All Chapters of (改訂版)夜勤族の妄想物語: Chapter 471 - Chapter 480

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6. 「あの日の僕ら2」59

-59 男の掌- 自分の知らない所にあった母と友人の温かな思い出話につい涙が流れた守、そんな中で悪いと思いながらも盗み聞きしていた王麗が2人に声をかけた。王麗「そういえばそんな事もあったね。真希子が周りの皆を心から愛し、周りの皆からも愛されてた。今でもそんな気がするよ。」 守は兎に角嬉しくて仕方がなかった、それと同時に母がどうして自らの葬儀を少人数で行うようにと遺書に書いてあったかを改めて考えていた。美麗「きっと周りの人を騒がせて迷惑をかけたくなかったからじゃないかな。」 よく考えれば昔からそうだった気がした、自分より他の人の事を優先させる性格。守「やっぱり母ちゃんは変わる事なく、優しかったんだな。皆に好かれるのも納得いくな。」王麗「本当だね、神様の事が意地悪に思えて仕方がないよ。」 今の王麗の台詞を一番に言いたかったのは他の誰でもなく守だった、恋人に続きたった1人の肉親を奪われたが故の抑えきれそうにない悔しさがこみあげてきた。しかしどれだけ悔やんでも2人が戻って来る訳ではない、どこかやり切れない気持ちを抱えながら初七日法要までを終えた一行は近くの日本料理店でささやかな食事を行った。これも真希子が遺書に書いていた事だ、どんな時でも周りの人への感謝の気持ちを忘れない、それを伝えたかったのだろう。 複雑な気持ちでいっぱいだった守を気遣ったのか、龍太郎が守のグラスにビールを注いだ。龍太郎「大丈夫か?」守「うん・・・。」 日本料理店の店主の厚意で飾られた真希子の写真を眺める守の背中にはまだ哀愁が残っていた、当然の事だ。注いでもらってから少し経っていたが故に泡が少なくなっていたビールを一口、ただ辛さが勝ったからか味を全く感じなかった。守「母ちゃん・・・。」 守はグラスを持つ手を強くした、今にも割れてしまいそうな勢いだ。そんな守の肩に龍太郎が手を乗せた。すると何故だか分らなかったが守は落ち着きを取り戻す事が出来た。それから一息ついた守は一先ず腹を満たそうと、出された食事に箸をつけた。嬉しい事に、今度は味がした。きっと龍太郎は守が忘れかけている「あの事」を思い出させてくれたのかもしれない。声に出さずとも動きだけで伝わった、「今日は周りに甘えても良い、決してお前を1人になんかはしない」と。 守の心は龍太郎への感謝でいっぱいだった、母親を失ったばかりの
last updateLast Updated : 2025-12-09
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6. 「あの日の僕ら2」60

-60 暗い自室での再会- まさかの桃の登場で場が和んだ一行はお世話になった日本料理店の店主に一言挨拶をしてその場を後にした、真希子の遺言通り少人数での会食だったが参列した皆は食事に満足していた様だ。ただそんな中でも未だ1人元気が出ずに俯いている守を見て、葬儀中での経緯を美麗から聞いてやっと知った桃が声を掛けた。桃「守君、大丈夫?私が言うのも何だけどらしくないよ。」龍太郎「桃ちゃん、すまないが仕方の無い事なんだよ。たった1人の肉親を失ったんだ、守自身の辛さはなかなか抜けないもんさ。」桃「そっか・・・、何かごめんね。」守「いや・・・、大丈夫。」 本当に大丈夫なんだろうか、やはり表情からは守が嘘を言っている様にしか見えなくて仕方がない美麗と真帆は少し苛ついていた。真帆「守、強がらなくても良いんだよ。私達がいるじゃん、もっと頼ってよ!!」美麗「真帆ちゃんの言う通りだよ、いつまでそんな浮かない表情をするつもり?!」龍太郎「待て、きっと守はこれからどうしようか悩んでいるんだ。余り責めてやるな。」 2人は龍太郎の重みのある言葉に少したじろいでしまった後、1歩下がって様子を見る事にした。守「龍さん、すまねぇ・・・。」龍太郎「良いんだ・・・、ところでお前、今からどうするんだ?」守「今日はもう何も予定が無いから一先ず家に帰るつもりだけど。」龍太郎「良かったら呑みに来ないか?今日は臨時休業にしてあるからこっちは歓迎だぜ。」守「龍さんが良いならそうさせて貰おうかな。」龍太郎「じゃあ後でな、チキンカツ作って待ってるから絶対来いよ。」守「龍さん、唐揚げもお願い出来ないかな。」龍太郎「そうだな、忘れていたよ。悪かった。」王麗「後、炒飯とチキンライスね。」美麗「あの時のクリスマスみたいで楽しげだけど呑むのにご飯いるの?」守「有難いよ、店に行くのが楽しみだ。」 解散した一行は喪服から着替える為に各々の帰路に着いた、守が真希子から譲り受けた自宅の鍵を開けて引き戸を開けるとまるでもぬけの殻になった様な空間が広がっていた。 守は自室に入るとキッチリと締めていたネクタイを緩め、私服に着替えてから倒れる様にベッドに寝転んで枕に顔をうずめた。守「母ちゃん・・・。」 突如目の前からいなくなってしまった真希子への想いが抜けきらない守、本人しかいないはずの暗く静か
last updateLast Updated : 2025-12-09
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6. 「あの日の僕ら2」61

-61 故人の謝罪- 守は生前の母の職業を思い出していた、今まで1つの会社の社員や経営者として働いていた事が有った様には思えない。貝塚財閥の筆頭株主であった傍らで他の主婦に紛れる為パートでの仕事ばかりしていたという記憶しかなかった。 そんな母が・・・、1つの店の副店長・・・?それに光の旦那の店って・・・?守「母ちゃんが光さんと働いているのか?」結愛「ダル・・・、いや光さんは別の場所で働いてんだよ。さっきも言っただろう、お前の母ちゃんは光さんの旦那さんの店で副店長をしてるって。」守「そっか・・・、それでその母ちゃんがどうしてお前に頼み事を?」結愛「えっとな・・・、多分だがお前の母ちゃんは俺達と同等の魔力を持って無いからだと思うんだよ。こっちの世界に来るには結構強めの魔力を要するからな。」守「・・・、って事はお前やっぱり魔法使いなんだな?全くそうは見えないけど。」 生前と同じで結愛は相も変わらずパンツスーツだ、本人がそれで満足している様なので良しとしたいが何となくピンと来ない。守「結愛・・・、お前魔法使いらしい格好じゃないな。」結愛「そりゃそうさ、あっちの世界にも貝塚財閥はあるからな。」守「じゃああっちの世界でも会社を経営してんのか?」結愛「当たり前だろう、俺以外に誰が経営するってんだよ。」 確かにそうだ、もしも先に亡くなったとされる義弘が経営していたら最悪の独裁政治が再び行われることになる。特に・・・。守「貝塚学園もあるのか?」結愛「おう・・・、魔学校って形で学園を管理してるぜ。貝塚財閥は学校教育に協力的だからな。」守「なるほどね・・・。」 結愛があっちの世界で何をしているのかは大体分かったが今気になるのは母の事だ。守「それで・・・?あっちの世界でも社長をしているって言う結愛に母ちゃんが何を頼んだってんだよ。」結愛「そうだ、思い出したぜ。えっと・・・、あれ?光明は?」守「光明は見かけてねぇぞ。」 2人は周辺を探し回ったが光明の姿は無かった、試しに宝田家の横にある空き地に行くと光明が木陰に座り込んで涼んでいた。結愛「お前ここにいたのかよ、早く来やがれ。冷めちまうだろうが!!」光明「結愛が荷物を俺に押し付けたからだろ、これ結構重いんだぞ。」結愛「おいてめぇ、女の俺に荷物持ちをさせる気かよ。男ならそれ位持ちやがれ!!」光明
last updateLast Updated : 2025-12-11
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6. 「あの日の僕ら2」62

-62 警視総監の心遣い- 結愛達の手で母の死により一生食べる事が出来ないと思っていた大好物が温まって行く中、守は大事な事を思い出して慌ててある場所に電話を掛けた。そもそも自分はどうして家に帰って来たのかを忘れかけていたのだ。守「結愛、すまん!!」 自らが経営する会社の筆頭株主となった守の唐突の謝罪に驚きを隠せない代表取締役。結愛「何だってんだよ・・・、何で謝るんだよ!!」守「それさ、松龍に持って行っても良いか?」結愛「勿論、俺と光明は良いけどよ・・・。なぁ?」光明「確かに大丈夫だぜ、でも龍さんは良いって言ってたのかよ?そもそもこの時間帯って店が閉まっているだろう。」 確かに時計は松龍が昼営業を終えて中休みをしている時間帯を指していた、ただ今日は真希子の葬儀への参加により臨時休業になっていた。守「実はな、この後その龍さん達と呑む事になっているんだよ。」光明「良いじゃねぇか、じゃあ風呂敷に包んでやるから持って行けよ。」 光明は火を止めて粗熱を取ってから風呂敷で再び鍋を包んだ。守「お前らも来いよ、龍さん達会いたがっていたぞ。」光明「悪いな、俺達すぐにあっちの世界に戻らないといけないんだよ。仕事が立て込んでてさ・・・、また今度な。」守「そうか、すまん事をしたな。」 守は玄関先で光明から風呂敷包みを受け取ると松龍へと歩き始めた、結愛達に向かって手を振ろうと振り返ると既に2人の姿は無かった。守「あれ?もう行っちゃったよ、次あいつらと呑む約束したかったのにな。」 少し残念そうにしながらも歩を進める守、ただ2人の事だからいつかまたやって来た時に会えるだろう、そう思いながら松龍へと到着すると・・・。結愛「おう、遅いじゃねぇか!!先に始めちゃってるぜ!!」 まさかの生中片手に赤くなっている結愛達の姿が。守「おま・・・、おま・・・、お前ら仕事は?!」結愛「何とっくの昔的な事を言ってんだよ、もう数時間前に終わったって(※しつこい様ですが、現実世界と異世界では時間の流れにずれがありますのでご了承下さい)。」 鍋の入った風呂敷を両手に抱えながら開いた口が塞がらない守、あっちの世界でも結愛は一流のビジネスマンらしい。龍太郎「それで?例の鍋ってのがこれか?」守「うん・・・、〆に温めて食べようと思って。」 守から鍋を受け取った店主兼警視総監は少し
last updateLast Updated : 2025-12-11
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6. 「あの日の僕ら2」63

-63 思い出達- この日、龍太郎が作った物が守にとって人生で初めての「オムハヤシ」だったのだが母の「ハヤシライス」と松龍の「オムレツ」のどちらも思い出深い味だったので懐かしさがやはり勝っていた。その懐かしさが嬉しさに替わり、キープボトルである麦焼酎のロックを進ませた。龍太郎「お前も大袈裟だな、ただの飯だぞ。泣く程かよ・・・。」守「またこの味に会えたのが嬉しくてよ、それに昔いつも食ってたここのオムレツってやっぱり何処か他と違う味がしてたから好きになっちゃって。今も変わらないんだな。」龍太郎「そりゃそうさ、うちは中華屋だぞ。オムレツというよりはかに玉に近いかも知れんな、隠し味として焼くときにゴマ油を使っているからな。」守「だからか、香ばしい味がしたのは・・・。」 守は龍太郎との会話を肴にまた酒を進めた。店内には桃や美麗は勿論、既に赤くなっている結愛や真帆がいたのだが、守が少し離れたカウンター席で1人呑んでいたのでその様子を見た真帆は自らの恋人が少し寂しそうにしている様に見えた。 そこで彼氏を気遣った真帆は空になったグラスを片手に隣に座る事にした。真帆「守・・・、こっちに来ないで1人でずっと呑んでるけど何かあったの?」守「・・・。」 守は彼女の問いかけに応えなかったが、その表情が何処か嬉しそうに見えた。彼氏の気持ちを共有したくなった真帆は守が呑んでいた焼酎を自らのグラスに入れて呑もうとした時、守が真帆の肩に手を乗せた。真帆「え?!まずかった?!」守「度数の強い酒だ、生(ストレート)で呑むのはやめておいた方が良い。」 そう言うと真帆のグラスに氷と炭酸水を入れて焼酎ハイボールにした、やはり母から受け継いだ「周りに感謝し、周りを気遣い愛し、自分以上に他の者を大切にせよ」という気持ちがそうさせたのだろうか。真帆「ありがとう・・・、美味しい。」守「ごめんね、さっき答えなくて。」 真帆は未だに守から好美への未練が抜け切れていない事を承知していたので平気だった、その証拠に眼前の彼氏が食べているのは好美の好物でもあったし、松龍は生前の好美のバイト先。真帆「大丈夫だよ、そのオムハヤシを食べていた時の守が嬉しそうな顔をしていたからそれだけでも安心したよ。」守「そうか・・・、ありがとう。」真帆「守の思い出の味なんだよね、真帆も1口貰って良い?」守「龍
last updateLast Updated : 2025-12-11
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6. 「あの日の僕ら2」64

-64 故人の盃- 店主から酒瓶を受け取った守は先程の龍太郎の言葉を思い出して美麗達がいる座敷へと好美の焼酎を持って行った、勿論真帆も誘って。 美麗は好美がバイトを終わらせた後に必ずその焼酎を楽しんでいた事を鮮明に覚えていた、懐かしい記憶が蘇った店主の娘は深刻そうな顔をして父親に。美麗「パパ、それ呑んで大丈夫なの?好美のじゃん・・・。」龍太郎「皆で呑んでやろう、これもきっと供養になるだろうし好美ちゃんも喜ぶはずだ。」美麗「そうだね、それに吞めなくなっちゃったら勿体ないもん。」 守が酒瓶をテーブルに置くと龍太郎が氷と炭酸水を手に付いて来ていた、皆が好きな吞み方で楽しめる様にという心遣いだ。龍太郎「皆、ソーダ割で良いか?」 そこにいた殆どの者が龍太郎の言った通りにしたが守だけはロックにした、どうやら亡くなった恋人の好きな味をじっくりと楽しみたかったらしい。カラカラとグラスの中の氷を鳴らしながらピーナッツを肴にゆっくりと呑み進めた、それが1秒でも長く楽しめる最適な方法だと思ったからだ。守「好美、こんなに美味い酒知ってたんだな。呑み切るのが勿体ないや。」 静かにちびりちびりと味わう守をよそにソーダ割でどんどん呑み進める美麗達、いつの間にか好美の焼酎は半分ほどに減ってしまっていた。龍太郎「こんなに皆が楽しく呑んでるのを見たら好美ちゃんも喜ぶだろうな。」桃「いや、かなりの酒好きだったから逆に嫉妬しているんじゃない?でも美味しいから呑んじゃうもんね。」守「あっちの世界で怒ってたらまずいな、でも美味いから俺も呑むもんね。」 皆が楽しく呑んでいる座敷の横で結愛がスーツをゴソゴソとさせて何かを探していた、光明によると結愛のスーツは特注らしく一般的な物と比べてポケットが多く作られていた。結愛「あれ?この辺りに入れたはずなんだけどな?」守「苦戦しているのは分かるけど流石に手伝う訳には行かんな・・・。」結愛「何言ってんだテメェ、本当にやったらどうなるか分かってんだろうな!!」守「何だよ、お前の体になんか興味ねぇよ!!」結愛「おい守、よく見やがれ!!俺も立派な女なんだぞ!!ほらほら!!」 酔っ払い同士の罵り合いで場が一気に盛り上がった松龍の店内で大企業の社長はいつもの胸ポケットから2通の手紙を取り出して鼻血が出かけていた守に手渡した、どうやら結愛の「立
last updateLast Updated : 2025-12-11
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6. 「あの日の僕ら2」65

-65 女は強し- 守は先程の店主の言葉が気になっていた、表情をよく見れば酒に酔って赤くなっている一同とは打って変わった様に蒼白していた。守「龍さん、「まずい」ってどう言う事だよ。」龍太郎「実はな・・・、あの焼酎は好美ちゃんが亡くなる数日前に製造が中止されたんだよ。いつも俺らが通っている卸業者の社長が言うには製法を唯一知ってる御仁がぎっくり腰で倒れちまったらしいんだ。普段店では出さない酒なんだがな、好美ちゃんが気に入ったって言ってたから特別に卸して貰っていたんだ。実はその社長もバイトをしていた頃の好美ちゃんの事を気に入っていて葬儀に参列していた時、号泣していたのを見かけてな。よっぽどショックになったのか、暫くの間会社に顔を出さなかったそうなんだ。」守「その社長さんとは連絡は取れるの?」 龍太郎は卸業者の番号にスピーカーフォンで電話をかけた、電話に出たのは社長の息子だった様なのだが守にとって聞き覚えのある声がした。龍太郎「俺だ、父ちゃんいるか?」息子(電話)「父ちゃんなら今トイレに入ってるよ、出たらそっちに行くって言ってたけど俺も行って良いかな?」 守は意外な電話の相手の声の主に驚いた。守「た・・・、正か?」 そう、電話に出たのは守の友人で桃の彼氏の橘 正だった。正(電話)「その声は守か・・・、大変だったみたいだな。大丈夫か?」守「何とかな、龍さん達のお陰で葬儀も無事終わったし。」正(電話)「そうか、行けなくて悪かったな。実はついさっき母ちゃんの実家から急いで帰って来たんだけど親父の携帯に女将さんから電話があってな、守達が松龍で集まってるって聞いたから俺も親父と行こうとしていたんだよ。」守「是非来ると良い、桃ちゃんもいるからよ。」正(電話)「桃が?まさかと思うけどかなり・・・。」守「お赤くなっておられるよ、正に会えなくてヤケになってるんじゃないか?」正(電話)「仕方ないな・・・、急いで行くわ。あ、父ちゃん出て来た。父ちゃん、龍さんから電話だよ。」 正は父親に電話を引き継いだ。正の父(電話)「もしもし、お待たせ。どうした?」龍太郎「広大(こうだい)か、こっちこそすまねぇ。今から来るって聞いたからついでに例の焼酎を持って来てほしいんだよ。」広大「あれか・・・、あれは好美ちゃん用に卸してただけだからな。在庫があるか見て来て良いか?
last updateLast Updated : 2025-12-11
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6. 「あの日の僕ら2」66

-66 突然の吉報- 守の笑顔、それは真帆が1日中待ちわびた瞬間だった。好美の酒による酔いからか、それとも嬉しさからか、真帆は大粒の涙を流し始めた。守「おいおい、どうして真帆が泣くんだよ。」 真帆「だって・・・、だって・・・、ずっと守が辛そうにしてるのに、真帆は何も出来なくて・・・。」 そう、真帆は悔しかったのだ。たった1人の肉親を亡くした恋人の為に何が出来るかずっと暗中模索していたらしい。それを聞いて守はどうするべきか悩んだ、「ごめん」と一言謝るべきかとも思った。  その瞬間、真帆が泣き続けながら守に強く口づけした。恋人の咄嗟の行動により、守は自分が悩んでいた事などどうでも良くなっていた。そこにいた全員が空気を読んでいたのか、数分もの間、静寂が松龍の店内を包んでいた。  ただその静寂は、遅れてやって来た正達によってかき消された。正「おいおい、心配して急いで来てみたらこのザマかよ。でも安心したわ。」 桃「正、何でここに?!」 桃は先程の電話の事を知らなかったので彼氏が来るとは思わなかった、しかしそれ以上に驚く理由が別にあった。桃「あんた、1週間もの間何の連絡をよこさずに何してたのよ!!私ずっと・・・、会いたかったのに・・・。」 正に会えないどころか声も聞けない間ずっと1人で待っていた桃に謝罪したのは正本人ではなく、まさかの父の広大だった。広大「桃ちゃん、すまんな。こいつの電話を連絡用に俺が借りていたんだよ、充電器を忘れててな。」 龍太郎「お前は昔から変わらないな、おっちょこちょいと言うかド天然と言うか。」 正「だから、本当にごめん・・・。」 桃「そんな言葉・・・、欲しくない!!」 桃は大声で反発すると正を強く抱きしめた、勿論その行動には今と会えなかった時の分の気持ちが込められていた。桃「もう帰って来ないのかと思ってた、ずっと会えないとも思ってた。私毎晩、ベッドやお風呂で泣いてたんだから。」 正「ご・・・。」 正はもう一度謝ろうと思ったが、きっと桃が望まないだろうという抵抗感を抱き、言葉が止まってしまった。桃「また謝ろうとしたでしょ、「欲しくない」って言ったじゃない。」 正「じゃあ・・・、どうしろって言うんだよ・・・。」 友人想いなのも、不器用なのも高校時代からずっと変わらない正には超が付く程の難問だった。桃「黙って・・・
last updateLast Updated : 2025-12-15
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6. 「あの日の僕ら2」67

-67 高嶺の花による幸せの連鎖- 目の前で新たな花嫁の誕生を目の当たりにして美麗は紹興酒を片手に立ち尽くしていた、娘の様子をじっと見ていた女将は左肩に右手をそっと置いて尋ねた、勿論周りに気付かれない様に中国語で。王麗(中国語)「どうした?寂しくなっちゃったのかい?」美麗(中国語)「うん・・・、私も今すぐ安正に会いたい・・・、2人が羨ましい。」王麗(中国語)「相も変わらずあんたは寂しがり屋だね、そう言うと思ったよ。」美麗(中国語)「えっ・・・?!」 王麗が店の出入口を指差した瞬間、安正がダッシュで店の前に現れた。これこそナイスタイミングと言えるやつだ。美麗(日本語)「安正!!どうして分かったの?!」安正「お前が呼んだんだろ、10分以内に来いって言ったの誰だよ!!」美麗「私・・・、そんな事言った覚え・・・。」 まさかと思った美麗はすぐ後ろにいた母親の方に目をやった、王麗はそれに気付くと娘に向かってウィンクした。美麗「ママ・・・、いつの間に?」王麗(日本語)「何年あんたの母親をやってると思ってんだい、お見通しに決まってるじゃないか。」 母親の気の利いた行動に感動した娘は涙ながらに出入口へと走った、と言ってもほんの十数メートルなのだが。ただ本人にとっては遠かった、それが故にギュッと抱きしめた。美麗「安正!!会えないと思ってた!!」安正「大袈裟だよ、昨日も会ったじゃないか。」王麗「美麗・・・、本当に安正君の事好きなんだね。」 王麗は安心した、秀斗が亡くなってから美麗の笑顔を見る度に無理しているのではないかと心配していたからだ。安正の顔を見て心から笑っている娘の表情を見た女将は肩に重くのしかかった荷が下りた気がした。それ位、娘には幸せになって欲しいと思っていたからだ。きっと亡くなった秀斗もそう願っているはず、それも理由の1つだった。王麗「安正君、私はあんたに謝らないといけないみたいだね。」安正「女将さんが俺に?」王麗「ほら・・・、結構前の事だけど店の座敷席であんたと美麗がキスしてたのを目撃して思わずあんたの事を見下してしまった事さ。」安正「あの事か・・・、あれは俺も悪かったから女将さんが謝る事は無いよ。」王麗「そうかい?そう言ってくれるなら安心したよ。」 娘が心から愛している男を見下していたが故に未だに2人の事を認める事が出来て
last updateLast Updated : 2025-12-15
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6. 「あの日の僕ら2」68

-68 嘘がきっかけの夜- 連続でのプロポーズがあった後で守には少し気になっている事があった、安正と美麗が本格的に付き合い始めたきっかけが香奈子の引っ越しの日に繰り広げられたドッキリだった事は覚えているがそこからどういった経緯があったか、そしてどういった進展があったかを全くもって耳にしていなかったからだ。守「なぁ安正、ドッキリのあの日からお前と美麗(メイリー)の間にあった良い思い出の話でも聞かせてくれないか?酒の肴にでもしたいんだけど。」安正「おいおい、こんなに美味そうな料理が並んでいるのにそれ以上の肴を俺が用意出来るとでも思うか?」真帆「真帆も聞いてみたい、美麗(みれい)お姉ちゃんにあった幸せなエピソード。」安正「真帆ちゃんが言うなら・・・、でも酒が不味くなっても知らねぇぞ・・・。」 これは美麗が福来子達とドッキリを仕掛けた数週間後の話だ、安正は友人と大学近くにある鶏料理が自慢の食堂でランチをしていた。友人(当時)「安正、最近彼女さんとどうなんだよ。今夜だってちゃんと考えているのか?」安正(当時)「今夜って何なんだよ成久(なりひさ)、俺は今夜バイトだぞ。」 安正の友人である加州(かしゅう)成久はちゃんと恋人の為の行動を安正がとっているか心配だった、予想はしていたがバイトを理由に元々高嶺の花と呼んでいた彼女の事を蔑ろにして欲しくは無かったからだ。成久(当時)「ちょっと待てよ、じいちゃんに電話してみるから。」安正(当時)「店長に?」 そう、成久は当時の安正がバイトをしていた弁当屋の主人の孫だった。成久が片手に持った箸にチキン南蛮を挟んだまま携帯を操作して店に電話を掛けると電話に出たのは話に出て来た本人の祖父だった。祖父(当時・電話)「お電話ありがとうございます、出来立て弁当のカシューナッツです。」 いくら苗字が加州だからって店名の決め方が雑過ぎやしないだろうか、ただ今現在での論点は決してそこでは無い。成久は笑いを堪えながら祖父に声をかけた、その傍らで箸に挟んだままのチキン南蛮からはタルタルソースが完全に落ちてしまったみたいだ。成久(当時)「あ、もしもしじいちゃん?今夜って忙しいの?」祖父(当時・電話)「何だ成久か、今夜か?忙しいも何も、今日は昼営業だけにしているはずだぞ?誰か出鱈目でも言ったのか?」成久(当時)「いや、そう言う訳じゃ
last updateLast Updated : 2025-12-15
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