彼女の頭の中には、緒莉が最後に言ったあの一言しか残っていなかった。そのせいで、相手の名前を確認することをすっかり忘れてしまったのだ。今、敦の疑うような視線を向けられ、秘書は言い返す言葉を一つも見つけられなかった。敦は冷ややかに言い放った。「うちは、君みたいな役に立たない人間はいらない。仕事は上の空、そのくせ変なことばかり考えている。そんな人間を、会社に置いておく必要があると思うか?」その言葉に、秘書は腰が抜けそうになった。今にも跪きそうになりながら、必死に弁解する。「す、すみません、柿本社長......次は必ず気をつけます、だからどうか......」さらに慌てて取り繕う。「今回だけは大目に見てください。もう二度としません」秘書は涙を浮かべ、必死な様子を見せながら、無意識のうちに服元を少し下げた。その様子を見て、敦の目つきが変わる。もともと整った体つきの彼女がそんな仕草をすれば、喉が鳴るのも無理はなかった。「......まあいい。初犯だしな」敦は軽く咳払いをして言った。「相手には、明日は時間があると伝えておけ」「ありがとうございます......柿本社長。こうして仕事を続けさせてもらえて......」秘書は立ち上がろうとしたが、足元がふらつき、そのまま敦の胸に倒れ込んだ。敦はそのまま彼女を受け止める。柔らかな体の感触に、体温が一気に上がった。――まさか、こんなに積極的だったとは。今まで気づかなかったが、新しく入ってきた若い秘書たちは、皆どこかそんな思惑を抱いているのかもしれない。そう思うと、遠慮する理由などなかった。敦はそのまま手を伸ばし、彼女の身体に触れる。秘書は甘えたように敦を見上げた。「柿本社長、何を......私、まだ折り返しの連絡をしないと......」「大丈夫。少しくらい待たせておけ」敦は彼女の首元に顔を近づけ、甘い香りを深く吸い込んだ。二川グループの相手が誰であれ、紗雪ではないことははっきりしている。それなら、自分にとってはどうでもいい話だ。少し待たせるくらい、何の問題もない。返事をしないわけでもないし、明日には会うのだから、その時に分かることだ。そう考えると、敦はさらに彼女を抱き寄せ、二人は離れがたいように唇を重ねた。秘書の
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