辰也の表情がわずかに動いた。無表情のまま、視線を玲奈に移した。礼二は辰也が玲奈を見ていたことに気づかなかった。彼も興が乗り、腰を折って大げさに紳士風に身をかがめた。「美しくて可愛い玲奈さん、俺と一緒に踊ってくれませんか?」玲奈もダンスは踊れる。礼二が乗り気なのを見て、彼女は笑いながら言った。「もちろん、むしろ光栄よ」そう言って、手を礼二に差し出した。礼二はその手を取って、ダンスフロアへと進んだ。辰也はそれを見て、その女性に紳士的に手を差し出した。玲奈と礼二がフロアに入った時、ちょうど智昭と優里の方に視線が向いていた。二人もちょうど踊ろうとしていて、そのタイミングでこちらを見た。玲奈は視線を外そうとしたが、智昭が自分に微笑んだ気がして思わず止まった。玲奈が眉をひそめてよく見ると、それは錯覚だったと気づいた。智昭は優里に向かって笑っていた。彼は最初からこちらを見ていなかった。玲奈は視線を戻し、礼二とのダンスに集中した。瑛二、淳一、清司は首都の上流社会で、令嬢たちが夢中になる一級の独身貴族だった。多くの女性たちが彼らと踊りたがっていた。礼二と挨拶を交わして以降淳一の視線はずっと優里に注がれていた。彼も瑛二と同じく、踊る気はなかった。だが会場には、家同士の付き合いが深い名門の令嬢たちがいた。年長者の取り持ちで、結局彼らもそれぞれ令嬢の手を取り、紳士的にフロアへと入っていった。清司に至っては、生粋のプレイボーイで、いつも自分から女性を誘って踊っていた。玲奈の気質は清らかで静か、そして優雅だった。今日のドレスも相まって、舞う姿には古典的でゆるやかな美しさがあり、加えて微笑む顔も麗しく、今夜のフロアで最も輝いていた。多くの人が礼二とパートナーを交代したがった。宗介もその一人だった。彼はパートナーを連れて礼二と玲奈に近づき、声をかけた。「湊さん、少しだけパートナーを交換してもいいですか?」その目は玲奈に貼りつくようだった。礼二は顔を冷たくして言った。「とても迷惑だ」宗介「……」まぁいいさ。その時、玲奈は突然誰かに声をかけられた。「玲奈さんですよね?パートナーを交換してもらえますか?」玲奈は一瞬動きを止め、横を向くと、話しかけてきたのは瑛二のパートナーだった
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