しかし、その後、二人が彼らの前に歩み寄り、しかも立ち止まったのだ。清那はとても奇妙に感じた。この二人、まさか自分たちの会話を盗み聞きしていたんじゃないのか?だが緒莉の頭の回転は速く、すぐに手を振り、声が出せないというジェスチャーをした。そして辰琉の腕を引き、足早にその場を去っていった。清那は二人の背中を見送りながら、胸の中の疑念がますます深まっていった。「変な人たち」それ以外にも、この二人の現れ方と去り方、どちらも不自然だった。まるで、すべてが仕組まれているかのように。清那がずっとぼんやりしているのを見て、日向が不思議そうに問いかけた。「どうした?何を見てるんだ?」清那は薄い唇を引き結んだ。「ねえ、さっきの二人、変だと思わない?私が兄さんの正体を言った時、あの二人......盗み聞きしているみたいだった」その言葉を聞いて、日向も少し考え込み、清那の言葉に一理あると感じた。「あの二人を見たことあるのか?それとも、どこかで会った、とか?」日向にそう聞かれ、清那は言葉を詰まらせた。一瞬、頭の中が混乱し、全く思い出せない。「思い出せない。そもそも印象がないの」清那は苦笑しながら言った。「それに、あんなに厳重に包んでたんだよ?見分けられるわけないじゃない」日向は額を軽く叩き、我ながら軽率だったと気づいた。この状況で、何を言ってるんだ自分は。さっきの二人の格好で、普通の人が判別できるわけがない。そんなの、考えてみれば当然だ。それに、今の世の中は何をするにも証拠が必要だ。むやみに決めつけるわけにはいかない。「じゃあ、ホテルに行こうか」日向は問いかけるような口調で清那に言った。清那は頷いた。「うん、とりあえず荷物を置きに行こう。他のことは後で考えればいい。片付けが終わったら、また紗雪の様子を見に来よう」日向も同意した。自分もそう思っていたのだ。ここで散々騒ぎを見物したが、結局何の結論も出なかった。彼の胸にはまだ納得できない気持ちが残っていた。それに、紗雪の容態も本当に心配だ。いったいどんな病気なんだ。こんなに長い間、まだ目を覚まさないなんて。一体どうなっているんだ?日向は大きくため息をつき、その心には紗雪への不安しかなかった
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