワインを好きなだけ呑ませて酔わせ、いっその事帰らせてしまおうというものだった。正直言って、下衆な作戦な気がするが。ロリュー「だったら真希子さんはどうなるんだよ、今必死に出汁を取る為に鰹節を削っているんだぞ。」ナルリス「夜営業でその出汁を使う事にすれば良いじゃないか、それに俺もロール白菜なんて作った事無いもん。」ロリュー「いやいや、お前が言い出した事なんだろ。発言には責任を持つべきだと思うけどな。」ナルリス「そう言ったって、今からは仕込みが大変だろ。」ロリュー「だからって何もしないのは罪だぞ、俺も手伝うから早く仕込もう。」ナルリス「うん・・・、お前が言うなら仕方が無いか・・・。」 どちらがオーナーなのか分からない位に説得力のあるロリューの言葉に押されて仕方なく白菜の仕込みを始めるナルリス、その様子を真希子が見逃さなかった。真希子「店長、何もしてなかったって今聞こえたけど?このままだと店の信用を失う事になるよ、この街での好美ちゃんの影響力を知っているだろう。今となっちゃあんたの嫁さんとほぼ同等だ、ちゃんと作らないとこの店が潰れちゃうよ。悪い事は言わないから今からでもちゃんと作りな。」 副店長の声が聞こえたのか、ワインをゆっくりと楽しむ好美が調理場に近付いて来た。好美「ねぇ、「試作品」の調理は進んでんの?」ナルリス「こ・・・、好美ちゃん。今味のベースが決まったんだよ、これから白菜で挽肉を包んでじっくりと煮込んで行こうと思っていてね。」 ナルリスは慌てた様子で白菜を、湯を沸かした寸胴の中に放り込んだ。ロリュー「おいおい、
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7. 「異世界ほのぼの日記3」㉑

-㉑ 女は強し- 酔っぱらったマンションの大家をよそに、レストランの厨房では「試作品」の調理作業が副料理長を中心に慌ただしく行われていた。ロリュー「真希子さん、納得のいく鰹出汁は完成しそうですか?」真希子「任しておくれよ、良い香りの出汁ができ始めているよ。」 そんな中、酔っぱらった好美を横目にオーナーシェフがワインやグラスを片付けようとしていたのだが、好美が物音に反応したらしい。ナルリスは自らのコックコートが引っ張られるのを感じた。ナルリス「えっ・・・?」 ナルリスが振り向くと好美がしっかりと衣服を掴んで、涙ながらに訴えていた。好美「まだ・・・、全部吞んでない・・・。持って行かないで・・・。」ナルリス「好美ちゃん、呑み過ぎだよ。それにこのワイン高いんだよ?」好美「でも、私を待たせてるのもワインを勧めたのもそっちだもん・・・。」 確かに、好美は間違った事は言っていない。これ以上ぐずらせるとまずいと思ったナルリスは片付ける手を止めて守に『念話』を飛ばした。ナルリス(念話)「守君、助けてくれよ。好美ちゃんがずっと呑んでてその場を離れないんだ。お願いだ、迎えに来てくれないか?」 しかし、ナルリスの思惑はすぐに崩れ去った。守(念話)「あの・・・、どちら様でしたっけ?」 そう、守はナルリスと話した事が無かったのだ。ナルリス(念話)「ああ・・・、ごめん。自己紹介がまだだったね、吉村 光の旦那って言えば分かるかな?」守(念話)「えっと・・・、ダルランさんって方だと聞きましたけど。」ナルリス(念話)「そうそう、ナルリス・ダルラン。光の旦那のヴァンパイアだよ、今俺の店で好美ちゃんが酔い潰れて困っているんだ。良かったら迎えに来てくれないか?」 ナルリスは出来るだけ優しい口調で守に依頼した、しかし相手は相手で苦戦を強いられていたらしい。守(念話)「ナルリスさん、そうして頂きたいのは自分の方ですよ。さっきから光さんが好美と俺の家に突然やって来て呑みまくっているから困っていまして、このままだと冷蔵庫の酒が無くなる勢いなんです!!」 守が言うには、数十分前からパン屋での仕事を終えた光が突然家にやって来て冷蔵庫の酒を呑みまくっているらしい。守はずっと肴を作らされているそうだ。光(念話)「ナル、今日は夕飯要らないからね。」ナルリス(念話)「ご機嫌なこった
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7. 「異世界ほのぼの日記3」㉒

-㉒ 何よりのボーナスとお礼の品- 守が冷蔵庫から取り出したビールは、自分へのご褒美の為にこの世界に来て初めてのボーナスで買った物だった。好美の家に引っ越すまでは肉屋に住み込みで働いていた為に光熱費等の世話になっていたからか、給料は少ないと思っていたのだが想像以上に肉屋の儲けは良いらしく、守も豚舎で働く分良い値段で貰っていた。確かに豚舎での仕事は朝早くからな上に大変な力仕事だったが自分を拾ってくれたケデールへの恩を返す為だと思い必死に働いていた。その事が影響したのか、初めての賞与はとても嬉しい金額だった様だ。守「まぁ、2本あるんだし、1本位あげるか。」 しかし、守には誤算があった。好美には見つからない様な場所(と言っても惣菜の入ったタッパーの奥)に隠してあったはずなのに光には見つかっていたのだ。光「あんたもケチね、何で1本しか持って来てくれないのよ。」守「俺だってこのビール呑みたくて買ったんだよ、1本位残したって良いじゃないか。」 しかし、光は引き下がらなかった。ただ、鬼では無い。光「じゃあグラスを1個追加して一緒に呑もうよ。」 守はこの言葉が嬉しかった、元の世界にいた時に憧れの的だった女性の1人に誘われるとは思わなかったのだ。守「う・・・、うん・・・。」 僅かながらだが、照れを隠しつつグラスとビールを持って行く守。光「こうしていると思い出すな、確かあんたと好美ちゃんを交えて3人でちょこちょこ呑んでたっけ。」 3人は守、及び好美が成人してからよく「松龍」で呑んでいた事が有った。ごく偶にだが、店の手伝いを終えた美麗も一緒になってよく顔を赤くしていたのを覚えていた。光「ねぇ、好美ちゃんの所行こうか。」 光はまだ口を付けてないビールのグラスを揺らしながら提案した。守「良いけど、これ呑んでからでも良いんじゃないの?」 元の世界ではなかなか取れなかった「2人で呑む時間」を終わらせたくなかった守、それ位に光は守にとって特別な存在だったのだ。光「そうね、でももうおつまみがないよ。」 テーブルを見てみると残りはポテチが10枚程度しか無かった。守「冷蔵庫見て来るよ。」 守はゆっくりと立ち上がり、冷蔵庫へと向かった。中にはこれも自分へのご褒美の為にと買った生ハムが1パック、しかし守にとっては光との時間が何よりのボーナスだったのかも知れない。守
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7. 「異世界ほのぼの日記3」㉓

-㉓ 数の多いため息- 先程までナルリスの店で散々ただ酒を呑み散らかした好美がどうして能力を使ってまで「抜け駆け」をしだしたのかというと、数分前の事だった。 陸上部の練習を終えて学校から帰ってきたナルリスの娘であるハーフ・ヴァンパイアのガルナス・ダルランが、空腹を感じていてそこに丁度出来たばかりの「試作品」があったもんだから思わず食べてしまったのである。ガルナス「寝ちゃってるし、良いよね。」 そう一言呟いたオーナーシェフの一人娘が好美用に出されていたおつまみを全て食べ尽くしてしまった。よく考えればガルナスと言えば「大食い」だ、ナルリスは毎日頭を抱えてばかりであった。 そして今に至る、目の前のつまみが全て無くなってしまった好美は光達が美味そうな物を作っている事を『察知』し、『転送』を使ってつまみ食いを行っていた。 そんな中、ため息をつきながら光が一言。光「あんたの恋人は昔から変わらないね。」 「松龍」でバイトしていた頃の好美が、その頃から大食いだった事を知っていた光は少し懐かしさをも感じていた。光「仕方ない、また作るか。」 結局「二の舞三の舞」になる気もしたが、光は再び肴を作り始めようとした。しかし、思い出した事が1つ。守「光姉ちゃん、もう生ハム無いよ。」 そう、作るのが段々楽しくなってきていた光は、守が持っていた生ハムが1パックだけだった事を忘れてしまっていた。光「何それ、シケるじゃん。」 守は何もしていなかったが、一人不貞腐れてしまう光。そんな中、出来立ての料理を食べた犯人から『念話』が飛んで来た。好美(念話)「守、もう無いの?ワインにぴったりだから助かってたのに。」 好美が店に行った本来の目的はロール白菜だったはずだがどうやら完全に忘れてしまった様だ、ただ問題はそこでは無かった。ナルリス(念話)「守君、すまないが好美ちゃんが呑んだワイン代を払ってくれないか?」 流石にやっとの思いで仕入れた高級なワインを全てタダで呑まれてしまうと店の損失がとんでもない額になると思った店主からの必死さが何よりも伝わる言葉だった。守(念話)「勿論です、おいくらですか?」ナルリス(念話)「ちょっと待ってね・・・、はぁ・・・。」 ナルリスは『念話』でも届く位の大きなため息をした。守(念話)「そんなに凄い金額なんですか?」ナルリス(念話)「「
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7. 「異世界ほのぼの日記3」㉔

-㉔ 大切な酒と信頼- 好美が一人で呑み干してしまったワインは、3本全て隣のバルファイ王国にある酒の卸業者に無理を言って仕入れた物だった。 後に卸業者の代表者は友人にこう語っていたそうだ。代表者「ナル君は良い友人だし、いつも贔屓にしてくれているからあれだけお願いされると卸さざるを得なくなっちゃってね。」 そう、ナルリスはこのワインを求める為に時間を作っては毎日の様に隣国(と言っても車で3時間程度の所)へと頭を下げに行っていたのだ。 店主はまさかそのワインをあっさりと呑まれてしまうと思わなかったので頭を抱えながら携帯を手にし、ため息交じりで電話を掛けた。代表者(電話)「お電話、有難うございます。バルフ酒類卸です」ナルリス「ドゥーンか、丁度良かった。」ドゥーン(電話)「何だナルリスか、例のワインが高すぎるから売れなくて困っているんじゃないかって思ってたんだよ。」ナルリス「逆だよ、女の子が1人で呑み干しちゃったんだ!!」ドゥーン(電話)「でもお前3本買っていっただろ、まだ残っているんじゃないのか?」ナルリス「残ってたら慌てて電話なんかしないさ、1人で3本全部呑んじゃったからこうなっちゃてね。まだ・・・、そっちに在庫はあるか?出来れば各々3本ずつ欲しいんだが。」 勿論、次好美が来た時の対策の為だ。泥酔して本人が支払わなかった時用の「守」という保険もあるから是非入手して備えておきたい。ドゥーン(電話)「3本ずつって・・・、お前あれ1本の原価がどれ位か知っているのか?」ナルリス「18万とは聞いてるけど・・・。」ドゥーン(電話)「言ってしまうとあれだが、原価もそんなに安くないんだぞ。確か伝票がこの辺りに・・・、あった。」 ドゥーンは電話を片手に仕入れ伝票を捲った。ドゥーン(電話)「これだこれだ、1本16万2000円だよ。うちでもなかなか手を出さない代物を合わせて9本もか?悪い冗談はよしてくれ!!」ナルリス「これが冗談の口調に聞こえるのか?いくら俺が悪戯好きだからってこんな時に冗談をかます余裕は無いぜ。それで?在庫は?」ドゥーン(電話)「そうだな、ちょっと見て来るよ。」 ドゥーンは電話を保留にして高級な酒を入れてある戸棚へと向かった、扱っている物の値段が高額な為に戸棚は南京錠で閉じられていた。因みに南京錠の鍵はドゥーン含めて数人の者しか扱え
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7. 「異世界ほのぼの日記3」㉕

-㉕ 食材との出逢い- 折角隣国に住む友人の店に来たので、新メニューを考えるヒントにすべくナルリスは一般客が買い回る店内をゆっくりと歩き始めた。ナルリス「乾物とか缶詰が充実しているな、あっちには生ハムが足1本単位で置いてあるぞ。削って量り売りでもしているのかな、これは便利だ。」 その中でもナルリスが一番注目していたのはチーズだった、魔獣や獣人族が多く住むダンラルタ王国から特別に仕入れた貴重な品々が揃っているのを見て羨ましく思っていたナルリスのすぐ傍を丁度入荷したばかりの商品を補充しに来たドゥーンが通りかかった。ドゥーン「どうだ、凄いだろ。俺が直接交渉に行ったんだぜ。」ナルリス「ダンラルタに直接行ったのか?」ドゥーン「ああ・・・、山が多くて大変だったけどそれなりに楽しかったよ。」 ナルリスはショーケース内で一際目立っている大きなチーズを手にしてラベルをじっくりと読み始めた。ナルリス「何々・・・、「鳥獣人族が自ら育てた牛の搾りたての乳を使っています」か・・・。」ドゥーン「そうだよ、本人達が経営する山ん中の牧場に行って一緒に開発したんだ。乳搾り体験もさせてくれて嬉しかったな、お前にもさせてやりたかったよ。」ナルリス「良い思い出なんだな、何か羨ましいぜ。」 ナルリスはラベルの最下部を見た、「ダンラルタ王国 バラライ牧場」とあった。ナルリス「ここに行ったのか?」ドゥーン「うん、バルタンやレイブンの方々を中心に放牧でゆったりと牛を育てていたんだ。ストレスが無い牛から絞った牛乳は濃厚で美味かったよ。」 少し興味が湧いて来たナルリスは光に『念話』を飛ばした。ナルリス(念話)「光、今ちょっと大丈夫か?」光(念話)「大丈夫だけど、何かあった?」ナルリス(念話)「確か光が働いているパン屋さんってバルタンの人がいたよな?」光(念話)「パン焼きのウェインの事?」ナルリス(念話)「その人に聞きたい事が有るんだけど・・・。」光(念話)「別にいいよ、ちょっと待ってね。」 パン屋の仕事が少落ち着いて来た光は厨房へと向かい、ウェインに声をかけた。その様子からはもうすっかり店にも馴染み、ベテランの貫禄も見え始めていた様だ。光「ウェイン、今ちょっと良い?」ウェイン「今丁度生地を発行させ始めたから構わないよ、どうかした?」光「うちの主人と話して欲しいのよ、聞
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7. 「異世界ほのぼの日記3」㉖

-㉖ 気の強い女将- ネフェテルサ王国のパン屋の前を出発してから2時間後、2人の乗った軽トラはダンラルタ王国の山中を走っていた。ナルリス「すまんなウェイン、俺から言い出した事なのに車出して貰って。」ウェイン「良いんだ、ドライブは数少ない趣味の1つだからね。」 ウェインの運転が上手かったのか、ナルリスは眠ってしまっていた。暫く走っていると、そこには山の中で随一と言って良いほど開放された草原が広がっていた。よく見れば乳牛が数頭草を食んでいる、どうやらここが目的地らしい。そこから数百メートル先に受付らしき小屋があり、ウェインはその前に車を止めた。ウェイン「先に中に入っていてくれ。」 促されるままにナルリスがドアを開けると、中では瓶に入った牛乳や自家製のアイスクリームが売られていた。別の一角には駄菓子もあり、獣人族の子供達が小遣いを握りしめて買い物を楽しんでいた。しかし、従業員らしき人影は何処にも見当たらない。ナルリスが奥にある台にふと目をやると、そこにはレジとベルが置かれていて「御用の方はベルを鳴らして下さい」と書かれたメモが添えられていた。子供「おじさん、ガム頂戴!!」 どうやら店員と間違えたらしく、無邪気にナルリスに声をかける子供。ナルリス「ごめんね、おじさんここの人じゃないんだ。ベルを鳴らして呼んでみるからちょっと待っててね。」 ナルリスがベルを鳴らすと、けたたましい音が響き渡ったのでナルリスは思わず耳を塞ぎ声を漏らしてしまった。ナルリス「うっ・・・。」 それから数秒後、笑いながらウェインが入って来た。ウェイン「お前だな、ベル鳴らしたの。」ナルリス「何で分かったんだよ。」ウェイン「そのベル、音がバカでかい事で有名なんだよ。それ位でないと中に聞こえないんだってさ。」 それから暫くすると、牧場の方から従業員らしきバルタンの女性が飛んで来た。女性「ごめんなさいね、牛が一頭お産を迎えちゃったのよ。」子供「おばちゃん、遅いよ。」女性「こら、「お姉さん」だろ。言う事を聞かない子にはお菓子を売らないよ。」子供「お姉さん、ごめんなさい・・・。」女性「分かりゃ良いんだ、ほら、ガム1個30円ね。食べたらちゃんと歯磨きするんだよ。」 手を振って子供達を見送った女性はナルリスの方に目をやった。女性「あんたも買い物かい?」ナルリス「ああ・・・
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7. 「異世界ほのぼの日記3」㉗

-㉗ 大きな気持ち- 小売りをしている建物から牛舎まで訪問者たちを案内した女将がすぐ近くにいた主人に様子を伺った時、主人の手には汗が握られていた。主人「まだ、苦戦しているよ。もうすぐなんだけどな。」 牛舎には主人以外に数人の鳥獣人族が集まって新たな生命の誕生を心待ちにしていた。バルタン「もうすぐだ、頑張れ。」レイブン「もう頭が見えてきているぞ、もうひと踏ん張りだ。」 皆に囲まれた牛はずっと苦しそうに鳴いていた。ナルリス「もしかしたら光もあの時、そうだったのかな・・・。」 ナルリスは娘が産まれた時の事を思い出した、確か4~5時間程の長丁場だった様な。ナルリス「帰ったら思いっきり抱いてやるか。」 主人の一言を『察知』したのか、妻から『念話』が飛んで来た。光(念話)「何それ、照れるじゃん。付き合ってた頃みたいなこと言わないでよ。」ナルリス(念話)「ハハハ・・・、それ位感謝してるって事さ。」 その時だ、母体から赤子が産まれた。そしてそこにいた全員が涙を流して祝福した。 それから数分後、牧場の主人であるレイブンがマムイに声をかけた。主人「マムイ、そちらの方はもしかして昨日の?」マムイ「ああ、父ちゃん。ナルリス・ダルランさんだ、見学に来たんだって。」主人「そうか・・・、すみません。申し遅れました、私ここの主人のレーウェンと申します。何もない所ですがゆっくりとお過ごしください。」ナルリス「ご丁寧にありがとうございます、今でも貴重な場面を見せて頂けたので嬉しく思っております。」レーウェン「そうでしょ、ここでも新たな生命の誕生はなかなか遭遇出来る事ではありませんし、やはり「感謝」と言う言葉でしか自分の気持ちを表せない気がしますよ。」 そう言いながら、牧場の主人は辺りをずっと見廻していた。ナルリス「あの・・・、どうかしましたか?」レーウェン「そう言えば、ウェインと一緒では無かったんですか?」 確かに牧場に連絡したのはウェインだからその場に本人がいないのは何となくおかしい。ナルリス「えっと・・・、さっきまで一緒にいたんですけどね・・・。」レーウェン「そうですか、どうせあそこでしょう。」 2人が数メートル歩いた所、牛舎の入り口付近にウェインがいた。レーウェンの様子から伺うに、いつもの事らしい。レーウェン「ウェイン・・・、お前ここに来る
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7. 「異世界ほのぼの日記3」㉘

-㉘ 決心の先には- 光は自らの提案を受け入れてくれた旦那に感謝してある男性へと『念話』ではなく電話で連絡をした、『念話』だと下手すれば連れて来たい本人にバレてしまうと言うリスクがあるからだ。光は出来るだけ能力に頼らない様にした上で、本人に分からない様に行動したかったらしい。光「あの・・・、あの子をある場所に連れて行きたいんだけど駄目ですか?」男性(電話)「自分は構いませんが、何処にですか?」光「ダンラルタ王国のバラライ牧場に。」男性(電話)「良いですけど、またどうして?」光「本人にとってこれからの将来の為に必要なんじゃないかと思って、旦那と話し合って決めた事なんです。」男性(電話)「だったら・・・、どうぞ。」 男性の許可を得たので光は連れて行こうとする人物の場所を『探知』して『瞬間移動』した後、その人物の肩をぐっと掴んで再び『瞬間移動』した。光「ナル、お待たせ。」ナルリス「ありがとう、さて行こうか・・・。」 ナルリスは2人を連れて牛舎へと向かった。ナルリス「さてと守君、今日君を呼び出したのは他でも無い。一緒に来てくれ。」 そう、ナルリスと光が呼び出したのは豚舎で働いていた宝田 守であった。守「な・・・、何?!俺仕事中なんだけど。」光「大丈夫よ、ケデールさんには事前に許可を貰ったから。」 ケデールは自分を贔屓にしている客の言う事に逆らわない事を知っていたので頼みやすい事を覚えていた、それに「本人にとってこれからの将来の為に必要」と言う言葉で念押ししたから尚更反対する訳が無い。 そうして、3人は先程子牛が生まれたばかりの牛舎の奥の一角へと向かった。そこでは先程の母牛が未だに苦しそうにしていた、実は牧場の者達も先程気付いた事だったのだが母牛が妊娠していたのは1頭だけではなかったのだ。ナルリス「良いか、これから君は貴重な場面を目の当たりにする。きっと将来、この事を思い出して同棲している好美ちゃんに感謝する事になるだろう。人の生き血を吸って生きる吸血鬼の血を引いた俺が言うのも皮肉なことかもしれないがな。」 それから暫くの間、母牛が鳥獣人族達に囲まれて苦しんでいた。マムイやレーウェンも熱い視線を向けていた。マムイ「貴女には私達がいる、大丈夫だからね・・・。」レーウェン「お前だけが苦しんでいる訳じゃ無い、安心してくれよ。」 優しい言
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