町で一悶着あってから二日が過ぎた。紫音を守って亡くなった魔族の墓に手を合わせると、彼女はその足で屋敷へと戻っていく。あれ以降紫音に危険が迫るようなことはなかった。 ただ出歩く際は必ずリヴァルがついてくるようになったくらいだった。 「紫音、あまり気負うなよ」リヴァルは自分を庇って死んでいった若い魔族に対して責任を感じているだろうとできるだけ優しく声を掛ける。 「うん、大丈夫だよ」「そうか……ならいいが。魔族というものは数十年から数百年もすれば生き返る。核さえ壊されなければまたどこかでひょっこり顔を出すだろう」「そうなんだね、でも私はもう会えなさそう」数十年後に生き返ってきたとしても既に紫音はその場にいないだろう。それだけの期間、異世界にいるつもりも彼女にはなかった。 「それより今日はどこへ行くつもりだ。もうあらかた町は見て回っただろう」「そうなんだけど、今日はリヴァルもいることだし少しだけ町の外を見てみたいなと思って」町の外は魔物が跋扈している。力の持たぬ者ならばすぐに死に絶えることだろう。だから紫音はリヴァルが一緒にいる今日、外に出てみたいと願望を口にした。 「外に出て何をするつもりだ」「何もしないかな。でもこの世界のこともう少し知っておきたいなと思ってね」「この世界のことを知ったとて、いずれは元の世界に帰るのだろう?ならあまり意味はないぞ」リヴァルは彼女がこの世界に来た理由を知っている。弟であるカナタを見つければこの町を出て行く。たった一ヶ月もないほどの期間であったが、共にいた時間は長くリヴァルも紫音に対して情が湧いていた。 「あ、もしかしてその顔……さみしいの?」「ふん。馬鹿なことを言う
Terakhir Diperbarui : 2025-06-05 Baca selengkapnya