「任せてください。じゃあ、私は先に戻るね。何かあったらすぐに電話して」美月は「OK」のジェスチャーをして、二人が病室を出ていくのを静かに見送った。二人の姿が完全に視界から消えたとき、美月は手元の器を見つめたまま、ぼんやりとしていた。紗雪がさっきどれだけ気まずそうにしていたか、美月が気づかないはずがなかった。正直言って、見て見ぬふりをしているだけだった。けれども、彼女は本気で、二人の娘が仲違いしてしまうことだけは避けたいと思っていた。しかし、どうやってこの問題を解決すればいいのか、その答えが見つからない。そのことを思うと、美月は自然と頭が痛くなってくる。二人の娘は、どちらも彼女によく似ていた。負けず嫌いで、プライドが高い。どちらも一歩も引かない性格だからこそ、今回の問題もこじれてしまった。本当は、どちらか一方が少しでも歩み寄れば、簡単に解決できる話なのだ。一方が頭を下げて謝れば、それで済むかもしれない。そう思いながら、美月は深いため息をついた。そこへ、秘書の山口が部屋に入ってきて、美月のその様子を目にした。彼女の専属秘書として、少しでも悩みを軽くしてあげたいと思ったのだ。「美月会長、どうされたんですか?ため息なんかついて」美月は、山口だとわかると、珍しく心のうちを口にした。「うちの娘たち、二人ともプライドが高くてね......性格がまったく一緒なのよ。はあ......」その苦しげな表情を見て、山口も事情を察した。だが、これはあくまで家庭の問題だ。彼にできることなど、何一つなかった。美月は、山口が黙っているのを見て、急に虚しさを感じた。自分がこれだけ話しても、返ってくる言葉は一つもなく、慰めの一言すらなかった。そう思うと、美月は一層疲れを感じた。なんで自分の周りには、こんな気の利かない人ばっかり......今度こそ、側近の入れ替えを考えないと。「もういいわ、山口。そこに立ってないで、特に用事がないなら、医者のところへ行って、薬をもらってきて」実のところ、美月はもうこの病院にいたくなかった。時間ばかりが無駄に過ぎて、得られる治療といえば、静養と安静だけ。そんなもの、家でも十分できる。それに、ここにいる限り、消毒液のにおいにずっと悩まされるのだ。だが山
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