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姉弟と仲間と魔神と⑤

last update Last Updated: 2025-06-13 17:00:07

三日ほどかけて、魔神の住まう古城が見える所まで移動した。

かなり牛歩な進軍だったが、魔神側は戦力を、温存しているのか道中魔物が襲ってくることはなかった。

それはそれで不気味なものだ。

ただ。そのお陰もあって冒険者や騎士達の体力は一切消耗していない。

全力でぶつかる事ができると一部の冒険者は息巻いているほどだ。

「ふむ、あれが魔神のいる城かな?」

僕らは一旦歩みを止めて遠くから観察する。

古城の周りには魔物がこれでもかというほどに集まっており、魔族の姿もチラホラと見える。

「すご……リヴァルみたいな人多いね」

「魔族だからな」

うっすい感想を姉さんが口にするとリヴァルさんはそれに相槌を打つ。

「リヴァル、あの中に爵位級魔族はどれくらいいるか分かるかい?」

アレンさんが近寄ってきたと思うとリヴァルさんへと話しかけた。

リヴァルさんも答えない、という事もなく返答する。

「俺が分かる限り爵位級は約百人。その中でも公爵位は五人しかおらん。……どうやら全ての魔族を従える事は間に合わなかったらしい」

「公爵位もいるのかぁ……結構大変かもしれないね」

結構大変というレベルかと言わんばかりの目でリヴァルさんはアレンさんを見つめる。

公爵位なんて僕からしてみれば魔神と変わらない強さなんじゃないかな。

四天王と呼ばれていた魔族よりは弱いのかな。

アレンさんも僕と同じ気持ちを抱いていたようでその質問を投げ掛けていた。

「四天王と公爵位魔族、どっちが強い?」

「そんな分かり切ったことを聞くな。四天王に決まっているだろう」

リヴァルさんの話では公爵位の魔族の中でも突出した力を持つ者が

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