【神崎慎】「ほんと、何か変っすよ」陽介さんが、心配そうに僕に向かって手を伸ばす。その手に過剰反応して、思わずびくんと身体が跳ねた。「すみません、つい」驚いて手を引っ込めた陽介さんは、それでも尚、僕の心配をしてくれているのはひしひしと伝わってくる。確かに、僕は今、おかしい。原因の大半は、陽介さんが店に戻ってくるまでの間、佑さんと二人の時に起きた出来事にある。陽介さんたちが店を出てから、暫くして他のお客も居なくなり、普段より早めに店じまいをすることになった。有線で流れていた音楽を止めると、佑さんが何かにやにやと唇を歪ませながら僕を見た。「お前さ、なんか間違ってねえ?」「は? なにが」「気になって仕方ないからって、何女の方を悩殺しようとしてんだよ」くつくつと可笑しそうに肩を揺らす。佑さんに指摘されたことは十分に身に覚えがあって、僕はいっそわかりやすいくらいに狼狽えた。「そ……そんなことない。いつも通りだ」「まあ、お前にしかできない妨害かもしんないけどさー、妨害にしちゃ消極的だ。どうせやるなら結婚詐欺くらいの勢いで落としにかかんねえと」「別にそんなんじゃないってしつこいな!」確かにいつもより若干、女の子が喜びそうな接客をしたかもしれないが。それは、アカリちゃんが僕から見ても可愛らしかったからで。僕は、元々可愛い女の子を見るのは好きだし、ほら、言わばマリちゃんに対して見せるのと同じような。と、脳内で勝手に慌てて誰に対してかわからない言い訳を並べ立てていた。だけど本当は自覚している。合コンという名目で、浩平さんが陽介さんにあてがおうとしているアカリちゃんを見た時、僕は軽くないショックを受けた。陽介さんの隣に並んで店に入って来たのは、小柄で華奢で、清楚な長い黒髪をハーフアップにした、可愛らしい女の子だった。僕とは全く、正反対の。男というのは、一般的にああいう子が好みだろうなと見ていて思った。だけど陽介さんは、僕を好きだと言う。信じてくれと、真摯な言葉で訴えてくれたことを忘れたわけじゃない。その言葉に、僕はまだ一度も応えていないというのに、ショックを受けた自分も嫌だ。独占欲ばかり一人前に成長して、僕は一体何がしたいんだろう。テーブル席とカウンターテーブルをダスターで綺麗に拭いて、カウンターに戻ってくると、流し台に汚れた
ปรับปรุงล่าสุด : 2025-04-19 อ่านเพิ่มเติม