「目的はもちろん同じです」紗雪は穏やかに笑いながら老人を見た。「営業の人から聞きました。おじいさんは『縁のある人』を待っているそうですね。その『縁のある人』が私という可能性もあるでしょう?」「自分のことを『縁のある人』だとは、随分と自信あるな」老人は少し興味深そうに目を細めた。互いに腹を割って話す空気になった。ここで長い間多くの人を見てきた彼にとって、紗雪のような話し方をする人間は初めてだった。彼の無愛想な態度に耐えられず、十分も経たずに帰っていった人の方がずっと多かった。「実は、ここに入った瞬間に私が最初に見たのは、この家の間取りではなく......」紗雪は静かに言葉を紡いだ。「おじいさんが庭を掃いている後ろ姿と、漂う果実の香りでした。この家は、おじいさんが大切に手入れしてきた場所なんですよね。だからこそ、手放すのが惜しいんでしょう?」老人は眉を上げ、帽子のつばを少し持ち上げた。「ほう......小娘のくせに、よくもまあそんなことまで分かるな」紗雪は微笑んだ。「たぶん、おじいさんの言う『縁のある人』っていうのは、この庭を本気で大切にできる人のことなんですよね」「はははっ、なるほどな。わしも年を取ったが、ようやく待ち人が現れたか」老人は朗らかに笑い、心から紗雪を気に入った様子だった。紗雪も少し驚いた。思っていたよりずっと話が早く進んだのだ。もっと時間がかかると思っていたが、彼の顔を見た瞬間、無駄な遠回りをしている暇はないと感じた。それに、この老人は彼女にとって不思議と相性が良かった。「長い間この家を他人に貸せなかったのは、きっとこの庭の花や木が心配だったからでしょう」紗雪の声には確信がこもっていた。年配の人間というのは、自分の育てたものに強い情を持つ。それが人でも物でも。老人は紗雪を木陰の石のベンチに座らせ、自らお茶を淹れた。清那は隣で吉岡と顔を見合わせ、思わず目を丸くした。まさかこんなに早く話がまとまるとは思っていなかったのだ。これでこの家もすぐに借りられそうだし、仕事場の計画も進められる。老人は茶碗を紗雪の前に置き、ゆっくりと語り出した。「実を言えば、もうだいぶ前から疲れていたんだ。ここを守ってきたのは、ただこの庭に情があったからなんだ
Read more