まもなくして、匠も後から出てきて、気を利かせて京弥にタバコを一本差し出した。「片付いたか?」京弥は煙を吐き出しながら、気怠そうに尋ねた。匠はうなずいた。「ご安心を。全部きれいに片付きました」「帰るぞ」京弥は少し不満げだった。こういう小物どものせいで、彼と紗雪は二日も離れ離れにならなければならなかった。まったく、目障りなやつらだ。京弥が帰国したのは、ちょうど三日目だった。その間、美月の体調不良をきっかけに、紗雪の仕事量は急激に増えた。一時的にではあるが、プレッシャーも大きくなり、京弥のことを考える暇もなかった。秘書はこの数日、何も言わなかったが、すべてをしっかりと見ていた。「会長、少し休まれたら......」紗雪はこめかみを揉みながら、「ダメよ。まだ山ほどの仕事が残ってるの」と答えた。彼女は無理に気力を保ち、眼鏡をかけて画面の文字を見つめた。秘書はそれ以上何も言わず、そっと部屋を後にした。今の自分にできる最善のことは、紗雪の邪魔をしないことだ。外に出ると、他の部署の人たちが秘書を見て、心配そうな視線を送ってきた。「会長の様子はどう?」「まだ仕事してるの?」「はあ......体は一つしかないのに、無理して倒れたらどうするの......」秘書はみんなの様子を見て、心が少し温かくなった。普段は紗雪に対して色々と不満を抱えているように見えていたが、いざという時にはやっぱり彼女を気遣っているのだ。こうして見ると、この会社もそんなに悪くないかもしれない。「慌てずに。各自の持ち場をしっかり守って。会長のことは、私ができるだけサポートするから」そう言って、秘書は食事を買いに出かけた。部署内は一気に静まり返った。誰からともなく口を開いた。「......実はさ、会長って普段から結構私たちに優しくしてくれてるよね」「そうそう。二川家の次女って肩書きがあるけど、全然偉そうにしないし、自分で下から一歩ずつ登ってきた人だよ」「手伝えることないか、会長に聞いてみない?」最終的にみんなで投票をして、代表として円が紗雪の様子をうかがいに行くことになった。円は黒縁メガネをクイッと押し上げて、ついに勇気を出して紗雪のドアをノックした。「会長?」「入って」中から紗雪
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