彼らが観客席に座った頃、ちょうど練習レースが正式に始まった。宗介と瑛二は今までカーレースに触れたことがなく、誰を応援すればいいのかもわからなかった。しかししばらく見ているうちに、実況の解説から38番のドライバーCCと他の二人が優勝候補だということがわかった。何より、CCは今回唯一の女性レーサーだった。そのため、会場にいる多くの人の視線が自然とCCに集まっていた。しかも、CCは二度もカーブで鮮やかな追い抜きを見せ、観客たちを驚かせた。宗介は思わず感嘆した。「やっべ、度胸すごすぎ!かっけー!」淳一は、宗介がCCの正体が優里だと知らないことを知っており、宗介の褒め言葉を聞いて、そっと口元を緩めた。二回の練習レース、どちらもCCがトップだった。宗介は興奮を抑えきれず叫んだ。「このCCって誰なんだよ?絶対会ってみたい!」その言葉が終わるか終わらないかのうちに、画面の中でCCが車から降りてヘルメットを外した。その姿が優里だとわかると、宗介の目が飛び出さんばかりになった。「CCって彼女だったのか?ま、マジで——」驚いたあと、すぐに肩を落としてぼやいた。「俺、口説こうと思ってたのにさ、まさかCCが藤田智昭の彼女って?」これじゃ、彼にチャンスなんて一ミリもないじゃん!そう思うとすっかりテンションが下がってしまい、それでもつい羨ましげに言った。「藤田智昭って、そんなに勝ち組なのかよ?」そのとき、優里も彼らの姿に気づいた。瑛二の姿を見た瞬間、少し驚いた様子だった。彼女は彼らに近づきながら言った。「徳岡さん、田淵さん、押尾さんも、レースに興味あるなんて意外ですね?」淳一が先に口を開いた。「今までは縁がなかったですけど、あなたが話してたのを思い出してな。ちょうど私たちも時間あったし、見に来たってわけです」そう言ってからさらに続けた。「すごくいい走りでした。二回ともトップでしたし、おめでとう」優里は微笑んで、「ありがとう」と言った。瑛二も「おめでとう」と一言添えた。優里は「ありがとう」と返し、それから瑛二に微笑みかけた。「そういえば、田淵さんとお会いするの、ずいぶん久しぶりですね。さっき遠くから見えた時、見間違いかと思いました」瑛二は答えた。「普段は仕事が忙しくて、なかなか休みも取れませんから」優里は続
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