智昭は特に何も言わず、自分のスマホで玲奈に電話をかけた。玲奈は画面を見るなり、手を伸ばして通話を切った。智昭は携帯を見て、少し黙った後に言った。「パパの電話、ママも出なかった」「ママ、忙しくて気づかなかったんじゃない?」そうじゃなきゃ、ママがパパの電話を無視するはずないもん。「かもな」智昭はスーツのジャケットを羽織り、さらに黒いコートを手に取って言った。「パパは出かける。遊びに行きたいなら、ボディーガードに連れて行ってもらえ」「でもママと一緒がいいのに……」ママにいろいろ言われるのは嫌だけど、たまには一緒にいてほしいと思うときもある。そう言ってから、頬に手を添えて聞いた。「パパ、病院で優里おばさんに会うの?それとも会社?」「まず病院、そのあと会社」智昭は彼女の額を軽くコツンと叩き、言った。「じゃあな、一人で楽しく遊べよ」茜はぽつりと答えた。「……うん」玲奈にもう二度かけたが、やっぱり出なかった。仕方なく、ボディーガードと田代さんを連れて出かけた。でも、大好きな人がいないとスキーも楽しくなくて、すぐにしょんぼりしながら帰ってきた。……智昭は病院を出て、そのまま藤田グループに戻った。到着して間もなく、清司が現れた。智昭がちらりと彼を見やると、清司は笑って言った。「様子を見に来ただけさ」智昭がまだ何も言わないうちに、和真が来て言った。「直江弁護士さんが到着しました」智昭は「あがってもらって」と言った。智希は和真に案内され、智昭の応接室に入った。智昭は彼と握手を交わし、「おかけください」と促した。智希は無駄な言葉を挟まず、席に着くと昨日玲奈が署名した離婚協議書を取り出して、智昭の前に差し出した。智昭はそれを手に取った。今日は週末で、清司はわざわざ玲奈が本当にサインしたか確かめに来たのだった。それを見て、彼は身を乗り出した。玲奈が本当にサインしているのを見て、驚いて言った。「マジでサインしてるのか?」智昭は玲奈の署名をちらりと見たが、特に反応も示さず、智希と話し始めた。ひととおり話を終えると、彼は言った。「協議書に記載された不動産や株式の数が多いので、こちらでの手続きに少し時間がかかります。全部処理が終わったら、また連絡します」智希は言った。「了解です」智昭
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