エレベーターが玲奈の目的階に到着すると、彼女は優里たちに一瞥もくれず、そのまま降りた。彼女の関心は優里には向かず、すぐに忙しい業務へと意識を切り替えた。どれほど時間が経ったのか、玲奈が清水部長と話し込んでいる最中、ふと顔を上げると大森おばあさん、遠山おばあさん、佳子、そして結菜の姿が、入口に現れていた。清水部長も彼女たちに気づいた。玲奈が彼女たちに一瞥をくれたきり視線を逸らしたのを見て、玲奈が面識がないのだと勘違いした彼は、そっと耳打ちした。「あの方々は大森社長のお祖母さま方たちと、お母さまですよ」玲奈は目を伏せ、淡々と「うん」とだけ返した。大森おばあさんたちも、玲奈に気づいた。長墨ソフトと藤田総研が提携していることは知っていたのだろう。突然玲奈を目にしても、大森おばあさんたちは特に驚いた様子はなかった。大森おばあさんと佳子は、玲奈を見ても目線は冷淡だった。まるで彼女を知らないかのように、すぐに視線を逸らした。玲奈が間接的に優里の下で働いているのを見て、結菜は少し得意げだった。遠山おばあさんも上機嫌そうに微笑んだ。結菜が大森おばあさんたちを連れて、玲奈のいる方へと歩み寄ってきた。智昭が正式に藤田総研を優里に譲ったあの日の午後、大森おばあさん、遠山おばあさん、佳子たちはすでに会社を見に来ていた。智昭が優里に贈った会社が、果たしてどんなものなのか確かめに来たのだ。そのため、藤田総研の社員たちは皆、大森おばあさんや佳子たちの顔を知っている。彼女たちが近づいてくるのを見て、清水部長は手元の作業を中断し、丁寧に挨拶した。「大森さま、遠山さま、大森夫人」大森おばあさんと遠山おばあさんは穏やかに微笑みながら、あたかも藤田総研の将来を気遣うかのように訊ねた。「自動運転システムに不具合があったと聞きましたが、今はどうなっていますの?」清水部長は答えた。「順調に進んでおりますので、本日中には解決できる見込みです」大森おばあさんは笑みを浮かべ、玲奈には一切目を向けず、清水部長にだけ言った。「それなら安心ね。お疲れさまです」「当然のことです。お気遣いありがとうございます」そう答えながら、彼は玲奈のことを大森おばあさんたちに紹介しようとした。そのとき、結菜が玲奈に視線を向け、皮肉を込めて口を開いた。「私が藤田
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